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2025-11-04 07:33

医療法人の経営状況が深刻化:令和6年度は病院の6割が医業赤字に

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令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会で、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)に基づく最新の経営状況が報告されました(資料2-1:令和7年7月末時点、資料2-2:令和7年8月末時点速報版)。医療法人の経営悪化は医療提供体制の持続可能性に直結する重要課題です。本報告では、最新データから明らかになった医療法人の深刻な経営実態を分析します。

令和6年度決算では、医療法人の経営状況が全施設種別で悪化しました。病院の医業赤字割合は59.7%に達し、約6割の病院が本業で赤字を計上しています。無床診療所の医業赤字割合は40.8%に上昇し、令和5年度の32.1%から8.7ポイント悪化しました。有床診療所も医業赤字割合が50.6%となり、半数以上が赤字です。経常収支でも病院の赤字割合が49.4%に達し、経常利益率は病院の中央値が0.0%まで低下しました。病院類型別では精神科病院の医業赤字割合が65.9%と最も深刻です。

医業収支の悪化が顕著:病院・診療所の赤字割合が軒並み上昇

令和6年度決算における医業収支は、全施設種別で赤字割合が上昇しました。医業収支は医療機関の本業である診療活動から得られる収益と費用の差を示す指標です。

病院の医業赤字割合は令和5年度の55.4%から令和6年度には59.7%へと4.3ポイント悪化しました。この数値は、医療法人立病院の約6割が診療活動だけでは収支を維持できない状況を示しています。病院の医業利益額は中央値で▲13,724千円となり、赤字幅が拡大しました。

無床診療所の経営悪化はさらに深刻です。無床診療所の医業赤字割合は令和5年度の32.1%から令和6年度には40.8%へと8.7ポイント上昇しました。令和5年度時点では約3分の2の無床診療所が医業黒字を維持していましたが、令和6年度には黒字施設が6割を下回る事態となりました。無床診療所の医業利益額は中央値で2,713千円に減少し、令和5年度の5,249千円から半減しています。

有床診療所も経営環境が厳しくなっています。有床診療所の医業赤字割合は令和5年度の49.9%から令和6年度には50.6%へと0.7ポイント上昇し、半数を超えました。有床診療所は入院機能と外来機能を併せ持つため、両方の収支悪化の影響を受けやすい構造にあります。

病院類型別分析:精神科病院の経営が最も厳しい状況に

病院を一般病院、療養型病院、精神科病院の3類型に分けて分析すると、経営状況に差異が見られます。病院類型の定義は、療養病床比率60%未満を一般病院、60%以上を療養型病院、精神病床比率100%を精神科病院としています。

精神科病院の経営悪化が最も顕著です。精神科病院の医業赤字割合は令和5年度の55.8%から令和6年度には65.9%へと10.1ポイント悪化しました。精神科病院の約3分の2が医業赤字を計上している計算になります。精神科病院の医業利益額は中央値で▲28,375千円となり、3類型の中で最も大きな赤字幅です。

一般病院も経営環境が厳しくなっています。一般病院の医業赤字割合は令和5年度の58.2%から令和6年度には60.6%へと2.4ポイント悪化しました。一般病院は急性期医療を中心に担っており、診療報酬の影響を受けやすい特性があります。一般病院の医業赤字割合は3類型の中で2番目に高い水準です。

療養型病院の医業赤字割合は令和5年度の49.6%から令和6年度には53.7%へと4.1ポイント上昇しました。療養型病院は3類型の中では相対的に赤字割合が低いものの、それでも半数以上が医業赤字を計上しています。療養型病院は長期入院患者を中心に診療しており、診療報酬の安定性が比較的高い特性がありますが、人件費や物価上昇の影響は避けられません。

経常収支も全面的に悪化:経常利益率の大幅低下が示す経営圧迫

経常収支は医業収支に医業外収益と医業外費用を加えた総合的な経営指標です。経常収支の悪化は、医療機関が補助金などの医業外収益でも赤字をカバーできない状況を示します。

病院の経常赤字割合は令和5年度の41.5%から令和6年度には49.4%へと7.9ポイント悪化しました。病院の約半数が経常ベースでも赤字を計上しています。病院の経常赤字割合が5割に迫る水準は、医療提供体制の持続可能性への警鐘です。

無床診療所の経常赤字割合は令和5年度の25.4%から令和6年度には34.4%へと9.0ポイント上昇しました。無床診療所は医業外収益が相対的に少ないため、医業収支の悪化が経常収支に直結しやすい構造です。無床診療所の約3分の1が経常赤字を計上する事態は、地域医療の最前線を担う診療所の経営基盤の脆弱化を示しています。

有床診療所の経常赤字割合は令和5年度の38.9%から令和6年度には40.8%へと1.9ポイント上昇しました。有床診療所は無床診療所より経常赤字割合が高く、入院機能を維持するコストの重さが経営を圧迫しています。

