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こんにちは、つねぞうです。
デザイン・リビューFM第111回目。
このデザイン・リビューFMは、世の中の様々なもの、主に工業製品について、私の主観で勝手にデザイン・リビューをしていこうという番組です。
機械の設計と劣化
今日はですね、1年後の姿を想像するということで、お話ししていきたいと思うんですけども、
あなたが設計した機械の1年後、2年後、3年後、想像したことあるでしょうか?
機械はですね、使われ始めると、ディスプレイに映った3Dモデルのような、組み立て直後の綺麗な姿でずっと使われ続けるということはありませんね。
必ず汚れていきます。
その点を理解した上で、設計をしていく必要があります。
ちょっと例を出していきますね。
工作機械を例に説明していきましょう。
工作機械、金属を加工して部品を作る機械ですけれども、
工作機械は工具を回転させる主軸、もしくは加工する金属、ワークですね。
ワークを移動させるためのテーブル、それらを動かす必要がありますので、動作する部分がありますね。
その動作する部分というのは、例えば直動ガイドというものだったり、
周動面というもので案内されていて、実際に動かすのはボールネジというものが使われることが多いです。
それらはですね、内部にボールだったり、コロというものが入ってはいるんですけれども、
基本的に金属と金属が触れ合って、擦れ合って動いていますので、
そこを油、グリスと言いますかね、グリスで潤滑してあげる必要があるんですね。
昔の機械であれば、手でハケを使って直接塗ったりするんですけれども、
最近はですね、自動潤滑装置といって、ポンプを使ってそのグリスなり油を送り出して、
その先端の方に分配弁と呼ばれる、ワンショット何ccか微量のですね、決まった量の油を突出する、
そういう分配弁というものがあって、その先に直動ガイドのブロックだったり、
ボールネジのナットだったり、そういうものにつながっていて、
ちょっとずつグリスを供給してあげて、潤滑してあげると。
そうすることで、金属同士が触れ合っているんですけれども、
摩耗しにくいように、滑りやすいようにしてあげるわけですね。
そういったグリスや潤滑油というものを定期的に、機械とかにもよると思うんですけれども、
例えば何時間おきにワンショット出しましょうとか、何分おきにワンショット出しましょうとか、
そういう設定をしているわけです。
なので、定期的にどんどん油が送られていくんですね。
なので、機械を使い始めて何ヶ月か経ってみると、
そういったボールネジだったり、直動ガイドのレールというところの付近には、
あふれてきたグリスだったり、油がぺっとりと付着しているというような状態になります。
特にボールネジなんかは動くときに回転しますので、
切りくずの影響
遠心力でグリスが飛び散るんですよね。
ボールネジの周りにグリスが飛んでいきます。
そういった場合、何が起きるかというと、
例えばボールネジのグリスが飛び散った先に、何か別のものがあるとしますね。
よくあるのがリニアスケールといって、ボールネジで機械を動かしたときに、
その機械が実際どの位置にあるかを測定するための定規みたいな装置があって、
リニアスケールと言うんですけれども、
リニアスケールの読み取り部にグリスが付いてしまうと、
正しい位置を測れなくなりますので、
そこでアラームなどが起きて機械が止まってしまう、そんなリスクがあります。
そういった場合、どういう対策をするかというと、
飛び散ったグリスがリニアスケールに直接付着しないように、
ガードするような板金のカバーを追加したりするという対策をするんですね。
そういった対策も、始めからグリスが飛び散るということを想像して、
あらかじめ設計に盛り込んでおければいいんですけれども、
一回機械を作ってからそういう問題が発覚して、
そこからカバーを追加しようと思っても、
そもそもカバーを置くスペースがなかったり、
カバーを止めるための穴もないという状況になってしまうと思うので、
そういった可能性というものは、あらかじめ考えておく必要がありますね。
機械を使い始めて1年後、2年後、もっと早いですかね、
何ヶ月後かにどういった状態になっているか、
そういうことを考えておくことで、余計なトラブルを起こさない、
そういった機械を設計することができます。
今、グリスの話をしましたけれども、
加工室内、実際にワークを加工する加工室内でも、
使い始める前、できたてホヤホヤの機械は、
本当に加工室内もきれいなんですけれども、
それが数ヶ月、1年、何年か使い続けた後の機械を見ると、
本当に、ちゃんと毎日掃除とかしていると思うんですけれども、
結構汚れてきていますよね。
壁はクーラントでベトベトになっていますし、
オペレータードアのレールだったり、ATCシャッターのレール部分とか、
いろんなところに細かい切りくずがたまっているような状態になりますね。
例えばオペレータードア、よく人が開ける場所というところは、
当然その切りくずというものも付きやすいですので、
オペレータードアのレール部分に、もし切りくずがたまってしまったらどうなるか、
という想像をしておかないと、
例えばそのたまった切りくずが下に抜け落ちないような構造になっていると、
どんどんどんどん切りくずがたまってしまって、
いつかドアが閉まらないよという状況になってしまいます。
なのでそこも想像力を働かせる必要があって、
