2025-06-13 09:12

heldio #328. 「超弩級」の「弩」は Dreadnought の D

#英語史 #英語教育 #英語学習 #翻訳借用
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サマリー

このエピソードでは、日本語の「超弩級」という言葉が英語の「Dreadnought」に由来していることを探ります。Dreadnoughtは1906年にイギリス海軍が作成した強力な戦艦で、その名称がもたらす軍事的な影響にも触れています。

超弩級の語源
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、超弩級の「弩」は Dreadnought の D、という話題です。
これは日本語の単語、超弩級ということですね。 程度がはなはなしいことを言いますけれども、この超弩級の弩ですね。
女へんにまたですね、奴隷の弩と書いて、下に弓ですね。 大きい弓、石弓のことなんですが、こんな漢字が当てられていますが、実はこの超弩級の弩の語源は英語なんですね。
英語の Dreadnought の最初の文字、音、D、これを取ってるんですね。 今回の話題はこの語源的背景についてです。
英語の Dreadnought というのはですね、1906年にイギリス海軍が作った巨砲を備えた大型の新型戦艦につけた名前です。
Dreadnought これは二語を一語に包めた複合語なんですけれども、Dread これは恐れるということですよね。
Nought っていうのは N-O-U-G-H-T というふうに綴りますが、これは否定字の not と同じ語源なんですね。つまり Dreadnought 恐れるなであるとか、恐れ知らずというような意味と解釈することができますね。
それぐらいに強い戦艦だということで名前が当てられたわけですね。これがあまりに時代の想像を超えている強力な戦艦だったために、とんでもないという意味で日本語に度級、超度級という形で取り込まれたと言いますかね。
Dreadnought を参照して日本語側が新たな作り出したということですね。それぐらい最強クラスのという意味で超度級の度ということです。そしてそれにふさわしいいかめしい漢字を石弓をあらす度ということに与えた、当てたということなんだと思うんですね。
Dreadnought という発音で、長い母音が出てくるんですけれども、先ほども触れたようにですね、これ実は not の否定字と全く同じ語源と言いますか、not の元の形なんですね。本来はですから n-o-u-g-h-t ですね。
アメリカ英語ではこれ n-a-u-g-h-t と綴ることが多いんですが、一緒です。not という長い母音を持っていて、だからそこを g-h を含めたですね、長い綴り字になっていたわけですが、これは本来的にはですね、nothing の意味なんですね。
語源的には n-e という否定字をつけて、その後に ought というですね、今あまり使わないんですけれども、ought というのは anything ぐらいの意味です。なので、not anything っていうのが、いわば nought の語源なんですね。
nought これで意味的には当然 nothing ということです。この nought がよく使われるのにだんだん包まっていったのが、田んぼ音を持つ nought であり、それにふさわしい短めの綴り字として n-o-t となっているわけなんですね。
ですので、やはりこれ dread nought 何も恐れるなであるとか、don't dread 恐れるなというような、そんな意味になっていくわけですね。さて、この超度級の戦艦が現れたのは、1906年ですね、イギリス海軍が作り上げたということなんですが、単語としての dread nought というのは、この20世紀初頭ではなくて、もうだいぶですね、
遡ります。これはエリザベス一世ですね、1573年にやはり戦艦の名前として使われたことがあるんですね。なので、ある種、1906年のものはですね、この昔使われていたものの復活といいますか、昔の戦艦の名前にあやかって再び日の目を見るようになった単語という言い方ができると思うんですね。
ですので、単語としては16世紀後半に出ている。その後もですね、怖いもの知らずの人ですね、人を表す意味で17世紀から例が見られますし、さらに18世紀末にはですね、別の語彙、これは雨の日なんかでもちゃんと使える厚手のラシャ、該当ですね、コートですね、この意味でも用いられていました。
このラシャの意味ではですね、あのドレッドノートと類義語でフィアーノート、これも恐れるなとフィアーですね、ドレッドに対してフィアーノートという語もあったということが確認されています。
さて、改めて1906年のイギリス海軍が作ったあのドレッドノートに話を戻しますと、やはり相当なインパクトがあったようなんですね。なので1908年にはすでにですね、プリドレッドノートピリオド。
つまりドレッドノートが現れる前の時代という表現が出てきてですね、つまり前と後とではですね、戦い方が変わった時代が変わってしまったという軍事史上かなりインパクトのある事件だったということになるわけですね。
ではなぜイギリス海軍はですね、この後に超度級と呼ばれるドレッドノートと名付けられるようなものすごいものを作ったのかということなんですが、これ日本が関係してきます。
日露戦争でですね、日本が開発した霜瀬火薬という強力な火薬ですね、これが日本海の海戦で大活躍したということがあるんですね。
この霜瀬火薬の前に破れ去ったロシア海軍の姿を見てですね、世界中の海軍関係者は土肝を抜かれたということですね。
装甲による防御という考え方が通用しなくなったということです。
そしてその後ですね、世界の海軍がですね、この霜瀬火薬による攻撃にも耐えられるような強い戦艦を作る必要があるということで、その後イギリス海軍がですね、1906年についにドレッドノートを作った。
これによって霜瀬火薬のような非常に強力な攻撃にも耐えられる次世代のですね、新しい強力な軍艦ができるようになったということなわけですね。
これ以降、列強はですね、イギリスに倣って土球戦艦あるいはさらにそれを超える超土球戦艦というのを建造することになったということなわけですね。
その後ですね、艦艦競争があまりに加熱してしまったためにですね、1921年から22年のワシントン会議、軍宿化会議ですね、列強の間でも戦艦保有数を制限しなければならなかった。
というほど超土球戦艦の出現、そしてそれに先立つ日本の霜瀬火薬の世界市場の軍事市場のインパクトっていうのは強かったということですね。
こんなところとDreadnoughtという英単語、そしてそれを日本語に持ってきた超土球という単語が全て関連してくるということですね。
この辺り、文化史と単語の語源との接点ということで、大変面白いトピックだと思うんですね。
なおですね、先ほど触れ忘れたんですけれども、このNoughtという長い方のですね、このDreadnoughtのN-O-U-G-H-T、あるいはアメリカ通りでいうところのN-A-U-G-H-T。
これはですね、現在も0、数字の0の意味では生き残っていますね。
普通に使われていると思うんですね。これももちろん、無、ゼロ、ナッティングという語源的な意味をですね、きっちりと受け継いだ単語ということになります。
それではまた。
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