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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
3にまつわる語源の考察
今回取り上げる話題は、昨日に引き続き、3 にまつわる語源あれこれ
コンテストもというお題です。
3 という数詞ですね。非常に日常的、当たり前の単語なんですけれども、これでですね、まあ10分は話せるだろうと思ってたんですが、全く終わらずに昨日終わってしまいました。
なので、第2弾ということで、この続き、続編をお届けしたいと思います。この 3 にまつわる語源についてですね。
昨日の放送では、グリムの法則というのを出しました。本来の英語の大元の祖先であるインドヨーロピアンと呼ばれる言語では、これ書き言葉で残っているわけではないんですが、それぐらい古い、紀元前4000年とかそれぐらいのレベルの話でですね、まだ書き言葉がない、文字がないっていう時代なんで、わからないんですが、いろいろ言語学の手法でですね、復元することができます。
その頃の3を意味する単語はですね、トレイというふうに、THではなくTですね、TREIという形だったというふうに考えられています。
そしてこれが多くの引用祖語の末裔たちですね、現代のインドヨーロッパ諸語にそのままTRとして伝わっているんですけれども、ゲルマン語、とりわけ小英語ですね、そして現代語もそうなんですけれども、ではTの音がグリムの法則と呼ばれる音変化、詩音の変化によってTの音がTHの音に化けたということなんですね。
それで今TREIとなっている。なので3を意味する単語でTHRですね、連携的には。これを持っているものは本来の英語、ゲルマン系から伝わる本来の英語だと考えていいです。
3本体はもちろん、その複合語であるところの13とか30とかthirdですね。THIRのようにTHR母音というよりはTH母音Rという形になっているんですが、これは母音と詩音がひっくり返っただけですね。
基本的には語頭のTHに注目すれば、3というのは本来の英語だということがわかると思います。他にonce、twiceの次のthriceなんていう単語、これもそうですし、昨日の放送の最後に述べたようにthreadingから派生したTHが消えてしまったreading、そして現代の発音としてridingですね。
North Riding of Yorkshireのような表現、ridingに痕跡を留めている。THそれ自体は消えてしまったわけなんですが、語源的に関連するということでここまで説明したんですね。
ところが英語には、グリムの法則、つまりTがTHになるという変化を経て英語になったわけなんですけれども、そのグリムの法則を経ていないかのようなTだけですね。THではなくてTで始まって3を意味する単語というのが思いのほかたくさんあるんです。
これは本来のゲルマン語英語という経路を辿って英語に入ってきたものではなくて、明らかにギリシャ語であるとかラテン語フランス語という、つまりインオーソ語のもともとの3を表すという意味のトレイですね。
このTがそのまま残っている言語からずっと後の時代になって英語を借りてきたという、こういう経路を示唆するわけですね。
例えばですね、3を意味してTHではなくTで始まっている単語を思い浮かべてみると、まずすぐ上がるのがTRIPLEですね。3倍のっていうTRIPLEですね。
これT-R-I-P-L-Eっていうことで決してTRIPLEのようにTHになっていません。ですが明らかにTRIの部分は3って意味ですよね。
プルっていうのは何何倍っていうかですね、多くのっていうのが本来です。プラスとかプレンティーとかマルティプライという時のプライです。何倍って意味ですね。
なのでTRIPLE、これ3倍っていうことなんですがTHではなくTなので、これはよそから来た単語である。
つまりラテン語、フランス語あたりから入ってきた単語であるっていうことが、このTHではなくTであって、しかも意味的に3が関係するという。
これだけわかっていればですね、英語詞であるとか語源の複雑なことを知らなくてもですね、これはよその言語から入ってきたんだなっていうことが一発でわかります。THでないってところがポイントです。
他に、それ考えますとTRIOですね。3人1組、あのTRIOですね。TRIO、これもTHではなくあくまでTです。TRIOっていうことですので、これは外から入ってきたっていうことがわかります。
他には三脚、TRIPODって言いますね。これTRIっていうのが3でPODっていうのが足なんで、まさに三脚ですよね。TRIPOD、これも外から入ってきたっていうことがわかります。
そしてTRIDENT、三つ股、三つ股の矛なんていうときの三つ股ですね。TRIに対してDENT、DENTっていうのは歯です。デンタルクリニックのDENTですね。
3つの歯っていうことで、3つの三つ股の矛。それから、それ以前に言うべきでしたね。TRIANGLEってのがありますね。これ三角形。まさにTRI、3つのANGLE、角ということで三角ということで非常にわかりやすいですね。
THではなくTですから、これも外来の単語であるということがわかります。
さあ、ここ以降はTで始まるんですけれども、意味的には3が関係すると。ただこれ、自名でない例をいくつか挙げていきたいと思います。
まずですね、TERTIARYってのがありますね。TERTIARY、例えばTERTIARY EDUCATIONなんていうと高等教育のことを言うんですけれども、このTERTIARYのTAの部分が実は3なんですね。
これ、初等教育は第一の教育っていうことでPRIMARY EDUCATIONって言いますよね。そして中等教育は第二っていうことでSECONDARY EDUCATION。とてもわかりやすい。
そして第3が、いわゆる高等教育と訳すんですがTERTIARY EDUCATIONっていうわけです。このTERTIARYのTAの部分が実は3に相当するラテン語の部品っていうことなんですね。
なのでこのTで始まって、一応第3のという意味になりますので、これも外来ということがわかります。具体的にはラテン語なんですけどね。
そして最後にですね、一連の単語を示したいと思うんですが、驚くことにですね、CONTESTという時のこのTESTですね。
CONTESTと法律的な用語の関連
試験のTESTとはまた語源が違うんですけれども、CONTESTであるとかPROTESTであるとかATTEST、TESTAMENT、TESTIFY、TESTIMENTっていう時のあのTESTという時のTEの部分ですね。
これ実は3に関係するんです。どういう意味と思うと思うんですね。
例えば新約聖書、旧約聖書という言い方で、NEW TESTIMENT、OLD TESTIMENT、TESTIMENTって言いますよね。
あれ契約っていう意味ですよね。神との契約っていうことです。
それから関連するTESTIFYとかTESTIMONYっていうのも証言することであるとか、証言、契約、なんか法律用法っぽいわけですよ。
これどういうことかと言いますと、このTESTの部分は実は3の語源であるTRAYとSTANDの語源ですね。これが合わさったもので、つまり第三者として立っているっていうことなんです。
つまり当事者AさんBさんではなく、その部外者ですね。第三の客観的な立場にいる第三の立場の人って意味なんですね。
ここで契約、つまり契約書を取り交わすには第三者の監督が必要なわけですよ。
だから証言、いわゆるこれ法律用語、裁判用語ですが、当然当事者A以外に第三の中立な人がいなければいけないわけですよね。
ということで第三の人という意味から、この証言とか契約であるとか、法律的な雰囲気のある用語になっていくんですね。
だからATTEST、CONTEST、PROTEST、あとDETESTなんかもそうですかね。
これなんかも第三者として、例えば抗議するであるとか、証言するであるとかですね。
そういった契約、証言というような意味合いを含む単語にどんどん派生していったっていうことなんですね。
CONTEST、あるいは動詞のCONTESTというのも、本来は公弁するということで一種の裁判用語なわけですよね。
このあたりまさか繋がっているとは思わなかったと思います。ではまた。