経常利益率の推移は経営悪化の深刻さを端的に示します。令和5年度から令和6年度にかけて二期連続で決算を提出した医療法人のデータ(資料2-1、令和7年7月末時点)によると、病院の経常利益率は平均値が2.0%から0.3%へ、中央値が1.7%から0.0%へと大幅に低下しました。病院の経常利益率の中央値が0.0%という数値は、半数の病院が経常収支でも利益を出せていないことを意味します。無床診療所の経常利益率も平均値が9.6%から5.7%へ、中央値が6.8%から2.9%へと大幅に低下しました。有床診療所の経常利益率は平均値が5.6%から4.2%へ、中央値が2.8%から1.3%へと低下しました。

医療法人経営悪化の要因と今後の課題

医療法人の経営悪化には複合的な要因が作用しています。人件費の上昇、物価高騰、光熱費の増加などのコスト増が医療機関を直撃しています。

人件費の上昇圧力が継続しています。医療・介護分野では人材確保が喫緊の課題となっており、賃上げは避けられない状況です。令和7年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025では、医療・介護等の現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が明記されました。人件費は医業費用の大部分を占めるため、賃上げは医療機関の経営に直接影響します。

物価上昇の影響も深刻です。医療材料費、医薬品費、光熱費などが上昇しており、医療機関の費用構造を圧迫しています。診療報酬は公定価格であるため、市場価格の上昇を即座に転嫁できない構造的な問題があります。控除対象外消費税等負担額比率のデータからも、税負担が医療機関の経営を圧迫していることが読み取れます。

診療報酬改定の影響を検証する必要があります。令和6年度診療報酬改定では、医療従事者の賃上げや物価上昇への対応が図られましたが、今回のデータは改定の効果が十分でなかった可能性を示唆しています。経済財政運営と改革の基本方針2025では、令和6年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、令和7年末までに結論を得るよう検討することが明記されました。

医療機関の機能分化と連携の推進が求められます。病床機能の適正化、地域医療構想の推進、医師の適正配置などを通じて、効率的で質の高い医療提供体制を構築する必要があります。個々の医療機関の経営改善努力だけでなく、医療制度全体の最適化が不可欠です。

まとめ:医療提供体制の持続可能性確保に向けた政策対応が急務

医療法人の経営状況は令和6年度決算で全面的に悪化しました。病院の医業赤字割合は59.7%、経常赤字割合は49.4%に達し、約6割の病院が本業で赤字を計上する深刻な事態です。無床診療所の医業赤字割合は40.8%に上昇し、有床診療所も医業赤字割合が50.6%と半数を超えました。病院類型別では精神科病院の医業赤字割合が65.9%と最も厳しい状況です。経常利益率も病院の中央値が0.0%まで低下し、経営環境の厳しさを浮き彫りにしています。

医療提供体制の持続可能性を確保するため、診療報酬の適切な設定、医療機関の経営効率化支援、地域医療構想の着実な推進が求められます。政府は令和6年度診療報酬改定の効果検証を進め、令和7年末までに結論を得る方針です。医療経済学の視点からは、医療の質を維持しながら効率性を高める制度設計が重要であり、エビデンスに基づいた政策立案が期待されます。



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サマリー

日本の医療機関、特に病院や診療所の経営状況が深刻です。令和6年度のデータによれば、病院の約6割が医業赤字に直面しており、医療利益の中央値も大幅に悪化しています。人件費や物価の上昇が経営を圧迫し、サービスの質維持に影響を及ぼす懸念があります。