切りくずがもしここにどんどんたまっていったらドアが閉まらなくなっちゃうな、
じゃあちゃんとここに入ってしまった切りくずが下に落ちるように、
加工室内に戻るような構造にしておこうとか、
そういう想像を働かせてドアが閉まらなくなるという、
リスクを軽減させるような設計をあらかじめしておく必要があります。
クーラントタンクの汚れ
これがクーラントタンクですよね。
クーラントタンクというのも、加工するときにワークを冷やすとか、
工具を潤滑させるための切削油というものを機械に送ってあげるタンクなんですけども、
そこはもともときれいな油が入っているんですね。
きれいな油が入っているんですけども、
どんどんどんどん使っていくうちに、
細かい切りくずの粉みたいなものがクーラントに混ざったり、
先ほどちょっと話したようなボルンジだったり直導ガイドを潤滑していたグリスとか油というものが、
どんどん溜まっていくうちに、
加工室内に落ちてきて、
それがクーラントに混ざるとか、
そういう状況も起きてきて、
だんだんだんだんクーラントタンクの中の切削油、
クーラントが汚れていくんですね。
汚れていった時にどういうことが起きるかというと、
スラッチと呼んだりするんですけども、
細かい切りくずの粉とグリスなどの油分が混ざってしまって、
ベトベトのヘドロみたいな感じになって、
クーラントタンクの中に堆積してしまうと。
そういうスラッチがたんたん溜まっていくと、
クーラントを送るポンプの吸い込み口を塞いでしまったりとか、
クーラントをポンプから送るときにラインフィルターといって、
機械設計におけるリスク評価
ゴミを取るためのフィルターがあって、
フィルターを通してから機械の主軸だったり、
ノズルに送るんですけども、
そのラインフィルターが詰まりやすくなってしまうとか、
最悪なのは、タンクに溜まったスラッチとタンクの金属の間で、
電気的な化学反応が起きて、タンクに穴が開くとか、
いろんなトラブルが起きてしまうんですね。
そういうところも想像して、
クーラントタンクの中にスラッチが溜まらないように、
常に流れが発生するような風にしましょうとか、
そういう対策が必要になります。
本当にあげればキリがないんですけども、
こういういろいろな機械が使われ始めてから、
どんどん汚れていく、汚くなっていく、
そういう機械が汚れたときに、
何が起きてしまうのか、
どんなトラブルが発生する可能性があるのか、
ということをあらかじめ考えて、
対策しておく必要があるんです。
もちろん工作機械というものは、
何十年も作り続けていますので、
そういうノウハウ的なところは各社持っています。
なので、あらかじめ今までの機械の構造だったり、
設計をちゃんと見ていれば、
ちゃんと確認していれば、
そういうトラブルはあらかじめ防げるような設計にできると思います。
ただ難しいのは新しい構造ですね。
今までやったことがないような構造だったり、
今まで使ったことがないようなユニットを採用するとき、
そういった場合はノウハウがない状況ですので、
使い続けたときにどんなトラブルが起きるのかというのは、
本当によく考えてですね、
よく想像を働かせて対策を考えておく必要があります。
ちょっと違うかもしれないんですけども、
こういう設計上起こりうる不具合の可能性だったり、
故障する、壊れてしまう可能性というのをあらかじめ洗い出しておいて、
それが機械が停止するとか、
漏災が発生するというリスクにつながるものであれば、
そのリスクというものを評価して、
それが許容できないリスク、
許されないリスクであるのであれば、
事前に対策を考えておくというのが、
FMEAと呼ばれる故障モード影響解析と呼ばれる手法ですね。
フェーラーモードアンドエフェクトアナライシスと言ったりしますけども、
そういったものをあらかじめ手法を使って、
不具合だったり故障するリスクというものを考えておくと。
そしてその中でも設計の変化点に着目した手法が、
デザインレビューベースドフェーラーモードでDRBFMと書くんですけども、
さっきのFMEAというのは、機械1台の全ての要素についてやるんですけども、
毎回毎回あまり変わらないものというか、
同じものを使ったり、同じユニットを使ったり、
そうそう変化がないようなユニット設計もありますので、
あまり効率的じゃないんですね、それ全部やっていると。
なのでそのDRBFM、デザインレビューベースドフェーラーモードは、
その設計が変わったところだけ、変化したところだけ着目する。
設計の変化したところだったり、使う環境が変化したところ。
例えば、極端なことで言うと地球上で使っていた機械を火星の上で使う。
そういう変化点ですね。そういう変化点に着目してリスクを洗い出しましょうと。
効率的にやりましょうというのがDRBFM、デザインレビューベースドオンフェーラーモードという手法ですね。
トヨタが開発したらしいんですけども、そういう手法もあります。
そういった手法があるよというのを念頭に置きながら設計を進めていくと。
1年後の機械の姿
いろいろこういう書き方、こういうフォーマットを使ってやるといいよとか、
そういう本もいくつかありますので、そういったものを参考にしてみるのも良いかなと思います。
ということで、今日はですね、あなたが設計した機械の1年後の姿を想像してみましょう。
というような話をしてみました。
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