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2025-12-28 05:26

【2025年医療法改正】中医協が示す外来医師過多区域とオンライン診療の診療報酬対応

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令和7年12月12日に公布された医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)に基づき、中央社会保険医療協議会では診療報酬上の対応について議論を開始しました。この改正は、高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築することを目的としています。

中医協における議論の焦点は、外来医師過多区域における診療報酬上の対応とオンライン診療受診施設の保険診療上の位置付けの2点です。外来医師過多区域では、地域医療への要請に応じない医療機関に対して保険医療機関の指定期間を短縮できる仕組みが導入されます。オンライン診療では、新たに設けられる「オンライン診療受診施設」の保険薬局内への開設について、医薬分業の観点から検討が必要となります。本稿では、これらの課題と論点を解説します。

外来医師過多区域における診療報酬上の対応

外来医師過多区域における診療報酬上の対応は、医師偏在是正に向けた総合的な対策の一環として位置付けられています。この対応では、地域で不足している医療機能等の提供要請に応じない医療機関に対し、保険医療機関の指定期間を6年から3年以内に短縮できる仕組みが導入されます。

都道府県は、外来医師過多区域の新規開業者に対し、開業6か月前に提供予定の医療機能等の届出を求めることができます。届出後、都道府県は協議の場への参加を求め、地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供を要請します。要請に応じない場合は、都道府県医療審議会への出席と理由説明を求め、それでも応じなければ勧告・公表を行います。

保険医療機関の指定期間短縮は、これらの手続きを経ても要請に応じない医療機関に対して適用されます。具体的には、要請に応じなかった場合、勧告を受けた場合、または勧告に従わなかった場合に、厚生労働大臣が保険医療機関の指定を3年以内の期限付きとすることができます。指定期間が3年の間は、医療機関名等の公表、保健所等による確認、診療報酬上の対応、補助金の不交付といった措置が講じられます。

中医協では、指定期間が3年以内となった医療機関の診療報酬上の対応が論点となっています。この医療機関は「地域医療への寄与が不十分」との位置づけであることから、機能強化加算や地域包括診療加算等のかかりつけ医機能や地域医療提供体制への貢献に関する評価が含まれる診療報酬項目について、どのように取り扱うかが検討されます。

オンライン診療に関する総体的な規定の創設に伴う対応

オンライン診療に関しては、医療法改正により総体的な規定が設けられ、新たに「オンライン診療受診施設」という施設類型が創設されます。この改正は、これまで解釈運用によって機動的・柔軟に実施されてきたオンライン診療について、法制上の位置づけを明確化することを目的としています。

改正法では、オンライン診療を医療法に定義し、オンライン診療を行う医療機関はその旨を都道府県に届け出ることとなります。厚生労働大臣はオンライン診療の適切な実施に関する基準(オンライン診療基準)を定め、医療機関の管理者はこの基準を遵守するための措置を講じる義務を負います。オンライン診療基準には、診療計画、本人確認、薬剤処方・管理、診察方法、医師・患者の所在、通信環境などに関する事項が含まれます。

オンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受ける専用の施設として新たに創設されます。設置者は、業として、オンライン診療を行う医師または歯科医師の勤務する医療機関に対して、オンライン診療を患者が受ける場所を提供します。設置者は設置後10日以内に都道府県知事に届け出る義務があり、オンライン診療を行う医療機関の管理者は受診施設の設置者に対してオンライン診療基準への適合性を確認することとされています。

保険薬局内のオンライン診療受診施設の開設に関する課題

保険薬局内にオンライン診療受診施設を開設することについては、医薬分業に関する療担規則および薬担規則の規定やその趣旨を踏まえた検討が必要です。医療法上はオンライン診療受診施設の設置場所に制限がなく、保険薬局内への設置も可能ですが、保険診療の観点からは3つの課題が指摘されています。

第一の課題は、保険薬局と保険医療機関の独立性です。薬担規則では、健康保険事業の健全な運営の確保の観点から、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造・経営が禁止されています。保険薬局内で患者が保険医療機関によるオンライン診療を受ける状況となることについて、独立性の観点からあり方を整理する必要があります。

第二の課題は、特定の保険薬局への誘導です。療担規則では保険医療機関が特定の保険薬局へ誘導することが禁止されており、薬担規則では保険薬局が当該薬局への誘導の対償として保険医療機関等に金品その他の財産上の利益を供与することが禁止されています。薬局内で患者が受けたオンライン診療で発行された処方箋は、概ね当該薬局で調剤されると想定されることから、保険薬局でのオンライン診療受診施設は当該薬局で調剤を受けるよう誘導する効果を生むことが懸念されます。

第三の課題は、経済上の利益の提供による誘引です。薬担規則では、事業者またはその従業員に対し、患者を紹介する対価として金品その他経済上の利益を提供することにより、当該患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引することが禁止されています。保険薬局が自らオンライン診療受診施設を開設しない場合でも、オンライン診療受診施設を運営する事業者に場所を提供する場合、事業者に経済上の利益を提供し患者が自己の保険薬局にて調剤を受けるよう誘引する効果を生じることが懸念されます。

