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2025-10-13 07:07

医療従事者の賃上げ実態と課題:ベースアップ評価料の届出率9割でも残る3つの問題点

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令和7年6月13日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025において、医療現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が求められています。この方針を受けて、医療機関では診療報酬のベースアップ評価料による賃上げが進められていますが、届出手続きの煩雑さが課題となっています。本稿では、入院・外来医療等の調査・評価分科会が取りまとめた賃上げ・処遇改善の実態を明らかにします。

ベースアップ評価料の届出状況は病院で約9割、診療所で約4割となっています。届出していない医療機関の最も多い理由は「届出内容が煩雑なため」でした。令和7年度の賃上げ計画は平均3.40%の引上げとなっていますが、政府目標の4.5%には届いていません。分科会では、届出書類の簡素化や看護職員処遇改善評価料との統合を求める意見が出されています。

ベースアップ評価料の届出状況:病院と診療所で大きな差

ベースアップ評価料の届出率は、医療機関の種別によって大きく異なります。病院では約9割が届出を行っている一方、診療所では約4割にとどまっています。

届出をしていない病院の特徴を見ると、公立病院、医療法人(社会医療法人を除く)、許可病床数100床未満の病院が多くなっています。特に小規模病院では、事務職員の不足により届出書類の作成に係る事務負担が大きいことが指摘されています。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出ている医療機関は、評価料(Ⅰ)届出医療機関のうち約4%でした。

診療科別に見ると、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科において外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定割合が低い傾向にあります。評価料(Ⅱ)について特徴的に併算定されている診療行為は、血液透析に関連したものが多くなっていました。

届出手続きの複雑さ:書類作成が医療機関の負担に

届出をしていない理由として最も多かったのは「届出内容が煩雑なため」でした。この煩雑さは、届出に必要な書類の多さと計算の複雑さに起因しています。

各医療機関は、ベースアップ評価料の算定にあたって複数の書類を作成する必要があります。具体的には、職員給与や診療報酬の算定回数等に基づく届出区分の計算、賃金改善計画書の作成、賃金改善実績報告書の作成などです。賃金改善計画書は新規届出時及び毎年6月に提出が必要であり、賃金改善実績報告書は毎年8月に提出することになっています。

看護職員処遇改善評価料と入院ベースアップ評価料は、それぞれ異なる要件と書類様式を持っています。看護職員処遇改善評価料は令和4年10月に新設され、看護職員の賃金を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げることを目的としています。入院ベースアップ評価料は令和6年6月に新設され、対象職員の令和5年度賃金を2.3%引き上げることを目的としています。この2つの評価料について、分科会では書類作成が非常に煩雑であり、統合することについて検討の余地があるとの意見が出されました。

賃上げの実施状況:目標との乖離と業態による差

ベースアップ評価料による賃上げは一定程度進んでいますが、政府目標との間には乖離があります。

賃金改善計画書において、令和5年度と比較した対象職員の賃上げ計画の平均値は、令和6年度で2.69%、令和7年度で3.40%の引上げとなっています。これは、2年間の累積で見ると一定の賃上げが計画されていることを示していますが、政府が掲げる4.5%という目標には届いていません。ただし、分科会では、この目標は賃上げ促進税制も含めた数値であるため、税制の活用状況も含めて分析する必要があるとの意見が出されました。

40歳未満医師及び事務職員の賃上げについては、初再診料、入院基本料等の引き上げ等により対応することとされています。令和5年度と比較した令和7年度の賃上げ計画の平均値は、40歳未満医師で2.89%、事務職員で3.18%の引上げとなっていました。

歯科技工所における従業員の基本給等総額は、令和6年4月と令和7年4月を比較すると6.1%上昇しており、比較的高い賃上げ率を実現しています。薬局においては、令和6年度に約5割が賃上げを実施しており、薬剤師では20~49店舗の薬局、事務職員では300店舗以上の薬局において賃上げ率が大きい傾向が見られました。

今後の制度改善の方向性:簡素化と統合の議論

分科会では、今後の制度改善に向けた様々な意見が出されました。

第一に、医療人材確保に繋がる賃上げが可能な報酬制度とすべきとの意見がありました。医療従事者の賃上げ率は他産業と比較して少ないため、職責に見合った賃上げが必須であるとの指摘です。

