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2023-12-16 11:49

「今それ言わなくても」と「ひとこと言ってやりたい」のはざまで

※音量を調整し、再アップしました。
今夜の勝手に貸出カードは、高瀬隼子さんの『うるさいこの音の全部』です。
「内心そう思ってたとしても、今言わなくてもよくない?」と「そう思ってたんだったらその時言ってよ」とどっちが傷つくかなあというお話。
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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜に
「ほっとできて明日が楽しみになる」をテーマに
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第156夜を迎えました、今夜のお便りご紹介します。
ペンネームのりまきとかげさんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。こんにちは。
いつも楽しく聞いています。
バタやんさんは、女同士の連帯やパディものがお好きと
おっしゃっていました。そこでリクエストなのですが、
私は少し前に大学時代の同級生と久しぶりに会いました。
その時の会話がどうもしっくりこなくて、
イラついた結果出現をしてしまい、それ以来気まずくなって
しまいました。彼女以外、親友と呼べるような友達がいるわけ
なく、息子の学校のまま友や職場の同僚たちとは
うまくやっているとは思いますが、このままだれとも私は
深い関わりを持つことなく死んでいくのかなと思うと、
ふと急にすごく寂しい気持ちになってしまいます。
そんな私におすすめの小説があれば教えてください。
難しいリクエストかもしれないのですが、元気が出るような
作品があれば知りたいです。といただきました。
ありがとうございます。
ノリマキトカゲさん、そうですか。わかりますよ。
そういう寂しい気持ちになるのはありますね。
大人になると今から大親友みたいなのが見つかるって、
今から大恋愛するより確率が低いんじゃないかっていう
気がしますね。今付き合っている人たちはそれぞれに
部分的な関わりというか、それぞれのコミュニティでは
うまくやっているけれども、誰か一人とものすごい深い
関係になるっていうのは確かに学生の頃とかに比べると
どんどん減ってきますしね。そんなノリマキトカゲさんに
まさに女バディモノといえる井上アレノさんの新刊
テルコとルイを紹介しようかなと思ってたんですけど、
いや待てよ、ちょ待てよと思いまして、ちょっと逆の方向
というか違った方向からの方をご紹介したいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは高瀬純子さんの新刊
うるさいこの音の全部にしました。この小説の主人公はですね
ペンネームで小説を書いている、周りの人には隠して小説を書いていた
兼業の小説家の女性なんですね。そのヒロインが中高からの
同級生で書店で働いている女友達と久しぶりに会うっていう
シーンが出てくるんですけど、ちょっといきなりですけど読みますね。
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女見から久しぶりに会おうよと言われて反射的に嫌だと思ったし
反射が過ぎた後の時間に心の中を分析してもやはり嫌だという
気持ちの方が大きいのに小さく会いたいかもしれないがあるだけで
朝日はそれに抗えないという風にありまして。
ああわかる、いるなあ、そういうちょっと引っかかるんだけど
なんか期待もしてしまうというか。
アノリマキトカゲさんにこの本を紹介しようっていうのを
この一説を読んで思ったんですよね。それでこの待ち合わせに
友達の方のホナミっていう子はね遅刻してくるんですよね。
常習犯みたいで。主人公の朝日さんはきちんと約束の時間の前に
到着するタイプで。私も少し早めに着きたいタイプだから
わかるなあと思って。でも絶対あの子遅れてくるんだから
私もゆっくり行けばいいじゃんって思うんだけど
そんな時に限って早く来られちゃったりして
そしたらごめんごめんとか言わなきゃいけないと思うと
おっくーで結局早めに着いてしまうっていうね。
そんなうるさいこの音の全部はどんなお話なのか
ご紹介していきたいと思います。
うるさいこの音の全部の主人公長居朝日はゲームセンターで働いてまして
早見夕日というペンネームで書いた小説が新人賞を受賞するんですね。
本来喜ばしいことなんですけどそこから職場にバレたり地元にバレたりして
周りの人の扱いが変わってくることで
主人公が息苦しくなっていくというお話なんですね。
賞を取った作家だとわかると会社の人が急に広報的に利用しようとして
広報誌にエッセを書いてくれて頼んできたりとか
有名になると親戚が増えるなんて言いますけれども
知り合いからサインを頼まれたり
友達から結婚式に作家の方の名前で出てくれないかって言われたり
なんかちょっとやだなーって思うんだけど
はっきりノートも言えずっていうタイプなんですね。
このあたりは高瀬潤子さんの「いい子のあくび」という前作とも通ずるところがあるなと思いました。
