最後のステージの違和感
中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
みなさん、こんにちは。コミュニケーションを極めると、自分が見えてくる、世界が見えてくる。 コミュニケーションの世界に携わって40年以上、コミュニケーション命、シン・田中こと田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職して、はや四半世紀、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住、中川浩孝です。
田中 愼一
最近ね、僕ぐらいの年配の人たちがどんどん現役でずっと勤めていて、新たなキャリアとかいろいろあるんだけども、
これが最後のステージでねっていう表現をよく聞くんですよね。
僕もね、結構そういえば、ときたま、これが次の俺の最後のステージだなとか言うんだけど、
なぜか今日それが引っかかってきてですね、最後のステージ、待てよってね。
なんでかなと思ったら、例えば僕の場合は、今は社長というところから会長に入って、前線からは完全に引いて、身の狭い思いしながらちょこんとね。
そんなこともないんだけど、結構ざっくばらんにやってますけども、
いろいろな人と話してると、同じぐらい世代の人とかね、僕の世代ぐらいになっちゃうと結構の人がもうすでに引退モードに入っちゃってるね。
中川 浩孝
まあそうでしょうね。
田中 愼一
でも中でもまだ頑張るよぞってやつも増えていて、高齢化社会の一つの現象でしょうね。
だからはっきりいうと70代でももっと頑張らなきゃいけないっていう時代がもう来ちゃってるから、80代とかもしかしたら。
だからそうなったときに、多くの人は結構、俺の最後のステージって自分を勇気づけてる言葉っていうのはよく聞くんですね。
でも今日ね、ちょっとそれが引っかかっちゃって。今まで引っかからなかったんだけど、それはいいね、頑張ってね、最後のステージ頑張ってよっていつも言ってたんだけど。
今日ちょっと引っかかった原因はよくわかんないんですけど、いや待てよ、最後のステージってなんかおかしいなって思い始めて。
心の中を内観してみたところですね、最後っていう言葉がダメなんですよ。
最後っていうことは今までのステージと区別してるんですね。
過去のステージとの比較
田中 愼一
区別してて、そこがなんか違和感があるなと思って、入り込んでったら自分の中に、自分との対話がやっとかなきゃいけないって日頃から言ってるんで。
入ってったら、自分の過去のステージっていくつかあるわけですね。
例えば27年もやってるわけですよ、このFHのフラッシュマンヒラードはね。
27年もずっとトップやってきたっていうところっていうのが、そのステージと最後のステージっていうのは完全に区別しちゃってるわけですね。
もっと言うのは、その前のステージもあるわけですよ。
それぞれとね、自分が今言った最後のステージっていうのは比較しちゃうんですね。
比較っていう言い方と、もっと言うのは相対的に捉えてしまうわけです。
そうするとね、最後のステージというものが今までのステージの影響を受けちゃうんですよ。
今までのステージと比較しちゃうわけ。
そうするとね、ほぼ最後のステージって言ってる人達っていうのは、どっちかと言うとピークの人じゃないわけですよ。
そうすると、そこに一つの落とし穴があって、最後のステージって言っちゃうと、
俺が前線のときはこれできないよな、今はとかね。
いやま、かつてはこれやってたんだよなとかな。
なんかこれはこうでってね。
変に今までやってきたピークの再来をね、
そういうような心の動きと比較しちゃうってことは全部そうなんですよ。
比較ってのは、今がいいか、昔が良かったか、今が悪いか、昔が悪かったのか、これが全部比較じゃないですか。
そうするとね、ダメなんだよな。なんて言ったらいいのかな。
純粋に新しいステージを考えられなくなる。
今までのステージは全部忘れなきゃいけない。比較しちゃいけない。
新たなステージの創造
田中 愼一
実際、今までのステージを見ていくとですね、間違いなく過去に引きずられてないんですよ。
