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2025-12-23 06:02

【令和8年度改定】短期滞在手術・回リハ・ICU・オンライン精神療法の4論点を解説

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中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、令和8年度診療報酬改定に向けた議論が進んでいます。第637回総会では、これまでの審議で委員から出された指摘事項への回答として、短期滞在手術の地域差、回復期リハビリテーション病棟の重症患者割合、ICU・HCUの重症度基準、オンライン精神療法の4項目について新たなデータが示されました。

今回示されたデータの要点は次のとおりです。短期滞在手術については、二次医療圏の類型別に外来実施率の差が明らかになりました。回復期リハビリテーション病棟では、FIM20点以下の患者を重症患者から除外した場合のシミュレーション結果が提示されました。ICU・HCUでは、動脈圧測定の位置づけを変更した複数パターンのシミュレーションが行われました。オンライン精神療法では、初診での実施を可能とする新たな指針案と、その背景となる行政のアウトリーチ支援の実態が示されました。

短期滞在手術の地域類型別外来実施率

短期滞在手術については、11月7日の総会で「入院及び外来での手術状況を大都市型、地方都市型、過疎地域型等の類型に応じて精査すべき」との指摘がありました。この指摘を受けて、二次医療圏の類型別に外来実施率のデータが示されました。

二次医療圏は3つの類型に分類されています。大都市型は人口100万人以上または人口密度2,000人/km²以上の医療圏です。地方都市型は人口20万人以上または人口密度200人/km²以上の医療圏です。人口少数地域型はこれら以外の医療圏を指します。

水晶体再建術(眼内レンズ挿入・その他)の外来実施率は、地域類型による大きな差がみられませんでした。大都市型では外来が約63%、地方都市型では約64%、人口少数地域型では約61%でした。いずれの類型でも入院と外来がほぼ半々から6割程度が外来という状況です。

内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(2cm未満)では、人口少数地域型で外来実施率が低い傾向がみられました。大都市型では外来が約83%、地方都市型では約76%と高い外来実施率を示しています。一方、人口少数地域型では外来が約63%にとどまり、入院での実施割合が他の類型より高くなっています。

回復期リハビリテーション病棟の重症患者割合シミュレーション

回復期リハビリテーション病棟入院料については、11月14日の総会で2つの指摘がありました。ひとつは「重症患者の範囲を見直す場合、入院料ごとに見直し後の重症患者割合のシミュレーションを示すべき」という指摘です。もうひとつは「日常生活機能評価表とFIMでは各項目の比重が異なるため、施設への影響を精査する必要がある」という指摘です。

現行の重症患者の定義は、FIM55点以下または日常生活機能評価票10点以上の患者です。今回のシミュレーションでは、この定義からFIM20点未満の患者を除外した場合の影響が分析されました。FIM20点未満の患者を除外する理由は、医療機関が自らの裁量で適応を判断できる割合を増やすことにあります。

回復期リハビリテーション病棟入院料1・2では、現行基準での重症患者割合40%以上の施設が92.1%でした。FIM20点以下を除外した場合、この割合は85.8%に低下します。分布をみると、重症患者割合40~50%の施設が最も多く、除外後も多くの施設が現行基準を維持できる見込みです。

回復期リハビリテーション病棟入院料3・4でも同様の傾向がみられました。現行基準を満たす施設は92.1%でした。FIM20点以下を除外した場合、この割合は81.6%となります。入院料1・2と比較すると、基準を下回る施設がやや増加する傾向にあります。

ICU・HCU用重症度、医療・看護必要度の見直しシミュレーション

ICU・HCU用の重症度、医療・看護必要度については、11月26日の総会で重要な指摘がありました。「動脈圧測定のみで現行の該当患者割合基準を満たしている」「動脈圧測定の位置づけを変更した場合の影響についてシミュレーションを行うべき」という指摘です。一方で「集中治療の現場では必要な患者のみを入室させており、患者の安全に影響を及ぼさないよう慎重に検討すべき」との意見も出されました。

現行基準では、動脈圧測定の該当患者割合が平均約84%と非常に高く、この項目だけで基準を満たせる状況にあります。そのため、他の評価項目の意義が乏しいとの問題提起がなされています。

シミュレーションでは3つのパターンが検討されました。パターン1は、現行の評価項目に蘇生術の施行、抗不整脈剤の使用(注射剤)、一時的ペーシングの3項目を追加する案です。この場合、特定集中治療室管理料1・2で8割基準を満たす治療室は99.5%、管理料3~6および救命救急入院料2・4で7割基準を満たす治療室は98.7%となり、現行とほぼ同等の該当率が維持されます。