本当はシニカルな部分があるというか強い意思があるタイプなのに
周りからのイメージは多分いい人で大人しくて
頼ったら断らなさそうって見えてるんだろうなっていう
ギャップがあるタイプの主人公ですね。
この本とにかくずっと息苦しいんですよね。
なんで息苦しいかっていうと
ウルトラC級のトラップがいくえにも張り巡らされているような感じでして
まずこの雄飛さんが書いている小説がゲームセンターを舞台にしているんですね。
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これが芥川賞を取るんですけど
本人の朝日もゲームセンターで働いているから
作中の主人公と作者を重ね合わされがちですよね。
経験をもとにしているのかとか
主人公と似ているところがあるんじゃないかとか
主人公が思っていることを作家さん本人がそういうふうに思っているんじゃないかとか
芥川賞を取ってからはたくさんインタビューを受けることになって
そういうことばっかり聞かれるわけですよ。
でも多分ゲームセンターで働いている長井朝日と
作家としての早見雄飛は全くイコールではないし
早見雄飛と小説に出てくる主人公の考え方とか性格とか
イコールではないんだけれども
メタファーみたいになってしまって
小説の主人公と同じくらいか
それ以上に作家さんの方のパーソナリティに注目が集まっていくっていう
余計書きづらくなっていくみたいな感じなんですよ。
そのメタファートラップはさらにもう一重かかっていて
これが面白いなと思ったんですけど
この小説の主人公が新人で芥川賞を取るっていうことと
高瀬潤子さんご自身が芥川賞作家だっていうことなんですよね。
だからこの中に出てくる話は
本人の体験をベースにしてるんじゃないかなとか
こういうことを本人も考えてるんじゃないかって考えちゃうじゃないですか。
でもこの作中では何度も本人の体験を必ずしもベースにしてるわけじゃないし
人格も違うんだっていうことを書いてるのに
それを読む私はまた朝日の周りの人と同じことを同じ思考をしちゃうっていうね
自分の近しい人が実は小説を書いていたってことが分かって
有名な賞を取ったらどうするかなって考えたりして
小説家じゃなくて、例えばVTuberとか顔出ししない歌い手さんの中の人だったとかもあるかもしれないですね。
でもVTuberとか歌い手だったら勝手にご活躍をって感じですけれども
小説家の場合はこの本にあるように
このこともネタにするんじゃないかなって周りの人は考えたり
朝日のお父さんが入院するんですけど
その時もネタにしないでよ的なことを言われたりしちゃうんですね
会社の人も観察されてると思うと緊張するとか言い出すんですよ
自分も言っちゃいそうだなと思いました
今日はこのうるさいこの音の全部に収録されている2編目の
あすここは静かから紙フレーズをご紹介して終わります
あすここは静かは主人公が芥川賞を受賞してからの展末を書いた
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続きではあるんですけれどもその後編のような感じになっています
私はあんな風に取材の場で面と向かって行ってくるのはマナー違反というか
すごく失礼なことだなと思って
というシーンなんですけれども
主人公の朝日さんはなかなか脳が言えないタイプだと
先ほど言ったんですけども周りの人はそれ今言わなくてもっていうのを
ズバッと言うタイプの人が多いと言いますかこの小説
友達のほなみも昔からずけずけ言うタイプだったって聞かれてますし
それを面と向かって言うのはマナー違反って
これは担当編集の売原さんの言葉なんですけど
売原さんは決してずけずけ言うタイプではないんですが
これは今言わなくちゃって意を決して言ったっていう感じのシーンなんですね
すごくいいシーンだなと思って好きなんですけど
この小説は今言わなくても
内心を持ったとしても言わなくてよくないっていうことと
そう思ってたんだったらその時言ってよっていうことと
どっちの方が傷つくのかなっていう小説かなと思って
読みました
ノリマキトカゲさんがどんな出現をなさったのか分かりませんけれども
傷つくのが分かってても気まずくなると分かってても
一言言ってやりたいっていうこともありますよね
この小説は大部分がいろんな人とうまくいかなくなっちゃう
様子が書かれているんですけれども
最後の最後この主人公と担当編集の売原さんとの関係は
親友でも戦友という感じでもないんですけれども
すごくこじらせたひねりの効いたバディものとも言えるんじゃないかなと思いました
清涼感があるラストです
よかったらぜひ読んでみてください
さて今夜もお時間になってしまいました
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は
リスナーの方からのお便りをもとに
おすすめの本や漫画を紹介しています
インスタグラムまたよむからメッセージをお寄せください
それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう
おやすみなさい
おやすみ
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