絶えず次のステージ、次のステージということで、最後のステージとかね、初めてのステージとかね、
一切関係なく、新たなステージは今までも同じだし、過去もそうだったし、
とにかく全て新しいステージで、新しいステージの一番基本はゼロなんですよ。
だからゼロになりきれない僕がいるなっていうのがね、
だって今日朝気がついた。
ステージか、最後のステージ。
いろいろな人が最後のステージ、最後のお勤めとか言ってね、
みんな言うんだけど、なんかちょっとね、そういうふうに考えるんじゃなくて、
今までのステージは忘れると。
ゼロになって自分が何を今やりたいのかっていうのを見極めないと、
自分の過去の延長線上の、何ていうのかな、垢がね、垢っていうかね、
こう来ちゃってですね、新たなステージっていうものを発想する邪魔になるんですよね。
高木 恵子
なるほど。
中川 浩孝
でも多くの人はやっぱり今までの経験であるとか、今までのそういうなんていうんですか、
自分の経験、成功、経験。
田中 愼一
経験はいいんですけどね、経験とかノウハウとか気づきとか、そういうのはもちろん必要なんですけど、
それ以外の不純物っていうのが、今やってることと、かつてやっていたことの差異が、
差異ってことは比較するってことだから。
中川 浩孝
それは確かにありますね。
それがね、それをやっぱりしてる人はね、老害だって言われちゃうんですよ、やっぱり。
いやでも本当に、もう私もやっぱりもうこの年になってきたんで、一緒に働く人がやっぱりね、全然20代とかもう30代、20代みたいな人が多くなってきてる中で、
なんか今までの自分のその経験を、成功体験もそうかもしれませんし、経験をそのまま言うのは、あまり良くないなって本当に最近は思っていて、
そのエッセンスとして捉えることはもちろんあるんですけど、自分の時はこうだったっていうのを言っても全く意味をなさないです。
やっぱり20年でマーケットは大きく変わってるし、マーケティングの手法なんて本当に大きく変わっちゃってるので、
なんかあの時はこうだったっていうのを軽々しく言うのは、本当に良くないなと思って、本当それは老害だなと思って、自分では絶対そういうことはしないようにっていうのは気をつけてるんですよ。
田中 愼一
でもね、まさにそうだと思う。そういうなんていうのかな、いわゆる過去と比較しちゃうんだよね。
中川 浩孝
はい、そうですね。
田中 愼一
過去と比較して今はっていうようなね、あれはやっぱりまさに老害っていうか、まさにそうだと思う。
やっぱり人間って年取っていくと、良いものも蓄積するけど悪いものも蓄積してくる。
中川 浩孝
そうですよね。
田中 愼一
だからよく僕なんかトレーニングのときに、リーダーシップコミュニケーショントレーニングのときに、自分をゼロにしろっていうね。
やっぱり相手を知るってのはコミュニケーションの基本だから、それを邪魔する自分っていうものをゼロにしないとっていうのはよくあるんだけど、
だから逆に日頃から僕がそう言ってるってことは、新たなステージっていうのは新たなステージでいいんであって、
最後という形容詞をつけるなって話ですよね。
中川 浩孝
確かに。最後っていうのは順番があるっていうか、今までの歴史があるってことですもんね。
田中 愼一
必ずその歴史に沿った形でね、新しいのを設計しやすいじゃないですか。
自分が今までやってきたステージに基づいて、なんか新しいステージ、次のステージは、なんて変なね、次のっていうのも僕嫌いなんだけども。
所詮人間死にきるまでは、新たなステージをどんどん作り続けるって話だから、過去にとらわれちゃダメなんですよね。
高木 恵子
なるほど。
最後のステージの興味深さ
田中 愼一
そこあたりがね、今日気になりましたね。一つの、先ほどのけいこさんが言った気づきの一つになってます。
なんでそういう気づきが降りてきたのかよくわかんないんだけども。
歩いて桜の花を見ながら、歩いてたらそういうのが降りてきたっていうのが、今日の経験でございます。
高木 恵子
なるほど。
中川 浩孝