まとめ

医療法等改正を踏まえた診療報酬上の対応について、中医協では2つの論点が示されています。第一に、外来医師過多区域において地域医療への要請に応じず保険医療機関の指定が3年以内となった医療機関について、機能強化加算や地域包括診療加算等の診療報酬項目の評価をどのように考えるかという点です。第二に、オンライン診療受診施設の保険薬局内への開設について、医薬分業の観点からその是非や取り扱いをどうするか、また医療資源が少ない地域の医療提供体制確保を踏まえた配慮をどうするかという点です。外来医師過多区域対応やオンライン診療関連は令和8年4月、その他の規定は令和9年4月を中心に段階的に施行されます。今後の中医協での議論が注目されます。



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サマリー

2025年の医療法改正は医療体制に大きな影響を与える可能性があり、特に外来医師過多区域やオンライン診療に関する新しいルールが注目されています。これにより、地域医療への貢献が求められる一方で、オンライン診療の普及が医薬分業の原則に挑戦をもたらしています。

外来医師過多区域の影響
こんにちは。さて今回は、日本の医療の未来、これを大きく変えるかもしれない2025年の医療法改正について、深く掘り下げていきたいと思います。
手元にある資料を見ると、やはり高齢化と人口減少という大きな課題に、どう医療体制を合わせていくか、という話が通信ですね。
特に僕が面白いなと思ったのが2つありまして、1つが都市部なんかに医師が多すぎる外来医師片空気への対策。
それからもう1つが、今急速に普及しているオンライン診療の新しいルール作りですね。
この2つが僕たちの医療にどう関わってくるのか、早速見ていきましょう。
この改正の根底にあるのは、やっぱり限られた医療資源をどう公平に、そして効率的に配分していくかという、もう本当に切実な問題なんです。
これまでのやり方からの大きな方針転換点と言えますね。
では最初のポイントの外来医師片区域からいきましょうか。
これ文字通りお医者さんが多すぎる地域ということですけど、ここで開業しようとするクリニックに国がある意味マッタをかけると。
そうなんです。
都保県から人手が足りない地域も手伝ってくれませんか?みたいな要請があったとして、もしそれに応じないとペナルティがあると聞きました。
具体的には保健医療機関の指定期間が普通の6年から半分、3年に単価になるそうですが、正直期間が短くなるだけって言われてもいまいちピンとこないんですよね。
これクリニックの経営にはどう響くんですか?
いい質問ですね。そこが今回の改正のいわば肝でして。
単に更新の手間が増えるなんていう、そんな単純な話じゃないんです。
この指定期間3年っていうのは、あなたは地域医療への貢献が不十分ですよっていう国からのレッテル張りに近いんですね。
そうなんです。いわゆるかかりつけ域満を評価する加算、例えば機能強化加算とか地域包括診療加算みたいなものが算定できなくなる可能性が非常に高いんです。
それは大きいですね。つまりただの行政手続じゃなくて、我々の方針に従わないなら経済的に成り立ちにくくしますよという。
そうです。
国から開業医へのかなり強烈のメッセージというわけですか。
まさに。これはもう金銭的なペナルティ以上に医師としてのプライドとか、その地域での評判にも関わってくるかもしれないという見方もできます。非常に強いメッセージですよ。
オンライン診療の新しいルール
なるほど。物理的な医師の配置の問題に診療報酬という経済的な手段で切り込むわけですね。
一方で今度はテクノロジーの話。オンライン診療も大きな転換点なんですよね。
そこが今回の議論で一番デリケートな部分でして、法改正でオンライン診療受診施設という患者さんがオンライン診療を受けるための専用スペースが認められる方向なんです。
はい。で、僕がここでえ?って驚いたのが、この施設をなんと薬局の中に作っても良いかもしれないという話で。
そうなんです。
普通に考えたら診察も薬の受け取りも一箇所で済むなら便利そうですけど、そんな簡単な話でもないと。
全然簡単じゃないんです。これは日本の医療制度の根幹にある医薬分業、つまり診察する医師と薬を出す薬剤師は独立してなければいけないという大原則を揺るがしかねない問題でして。
薬分業ですか。
はい。資料が指摘している課題は大きく3つですね。
まず1つ目が独立性の問題。薬局の中で診察を受けたらもうそこは病院なのか薬局なのか一体に見えてしまいますよね。
あー確かに。
それが2つ目の特定の薬局への誘導にもつながってきますよね。
おっしゃる通りです。
その薬局に行ったら隣のブースで先生が見てくれますよなんて言われたらそこで処方箋もお願いする流れになりますもんね。
なりますよね。そして3つ目がより根深い経済的利益の提供の問題です。薬局が場所をタダで提供することが実質的に医療機関への患者紹介の見返りとみなされる恐れがある。
なるほど。
これら全部が医薬分業の原則に触れる可能性があるわけです。
今日の話をまとめると今回の法改正って医師の地域偏在っていう長年の課題に診療報酬という経済的なメスを入れた。
ええ。
と同時にオンライン診療という新しい技術を精度に組み込む際の深くに倫理的な課題も浮き彫りにしたと言えそうですね。
始行は2026年の4月ということですが。
はい。医療の効率化と守るべき公正さ、この2つのバランスをどう取るのか非常に難しい恥取りが求められている状況です。
最後に1つあなたにも考えてみてほしいことがあるんです。
今回問題点として挙がった薬局内のオンライン診療施設ですけども、もしですよ、あなたの住む地域に病院がなくて一番身近な医療へのアクセスがその薬局だけだとしたら、その存在はルール上の課題を超えた命綱になり得るんじゃないでしょうか。
効率と原則の間で僕たちは何を優先すべきなのか、これは答えのないでもすごく重要な問いですよね。
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