女性行為者接尾辞の紹介
おはようございます。そして、明けましておめでとうございます。2022年です。私、英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
昨年の6月2日に始めた、この英語の語源が身につくラジオですが、私自身も持っていなかったんですけれども、7ヶ月、無事に続けることができまして、年をまたいで2022年となりました。
今年もですね、なるべくできる限り続けていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えする。これが趣旨です。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、正月だからといって特別な話題でもないんですけれども、女性後遺者設備児、スターについてです。
今年は日本的に言えば、虎年ということになって、タイガーですね。
このタイガーというのは、一般的に虎を表すわけですけれども、あえて性別を意識して、オスの虎という時にタイガー、そしてメスの虎という時にはタイグレスという風にESSをつけるわけですね。
このESSをつけて女性名詞を作るというのは、他にも色々ありますね。
アクター、アクトレスというのがよく知られています。ホスト、ホステスというのもそうですし、ウェイター、ウェイトレスというのもそうですね。
動物でも、タイガー、タイグレスもそうですし、ライオン、ライオネスというのもありますね。
このESSというのが特別に女性名詞を作る設備児ということになるんですが、
語尾の歴史と例
これは実はラテン語からフランス語を経由して、中英語期に英語に入ってきたものなんですね。
つまり本来の語尾、設備児ではなくてですね、外から入ってきたものということになります。
では本来語、本当の英語に由来する女性語尾というのがあるのかというとですね、これがあるんです。
男性語尾、あるいは男性と女性を合わせてですね、特に性別を意識しないものとしてERというのが現代語がありますが、
これ小英語ではEREと書いてELEというのがあったんですね。
一方これに対する女性の好意者、設備児としてですね、STERと書くスターというのがあったんですね。
これあまり今では馴染みがないかもしれませんが、小英語ではEREという男性形に対してSTERという女性形があったということなんですね。
例えばですね、小英語からの例を挙げてみたいと思うんですが、
フレアペストレ、エストレという語尾が聞こえますね、フレアペストレ。
この前半のフレアップというのは何かというと、これはリープなんです。
これ現代語のリープですね、飛び跳ねるということです。
ここから飛び跳ねる女性ということで、これフィーメイルダンサー、踊り子、女性の踊り子という意味なんですね。
同じようにホッペストレというのもありました。
これホップです。まさにこれも飛び跳ねるということですね。
同じようにフィーメイルダンサー、踊り子のことです。
ホッペストレであるとか、フレアペストレというのがありました。
それからですね、ラーレストレというのもありましたね。
ラーレというのは何かというと、これ語源的にはですね、loreとかあとlearnにも通ずるんですけれども、
学識、学ぶ、そして実は教えるという意味があったので、これ女性教師ということです。
ラーレストレということですね。
他にはですね、例えばサンゲストレ、これは女性歌手です。
サング、わかりますね。これソング、シングということですね。
それからセアメストレというと、これseam、ぬうということですね。
おはりこということです。
それからウェベストレ、これはwebという部分はweave、織るです。
織物を織るということなので、まさに織姫ということになります。
それからですね、これは公英語というよりも中英語機にできたんですけれども、スピンスターというのもありますね。
このスピンというのは紡ぐです。糸を紡ぐということで、やはりこれもですね、糸を紡ぐ女ということで、
現代の用法と変化
織るとか紡ぐとかぬうという、いわゆるおはりこさんですね。
これは女性の職業だったということで、こうした語幹にエストレがついてそれを行う女性というのは非常に古くから、
公英語、中英語からいくらでもあったということですね。
この中でこのweaveにエストレをつけたウェブステレというのは、これいわゆる人名としてのウェブスターですね。
辞書で有名なウェブスターって言うんですが、これ語源になります。
元々は織姫ということなんですね。
さあ、このように公英語では、そして中英語でもある程度そうなんですけれども、
ereの一般的な人を表す行為者名詞ですね。
主に男性を表すわけなんですが、これに対してstre、一つの後にはsterとなったスターという発音ですね。
これが女性を表したということなんですが、
面白いことに、中英語以降はこれが女性限定ではなくて、単なる動作種名詞、つまり女性に限らず男性でも、そして人一般ですね。
つまりerと似たような意味になってきたんですね。
それが、例えば今残っているものとしては、yangsterとかgangsterというのがありますよね。
これyangsterというのは若者ということで、特に若い女性というように女性限定ではありません。
本来であればsterですから女性のはずなんです。
ところがyangsterに見られるように、女性というもともとの意味がですね、薄れてしまって、人を一般を表すようになったということです。
同じようにgangsterもそうですね。
どちらかというとこれ男性の方が多いかなということですね。
他には例えばfraudster、gamester、jokester、mobster、punster、rhymester、speedster、flickster、tapster、teamster、tipster、tricksterのように、
一般に人を表す名詞となる、そういう設備字に変化していったということですね。
ただ今挙げた5のですね、この響きからなんとなくわかると思うんですけれども、なんとなく軽蔑的な響きなんですね。
下に見る、社会的に下の方に見るという含意があるというのが面白いところですね。
この下の方に見るというか軽蔑的な含意がどこから来たかというのは、これ自体非常に面白い問題なんですけれども、
実は本来語ではなくてラテン語にもですね、形態的に非常に似た行為者名詞を作る設備字というのがありまして、
これがasterというね、asterというネガティブな含意を持つラテン語の設備字があるということで、
例えばcriticasterであるとかpoetasterなんていう単語がありますね。
他に形容詞にですね、このsterをつけたものとしてはoldsterとかyoungsterもそうですね、こういったものもあるということで、
職業名として定着したものもありますね、先に述べたようなwebsterとかあとはbacksterってのもありますね。
このbacksterというのは実はベイカーです。パン屋さんの女性系でbacksterと言っていたものが特に女性ではない一般にベイカーの意味で用いられるということで、
こういう名詞にも定着したということです。
こうして時を経るうちにですね、sterというのはもともとは女性名詞を作る行為者名詞の設備字ですね。
であったものがですね、一般に女性だけではなく男性もつまり人を表すという一般的なものになったためですね、
今純粋に女性名詞を作るという雰囲気はなくなってしまいましたね。
この痕跡と言いますか、唯一女性のみに使われるということで生き残っているのがspinsterということですね。
これはもともと糸を紡ぐ女ということですが、そこから少し意味がですね、
悪化、deterioration、未婚女性、独身女性を表す言い方になっていますね。
それ以外はほとんど女性という含意はもうほぼ消えたのではないかと思われます。
さて今年の一発目はですね、この女性語尾という話題でしたが、
基本的には英語の語源が身につくラジオということで語源の話題を中心にお届けするんですけれども、
一般に英語史ですね、広く英語の歴史ということにこだわっていきたいと思います。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
それではまた。