パターン2は、動脈圧測定とシリンジポンプの管理を2点から1点に変更し、新たに3項目を導入する案です。この場合、基準を8割とすると該当治療室は57.1%に大幅低下します。基準を5.5~6割に引き下げれば90%以上の治療室が該当する見込みです。

パターン3は、動脈圧測定のみを1点に変更し、新たに3項目を導入する案です。パターン2と同様、基準を8割とすると該当治療室は約57%に低下します。基準を5.5~6割程度に調整すれば、90%以上の治療室が該当可能です。

HCU用の必要度についても同様のシミュレーションが行われました。パターン1(新たに2項目を導入)では、現行基準でほぼすべての治療室が該当を維持できます。パターン2(中心静脈圧測定を基準①から除外し、新たに2項目を導入)では、基準①の該当治療室割合がやや低下しますが、基準②はほぼ維持されます。

情報通信機器を用いた精神療法の指針改訂

情報通信機器を用いた精神療法については、12月5日の総会で「オンライン初診精神療法を認めた理由や前回改定の検証結果など、実態の分かるデータを示してほしい」との指摘がありました。この指摘に対し、新たな指針案と議論の経緯が示されました。

令和6年度改定では、情報通信機器を用いた通院精神療法は精神保健指定医による再診に限定されていました。今回、規制改革実施計画(令和6年6月閣議決定)を踏まえ、初診でのオンライン精神療法を可能とする方向で指針の改訂が検討されています。

初診でのオンライン精神療法が検討される背景には、行政によるアウトリーチ支援の増加があります。精神保健福祉センター、保健所、市区町村が実施するひきこもり等への訪問指導件数は増加傾向にあります。これらの支援対象者は医療機関への受診が困難な場合も多く、行政の支援から医療につなげる仕組みが求められています。

新たな指針案では、初診でのオンライン精神療法に厳格な条件が設けられています。対象は行政が対応を行っている未治療者、治療中断者、ひきこもりの者等に限定されます。実施にあたっては、医療機関と行政との連携体制が構築されていること、診察時に患者の側に保健師等がいること、十分な情報収集・情報共有が可能であること、患者自身の希望があることが要件となります。

令和6年度改定の検証調査では、オンライン精神療法を行っていない診療所の理由も明らかになりました。約29%の診療所が「満たすことが困難な要件がある」と回答しています。そのうち約77%が「常時対応型施設である等、地域における精神科医療の提供体制への貢献」の要件を、約64%が「精神保健指定医の公務員としての業務への協力」の要件を困難な要件として挙げています。

まとめ

今回の中医協総会では、これまでの指摘事項に対する具体的なデータとシミュレーション結果が示されました。短期滞在手術では、人口少数地域型における内視鏡的大腸ポリープ切除術の外来実施率が他の類型より低いことが明らかになりました。回復期リハビリテーション病棟では、FIM20点以下を重症患者から除外した場合でも、多くの施設が現行基準を維持できる見通しです。ICU・HCUでは、動脈圧測定の点数を引き下げる場合、該当患者割合の基準も併せて見直す必要があることが示されました。オンライン精神療法では、行政との連携を前提とした初診での実施を可能とする指針案が提示されました。令和8年度診療報酬改定に向けて、これらのデータを踏まえた具体的な制度設計が進められていきます。



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サマリー

令和8年度に向けた日本の医療改定について、短期滞在手術、リハビリ病棟、ICU、オンライン精神療法の4つの論点が詳しく解説されています。これらの議論を通じて、医療の効率化や地域差、アクセスの公平性が浮き彫りになっています。

