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2022-04-06 19:36

外部のノイズをシャットダウンすることで奪われるもの【第103夜】

今日の勝手に貸出カードは、児玉雨子さんの『誰にも奪われたくない/凸撃』です。児玉雨子さんはハロプロなどのアイドルソングやアニメ主題歌、キャラクターソングなどを手掛ける人気作詞家さん。小説「誰にも奪われたくない」は、そんな児玉雨子さんご自身を意識させるような、若手作詞家の園田レイカと、楽曲提供をしたアイドルグループの人気メンバー佐久村真子との交流を描いた物語です。

うすら寂しさと闇を抱えた二人がどんどん仲良くなっていくシスターフッド的な物語を安易に期待すると裏切られます。


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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、ナビゲーターの高段者ウェブマガジン、みもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第103夜をお届けします。
今夜は、私の今激推しの本を勝手に紹介するコーナーです。
今日の勝手に貸し出しカードは、こだまあめ子さんの誰にも奪われたくないスラッシュ突撃にしました。
こだまあめ子さんという方はですね、前回100回記念のポッドキャストでご紹介した文芸の2022年春号、母の娘号をご紹介したんですけれども、
あの中で書き下ろし小説、じゃあ何から生まれたかったのっていうのを寄稿してらしたんですよ。
これは実の母娘関係が破綻している塾の先生と元教え子の女の子、女の人2人が疑似母娘として同居する物語なんですけれども、
軽やかなタッチで会話のテンポ感も良くて、今っぽさがあるなーってすごい思うのと同時に、
ところどころこうえぐるような鋭い描写があって、この人何者なんやろうってすごい衝撃を受けたっていうか強く惹かれまして、
すぐにググったらウィキティペディアでね、あのハロプロとかアイドルソングの歌詞だったりとかアニメ主題歌、キャラクターソングの歌詞なんかを書いてらっしゃる人気の女性作詞家さんであったということがわかりまして、
だからこういう文章なんだってすごく納得したんですよ。この人もっと他にもいろいろ小説書いてるのかなと思って、
アマゾンで検索したら1冊しかなくて、それがこの誰にも奪われたくない突撃という本だったのですぐにポチったわけなんですが、
この誰にも奪われたくないっていう小説と突撃っていう2つの小説、中編短編ぐらいのボリュームの小説が1冊になっていまして、小説誰にも奪われたくないの方はですね、そんな小玉さんご自身を意識させるような若手の作詞家の園田玲香さんっていう人と、
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楽曲提供しているアイドルグループの人気メンバー、中心メンバーの一人である佐久村真子さんとの交流を描いた物語なんですね、というようなあらすじというか、作品紹介をすると、
薄ら寂しさとか闇を抱えた2人が人気を得つつも、人気を得るっていろんなことにさらされて大変なこともあるでしょうから、じゃあこの先どうしていくんだとか、仕事上で嫌なことがあったり、変なおっさんに嫌なこと言われたりとか、いろいろあって、薄ら寂しさと闇を抱えた2人が出会って、
どんどん仲良くなっていくシスターフット的な物語を期待すると、安易に期待すると裏切られる、鋭さが出てくる、ちょっと怖いところのある小説なんです。どんな作品かこの後、詳しくご紹介していきたいと思います。
さて誰にも奪われたくないがどんなお話かというと、主人公の園田玲香作詞家の園田さんと、アイドルグループのシグナルシグマというグループに所属している真子ちゃんはですね、業界の新年会みたいなので一緒になるんですね、いろんな人がたくさん来ている会なんですけど、真子ちゃんは園田さんが書いた歌詞が好きだと、
その楽曲がすごく好きなんです、今日は会えて嬉しいですっていうふうに、その会の後にLINEを送るんですね、この辺りが作詞家さんが男性だった場合は、なんていうか双方に下心みたいなものが生まれて、またちょっと違う物語になりそうですけど、そんなに年もすごく離れているわけでもない、女性同士っていうこともあって、
あなたの書いた歌詞がすごく好きです、会えて嬉しいです、また曲をお願いします、ご飯に行きたいです、みたいなやり取りをしても、自然とこうちょっとだんだん距離が近づいていくわけなんです。
で、アイドルだからっていうのもあるでしょうけど、その外で会うと目立っちゃうし、お家に行くことになるんですよ、その真子ちゃんのね、そこで家がちょっと荒れてるというか、電子レンジが傾いてたり、ちょっとあんまり綺麗じゃない部屋で、ここ絶妙なんですけど、画面がバキバキに割れたiPhoneを使ってるっていうのに、
ちょっとギョッとするっていうシーンがあって、すごいわかるなと思って、私も仕事関係で会う人ですごい素敵な女性たち、とっても綺麗にされてて仕事も本当にきちんとしてる人が、iPhoneの画面がすごいバキバキに、