そういう人たちっていうのは、でも最後のお勤めが終わった後はどういう、それこそ最後のステージの次はどうするつもりなんですかね。すごい興味深いですけどね、逆に。
田中 愼一
わかんないけど、結構知ってる話で言うとゴルフやってたり、週何回やってんだっていう人もいるし、
わかんないけどやっぱりね、対話が少なくなってくるんですよ、会社に行かなくても。
だからどれだけその仕事上の付き合い以外の付き合いも持ってるかどうかっていうときも一緒で。
中川 浩孝
本当に重要ですよね。
田中 愼一
見てると、前会社にいたわけですけど、そのときの同期っていうのがいるわけで、
LINEでみんな繋がっちゃってるんですよね。
だからみんなの動きっていうのはそれで全部見えるんですよ。
僕はほとんどジョインしてないけど、パッと見てると、まずゴルフでしょ。
それから会社、いた会社で起こってる話とか、あと健康情報すごい。
あと実際入院したら入院した話をしてる。
それから、僕してないよ、すみません、僕はこの前入院しましたけどしてませんからね、誤解を解くためにも。
だから結構ね、そういうことですね。
でもみんなそれぞれ何か思ってるんだと思うんですけどね。
ただそれは表現には出てこないよね。
中川 浩孝
LINEだとそういう話はしづらいですよね。
田中 愼一
でもパッと見てる。だからみんなどうしてるのかなっていうのはありますよね。
どう見たって世の中の流れは現役70代っていう世界に突入していきそうだし、
下手すと80代もね、今元気な人多いから。
あと、なんつっても労働力不足っていうのは間違いなかったよね、日本って。
これ考えてたらやっぱりみんな仕事するんでしょうね。
仕事をするしないってわけじゃいけないんだろうと思いますけど、
なんか新たなステージを作っていくっていうのが重要になってきたなっていう。
過去に呪縛されない。
中川 浩孝
確かにそうですね。
でもね、そのためには採用する側もね、もうちょっと柔軟になってほしいんですよね。
やっぱり私それこそもっとずっと前の話ですよ。
もう30代、それこそもう20年近く前に一回会社をレイオフされたことがあって、
その後ちょっと何しようかなと思って考えてる時にパン屋さんの仕事があったんですよ。
田中 愼一
似合ってる。
中川 浩孝
私、昔からパン屋さんやりたいなとずっと思っていて実は
高木 恵子
素敵。
中川 浩孝
それはパン屋さんつってもパン屋のマーケティングの仕事なんですけど、
でもマーケティングはもちろん経験がずっとあるからパン屋もやりたいし、
パン屋のマーケティングってどんな感じだろうと思って、すごく興味があって、
すごくこう、まあそれで応募したんですけど、
やっぱり今までの経験が全く違うのでって言って断りされちゃったんですよね。
でもこの時代って、いろんな全然違う見方とか違う視点の人が入ってきた方が絶対面白いと思うんですよねって、
私が言うのも取られなかったであれですけど。
田中 愼一
過去の振り返るなって今言ったばっかりなんだけど、
FHジャパンを作るときって、初めの5年ぐらいは、いわゆるPRを知らない人たちがほとんど入ってきて、
今、ヒロちゃんが言ったように新しい視点をどんどん入れてくれるんですよね。
だから今までにない新しいサービスをどんどん作っていって、一挙に成長路線に持っていったっていうのはやっぱり。
やっぱり今こそもっとそれが求められていて。
できない人間の方が価値があるんですよ。ある意味ね。
基本的に実務的な部分はできてなきゃいけないけども、間違いないと思いますね。
コミュニケーションってもっとそういうのが必要で、何故かというとコミュニケーションって全ての人間が毎日やってることなんですよね。
中川 浩孝
ほんとそうですよね。
田中 愼一
人間の社会を成り立たせてる根本中の根本で。
だから、全ての人間の経験が役に立つんですよ。
さっきの空海のじゃないけど、全ての人間に意味がある。
ってことは、全ての人間に参画してもらえば素晴らしいものが出来上がるっていう世界なんで、
絶対ね、やっぱりフレキシビリティが必要ですよね、採用には。
中川 浩孝
ですよね。
田中 愼一
それは間違いないな。