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2025-12-13 05:59

【総額1兆368億円】令和7年度補正予算案「医療・介護等支援パッケージ」の全容を解説

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令和7年12月8日に開催された第122回社会保障審議会医療部会において、令和7年度補正予算案が報告されました。本予算案は、物価上昇や人手不足といった医療機関の経営課題に対応し、地域に必要な医療提供体制を確保することを目的としています。

本稿では、医療分野に総額1兆368億円を投じる「医療・介護等支援パッケージ」の概要を解説します。主要な支援策は6つあります。賃上げ・物価上昇対策に5,341億円、病床数適正化に3,490億円、福祉医療機構による優遇融資に804億円、施設整備促進に462億円、生産性向上に200億円、産科・小児科支援に72億円がそれぞれ計上されています。

賃上げ・物価上昇に対する支援(5,341億円)

最大の予算枠である5,341億円は、医療機関・薬局における処遇改善と物価上昇対策に充てられます。この支援は、救急医療を担う医療機能の特性を踏まえつつ、物価を上回る賃上げの実現を目指すものです。

病院に対する基礎的支援は、1床あたり賃金分7.2万円、物価分1.3万円の計8.5万円です。有床診療所は1床あたり賃金分8.4万円、物価分11.1万円が交付されます。医科無床診療所・歯科診療所には1施設あたり賃金分15.0万円、物価分17.0万円の計32.0万円が支給されます。

保険薬局への支援は、1法人あたりの店舗数に応じて傾斜配分されます。5店舗以下は1施設あたり計23.0万円、6〜19店舗は18.0万円、20店舗以上は12.0万円となっています。訪問看護ステーションには1施設あたり22.8万円が交付されます。

救急医療を担う病院には、受入件数に応じた加算があります。救急車受入件数1件以上1,000件未満で500万円、1,000件以上で1,500万円、2,000件以上で3,000万円、3,000件以上で9,000万円、5,000件以上で1.5億円、7,000件以上で2億円の加算です。三次救急病院については、受入件数5,000件未満の場合は一律1億円が加算されます。

手術・分娩実績に基づく加算も設けられています。全身麻酔手術件数または分娩取扱数(分娩取扱数は3を乗じた数で算定)が800件以上の病院には1施設あたり2,000万円、2,000件以上の病院には8,000万円が加算されます。ただし、この加算は救急車受入件数3,000件未満の病院が対象であり、救急加算との併給はできません。

病床数の適正化に対する支援(3,490億円)

二番目に大きな予算枠である3,490億円は、病床数の適正化を進める医療機関への支援に充てられます。この支援は、「病床数適正化緊急支援基金」を新たに創設して実施されます。

支援対象は、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進める医療機関です。交付額は、病院(一般・療養・精神)および有床診療所の病床削減に対して1床あたり約410万円です。休床の場合は1床あたり約205万円となります。

削減目標として約11万床が設定されています。この内訳は、一般病床・療養病床の必要病床数を超える約5.6万床と、精神病床の基準病床数を超える約5.3万床です。令和6年度補正予算では約1.1万床分が措置済みであり、今回の予算で残りの削減を加速します。

福祉医療機構による優遇融資等(804億円)

804億円は、物価高騰の影響を受けた医療機関の資金繰り支援に充てられます。独立行政法人福祉医療機構による無利子・無担保等の優遇融資を実施するための体制整備費用です。

この支援は、福祉医療機構に対する出資金および運営費交付金として措置されます。融資財源は別途財政融資資金から措置されます。地域の基幹的な民間病院に対しては、資本性劣後ローンを提供し、民間金融機関と連携しながら経営改善を図ることも可能です。

施設整備の促進に対する支援(462億円)

462億円は、物価高騰により施設整備が困難となっている医療機関への支援に充てられます。この支援により、地域医療構想の推進と救急・周産期医療体制の確保を図ります。

支援対象は、医療提供体制施設整備交付金、医療施設等施設整備費、地域医療介護総合確保基金の交付対象となる新築・増改築等を行う医療機関です。交付額は「(市場価格-補助事業単価)×国負担分相当」として算出され、㎡数に応じた建築資材高騰分等が補助されます。

生産性向上に対する支援(200億円)

200億円は、業務効率化・職場環境改善に取り組む医療機関への支援に充てられます。医療分野の生産性向上を図り、人材確保・定着につなげることが目的です。

支援対象は、「業務効率化推進委員会(仮称)」を設置し、ICT機器等の導入など業務効率化・職場環境改善に取り組む病院です。総事業費は1病院あたり1億円であり、このうち交付額の上限は8,000万円です。負担割合は国が3分の2、都道府県が3分の1となっています。

生産性向上に資する取組の具体例として、スマートフォンによるカルテ閲覧・情報共有、インカム、インタラクティブ・ホワイト・ボード等の導入が挙げられています。これらにより、DX化による情報伝達の効率化を実現します。

産科・小児科への支援(72億円)

72億円は、出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科への支援に充てられます。地域でこどもを安心して生み育てることができる周産期医療・小児医療体制の確保が目的です。

支援は4つの事業で構成されています。分娩取扱施設支援事業は、分娩数が減少している施設に対して1施設あたり580万円〜1,740万円を補助します。地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)は、集約化が困難な地域の施設に最大約1,125万円を補助します。地域連携周産期支援事業(産科施設)は、妊婦健診等を行い近隣施設と連携する施設の整備・設備費用を補助します。小児医療施設支援事業は、地域の小児医療拠点病院に対して小児科部門の病床1床あたり約21万円〜約105万円を補助します。

