2025-07-26 14:50

#1518. 現代英語の but,古英語の ac

▼緊急告知! 2025年6月18日に本が出ました


📙唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.


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- 詳しくは研究社のHPをご覧ください:https://www.kenkyusha.co.jp/book/b10135166.html

- 7月13日(土) に朝日カルチャーセンター新宿教室にて著者3名が記念出版記念講座をハイブリッド開講します.詳しくは https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=8388868 をどうぞ.


▼パーソナリティ,堀田隆一(ほったりゅういち)の詳しいプロフィールはこちらの note 記事よりどうぞ.


- https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491


▼heldio のビデオポッドキャスト版を Spotify で始めていますので,そちらのフォローもよろしくお願いします.


https://open.spotify.com/show/0xOyOIXBUrIZbnwSLeJsSb?si=zH5V2CjkS0ekqNz5ro7caw


▼helwa リスナー有志による月刊誌「Helvillian」の9号が公開されています


- 第9号(2025年6月28日):https://note.com/helwa/n/n79623d921a95


▼2025年7月7日に『英語史新聞』第12号がウェブ発行されています.


khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第12号がウェブ公開されています.こちらよりアクセスしてください


- 第12号:https://drive.google.com/file/d/1eQawDu2njFNMMVKDUr4JRZdIWTNHDdha/view?usp=drivesdk


第12号公開については,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio (https://x.com/khelf_keio) を通じても案内しています.

リツイートなどを通じて「英語史をお茶の間に」の英語史活動(hel活)にご協力いただけますと幸いです.


▼2025年第2四半期のリスナー投票が7月10日までオープンしています


- 投票会場:https://app.sli.do/event/weRify7g2SvDa89mZh7k1A


▼2024年9月8日(日)に12時間連続生放送の「英語史ライヴ2024」を開催しました.英語史界隈では前代未聞のイベントとなりました.詳細は以下の配信回,あるいは khelf の特設ページを! イベント後は,数ヶ月間かけて各番組をアーカイヴで通常配信していきました.


- heldio 「#1119. 9月8日(日)「英語史ライヴ2024」を開催します」 https://voicy.jp/channel/1950/1296042

- khelf 特設ページ: https://sites.google.com/view/khelf-hotta/英語史ライヴ2024特設ページ


▼X(旧Twitter)上で「heldio コミュニティ」が開設しています.


Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のリスナーさんどうしの交流と情報発信の場です.heldio やそこで配信された話題を「待ち合わせ場所」として,英語史やその他の話題について自由にコメント・質問・議論していただければ.heldio が広く知られ「英語史をお茶の間に」届けることができればよいなと.今のところ承認制ですが,お気軽に申請してください.

https://twitter.com/i/communities/1679727671385915392


▼プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) も毎週火木土の午後6時に配信しています


「英語史の輪」にこめる想い


1. レギュラー放送は,これまで通り,最大限に良質な内容を毎朝お届けしていきます.プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」のための課金の余裕がない方々(例えば中高生や英語史を真剣に学びたい苦学生など)は,無料のレギュラー放送のみを聴き続けていただければと思います.レギュラー放送では,皆さんに最良の放送をお届けし続けます.


2. プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」で得た収益の一部は,レギュラー放送の質を保ち,毎日円滑にお届けするための原資とします.


3. また,収益の一部は,Voicy 以外でのhel活をさらに拡大・発展させるための原資とします.


4. ときに khelf(慶應英語史フォーラム)やプレミアムリスナーにも協力していただき,hel活の新機軸を打ち出していきたいと思っています.企画本部としての「英語史の輪」です.

5. ぜひとも「英語史の輪」のプレミアムリスナーになっていただきたい方


 ・ hel活を応援したい方(資金援助,広報支援,盛り上げ係りなど.研究者,学生,一般の社会人など職種や専門は問いません.)

 ・ 毎日もっともっと英語史に触れたい方,レギュラー放送では足りない方

 ・ 私(堀田隆一)の話をもっと聴いてみたい方

 ・ レギュラー放送のような一般向けの話題にとどまらず,もっと専門的な英語史の話題も聴いてみたいという方

 ・ レギュラー放送で言えない/配信できないような「低い」話題(対談のアフタートークや飲み会での雑談など)も聴きたいという方

 ・ パーソナリティおよびリスナーさんどうしで,もっと交流したい方


以上,よろしくお願いいたします.