医療改定の主要論点
さて、2025年ももうすぐ終わりですね。本当にあっという間でしたね。今回は、あなたが共有してくれた資料をちょっと深掘りしたいなと。少し未来の話なんですけど、令和8年、つまり2026年度の日本の医療って、どう変わる可能性があるのかなっていう。
その最前線を見ていく感じですね。この資料の面白いところは、単なる方針じゃなくて、具体的なデータに基づいたシミュレーションがいくつも示されている点なんですよ。
そうなんですよね。制度を変えたら現場はどうなるっていうのがすごく具体的にわかる。今回は、その中から特に気になる4つのテーマ。手術の地域差とリハビリ病棟の評価、それからICUの基準、最後にオンライン精神療法。この4つに絞ってみていきましょう。
一見すると専門的に聞こえますけど、これ、僕たちの医療体験の未来像に直結する話ですからね。
まずは、短期滞在手術の話からいきましょうか。例えば、大腸ポリープの切除とか、比較的簡単な手術ですね。
これ、データを見てちょっと驚いたんですけど、日帰りで済ませるか、入院するかで、住んでいる場所によって全然違うんですね。
まさにその通りで、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術っていう手術だと、大都市では約83%が外来、つまり日帰りなんです。
83%!?
ところが、人口の少ない地域だと、これが約63%まで下がってしまう。
ということは、地方の方が同じ手術でも入院するケースが多いと。
そういうことになります。
なんでそんな差が生まれるんですかね。ベッドに余裕があるからとりあえず入院させるとか、そういう慣習みたいなものですか?
それも一因かもしれませんし、あるいは高齢の方が多くて、術後の経過をより慎重に見たいとか。
ああ、なるほど。
ただ面白いのは、白内障の手術だとこの地域差がほとんどないんですよ。
この違いの背景を考えるのが、医療の効率化とか地域格差を是正する上で大事になってくるわけですね。
非常に重要な論点です。
なるほど。その効率化という視点は、次のリハビリ病棟の話にもつながってきそうですね。
ここでは、重症患者をどれだけ受け入れるかが病院の評価になると。
はい。その重症の定義をもし少し厳しくしたらどうなるの?というシミュレーションが行われたんです。
今の定義というのは?
今はFIMという日常生活の自立度を測る指標が主に使われています。
今回のシミュレーションでは、特に重い状態の患者さんをこの計算からあえて序盤してみたんです。
それで結果はどうだったんですか?現場が大混乱みたいなことには。
いえ、それが興味深いところで、定義を厳しくしても8割から9割以上の施設は現在の基準をクリアできるという見込みなんです。
そうなんですか。
うん。なので、精度を微調整しても現場は十分対応できるだろうと。これはかなりポジティブなデータと言えますね。
でも次のICUの話は、そんな微調整じゃ済まないかなり衝撃的な内容でした。
そうですね。ここが一番テクニカルで考えさせられる部分かもしれません。
たった一つの評価項目のせいで、システム全体がうまく機能していない可能性があるという話で。
ICUとオンライン精神療法の展望
まさにその問題の項目が動脈圧測定。
動脈圧測定。
これが評価項目にあることで、他のもっと重要な指標の意味が薄れちゃってるんですよね。
なるほど。その項目さえクリアすればOKみたいな状況になってる。
そういうことです。この項目の点数を下げてみたらどうなるか。シミュレーションしたところ。
結果がもう劇的すぎるんですよね。
基準を満たすICUの割合が現在の99%以上から。
ほとんど全部ですよね、今だと。
それが一気に約57%まで急落します。
57%。半満近くが基準を満たせなくなるってことですか。
そうなんです。つまり今の基準だと、多くのICUがある意味見せかけの項目で評価をクリアしているという見方もできてしまう。
うわー、これは制度設計の難しさが凝縮されてるような事例ですね。
本当に。
さて、そういう大きな制度の話から、今度はもっと身近な未来の話に移りましょうか。
オンライン診療です。
はい、特に精神科の領域ですね。
これまで最新だけだったのが、初心でも認められる方向で検討されていると。
これはアクセスがすごく改善されそうですよね。
ただしここが重要なポイントなんですが、誰でも気軽にというわけではなさそうなんです。
と言いますと?
対象は、例えば引きこもりの方とか、行政が機関に関わってはいるけれど、なかなか医療につながりにくいっていうケースに限定される見込みです。
なるほど、安易な拡大じゃないんですね。
本当に支援が必要なのに届けられていない人たちへの、いわば最後の手段としてのオンライン診療みたいな。
はい、それに診察の時には患者さんの側に保健師さんが同席することとか、医療機関と行政の連携体制が必須とか、かなり厳しい条件がついています。
安全性に最大限配慮した非常に慎重な一歩ということですね。
そういうことですね。
というわけで、今回は2026年度の医療改定に向けた4つの論点を掘り下げてきました。
手術の地域差からICUの評価基準、そしてオンライン診療の未来まで、いろんな側面が見えました。
どの議論にも、医療の効率化と質の担保、それからアクセスの公平性っていう時に反する目的の間のギリギリのバランス調整があるんですよね。
本当にそうですね。さて、今回の4つの事例を見て、あなたはこれからの医療はコストを抑える効率性と、一人一人に寄り添う丁寧さ、どちらの方向に舵を切ろうとしていると感じましたか?
難しい問いかけですね。
そしてそれがあなた自身の医療体験にどう影響してくるのか、少し考えてみるとまた違った見方ができるかもしれませんね。
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