まとめ

令和7年度補正予算案における医療・介護等支援パッケージは、物価上昇と人材確保という医療機関が直面する二大課題に対応するものです。総額1兆368億円の予算は、賃上げ・物価対策、病床適正化、資金繰り支援、施設整備、生産性向上、産科・小児科支援の6分野に配分されます。予算成立後は速やかに実施される予定であり、各医療機関は自院の状況に応じた支援策の活用を検討することが求められます。



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サマリー

令和7年度補正予算案には、医療・介護等支援パッケージとして総額1兆3680億円が投じられ、医療体制の改革に向けた取り組みが示されています。特に救急医療の強化や病床の減少を通じて、未来の医療の形を目指す戦略的な予算案です。

医療・介護等支援パッケージの概要
さて今回は、みなさんが共有してくださった資料、令和7年度の補正予算案ですね。
総額がなんと1兆3680億円という、医療・介護等支援パッケージ。
これ、1兆円って言われても、ちょっとなかなかイメージが。 そうですね。
例えば、新しい国立競技場の建設費の、だいたい6倍くらいですかね。 6倍!?
それだけの拒否を、今回は医療に一点集中させるわけですね。 まさに国家的なプロジェクトと言える規模感です。
ですよね。 なんか一見すると、ぶっかだかに苦しむ現場へのばら撒きみたいにも、まあ見えなくもないんですけど。
でもこの数字をよく見ていくと、これって単なる緊急支援じゃないなと。
日本の医療の形を根本から変えようとしている、ある種の外科手術みたいな予算案なんじゃないかと。
外科手術、面白い見方ですね。 そのメスの矛先がどこに向かっているのか、一緒に見ていきましょう。
では早速、最も大きな予算項目から見ていきましょうか。 お願いします。
まずは予算の半分以上、5341億円。 これが賃上げ物価上昇対策。
これはもう現場への直接的な輸血っていうそんなイメージでいいんですかね。 まさにその通りです。
病院は1億あたり8.5万円、診療所は32万円というように施設ごとに直接お金が入られます。
なるほど。 ただここで非常に興味深いのが、救急医療へのもう圧倒的な充填配分なんです。
ほう、救急ですか。 ええ、救急車の受入件数に応じて年間500万円からなんと最大で2億円までが加算される仕組みです。
2億円! なるほど、これはもう救急医療の崩壊を防ぐっていうかなり強い意思を感じますね。
そうなんです。さらに三次救急病院、つまり心筋梗塞とか脳卒中とか、もう一刻を争う最も重篤な患者さんを受け入れる最後の砦ですね。
はいはい。 ここには件数が例え少なくても一律で1億円が加算されるんです。
うわ、手厚いですね。でもこれって救急車の受入件数に応じてですよね?
ええ。 ということはもうすでにパンク状態でこれ以上受け入れられないっていう業員は、この恩恵ってちょっと受けにくくなっちゃいませんか?
ああ、非常に鋭いご指摘です。まさにそこがこの制度の課題になれるところですね。
なるほど。 一方で手術とか分娩の件数に応じた加算というのも最大8000万円まであるんですが、
これは救急の加算とは併用ができないというルールになっているんです。
えーと、待ってください。救急と手術の加算が併用できないんですか?
そうなんです。
なんででしょう。どちらもすごく重要で人手が足りない分野のはずですけど。
おそらく限定的な財源を特に逼迫している分野に集中させたいということでしょうね。
どちらかを選択させることで病院の機能分化を促す。まあそういう狙いもあるのかもしれません。
なるほどな。まず緊急の手当として現場にお金を直接届けると。
でも次に来る3490億円の使いムチは正直驚きました。
将来に向けた医療改革
はい。
お金を増やすんじゃなくて病床を減らすために使う。これ一体どういう理屈なんですか?
これこそが今回の予算が外科手術たるゆえなんですね。
ほう。
これは単なる削減ではなくてですね、実は日本の医療が病院完結型から在宅医療なんかも含めた地域包括ケアへと大きく舵を切るための痛みを伴う布石なんです。
ああ、未来の医療の形に変えていくための戦略的な投資だと。
そういうことです。ベッドを減らした病院には国が資金を出して、例えば在宅医療の拠点への転換などを後押しすると。
具体的にはどれくらいもらえるんですか?
はい。病床を一度高級的に減らすと約410万円。一時的に休める急床でも約205万円が交付されます。ターゲットは約11万床ですね。
なるほど。その他にもいろいろありますよね。資金繰り支援とか施設の建て替え補助とか。
ええ、残りの4つを掛け足で見ていきましょう。
お願いします。
まず804億円の資金繰り支援。これは無利子融資です。次に462億円の施設整備支援。建築コストの高等分を補助します。
はい。
そして個人的に面白いと思うのが200億円の生産性向上支援。
生産性向上。
ええ。スマホでカルテを見たり、インカムを導入したりっていういわゆるDX化ですね。これに最大8000万円を補助します。
それは現場も助かりますね。
はい。最後に72億円が産科小児科支援。これはもう経営が厳しい分野へのピンポイント支援という位置づけです。
よくわかりました。つまり今回のパッケージ全体をまとめるとどういうことになりますか?
そうですね。これは物価高や人手不足っていう今そこにある危機に対応する緊急支援であると同時に、
病床の最適化やDX化といった未来の医療体制を見据えた構造改革でもある。
この2つの側面を併せ持ったパッケージだと言えると思います。
ありがとうございます。これだけの資金が投入されるわけですけど、最後に1つあなたが考えてみるべき問いがあります。
はい。
それはこの支援金は本当に医療現場の最前線で働く人々の処遇改善や、
患者さんが受ける医療の質の向上に直接結びつくのかということです。
制度が現場でどう生かされるのか、その実効性こそがこれから見ていくべき最も重要なポイントかもしれません。
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