スピーカー 1
絵を描くことの目的は、絵を仕上げることではない。筋の通らない言い分に聞こえるだろうが、そうならだ。出来上がった作品は一種の副産物でしかない。それは過去の一つの記号として役に立ち、価値があり、興味深いものではあるだろう。
真の芸術作品すべての背後にある目的は、存在という状態そのものに肉薄することである。それは高度な活動状態であり、日常の暫定的な存在を超えている。そのような瞬間には活動は必須である。その活動が筆やペンや、これ何て読むんだろう。
これは難しい字だね。ちょっとここ飛ばすね。
その活動が筆やペンを用いるものであれ、また言葉によるものであれ、結果としてできるものは、状態そのものの副産物、痕跡、足跡でしかない。
結果として生まれた作品は、どんなに育つでも、作者である芸術家にとっては愛しいものである。なぜなら、それは作家が大いに楽しみ、もう一度戻りたいと願う状態を記録したものだからである。
作品は、作品の中で最も重要なものだ。
作品は、他者にとっても興味深いものとなる。作品を通じてより大きな存在があることを知り、その存在がかすかに感じられるからである。絵画はそんな状態の副産物であると同時に、人間の本能に組み込まれた欲求でもある。だからこそ、目的は存在そのものなのだ。
人はそんな副産物を無視するかもしれない。というのも、それは当然ながら、どんなに下手なものとはいえ、オリジナルの似姿だ。
作品は、作品の中で最も重要なものだからである。時として子供の絵や未開部族の芸術など、絵具の性質すらよく知らず、道具もろくに使えない人々が傑作を生み出し、偉大な芸術作品として商用されることがあるのはそのせいである。
一人一人の内面に湧き上がる活動への衝動、すなわち表現欲こそがテクニックの追求を促す動機である。その状態にあるとき、テクニックを発見する。
そのときは視界が明石になっている。
視界が明石になっているからだ。しかし、探求は常に続けられる。我々が心をかけるべきは、絶えず備えておくことだ。
例えば、絵画のようなある種の表現活動が習慣として日常化すれば、人は自ずと絵の道具を手にして、製作を始めるだろう。
暗示にかけられたように行動し、その結果、連想が働き、やがてより高い状態へと入り込む。気がついたら、いつも画家の前に座っているという画家がいる。
彼らは絵筆を手にして、そこにいるのが好きだという。その場所は大きな旅立ちへのスタート地点なのだ。
痕跡を眺め、瞑想しつつ評価すること。絵だけでなく、音楽を聴き、優雅な身振りを見ることによって、魂は燃え立つ。
人はより大きな人生の在り方の痕跡、より豊かな動きを尊重し、大事にする。なぜなら、我々も生きたいからである。
そのような痕跡は、生きることへの刺激を与えてくれる。それこそが芸術作品の価値なのだ。痕跡はこの世になければならない。それは生きることそのものである。
大勢の芸術家が長生きし、高齢になっても若さを保ち続けるのは、それだけ彼らが生きることに情熱を注いできたからである。
大抵の人は生きながら死んでいるというのに。私がここで言う状態とは、健全な状態であり、自然である。
超自然ではない。この時、人間は心身ともに丸ごと秩序だった状態にあり、完璧に機能している。
そんな状態になるたび、人はその瞬間、より大きな人生を得るだけではなく、心と体に何らかの影響を受け、それはずっと続くのである。
という本ですね。
これはですね。
スピーカー 3
はい。
スピーカー 1
ロバート・ヘンライという、まさに芸術家なんですけどもね、画家ですね。ロバート・ヘンライさん。
この人は1865年から1929年の人生で、23年に出した本なんですよ、1900。
古典なんだけどね、これが、要はデビット・リンチとかキース・ヘリングが、
指南書として、愛読していたと言われる本なんですね。
アート・スピリットという本ですね。
アート・スピリット、ロバート・ヘンライ。
芸術生活のバイブルというキャッチフレーズがついてます。
スピーカー 3
画家の方なんですか?
スピーカー 1
そうですね。
ちょっとなんか表現が難しいので、何のことかわからないっぽい感じもするんだけど、
彼が言ってるのは、絵は結果なんだと。
スピーカー 1
記号に過ぎないと。
で、重要なのは、それを描いているその瞬間、これが僕らの生きているという存在を表現している。
だからその意味で、その絵を見ると、その人の生き様みたいなね、
この壮大な人生というのかな、そういうものを僕らは作品を通して感じられる。
だから結果としてを見るんじゃなくて、その人がこの絵の中でどう生きたか、
どう動いたか、みたいな感じになる。
みたいなことを見なさいというふうに多分言っているんですよね。
そしてそのように、芸術作品を作っているその作家の存在を表現しているっていうそのプロセス。
これを彼は健全な状態、僕らにとって自然な状態であるって言ってるだけ。