病院の経営危機
こんにちは。今回はですね、日本の医療機関、特に病院とか診療所の経営がかなり厳しさを増しているという、そういう最新データについて掘り下げていきます。
社会保険審議会に出された令和6年度の決算報告。令和7年夏時点の速報値になるんですが、ここからその実態を見ていきましょう。
これはあなたが受ける医療の将来にも関わる、ちょっと見過ごせない話だと思います。
そうですね。この速報データが示している現実というのは、かなり深刻ですよね。病院もそれから診療所も収益性が全体的に低下している傾向が鮮明になっています。
なぜこういう状況になっているのか、その数字の裏側を探る必要がありそうですね。
まず病院なんですが、このデータかなり衝撃的じゃないですか。本業の、つまり日々の診療行為から得られる収益、医療収支だけで見ると赤字の病院がもう6割近く。
正確には59.7%に達していると、令和5年度からさらに悪化しているんですね。
その通りです。前の年の55.4%から4.3ポイント上昇しました。
4.3ポイントも。
これは多くの病院で、その診療収入だけでは人件費とか薬剤費、設備投資といったコストをカバーしきれていない、そういう証拠と言えます。
なるほど。
しかもですね、医療利益額の中央値を見るとマイナス1372万円ですから。
うわ、中央値で赤字が1000万超えですか。
赤字の程度も深まっていると言えますね。
病院がこれだけ厳しいとなると、地域のクリニック、つまり診療所の状況も気になりますよね。
これも同じような傾向なんでしょうか。
だんだん言いながら診療所も例外ではないんですね。
特に入院ベッドのない、いわゆる無償診療所ですね。
はいはい。
8.8%へと8.7ポイントも急上昇しています。
8.7ポイント上昇は大きいですね。
かなり大きいですね。
前年場じゃ約3分の2が黒字だったのが、一気に6割を切ったみたいな。
そうなんです。履歴学の中央値もですね、前の年の約525万円から、今回は約271万円へと半減に近い落ち込みです。
診療所の苦境
半減ですか。
はい。あとベッドを持つ有償診療所も、医療赤字の割合は50.6%と、これも半数を超えています。
地域医療の担い手である診療所も、かなり苦しい運営を強いられている、そういう状況が伺えますね。
病院の種類別で見ると、特に厳しい分野というのはあるんでしょうか。
データ上はですね、最も厳しいのは精神科病院ですね。
精神科ですか。
はい。医療赤字の割合が、なんと65.9%に達しています。
65.6割超えどころじゃないですね。
ええ。前年度から10.1ポイントも悪化しておりまして、約3分の2が本業赤字という、そういう状況です。
3分の2が赤字。それはかなり深刻ですね。
利益額も他より厳しいんでしたか。
そうなんです。医療利益の中央値が-2837万円と。
うわー。
ええ。一般病院、こちらの赤字割合は60.6%なんですが、それとか療養型病院、これは53.7%ですね。
こういった他のタイプの病院と比べても、赤字幅が際立っています。
なるほど。
もちろん、他のタイプの病院ものきなみ経営は悪化していますから、全体として厳しい状況にあることには変わりないんですが。
本業の医療収支だけじゃなくて、例えば補助金とか、他の収入も含めた最終的な利益、つまり経常収支で見た場合はどうなんですか。
それでもやっぱり状況は良くないんでしょうか。
ええ。そこがまた厳しい点なんですけれども、経常収支で見ても、病院全体の赤字割合は49.4%と。
ほぼ半数。
はい。前年度から7.9ポイント上昇して、ほぼ半数に達しています。補助金などがあっても、最終的に赤字の病院が半分近くあるというわけですね。
地域医療の未来
そして特に注目すべきは、この経常利益率の中央値ですよね。
そうなんです。
これが令和5年度は1.7%だったのが、令和6年度には0.0%。
0.0%になったと。
そうなんですよ。0.0%。
ゼロですか。
ええ。これはつまり中央値、順位がちょうど真ん中の病院の利益率がゼロということです。
はい。
半数の病院が補助金なんかを含めた事業全体でも全く利益を出せていないか、あるいは赤字である、そういうことを示唆しています。
うーん、それはもうがけっぷちというか。
まさにそう言える状況ですね。無償診療所とか有償診療所の経常利益率もかなり大幅に低下してますし。
ええ。無償診療所が中央値3.8%から2.0%へ、有償診療所も2.2%から0.4%へと低下しています。
一体どうしてここまで経営が圧迫されちゃってるんでしょうか。
やはり大きな要因として指摘されているのは、人件費の上昇圧力ですね。
ああ、人件費。
それから医療材料費であるとか、高熱費であるとか、そういった物価の高騰です。
なるほど。
これに対して医療サービスの公定価格である診療報酬、こののみがコスト増に十分追いついていないんじゃないか、そういう見方があります。
うーん、構造的な問題がありそうですね。
ええ。ですから令和6年度に行われた診療報酬改定がこの状況にどう影響するのか、今後の効果検証が非常に重要になってきますね。
なるほど。コストはどんどん上がるけれども、収入はなかなかそれに追いつかないと。
この状況って、私たち利用者にとっては具体的にどういう意味を持つんでしょうかね。
そうですね。やはり医療機関の経営がこれだけ厳しくなってくると、サービスの質を維持するための、例えば新しい機器へ投資とか、そういうのが難しくなったり、
はい。
あるいは、場合によっては不採算部門を縮小するとか、最悪の場合、閉院とか廃業につながる可能性も、これは否定できないわけです。
うーん、閉院とか廃業もですか。
ええ。そうなると、あなたが地域で必要なときに適切な医療を受けにくくなる、つまり医療へのアクセスが悪化する、そういった懸念がありますね。
医療提供体制そのものの、持続可能性が問われている、そういうことなんですね。
まさにその通りです。
個々の病院とか診療所の努力だけではもう限界があると。
そうですね。診療方針の適正な水準をどう考えるかという問題もありますし、それから地域全体で医療機能をどう分担して連携していくか、いわゆる地域医療構想ですね。
これをどう進めるかとか、そういった制度全体で支える仕組みを考えていく必要があります。
政府も令和7年末までには、今回の改定の影響を踏まえた結論を出すという方針のようです。
なるほど。では最後に、あなたが考えるヒントとして一つ。
もしこうした厳しい経営状況がこの先も続くとすればですね、あなたの身近な病院やクリニックはどのような変化を運ばれる可能性があるでしょうか。
うーん。
そして、それが地域の医療全体にどんな影響を与える可能性があると思いますか。
ちょっと想像してみていただければと思います。
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