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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
本日取り上げる話題は、英語に入った日本語たち、というものです。
英語はですね、非常に多くの言語から単語を釈用しています。
これは英語が英語になる前のですね、5世紀以前、既に大陸にですね、アングロサクソン人がいる時代からラテン語等を釈用していたことから始まってですね、
エヴァイキングに襲われた時には、コーノルド語から大量の語彙を釈用し、
そしてノルマン征服の後は、フランス語から大量のフランス語単語がですね、英語に流れ込みました。
それからルネサンス期にはですね、古典語への回帰ということで、ラテン語であるとかギリシャ語からやはり大量の単語が英語に入ってきました。
そしてもう近代、現代となりますと、イギリス帝国が世界中にですね、拡大して、さらにアメリカが派遣をつないで、いわゆるグローバル国家、そしてグローバルな言語となるに及んで、
地球上のですね、ありとあらゆる言語と接触し、そこから単語、英語はやはり帰ってきたということになります。
このように英語の歴史はですね、特に語彙に関する限り、完全に釈養の歴史だと言ってもいいぐらいなんですね。
このように非常に多数の言語と接触し、語彙を受け入れてきたんですが、その中にもちろん日本語というものもあります。
そしてですね、この日本語はこの50年と言いますか、20世紀後半から現代にかけてなんですが、この時期に限りますと、実はかなり英語にとっては重要な語彙の提供者なんです。
日本語というのはですね、さすがに1位ではないんですけれども、古くから付き合いの長いですね、フランス語であるとか、ヨーロッパ系の言語が上位をさらっていくんですが、それを別としますと、
実は日本語から英語に入っている単語というのは、我々日本人がですね、思う以上にずっと多いんです。
この直近のこの50年とかそれぐらいで考えますと、実は英語への釈用語の全体を100%とすると、その約8%が日本語からということになります。
これは決して少ない数ではないですね。
じゃあ実際、どんな単語が入っているのかということになりますね。
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Dictionary of Japanese Long Wordsという本というか辞書がありまして、いわゆる日本語から入った英語ですね、単語の辞書なんですね。
これ見出し語を数えてみますと、なんと820語、こんなにあるわけです。
この全てが英語圏で常用されているかというとそういうわけではなく、あくまで記録されたものをすべてリストアップするとですね、820語あるということなんですが、
少なくないということは分かると思うんですね。
じゃあどんな単語が、そしていつぐらいに英語に入っているのかということなんですが、
一番最初の日本語と英語の接触ですね。
これは16世紀です。
イギリス人が日本にやってきて、日本語と接触したということで、
一番早くはですね、16世紀末のボンズ、これボールのことなんですけどね、ボンズとして1588年に入ってきています。
それから17世紀になるとですね、少し増えて、日本語の単語として読み上げますと、
たたみ、ふろ、べんとう、まきげ、もち、みかん、さけ、しょうゆ、こんなのが17世紀に入ってくるんですね。
18世紀になりますと、もっと交流が増えてですね、直接イギリスと日本の交流ということはした告知でなかったわけですけれども、
例えばオランダを通じたとか、さまざまな形で英語に日本語の単語が入っていっています。
18世紀のものを挙げますと、例えばカタカナ、鯉、魚の鯉ですね、
それから侍ですね。
それからもう19世紀になってきますと、もう読み上げるの大変なくらいたくさん入ってきまして、
例えばひらがなとか浴衣、腹切り、切腹、みりん、さよならなんてのが入ってきていますね。
それから椎茸、人力車、いわゆるリクションってやつですけどね。
それから刺身、相撲、豆腐、寿司、蕎麦、津波、俳句、歌舞伎ですね。
こんな典型的な日本の伝統文化であるとか、食べ物を表すものが多い。
そして20世紀にもどんどん来ていまして、
いけばな、わさび、かんじ、天ぷら、うどん、剣道、神風、盆栽、合気道、空手、だし、照り焼き、ラーメン、うまみ、忍者、しあつ、しゃぶしゃぶ、鉄板焼きという食べ物関係が多いですが、
例えばですが、これですらもちろん抜粋です。
特に19世紀後半、つまり日本が開国して直接イギリスやアメリカと交流するようになった1854年あたりを境にぐんと増えてきます。
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16世紀から断続的にちょろちょろと英語に日本語が入ってきたというのは確かなんですが、本格的にという言い方をすると19世紀後半ですね。
そして20世紀にさらに交流が増えて、英米を中心に日本と交流が増えて、さまざまな日本の飲食物、衣服、芸術、武道というものに関心を持った英語話者がこういった単語を取り込んでいったということになります。
ということでですね、この数や種類、日本語から英語に入った単語ですね。数と種類を見てみるとですね、結構な規模なんですね。
英語の近隣の元々関係が深かったヨーロッパ系の言語からの釈用とは比べられないとしてもですね、そこから一歩外に出た場合ですね、世界に出た場合、
実は日本との交流というのがあったおかげでですね、日本語から相当数の単語が英語に流れ込んだということなんですね。
これはアジア、アフリカ地域などで比べると、少なくともこの直近の数十年としては重要な語彙の供給源となっていた。
それが日本語であるということですね。この事実はしっかり抑えておく必要があるかと思います。
最初に挙げたですね、辞書ですね。Japanese Long WordsのDictionaryということなんですが、これですね、眺めてみるといろいろ面白いわけなんですが、ちょっと不思議なことに気づくんですね。
このLの項目があるんです。アルファベット順に一個辞書ですから並んでいるわけですが、Lですね。これ日本語のラ行音はですね、普通Rで言って、Rに入っているのはわかるんですが、なぜL?
Lなんていう単語で始まる単語は日本語にはないはず。じゃあ何かと見るとですね、これは面白いことにいくつかあるんですが、その一つはですね、Love Hotelなんですね。
つまりこれ和製英語なんですよ。本来の英語ではなく和製の英語で、Love Hotelという時にはさすがにLと解釈するんですかね。
これがいわば英語圏に逆輸入された形で、日本語で作られた英単語なわけですが、いわゆる和製英語として逆輸入され、授業されているということです。
みんなに言って通じるかは別ですけれども、想像はできるんじゃないかと思うんですが、このLという単語がこのDictionary of Japanese Long Wordsに入っているというのが、なかなか面白い話ではないでしょうか。
それではまた。