2025-04-16 09:58

heldio #270. cheap の語源

#英語史 #英語教育 #英語学習 #語源 #意味変化
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サマリー

今回のエピソードでは、「cheap」という単語の語源について掘り下げており、元々は商人を意味するラテン語の「cowpo」から派生したことが明らかになります。この変遷を通じて、取引や物々交換の意味がどのように記憶されているのかを探ります。

cheap の語源の概要
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回の話題は、
cheap の語源、です。
cheap というと、安い、物が安いということで expensive、高いの反対語ですね。非常に日常的な単語なんですけれども、この語源をひも解くと、実はもともと安いという意味ではなかったということがわかるんですね。
形容詞ですらなかった、名詞だったということなんですね。 意味変化の非常に興味深い例として紹介したいと思います。
この単語は、もともと英語でもないんですね。そしてゲルマン語でもなくて、おそらくはですね、究極のところはよくわかっていないんですが、
ラテン語のカウポウという単語ですね。 これはまあ、商人ですね。小売り商人を意味したカウポウという名詞です。
これがですね、非常に早い段階で、英語にというよりもゲルマン諸語に入ったというふうに考えられています。
つまりアングロサクソン人がですね、ブリテン島にやってくるその前の時代、いわゆる大陸時代と呼ばれる時代で、ゲルマン語がまだ今のようにですね、様々な言語へ完全には分化していない、
そういうタイミングですね。ドイツ語であるとか、北欧語であるとか、英語であるとかが、まだですね、方言ぐらいの違いとして存在していた時代に、ヨーロッパ大陸北部にあった時代に、南からラテン語カウポウが入ってきたということですね。
この早い時代にラテン語からゲルマン語に入ってきた単語っていうのは、こういったタイプの行商、取引、またその取引していた物であるとか、そんな単語が多いんですね。
当時のビジネス用語ということですけれども、これがどうやらカウポウがですね、商人を表す意味であったラテン語のカウポウがゲルマン諸語に入ったということです。
なので、その後ゲルマン諸語が様々な分かれてですね、異なる言語となっていったんですが、この早い時代に入ったカウポウの痕跡は、未だに多くの言語で実は残っている。
そして英語ではですね、発音が変わりましたが、これがチープということになっているんですね。
そしてドイツ語なんかではカウフという形で入っているし、オランダ語などではコープという形で入っています。
さあ、このドイツ語、オランダ語では最初のKの音ですね、これがラテン語のカウポウと同じKの音でちゃんと残っているんですが、英語ですね。
英語の場合はこのKっていう音がですね、その次に来る母音の種類に応じてですね、チュっていう音になる、公害化なんて言いますが、これが起こってですね、チュの音なんですね。
なのでチープになっていくんですが、小英語の段階ではチェーアップというような発音でした。
チェーアップ、これが後にチープという発音になっていきますが、もうすでに小英語の段階でチュっていう音、クではなくチュの音が現れていたわけです。
さあ、このゲルマン語に入った、この元々カウポウというラテン語ですね。
ゲルマン語に入った際にはですね、意味としては取引、物々交換みたいな意味を発展させたんですね。
そして小英語のチェーアップもですね、その意味です。取引、物々交換、いわゆる交易ですね、のことを意味したというわけです。
他の言語でもオランダ語であるとかドイツ語でもこの意味が引き継がれて、そして現代に至ります。
現代でもドイツ語でカウフといえば、これ買うこと、売り買いすることというぐらいの意味ですね。
そしてこれを動詞化してカウフェンといえば、これまさに買うという、英語で言う買いに相当するそういう単語ですよね。
ですので英語でもですね、小英語ではチェーアップと聞いて、これで名詞だったわけです。
交易、取引、物々交換ということですね。
中英語にもこの名詞としてのこの意味がずっと続いていました。
ですから交易ですから市場っていう意味合いも出ますね。
そこで例えばロンドンの中心部を今でもですね、東西に横切っている通り、これチープサイドっていう通りがありますが、これは安っぽいサイドというわけではなくて、あくまでこのチープはマーケットぐらいの意味なんですよね。
取引が行われている側というそういう名前です。チープサイドということですね。
他に例えば言語は変わりますが、同じゲルマン語の仲間であるデンマーク語、デンマークの首都コペンハーゲンですね。
コペンハーゲンという英語での呼び方で、デンマーク語ではケヴンハウン、ケヴンハウンといいますが、このケヴンの部分、これがまさにこのカウポーに由来する単語で、要するにケヴンハウンというのはマーケットヘイブン、市場の港ぐらいの意味なんですね。
このように広くゲルマン語ではですね、取引とか交易とか場合によっては市場というようなそれぐらいの意味合いでですね、広く使われていたと。
英語でも小英語から中英語までこの意味でよく使われていたということなんですね。
現代の意味への変化
ところがある時から安いという現代の意味につながる用法、名詞ですらなくですね、形容詞になってしまうということが起こります。
これはなぜかというとですね、どういう経路でこんな意味変化が起こったのか、もちろん取引とか売買ですから、お金に関係はしますよね。
ですが具体的にはどういう経路でこの安いという意味が出てきたのかというとですね、これはこの元々の名詞用法に基づいて、
at good cheap みたいな言い方が13世紀あたりより使われていたんですね。
at good cheap というと、良い買い物で良い取引でということで、日本でも良い買い物をしたっていう時ありますよね。
これは物の割には安く済んだっていう風に使う、つまり良い買い物っていうのは買い手にとってはこれ安かったという意味になりますね。
こうしたイディオムとして、at good cheap こういう表現が13世紀あたりから見られるんですね。
これ自体もですね、実はお隣フランス語の対応するイディオムですね。
à bon marché、これも at good cheap、at good trade ぐらいの意味です。
なので、このフランス語で安いを意味した à bon marchéをそのまま英語に一語一語移し替えたのが
at good cheap ということになります。
そしてこの at good cheap という言い方、良い買い物でつまり安くという意味だったものがどんどん縮まって
単に cheap だけでそれを意味するようになった、安いということですね。
こうして形容詞になったということで、取引の意味の cheap 名詞の意味がひとっ飛びで形容詞の安いになったわけではなくて
間に at good cheap というイディオムが挟まっていたっていうことですね。
そしてこの at good cheap が省略されて、最後の一語だけを取って cheap これで安いということになったということですね。
それ以前は実は安いを意味するズバッという一語の英単語がなかった。
高い方があったんです。これは dear ですね。 expensive というよりは dear 高価なという意味で今でも使いますけれども
この dear の反対語がなかったという、この穴を埋める役割を果たしたということですね。
at good cheap これが縮まって cheap ということです。
さあ、同語源の単語として他には英語にも chaffer なんていう単語がありますね。
chaffer あまり使われませんが、値切るというまさに交渉する取引するということです。
chaffer なんていうのも語源的に関係しますし、それから chapman ってありますね。
chapman これは行商人のことです。 機内をする人ということで chapman
さあいかがでしたでしょうか。もともとは cowpo というラテン語を取引という意味だった。
それがゲルマン語にかなり早い段階で入った。 英語が英語になる前の時代ですね。
ですから現在でも様々なゲルマン諸語の中にこの cowpo を語源として持つ単語がですね。
だいたい取引という意味で残っている。 ところが英語の場合では意味が少し変質した。
発音も cheap になりましたけれども、取引という意味からフランス語のイディオムをなぞった形ですね。
ここを経由して最終的に形容しやすいになったということです。 それではまた。
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