サマリー

本エピソードでは、英語の接続詞「BUT」と古英語の接続詞「AC」を詳しく解説しています。「BUT」の歴史的な発展とその多義性、そして「AC」の消滅にまつわる興味深い背景を考察しています。現代英語における「but」がどのように古英語の「ac」と関係しているのかが論じられており、特に言葉の使われ方や意味の変遷、古英語の単語が死語となる過程についても紹介されています。

英語の接続詞の歴史
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語詩ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語詩の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者のホッタリュイチです。
英語の語源が身につくラジオheldio、英語詩をお茶の間にをモットーに英語の歴史の面白さを伝え、裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。
本日は7月26日土曜日です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
本日は夕方に朝日カルチャーセンター新宿教室にて英語試講座が開講されます。月1で開いているシリーズなんですけれども、今年度のシリーズ全体のタイトルは
歴史上最も不思議な英単語ということでですね、毎回一つの単語に焦点を当てながら、そこを基準にですね
広く英語詩を語っていこうというそんなシリーズなんですね。 今晩のお題はBUTのあのBUTです。
極めつきの多義の接続詞と題してお話しいたします。
BUT、非常に日常的な単語なんですけれども、この単語だけで90分お話できちゃうんですね。
それぐらいですね、なかなか奥の深い単語なんです。 小英語からある単語なんですが、
BUTの一番普通の使い方である、しかし〜だがという逆接の接続詞ですね。 この用法は実はですね、小英語であったにはあったんですけれども、あまり多く使われていたわけではないです。
その他の用法、例えば従属接続詞としての用法ですね。
〜でない限りとかですね、〜でなければのような使い方が多かったんですね。
つまり、今一番普通の用法であるしかしの意味は、まだまだ規剥と言いますか、用例が少なくってですね、
これは中英語になってからどんどんと発達、定着していったということになってるんですね。
では、小英語の時代に、普通にしかしを表す言葉はなかったのかといえば、いえいえ、もちろんあるんですね。
それが、今はなき悪という接続詞なんですよ。
ACと続って悪と発音したんですけれども、今日はですね、これについてお話ししたいと思います。
現代英語のBAD、小英語の悪、どうぞお聞きください。
BADと言いますと、現代英語ではあまりに日常的、当たり前すぎる用語ということで、特に見向きもしないんではないかと思うんですが、
今日の朝かるでは、これをみっちりですね、深掘りしていこうという、そういう趣旨を掲げているわけですね。
冒頭で述べたように、しかしという最も普通の意味でのBADというのは、小英語からあるにはあったんですが、まだまだ一般的ではない。
むしろですね、今ではなくなってしまっている、悪という単語が、しかし、だがの意味で最も普通に用いられたんですね。
それが、中英語期になりますと、文符が逆転しまして、悪がだんだんと少なくなってくる。
代わりにBADが現れてくるということなんですね。BADはもともと多義だったんです。
いろいろな用法が、小英語の時代からありまして、中英語、近代英語、現代英語とですね、様々な用法を保ちながらですね、歴史を歩んできた。
そして、現代も一番普通の意味こそ、逆接の接続詞、しかしの意味なんですけれども、他にもたくさん用法があるという、昔ながらの多義語なんですよね。
それに対して、悪というのは、小英語の時代からある意味、単義語です。
しかし、だがという、この意味しかなかったんですね。その意味では、逆接の接続詞として、専用の単語、これはこれであり続けてもおかしくなかったはずなんですが、
中英語期になると衰退していきまして、むしろ多義語のBADに置き換えられていくという、なかなか不思議な歴史を歩んできたんですね。
語源と意味の探求
このように、日常的な単語、しかもですね、機能語と呼ばれる接続詞ですよ。
これがですね、別のものに置き換えられてしまうというのもですね、なんだか妙な気はしますよね。
一般の内容語って言いますね。名詞、動詞、形容詞の類ですね。実質的な意味を持っている単語であれば、どんどん入れ替わり、立ち替わりですね。
類義語によって、歴史の中で置き換えられていくっていうことはありますね。
特に、小英語から中英語にかけては、
ノルマン征服の結果ですね、フランス語由来の単語がたくさん入ってきたことによって、本来の小英語の単語が、その外来のフランス語からの単語によって置き換えられてしまうということは頻繁に起こりました。
ところがですね、接続詞でこういうことが起こるっていうのは珍しいですし、そもそもバットもアックも小英語からある本来語なんですね。
フランス語やラテン語であるとか、外来のものではないわけですね。それが入れ替わってしまうっていうのは、なおのこと不思議だなという気になるわけですよね。
そこで今はなき、アックの方にここからは注目していきたいと思うんですが、これはですね、語源については必ずしもよくわかっておりません。
ゲルマン語の仲間たちには関連する単語がどうもあるんですね。 小英語のアックはですね、おそらく意形としてオックという形があったんですね。
OCと書いて、これがですね、中英語などでは使われていたんですが、おそらくこれと関係するのが、現代の北欧語などにありますOGと書いて、オウと読ませるんですかね。
