2025-11-22 18:34

#1637. 1890年前後のニュージーランド英語のコイネー化

▼helwa リスナー有志による月刊誌「Helvillian」の第13号が公開されています


- 第13号(2025年10月28日):https://note.com/helwa/n/n19b19fa03ec1?magazine_key=m82eb39986f24


▼hel活のハブ The HEL Hub のホームページがオープンしました


- https://user.keio.ac.jp/~rhotta/helhub/

- heldio, helwa はもちろん hellog や YouTube 「いのほた言語学チャンネル」などの様々な媒体での英語史コンテンツの新着が日々集まってくるページです.


▼2025年10月15日に新刊書が出ました


📕井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.


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- 本書を紹介する特設HPはこちら:http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/inohota_naze

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▼2025年6月18日に新刊書が出ました


📙唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.


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▼パーソナリティ,堀田隆一(ほったりゅういち)の詳しいプロフィールはこちらの note 記事よりどうぞ.


- https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491


▼2025年7月7日に『英語史新聞』第12号がウェブ発行されています.


khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第12号がウェブ公開されています.こちらよりアクセスしてください


- 第12号:https://drive.google.com/file/d/1eQawDu2njFNMMVKDUr4JRZdIWTNHDdha/view?usp=drivesdk


第12号公開については,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio (https://x.com/khelf_keio) を通じても案内しています.

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 ・ hel活を応援したい方(資金援助,広報支援,盛り上げ係りなど.研究者,学生,一般の社会人など職種や専門は問いません.)

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以上,よろしくお願いいたします.