第二に、届出書類の簡素化を求める意見が複数出されました。病床規模の小さい医療機関におけるベースアップ評価料の届出が進んでいない背景として、事務職員が不足している中、届出書類の作成に係る事務負担が大きいことが挙げられています。

第三に、看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料の統合に関する意見がありました。両者の書類作成が非常に煩雑であることから、統合することについて検討の余地があるとの意見です。ただし、様々な影響を勘案して慎重に対応していくことが重要であるとの意見も出されました。さらに、賃上げの原資は入院基本料等の増分から賄われるべきであり、ベースアップ評価料を入院基本料等に統合すべきであるが、難しければ、届出書類の簡素化や対象職種の見直し等を講じるべきとの意見もありました。

まとめ

ベースアップ評価料により医療従事者の賃上げは一定程度進んでいますが、届出手続きの煩雑さが課題となっています。病院では約9割が届出している一方、診療所では約4割にとどまり、小規模医療機関では事務負担が特に大きくなっています。賃上げ計画は令和7年度で平均3.40%ですが、政府目標の4.5%には届いていません。今後は、届出書類の簡素化や看護職員処遇改善評価料との統合など、医療機関の負担を軽減しながら確実な賃上げを実現する制度設計が求められます。



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サマリー

医療従事者の賃上げに関するベースアップ評価料の実態とその課題について議論が行われています。特に、小規模医療機関が抱える手続きの煩雑さや、賃上げの実施状況における業態別の差に焦点が当てられています。

