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2024-10-01 10:00

heldio #73. -in' は -ing のだらしない省略形?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #社会言語学 #stigma #標準英語 #接尾辞
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、-in' は-ing のだらしない省略形、という疑問です。
この表記上、よく歌詞であるとかですね、見かけると思うんですけれども、ing、これ現在文字であるとか同名詞やその他のing ですが、これがですね、表記上in' というふうに、g がですね、省略された形で表記されるin のような語尾が出てきますよね。
これ一般にはですね、非標準的な用法とされていまして、ただ交互ではよく出たりするんですよね。
歌の歌詞なんかはよく出ると思いますし、一般に歌詞じゃなくても詩ですね。詩にはよく見られます。
そしてまたですね、使用する人々としてはですね、比較的ですが、ワーキングクラス、労働者階級の人々が使うということで、全体的にはですね、何か省略しただらしない、少し口語っぽい俗語っぽい響きがあってですね、正式じゃないなっていう印象を持っている人も多いと思うんですね。
ですが、これはですね、歴史的に見ると決してですね、だらしない省略形というわけではないんですね。歴史的にはまた別の見方ができるという話題です。
議論は2点あります。まず1点目なんですが、これは決して省略形ではないということなんですね。
いやいや、INGのGが省略されてアポストロフィーなんでしょうと、ツッコミが入りそうですけれども、確かに表記上はそのように見えます。
INGのGがなくなっているので、なくなっているよという印としてですね、アポストロフィーをつける。
こういうふうに省略の時にアポストロフィーをつけるというのは一つの英語表記上のルールですよね。なので確かに表記上はGが欠落して、その文をですね、アポストロフィーでマークしているというふうに見えるのは事実です。
ですが、発音で考えたいんですね。発音で考えてみるとどういうことかと言いますと、例えばですね、私はある犬を散歩させているところだという時に、I'm walking a dogというのが、これが正式な標準的なINGの発音ですね。
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I'm walking a dogの音が聞こえます。次に、アの音があると、この違いが分かりやすいんでね、シーンというのは。I'm walking a dogとなります。一方、表記上、INGで言うバージョンはですね、I'm walking a dogというに、いなってなる通り、Nで終わっているということですよね。
ここでですね、発音だって、表記、つづり字と一緒で、やはりGが省略されているということではないかと思うかもしれませんが、そうではないんですね。発音上は、実はINGの発音は、Iで表されるイの音の後は、NNNという一音です。
NGではないんです。NNNという音です。もしNGだったら、Walking a dogになるはずなんですね。そうではなくて、I'm walking a dog、Walking a dog、が、がではなく、がです。
微濁音という日本語で言いますが、がではなく、がとなる通り、発音記号で書くと、このIの文字の後ろに、このNの下にフックが付いたね、あのGの小文字の下の部分みたいなフックが付いたINGっていうのが、このINGの最後のシーンです。
つまり、ING部分は二音からなっているんです。イ、ダス、ヌです。そして、IN'で綴られる、一般に省略形とみなされるものの発音は、当然IN、前置のINと同じ発音で、イの後に、ヌ、な行のシーンが続くということですね。
つまり、これもやはり二音なんです。ということは、INGせよですね、IN'にせよ、結局この部分は二音なんです。イ、ニ、ヌが続くか、ヌが続くかということで、合わせてとにかく二音なんですね。
ということは、音として何かが省略されているわけがないんです。三音から二音になるのであれば省略と言えますが、これ二音、二音ということで、つまり音が変わるってだけです。最後の音が。最後のシーン部分が、ヌでなく、ヌになるっていうことであって、決してこれを省略形と呼ぶことは、発音上はできないってことです。むしろ置き換えです。
あるいは交代といった方がいいのかな。ヌとヌの間で交代しているっていうふうに捉えます。なので何かが省略されているわけでは決してないということなんですね。表記上、何かが省略されているかのように誘われてしまいますが、あくまで発音の世界で考えますと、決してこれは何も省略されていない。交代、シーンの交代が起こっているだけだということになります。
次に議論の2点目です。ここからが歴史なんですけれども、実はこのingの発音とinの発音というのは、この交代といいますか、入れ替わりみたいなものは実は非常に古くからあります。つい最近始まったわけではないんですね。
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このヌの音が現れるのは近代英語ですので、この辺りにまで少なくとも遡れますし、さらに言うと、遡った中英語を置きからiの後にnが来たり、他の類似する鼻音という鼻に行く音があったりする場合に、この辺りが一色端になってしまう。
語尾でどっちにしろ弱い音なので、はっきりと区別がつかないという状態で、交代したり混同したりということは、元を探ると中英語ぐらいから普通にどうもあったようなんですね。
近代英語期に、このヌの音が出た時も、このingのバージョンとinのバージョンですね、つづりで書くと、その2つが混同されてきたという歴史は今に始まったことではない。かなり古くからあるということなんです。
そして驚くことに、今でこそ標準的なのはつづり字通りのingなんですが、そして非標準がinのinということになっていますが、この価値の上下ですね、ingの方が上でinの方が少し社会的にはランクが低いとされているこの価値体系と言いますかね、上下関係は100年ほど前はですね、
実は逆転してたんです。つまりinこそが威信のある発音であって、ingの方がむしろ非標準的だったという証拠があるんですね。
この100年前、19世紀末ぐらいの話なんですが、上流階級はですね、このinというinの方をよく用いていた。そうでない階級がingを用いていた。それがこの100年くらいの間にですね、価値がある意味逆転してしまった。
音は何も変わっていないわけですね。ingとinのこの関係というか対立自体は古くからあるし、もちろん100年前からもあります。ところがどっちが上でどっちが下か、社会的に高く見られるか低く見られるかという価値はどうも逆転してきている。
特にビクトリア町、19世紀半ば後半あたりはですね、この上流階級とか中級の上あたりも含むんですが、そのあたりが実はinの方をむしろ常用していた。これがいわゆる丁寧な発音ということになっていたんですね。
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この100年くらいで価値が逆転したのはなぜかということは、これ一つ探ってみる価値はあると思うんですが、一つはですね、つづり字の影響です。最初にも述べましたが、ingというのはgが消えてしまったズボラな発音だというような見え方につづり字上どうしてもなっちゃいます。正式なのがing。
そしてそこから省略化されたのがinだという見方ですね。こうして書き言葉のある意味優勢と言いますか、社会的な価値が高く認められれば認められるほどingの方が偉くなってinとかinアポストロフィーというのはそこから逸脱したちょっとズボラなだらしない形発音だというイメージになってきたんではないかと思われます。
それではまた。
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