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交通事故でもあったんですかっていうぐらい、細かいヒビが入ったまま使ってるとちょっとギョッとするっていうか、闇があるのかなとまでは思わないですけど、こういうものはこういうままでいい人なんだって思っちゃうとこありますよね。
とはいえ、今iPhoneも10万円以上するから、ちょっとヒビが入ったぐらいで、すぐ買い替えられるものじゃなくなってきてはいますけれども、そういうちょっとした違和感みたいなのがあって、
で、回った後にiPodの、イヤホンのね、iPodの片方がなくなっていることにレイカは気づくんですけど、そんな風にちょっとあれおかしいなって思うことが積み重なって不穏な空気が広がっていく間に、
二人のLINEというか彼女のLINEは絵文字いっぱいでキラキラしたLINEが送られてきたりするところもリアリティがあって、会話も面白いんですけど、そうやってちょっと感じた違和感はだんだん大きくなっていって、そこから大きなスキャンダルに発展するわけなんですね。
このあたりはちょっとあんまり言うとネタバレになっちゃうから言わないでおきますけれども、なんとなく二人が仲良く幸せになってほしいなっていう気持ちで読み始めた私としては、えーそうなんだーってなってこうだんだん辛くなっていってしまうんですけれども、
これを読みながら、この間、ついつい先日サラリーマンの死っていう舞台を見たんですよ。
サラリーマンじゃないセールスマンの死っていうね、舞台の初日を見に行ったんですけど、それのことを思い出しました。
ちょっと話がそれちゃうんですけど、セールスマンの死っていう舞台はものすごく前に作品としては描かれていて、名作として何度も上映されているお芝居で、昔のアメリカを舞台にした話なんですけど、
今回は主演は旦那康則さんがやっていらして、その死んでしまうセールスマンの役を旦那さんがやっていらして、奥さんを鈴木穂波さんがやっていて、息子役を林ケント君と福祉誠治君がやっているという豪華メンバーな舞台なんですよ。
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面白い、すごい面白かったので、もしまだチケットが取れるようでしたら是非見に行っていただきたいなと思うんですけど、簡単にどういう話かっていうと、高度成長していくアメリカの中でセールスマンをしていた旦那さんなんですけど、
彼には息子が2人いて、福祉君が演じている方の息子は高校時代にフットボール、アメフトかな、スター選手で大学からいっぱいオファーがかかるような、ルックスも良くてキラキラした高校生だったんですよ。
ただコツコツ勉強するとかいうことをサボっていたばっかりに進学できず、かつ今現在は30代なのに定職がなくて、実家に帰ったり外をふらふらしたりしていて、もちろん結婚もしてなくてっていう感じなんですが、
旦那さんが演じるお父さんは息子のダメっぷりを受け入れられないんですね。だからもうキラキラした高校時代のフットボールで活躍した時の話ばっかりするわけですよ。
息子の方もお父さんに本当は自分はクズだなってことに気づいてるんだけど、クズな自分を見せられないっていう葛藤が描かれていて非常に面白い作品だったんですけど、
かつてのスター選手だった今は職もないおっさんになりかけている息子がちょっと手癖が悪いっていうんですかね、何かを盗んじゃう癖があるっていう描写があって、偉い人に会った時に万年筆を持って帰ってきちゃうんですよね。
そういうところもなかなかリアリティがあって面白いなと思ったんですが、そこの話とそのアイドルグループのまこちゃんがちょっと何か手癖が悪い部分があるんですよ。
それを心の闇と言ってしまえば簡単なんですけど、誰しもそういうことってありそうだなという気がして、期待されていることと自分とのギャップだったり、本当の自分以上にディスられたりっていうことをすごい浴びていると、
それが何かどっか歪んだ形で放出したくなる部分があるんじゃないかなっていうのを、セールスマンのシーの息子くんは父親の期待する息子像と自分がずれてるってことはすごいわかってるんだけど、それを言えずにいる。
鈴木穂波さんが演じるお母さんはそこを気づいている感じはあるんですけどね。その辺はまこさんとれいかさん、作詞家のれいかさんの関係とちょっと似ているところもあるのかなって思ったりしましたけれども、れいかさんはれいかさんで自分が作詞家1本でやっていけるほどには売れてなくて、
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他のお勤めもしながら詩をやっていて、くされんみたいな彼氏ともすごい上手くいってるかというとそんなこともなくて、だから一方的にまこちゃんを守ってあげるほどの強さもないっていうところもまた非常にリアリティがある小説でした。
さて今日はこの誰にも奪われたくないから神フレーズをご紹介したいと思います。
まこちゃんに興味がないわけではなかった。ただこうして会って話している時より、ライブ映像を見ていたり文字でやり取りしている時の方が私はまこちゃんに対して誠実でいられる。
顔を合わせているとどうしても相手に対してどんなに薄くてもいいから絶縁膜を張りたくなる。