医療機関の賃上げの現状
さて今回は、医療従事者の賃上げ、特にベースアップ評価料でしたっけ。 はい、そうです。この制度に焦点を当てて、その実態を皆さんと一緒に深く見ていきたいと思います。
政府としてはね、賃上げを後押ししたいわけですけども。そうですね。 でもそのための仕組みが現場、特にちょっと小規模なところだと、なんか負担が大きいんじゃないかと。
資料は入院外来医療等の調査、評価分科会のレポートですね。 はい、この制度、色々な職種の賃上げが目的なんですけど、おっしゃる通り手続きの複雑さですかね。
そこが課題として上がってきてますね。 データを見ると、その実態と今後の方向性みたいなものが見えてきます。
これ、皆さんの医療アクセスにも関わる話ですからね。現場の状況っていうのは。 そうですよね。
じゃあ早速ですけど、このベースアップ評価量、実際のところ、医療機関ってどれぐらい届けているものなんですか。
ここがですね、まず面白いところでして、病院は約9割が届け出ていて、これはかなり高い数字です。
9割、ほとんどですね。 ええ、ところが診療所、いわゆるクリニックになると、これががくと下がって約4割。
えっと4割ですか。 ええ、この差はかなり大きいですよね。 9割と4割、それは驚きました。
同じ制度のはずなのに、どうしてそんなに差が出ちゃうんですかね。 特に届け出ていないのってどういうタイプの医療機関が多いんですか。
データを見てみますと、公立病院ですとか、あとは病床数が100床未満の比較的小さな病院。
ああ、やっぱり小規模が。 ええ、そこで届け出ていない割合が高いという傾向が見られますね。
手続きの課題
なるほど、その一番の理由っていうのは何なんでしょう。 これがですね、届け出ないようが煩雑なため、これが一番多く挙げられています。
煩雑、具体的にはどういうところが。 あの、まず届け出の書類そのものですよね。
それから毎年6月に出す賃金改善計画書。 毎年ですか。
ええ、さらに毎年8月には実績報告書を出さないといけない。
うわあ、計画と実績を毎年。 そうなんです、これ想像しただけでも結構な事務作業量ですよね。
それは確かに、人手が限られているような場所だとかなりのプレッシャーになりそうですね。
まさに、特に小規模な施設ですと事務のスタッフさんが足りてないっていうケースも多くてですね、負担感が強いみたいです。
しかも、問題を更にややこしくしているのが、元々あった看護職員処遇改善評価料。
これ令和4年からあるんですが、これと今回の入院ベースアップ評価料。
これは令和6年の6月からですね。これが別々の制度で、要件も書類も違うと。
別物なんですか。
ええ、これがなんか現場の混乱を招いてるんじゃないかっていう声も結構上がってるんですよ。
なるほど。良かれと思って作ったはずの制度が、かえって二重の手間を生んでるかもしれないと。
そういう可能性はありますね。
それで肝心の賃上げ自体は、計画としてはどうなんでしょう。進んでるんですかね。
計画段階の数字ではあるんですが、令和7年度には対象となる職員さんの賃金をですね、
令和5年度と比べて平均で3.40%引き上げるという計画になっています。
3.40%ですか。目標は確か4.5%でしたよね。ちょっとギャップがあるように聞こえますけど。
ああ、そこはですね、少し注意が必要な点ですね。
文化会の資料でも指摘されてるんですが、政府目標の4.5%っていうのは、
賃上げ促進税制っていう、あの税の優遇措置の効果も込みでの数字なんです。
ああ、なるほど。税制込みで。
ええ。なのでこの評価料だけで目標達成かっていう単純な比較は、ちょっと難しいんじゃないかという見方がありますね。
そういうことですか。分かりました。
今後の改善に向けた議論
ちなみに他の職種の方、例えば若手の先生とか事務の方とかどうなんでしょう。
えっとですね、40歳未満のお医者さんですと2.89%。
事務職員の方だと3.18%の引き上げ計画ですね。
これは令和7年度と令和5年度を比べてです。
ふむふむ。
これはまあ、所信料とか入院基本料の引き上げ分なんかで対応するという想定のようです。
なるほど。
ただ、もっと目を引くのは、業態による違いかもしれません。
例えば、歯外寄稿書。
歯外寄稿書。
ええ。令和6年の4月から1年間で、従業員の基本給とかを合わせた総額が6.1%も上がる見込みだそうです。
6.1%?それはかなり高いですね。
ええ、突出してますよね。
あと、薬局でも令和6年度に約半数が賃上げを実施したという報告が上がっています。
へえ。6.1%って、全体平均と比べるとすごい伸びですね。
なんかこう、全体としては賃上げが進んでる感じはするけど、手続きの壁があったり、業態によって結構差があったり、一筋縄では行かない状況っていうのが見えてきましたね。
そうですね。
今後の改善に向けてはどんな議論が出てるんですか?
やはり一番多いのは、届出の書類をもっとシンプルにしてほしいと。
ああ、それはそうでしょうね。
ええ、特に小規模な期間の負担を軽くするべきだっていう声が強いですね。
手続きの簡素化は、現場からすると切実ですよね、きっと。
それから、さっき出た2つの評価量ですね。看護職員処遇改善評価量とベースアップ評価量、これを統合してはどうかという意見も出ています。
ただ、これには色々な影響も考えられるので、慎重に進めるべきだという意見も同時にありますね。
統合もそう簡単ではないと。
ええ、もっと踏み込んだ意見としては、そもそも賃上げの原資っていうのは、入院基本料みたいな基本的な診療報酬で確保すべきじゃないかと。
評価量っていうこういう形じゃなくて、そっちに組み込むべきだという考え方ですね。
まあ、それが難しいなら、せめて書類を簡略化するとか、対象職種を見直すとか、そういうことをすべきだという議論です。
なるほどな。今回の資料を通して、賃上げ自体は進めようとしてるんだけど、そのための手段、特に手続きの面が何かこう意図せずに壁になっちゃってる。
特に小規模な現場にとってはっていう、そういう構図がよくわかりました。
そうですね。制度の目的自体は非常に重要なんですけど、その運用が現場の実態に合わなくて過度な負担になってしまっては、もともともないですからね。
持続可能な形で待遇改善を進めるためには、やっぱりより現場に寄り添った工夫が求められてるってことだと思います。
最後に皆さんに一つ問いかけてみたいと思うんですが、医療従事者の待遇改善っていうこのすごく大切な目標、
これを達成するために制度を作るときに現場の実情に寄り添うっていうのは具体的にどういうことなのかなと。
今回の事例はその理想と現実の難しさみたいなものを私たちに示唆しているのかもしれませんね。
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