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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語詩ブログの管理者、英語のなぜに応える初めての英語詩の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者の堀田隆一です。
加えて10月15日に夏目社より新刊書が出ました。同僚の井上一平さんとお届けしているyoutubeチャンネル、井の穂田言語学チャンネルから生まれた本です。
井上一平堀田隆一長、言語学ですっきり解決英語のなぜ、ハッシュタグひらがな6文字で井の穂田なぜとしてご意見やご感想をお寄せください。
特設ホームページも概要欄のリンクからどうぞ。
英語の語源が身につくラジオheldio、英語詩をお茶の間にをもとに英語の歴史の面白さを伝え、裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。
本日は11月22日土曜日、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
今日はニュージーランド英語の話なんですけれども、ニュージーランド英語には地域方言があまりないというかほとんどないというふうに言われています。
これはお隣の大国オーストラリアも似たような事情なんですよね。
移民の国だからという簡単な理由では説明できないんですね。
アメリカも比較的イギリスであるとか日本に比べれば地域方言差が少ないと言われますが、あることは十分にあるわけですよね。
ただそのアメリカと比べてもニュージーランドやオーストラリアは地域方言が少ない。
全体的に共通化しているということですね。
ちなみに社会方言というものはあるんですけれども、階級によってというような縦の方言差です。
今回話題にするのは地域方言ということなんですけれども、これがあまり見られない。
言葉が共通化、一般化していると言えるんですが、これは何でなんでしょうという謎に迫りたいと思います。
これは実はニュージーランド英語の歴史研究の中でも大きなトピックで、まだ詳細はわかっていないこともいろいろあるわけなんですが、この問題について考えてみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
今日の話題の設定は先日リスナーのカミンさんからいただいたコメントが元になっています。
読み上げます。
ダニーデンはスコットランド移民が築いた街とのことですが、ニュージーランドの英語には入職者の出身地や入職した時代の英語の特徴などは残っていないのでしょうか。
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カナダのケベック州のフランス語はフランスの標準的フランス語とはかなり響きや語彙などに違いがあるのですが、ケベックのフランス語は英語からの影響のほか、過去主に多い。
17、8世紀のフランス語の特徴がかなり色濃く残っているようです。
ニュージーランドやオーストラリアなどの英語はルーツとなる入職者の英語の特徴はどれくらい見られるのかというご意見、コメントをいただきました。
ありがとうございました。
ケベックと比較するというのも、これなかなか対照的なので面白いかなと思いつつ数日考えてみたんですね。
まず、ニュージーランドの英語は確かにこの街ごとに入職者のタイプといいますか出身地、社会的バックグラウンドが異なっているんですね。
これまでの配信会でも何度か触れてきたんですけれども、例えば今私がいますニュージーランドの南島だけをとっても、
クライストチャーチはイングリッシュなんですね。イングランドからの入職者が築いた街といっていいと思います。
そして背後にある宗教は保守的なアングリカンですね。
一方ダニーデンの街はスコットランド移民の街ということで、背後にスポンサーとしてついていたのがスコットランド自由教会ということで、背景が異なっているんですね。
南島の他の都市、植民地ですね、それから北島のいくつかの街もですね、それぞれ背景が異なっているという事情はあるので、
移民の第一世代、これはですねイギリスからそれぞれの方言を引き下げて持ってきたということは間違いないんですね。
そしてその年代はと言いますと19世紀以降ということですね。
そしてある程度組織的に植民がなされたのは1840年のワイタン議条約以降と考えて良いと思うんですね。
ダニーデンの場合1848年から本格的な街づくりが始まったということで、この辺りが第一世代ということになります。
その後半世紀ほどはどんどん外からの移民が流入してきました。
これはイギリス本国からということもありますし、1861年にはダニーデン近郊で近郊が見つかったということで、
ゴールドラッシュ、オーストラリア、そして中国を含めアジアからも人々が押しかけてきたというふうに人口の移入というものが非常に激しく起こってきたんですね。
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そしてイギリスからの組織だった移民というのもずっと続いていたということで、とにかくですね人種のるつぼ的な状態になったわけですね。
このどんどん外から移民がやってくる、新しい人々が流入するという中で、どうもこの一番最初の第一世代の方言、ダニーデンの場合19世紀半ばのスコットランド英語ということになりますが、これがですね書き消されていくということが起こったんですね。
そしてこれはクライストチャーチであるとかオークランド、他の街でも状況はだいたい似たようなところかと思うんですね。
これは激しい人口流入があったがゆえに様々な言語のしゃべり手、その言語が英語だったとしてもですね、その英語の方言が入り乱れるという中で全体が平板化していったというふうに考えられているんですね。
これは方言混合、ダイアレクトミクスチャーとか、その結果としての方言水平化、ダイアレクトレベリング、つまり全体に慣らされて一様になっていくということですね。
さらに別の用語で言いますと、コイネーアイゼーションと言ってますね。コイネー化です。共通語化ということですね。
ギリシャ語のコイネーに倣って作られた言語学上の用語なんですけれども、コイネー化というものが起こったというふうにされているんですね。
さまざまな方言が混ざり合って、いわば角が取れるという形、丸くなった形で平板化、平準化していったということですね。
その後も移民は続くんですね。実際20世紀に入ってからも、ニュージーランドの人口増の何割かは外からの移民によるもので、ずっと移民国家であることを続けてきたわけなんですが、
とはいっても、定住して安定してきた植民の第3世代、第4世代とかですね。このような人々が社会のマジョリティを形成していくということにはなるわけですよね。移民が多いとはいえ、安定したマジョリティがいたということですね。
人口統計の観点から言いますと、このような定住した人々、定着した人々がマジョリティになってくるというのが1890年ぐらいと言われているんですね。
