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2024-08-31 10:00

heldio #42. なぜ busy という綴字でビズィと発音するの?


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サマリー

ポッドキャストのエピソードでは、「busy」という単語の不規則な発音について探求しています。特に、古英語から中英語への変遷や地域による発音の多様性がどのように影響を与えたのかが解説されています。

busyの発音の不思議
おはようございます。英語の歴史を研究しています。 慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった 英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる素朴な疑問は、
なぜ busy という綴字でビズィと発音するの、 というものです。
busy という綴りですから、これはまあ、ブズィとかブズィとかですね。
こんな風に読むんじゃないかと思うんですが、実際にはこれビズィという風に、uではなくてiで綴ったかのように発音しますよね。
この単語は非常に頻度の高い日常語であって、英語学習の早い段階で学ぶわけなんですけれども、
この早い段階で学ぶからこそですね、この不規則性、なんでuと書いてiなんだという、こういう突っ込みが入るわけですよね。
これただ一旦ですね、学んでしまうと覚えてしまうと、そういうもんだということになって、すっかりほとんどの人はもう慣れてしまっていると思うんですね。
これでビズィと読むということに、本当変なんですが目が慣れているということなんですね。
これは実は疑ってみる必要があるんですね。とってもおかしいことなんです。
英語の単語は数百万語あるという、世界で最も語彙の多い言語なわけなんですが、広く見渡してもですね、いくつかあるかもしれませんけれども、
英語の歴史的背景
いわゆる日常語というか普段接する単語で、uと書いてiと読む単語なんていうのは他にないんですね。
ビズィの他に、この派生語であるこれに、ネスという名詞語尾をつけたビズネスというのがありますね。
これはあるんですけれども、このビズィとビズネスだけなんです。
なぜこれuと書きながらiというに発音するのかと。
これはですね、実は英語史的には非常に深い、そして面白い理由と言いますかね、背景があるんです。
しっかりと説明することができます。
さあ歴史を振り返ってみましょう。
この単語はですね、1000年ぐらい前の古英語の時期にはですね、bysigみたいな綴り字で、ビューズィという風に綴られて、そして発音されてたんですね。
ビューズィという漢字だったんです。
その次の時代、中英語期になりますと、実はですね、ノルマン征服、1066年のノルマン征服によって、フランス語の支配の下にイングランド、そして英語は置かれるんですね。
そして古英語の時代にあった英語のいわゆる標準形、発音にしても綴り字にしてもそうなんですが、標準形があったものが一旦ですね、無に帰すんですね。
フランス語が非常に強くなって、英語は格下の言語になったということでですね、標準語、もっと言えば書き言葉の世界から追放されるということです。
ほとんど書かれない時代というのが続きました。
ですがその後ですね、英語も徐々に復活、復権していきます。
ところがですね、一回書き言葉から離れていたわけですし、そして言葉というのは常に地域ごとに方言というのがあります。
これは日本語でもいくらでもありますね。そんなに広い国ではないですが、非常に様々な方言があります。
数十キロ離れるとですね、また異なる方言になっているっていうのは、実は同じ島国としてですね、イギリスも同じなんです。
数十キロを隔たるとですね、別の方言地域に入るということですね。
これ非常に面白い類似点だと思うんですけれども、例えばアメリカであるとかオーストラリアのような大陸国家ですと、後から英語が持ち込まれたということもありますが、実は非常に広いんですが、言語的には一様なんですね。
方言がないではないんですが、さほどない。
にも関わらず島国であって、しかもちっちゃい日本であるとか、ブリテン島ですね、非常に細かく方言が分かれているということがあります。
さあこの中英語記にはですね、非常に方言が激しく多様な形で存在していまして、このビューズィーと小英語時代に言っていたこのビューの音ですね、イっていう音がイングランドの北部方言ではイって発音になったんですね、つまりビーズィーってことです。
これ現代に通じますので一番分かりやすいかもしれませんが、北部ではイだったんですね。
ところがですね、南東部、イングランドの南東部ではこれが生ってエの音になります。つまりベーズィーってことです、ベーズィーですね。
そして南西部ではこれが元々の小英語の音を保ってビューズィーであるとかブーズィーとかユとかウという音に近くなります。
改めてまとめますと、北部では、北の方ではイの音になったんですね。そして南東部、右下の方ではエの音になったんです。そして南西部、左下の方ではユという音になったんですね。
つまりこの忙しいという単語はですね、北部ではビーズィーだったけれども、南東部ではベーズィーだし、南西部ではビューズィーというちょっとお互いなまった形で使われてたってことなんですね。
書き言葉から下ろされたぐらいですから、英語にはもう標準語、標準形というものはありません。えらいのはフランス語で標準形というのであればこれはフランス語を使いなさいという話なので、英語はそれぞれの地域で独自のそれぞれの方言形というのが使われていたっていうことなんですね。
発音と綴字の分岐
どれが正しいというわけでもない。すべて正しくないと言いますが、ただの鉛という形で標準的中心的なものってのなかったんです。ところが徐々にですね、14世紀、15世紀にかけて再び英語が復元してきます。
そしてロンドンという大都会で用いられる形が次第にですね、広まって標準的な地位を得るということですね。それ以前は北部であればビジーという発音ですから、北部出身の書き手はですね、そのまま自分のビジーという発音に従ってBISYのように書くわけですね。
南東部出身の書き手はベジベジと普段言ってるわけですから、当然BESYと書いて何も疑問に思わないわけですね。そして南西部出身の人はですね、これ普段からビジビジって言ってるわけですからBUSYというわけです。
さあ、ロンドンの大都会にこれら様々なイングランドの方言を喋るイングランドの地方出身者が出稼ぎも含めてロンドンに集まります。さあロンドンは方言のるつぼです。ここでは発音上もビジー、ベジー、ビュジーすべて行われています。
一方、書くものも書かれたものもBISYもあればBESYもあればBUSYもある。つまりいろんな人が混じって発音するし、いろんな人が混じっていろんな書き方をするわけです。ある意味混乱が生じますね。
ただこの混乱の中から徐々に現代に通じる標準形なるものが徐々に生まれてくるわけです。なんとなく全体として優勢なものって言いますか、好まれるものっていうのは決まっているんですが、
これで面白いことに、発音上は北部出身のビジー、つまりイの音がなんとなく優勢となって標準化したんですが、つづり字はまた別の世界で、こっちはこっちでまた別のものが標準化しちゃったってことなんですね。
こちらは南西部由来のBUSYの方が書き方としては優勢になってしまった。つまり発音とつづり字が違う方向、違う方言由来のものでどうも標準化してしまったっていうことなんですね。
これ発音とつづり字が別世界で別立てで標準化したからっていうことなんですね。もちろん後の人にとってはこの2つ合わせたら合ってないじゃんということになるわけですが、もう時はすでに遅しということでこれが標準化してしまったということです。ではまた。
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