デンマーク語ではオウ、OGと書いて、二重母音にオウのように発音しまして、これが実は接続詞&の意味なんです。
バッドではないんですけれどもね、ただこれと語源的には関係するだろうというふうに言われています。
このようにゲルマン語の仲間にはですね、同婚語が見つかるので、比較的古くからあったんだろうなとは思われるんですが、究極的にはどこから来たのかよくわかっていないという謎の接続詞なんですね。
これが最も普通の語彙語で、しかしを意味する逆接の接続詞として使われていたということなんですね。
もう一つですね、語源的に関係があるかもしれないという単語がありまして、それが実は現代語にも残っているある単語なんですね。
EKEと3文字で書く単語なんですが、これあまりなじみのない方が多いんではないでしょうかね。
EKEと言いまして、大きな辞書を引くと載っていると思うんですが、何々も又というような意味なんですね。
つまり、alsoに近い意味ですね。
これも語彙語から接続詞として使われておりまして、母音こそ異なれくというシーンが共通していることからも、何か語源的に悪くと関係あるんではないかと疑われてはいます。
ただ、この辺りもはっきりしませんね。意味の類似性によって語源的にも近いはずだというくらいのところで、明確には同語源なのかどうかということは疑われているということなんですね。
このEKEにつきましては、現代でも一応ですね、残っているにせよあまり使われないというのが現実だと思うんですよね。
実はですね、この単語、ニックネームという皆さんがご存知のあの名詞の中に隠れています。
ニックネームというのは、実はNにこのEKE、そしてネームという構成なんですね。
ニックネーム、N、EKE、ネーム、こういう語形性なんです。
古英語のアナロジー
つまり、またの名をということなんですね。EKEとネームでまたの名ということ、別名ということでニックネームになるんですね。
最初のNはどこから来たのかと言いますと、これは異分析と言われる格好の例、典型的な例となっていまして、
本来このNはなかったんですね。
イックネーム、またの名ということですから、イックネームでいいわけなんですが、これに不定関詞をつける場合にですね、
イという母音で始まっている名詞ですので、その前に来る不定関詞はアンヌになりますね。
アンニックネーム、これがアニックネームと発音されるに及んで、聞く側はですね、これがアプラスニックネームなんだというふうに勘違いして分析してしまったということがですね、言われています。
こういった例をですね、異分析、異なる分析、誤って分析してしまったということなんですね。
そして、誤った方が本当になってしまったという典型例の一つとして話題になってきます。
イーク、これもぜひ覚えておいていただければと思います。
このイックないし、現代の形で言いますとイークですね、EKEは、小英語ではどんな形だったかというと、典型的にはEACというふうに綴られました。
ですので、確かに形としては、しかしを意味するACとかなり近いと言っていいと思うんですよね。
両語とも小英語では品質単語です。
何しろ、しかしという意味と、何々もまたという意味ですから、これはよく出るに決まっているわけですよね。
この2語が、同じ文章の中に比較的近い位置に現れるような小英語の良い文がないかなと探していたところ、比較的身近なところで見つけました。
このヘルディオでもおなじみ、 城地大学の小川俊さんがヘルヴィリアン7月号のために寄せていただきました
主の祈りで味わう小英語の文体 こちらの主の祈りの小英語版
とりわけここではウルフスタン版を挙げたいと思うんですけれども、こちらにですね、EACという単語とACという単語がこの短い一節の中に共に現れます。
それぐらい非常によく使われた単語ということなんですね。
解説も加えられていますので、ぜひじっくりとリンク先よりお読みいただければと思います。
残念ながらこのAC、中英語以降に頻度を減らしてしまい、そしてほとんど近代英語にまでは伝わることなく、死語となってしまったわけなんですね。
EACの方はギリギリ残ったとはいえ、今でも一般的に使われる単語ではないわけですけれどもね。
このように単語の英語精髄、これだけ頻度の高い単語でも死語になってしまう、あるいは廃用に近くなってしまうという一つの例を挙げたことになります。
言語の変遷と影響
現代英語では現れないわけなんですけれども、皆さん、英語史にご関心のある方々は、このACの存在、ぜひ忘れないでいていただければと思います。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今日の夕方の浅木カルチャーセンター、新宿教室での講座ではですね、このBATを深掘りしていきます。
その過程ですね、ACの方にもちらっと触れることにはなると思いますが、その前振りみたいな感じでしたね。
英語語源ハンドブックや英語語源辞典をお手元にお持ちの方はですね、ぜひBATを引いてみていただければと思いますね。
このタギ語、本当にですね、厄介なタギ語なんですよ。
このような基本語こそ注目に値する、というケースはしばしばありますね。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご意見ご感想をお待ちしています。
Voicyのコメント機能を通じてお寄せいただけますと幸いです。SNSでのシェアもよろしくお願い致します。
それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように。英語史研究者のほったりうちがお届けしました。
また明日!
14:50

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