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それ以降は安定的な人口動態、そこそこ安定的な人口動態となったというふうにされているんですが、
そこからニュージーランドの英語の歴史を研究しているBauerなどは、一つの目安として1890年というのを設定し、これ以降に国全体として統一感のある共通感のあるニュージーランド英語というもの、
つまり現代の地域方言のあまりないニュージーランド英語の原型みたいなものが作られていったんだろうというふうに考えているんですね。
そしてこの段になりますと、もうすでに植民、移民第一世代が話していたような英語、例えば独特なスコットランド英語のような強い特徴、癖のある特徴というのは
角が取れて丸くなっていっていますので、1890年以降、20世紀のニュージーランド英語においてはその痕跡というのがきれいに消えていると。
もちろん完全に100%消えているというわけではなく、やはり方言によって明らかにスコットランド英語の語彙であるというものが残っているというものもありますが、少数なんですね。
むしろそれが発見されたりすると、残っていたみたいに話題になるくらい、逆にそれくらい少ないということです。
この方言が混合することによって水平化していく、平板化していくということですね。あるいはコイネ化ということですが、これはいろいろと事例は見られていまして、
日本でも北海道などはある程度知られていますかね、様々なところからの開拓民が流れ込んだということで、比較的その方言職がですね、東北ベースとは言われているんですかね。
そこに様々な方言話者が集まってきたということで、水平化、平準化されているということは言われますし、
最近の事例では兵庫県のニュータウンの研究でしたかね。ニュータウンができて、そこに様々な方言話者が入居してきたというところで、かなり早いスピードでこのコイネ化が進んだというような研究がありますね。
このようにコイネ化が進むという事例もあれば、最初に加民さんがご指摘されたようなですね、ケベックのような、むしろ平板化せずに、第一世代のフランス語の方言と言いますかね、編集が色濃く未だに残っているということもあって、
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これは移民の歴史、社会背景に依存するんだろうと思うんですね。ケベックの場合には、周りが英語圏に囲まれているというところから、ある意味の孤立であるとか、あるいは自衛と言いますかね、対英語というような緊張感というのが常にある。
そして、それを背景に本国フランス語との連携であるとか、本国のフランス語を常に参照するというような文化伝統もある。
英語の影響を受けるというのは、それは不可否だとは思うんですけれども、そのような社会条件がニュージーランドの場合とケベックの場合、また異なっていると思うんですよね。
このあたり、社会条件を比較するということが重要になってくるのかなというふうに思います。
もう一つ、ちょっと厄介というか面白い問題なんですけれども、移民社会に様々な方言が持ち込まれた時に、その後どのように発展していくか、言語が発展していくかについては、今述べたように社会条件がほぼ全てというか非常に強いファクターになるということは多分間違いないですね。
その一方で、やはりパターンはあるという言われ方もなされまして、その中でよく知られているのがファウンダープリンシプルというんですね。
つまり創設者の原理ということなんですが、創設者とか移民第一世代ですね。その中でも有力者、影響力のある人ですね。
このダニーデンで言えば、前から名前を出しておりますトマス・バーンズみたいな人が相当するのかもしれませんけれども、このファウンダープリンシプルというのがあって、第一世代の移民、とりわけその中で影響力のある人みたいに個人に特定する場合もあるわけなんですが、
この人がやはりその後のその言語編集の発展の方向づけを決めると言いますか、礎を築くという。考えてみればですね、そうだろうなという気はするんですが、
ただニュージーランドの場合ですね、そのスコットランド的な英語の癖みたいのは、その後綺麗さっぱり消えていくということなので、やはりこれもケースバイケースなんだろうなというふうに思いますね。
ただ多くの場合、植民地移民ではですね、このファウンダープリンシプルというのが説明原理としてなかなかうまく当てはまるということも少なくないんですね。
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これは考えてみれば、いろんな観点からですね、そりゃそうだろうなと思うわけなんですが、やはり第一世代って偉いんですよね。偉いっていうのは、いろいろな社会基盤とかモデルを作る人たちだからなんですね。
そして第二世代とか後から入ってくる移民たちは、その先輩たちに従うわけですよ。とりわけですね、第一世代で生き残った人たちっていうのは、生命力が強いわけですよね。
そして生活の仕方、生き残り方っていうのを知っている人だということで、やはり先輩になるんですよね。一目置かれる。
そうすると言葉の上でもですね、それが目指すべきモデルになるというような社会言語学的な考え方なんですけれどもね、移民ではとりわけこの生き延びるという非常に重要なミッション、課題があるということで、
その言語上もですね、第一世代、そのファウンダーに従いやすくなるという事情はあるのかなと思いますね。
ただその後の移民事情が著しかったりすることによって、ニュージーランドのようにきれいさっぱりファウンダーの痕跡がですね、消えてしまうということもあったりするので、ケースバイケース。
ただ何が異なっているのか、社会状況、社会条件ですね、この辺りを比較することでですね、言葉を基準にかつての社会、社会構成、人口構成みたいなものを完全には復元できないとしてもですね、部分的に押し量ることができるという面白い事例になるんじゃないかなと思います。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今日はカミンさんからのケベックを引き合いに出しての非常に面白いコメントをですね、と関連づける形でですね、ニュージーランド英語の歴史、そして大いなる謎ですね。
どうして小異名化したのか、平準化したのかという、そしてその注目すべき年代は、アバウトではありますが1890年ぐらいということで、この年代に何が起こったのかとかですね、社会状況がどう変化したのかなども含めて、今後見ていきたいなと実は思っている、
まさにですね、研究課題のところだったということです。皆さん、いろいろとコメント、ご意見お寄せいただけますと、こういう形でですね、いろいろフィードバックしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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また明日!
18:34

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