LINEのメッセージでなら、しようと思えば深刻な質問を突き刺すことができるかもしれない。
だからこそ直接聞けないことばかり胃の中に溜まって、ある日突然まこちゃんや誰かに腐った無神経さを浴びせてしまう可能性がある。
そんなことを少なくともまこちゃんにしないように、彼女の前だとより強固に自分を塞ぎ切らなくてはならない気がするとあります。
ちょっと長く読み上げてしまいましたが、冒頭にこれを2人がどんどん仲良くなっていくシスターフット的な物語として期待すると裏切られるというお話をしましたが、
こういうところなんですね。
まこちゃんのことを可愛いなと思って慕ってくれているし、守ってあげたいし応援してあげたいという気持ちに嘘はないんだけど、
会うとちょっと消耗するっていうことだったり、嫌なことを言っちゃいそうな自分が嫌だっていう気持ちだったり、
LINEぐらいがちょうどいいなって思うっていうのは、こういう特殊な環境にいる2人じゃなかったとしても結構ありそうなことだなぁと思って、
そしてこの腐った真剣さを浴びせてしまう可能性がある、自分を塞ぎ切らなくてはならないっていう表現がまたすごいですよね。
ところどころこう鋭いえぐるような言葉の使い方があるから、
アイドルソングの人気もある楽曲がたくさんあるんだろうなぁって思ったりしました。
これでちょっとまた別のことを思い出したんですけど、最後に少しだけお付き合いください。
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イヤホンを新しく買ったんですよ。ずっとバング&オルフセンのワイヤレスイヤホンを使ってるんですけど、
バング&オルフセンのワイヤレスイヤホンってすごい音がいいんですが、ノイズキャンセルがついてなくて、
なんでついてないかっていうのをバング&オルフセンの発表会で聞いたことがあるんですけど、
ノイズキャンセルには物理的に塞いで外の音をシャットダウンするやり方と、
アクティブノイズキャンセルって言って、ちょっと私もそんなに詳しくないんでうまく説明できるかな、
外のノイズを打ち消す、相反する音っていうんですかね。
打ち消す波を出して、そしてノイズをカットするっていうやり方があるみたいで、
それをやると純粋な音を犠牲にする部分が出てきちゃうっていうんですかね。
ノイズをキャンセル、打ち消すために自分から別の変な音を出すみたいなイメージなんですよね。
だから純粋な自分の元の音の解像度をちょっと損なう部分があるっていう話だったと理解しているんですけど、
だからバング&オルフセンとしてはノイズキャンセルをあえてつけてないっていう話だったんですが、
今回の新作のイヤホンはノイズキャンセルが程よくついていて、それで買ったんですけど、
本当に聞こえないと怖いので、新しいイヤホンは2回タップすると切り替えられるようになっていて、
外の音が程よく聞こえるモードに切り替えたりもできるので、
外歩くときとかね、車の音とか聞こえないと怖いんで、ちょっとノイズが入るモードにして聞いて、
家とかゆっくりどっかベンチとかに座って音楽を聞くときはノイズキャンセルにしたりしてるんですけど、
そのノイズキャンセルの機能の仕組み自体が人間関係と似てて面白いなって思ったんですよね。
外野のノイズを雑音、聞きたくない音をシャットダウンするために自らノイズを発するってことじゃないですか。
そうしないとシャットダウンができないってすごいことだなって思って、
だから自分の純粋な解像度を犠牲にしちゃうんですよ、その外の音をシャットダウンしたいがために。
それがちょっと真子ちゃんにおけるSNSとかでファンの人からひどいこと言われたりとかいろんなノイズが入ってくる職業だと思うんで、
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それらをシャットダウンするために自分の純粋さを奪って、純粋さを犠牲にしてシャットダウンしてるのかななんてことを勝手に考えたりしました。
皆さんもiPhoneとかiPod、イヤホンでこのポッドキャストを聞いてくださっている方もいらっしゃるかと思いますが、
iPhoneのiPodはノイズキャンセルついてるのかな?ついてますよね多分ね。
まあそんなにしっかりノイズをキャンセルしないで聞いてもらってもいいかなって思いました。
自分が洗濯機が出来上がった音とか、家族が見てるテレビの音とか、外の道路の音とかが聞こえる程度の中で聞いてもらえたらいいかなって思いました。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さてそろそろお時間になってしまいました。
夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに色々なテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
みもれのサイトからお便り募集していますので是非ご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみー。
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