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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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さあ本日扱う内容はですね、 chase と catch は同語源という話題です。
この chase これは追っかける、追跡するということですよね。追っかけた結果、キャッチ、捉える、捕まえるということなので、
確かに語形は違うんですけれども、意味的な関連はあるっていうのは chase and catch ですね。
これはありそうだということは言われてみればわかると思うんですが、実はこれが同語源なんですね。
語形が少し違うんですが、一つの語源に遡る。
このように語源は一つなんだけれども、それぞれ事情があって、少し意味であるとか形ですね、発音、綴りなんかを変えながら、
2つが共存している場合っていうのがありますね。
これ、二重語、ダブレットというわけなんですが、英語には非常に多くのダブレットがあるわけなんですが、その一つがこの chase と catch なんですね。
この二重語が面白いのは、実はこれ釈用語なんです。フランス語から借りた単語なんですね。
そして chase の方は同一の単語なんですよ。同じことなんですが、ある方言、フランス語のある方言からやってきたのが chase。
そして catch はまた別の方言から、フランス語の方言から入ってきたということですね。
つまりフランス語の中では実は共存していない。
方言の違いによって chase だったり catch だったりっていうことがあって、
chase と catch が同じところで用いられるっていうことはないわけなんですが、たまたま英語はその二つを取り入れてしまったために、英語の中では共存しているという面白い例なんですね。
さあ少し由来をたどってみたいと思うんですが、その前にちょっと歴史です。
英語にはフランス語からの釈用語が多いんですが、これはなぜかというと、1066年にですね、ノルマン征服、ノルマンコンクエストと呼ばれている大事件が起こります。
これはですね、イングランドがフランス語話者であるノルマン人、これはフランスの北部にノルマンディ地方ってありますけれども、ここの住人たちをノルマン人と呼んでるんですね。
基本的には文化的にも言語的にもフランスですので、英語はしゃべれません。このノルマン人たちはフランス語、ただしフランス語のノルマンディ地方の方言、ノルマン方言のフランスですね。
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中央のパリのフランス語とは少し違う、ちょっと生まれているというようなフランス語を話している、このノルマン人によってイングランドが征服されてしまうという事件が1066年に起こりました。
この結果ですね、このリーダーがウィリアム一世ということになって、イングランドの王になるわけなんですが、このウィリアム一世や従ってきた貴族たちはみんなフランス語話者です。
ノルマン方言のフランス語話者ということで、これをきっかけにしてですね、英語の中にたくさんのフランス語が、ノルマン方言のフランス語が流入してくることになります。
これがノルマン方言のフランス語ってやつなんですが、一方でですね、もう少し時代が経ってくるとフランス語との関係、あるいはフランスとの関係がですね、ノルマン地方とかノルマン方言を経由してではなく、直接パリ中央のフランス語と接触するようになって、これまた別個ですね、単語が流入してくることになった。
フランス語側から見ると、実は同じ一語のちょっと生った形と正当な標準的な形というぐらいの違いなんですが、これが別途ですね、英語に2つのルートを経て、同じ単語が入ってきたケースがあるってことですね。
これがキャッチ、チェイスというわけです。
このキャッチの方はですね、捕まえるっていうことですが、これが先に入ってきまして、これは1200年ぐらいにですね、ノルマンフランス語から入ってきました。つまり生った形なんです。
このキャッチが生った形なんですが、じゃあ標準形は何だかというと、これがいわゆるチェイスと相当する発音を持っていた単語なんですね。
これが今度は1300年ぐらいに近い意味ですね。追いかけるっていうことですが、という意味を伴って中央のフランス語、標準的なフランス語から別途英語の中に入ってきた。
こうして英語ではキャッチ、チェイスが少し意味と形ですね、お互いながら共存することになったんですが、言われてみれば同一語源かもというふうに考えさせられるような実際形だったり意味だったりするわけですよね。
このキャッチ、チェイスの例で見てみますと、フランス語のこのチェイスの方ですね、中央の標準的なフランス語のチュの部分っていうのがノルマンなまりではチュの音がクの音を分けるんですね。
だからチェイスのチュっていうのとキャッチのクって最初の音、これはきれいに標準体方言という関係になっています。
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さらに語末のシーンもそうです。チェイス、中央の標準的なこのチェイスという形のスという部分ですね、語尾の。
これはノルマンフランス語ではチュって音の対応するんです。
だからきれいにこれ音の対応っていうのが標準体方言ということで表していますね。
これ両方取り入れだっていうことです。
他にですね、いくつか例を見ていきたいと思うんですが、例えばこんな例もありますね。
標準フランス語のチュがノルマンフランス語のクに対応するものとしてはですね、例えばこんな例があります。
チャト、これあまり聞かないかもしれませんが家財、家の財産ですね。
チャトという単語がありますが、これと実はキャト、家畜というのは標準体ノルマン方言というこのダブレット25に相当するんですね。
チャトに対してキャト、両方とも確かに財産という意味では一致しているということですね。
他にもですね、チュとクの違いだけではなくて、いろんなところにこの中央フランス語とノルマンフランス語の違いっていうのは微妙な音の違いでありまして、
例えば中央ではグ、Gの音ですね。グの発音なのにノルマンフランス語ではこれがですね、Wのグって音になってしまうんですね。
だいぶ違うように聞こえますが、グとWの対応、これがそれぞれの方言からですね、英語にフランス語が釈放されたときにやはり共存しているという例ですね。
これがあります。
例えばガーディアン、守護者、守る人ですね。ガーディアンでありますよね。
一方、番人ということでウォーデンというのがあります。ウォーデン。
つまりガーディアンとウォーデンというのは、グとWの音ですね。これ5等音比べればわかる通り関連しているということです。
ガーディアンの方が中央フランス語、そしてウォーデンの方がノルマンフランス語ということになります。
同じようにギャランティ、ギャランティ、ウォランティというのもありますし、それからリガードに対してリワードというのがあります。
少し意味がずれているような気がしますが、リガードとリワード、これなんかも同じ語源に遡るんですね。
方言が違ったということです。
他には、母音なんかを見てもいくつかあるんですけれども、ディプロイ、群を展開するということですね。
ディスプレイ、これ広げる展示するという意味で、意味は何となく似通ってますね。
これ実は二重語なんですね。ディプロイの方が中央フランス語でディプロイ、多いという母音を持ってますね。
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それに対してディス、Sが入ったりしますが、ディスプレイというように最後の母音はAになってます。
これがノルマンフランス語ということです。
このようにフランス語の異なる方言、二つの方言から別途、別ルートで、そして大体違う時代に英語に入ってきたが故に、
フランス語内では共存しているはずがないものが英語の中では共存しているという類のダブレット。
これがすごく多くはないんですが、ちょこちょことあってですね、非常に面白いということになります。
語源の勉強になるのではないかと思います。
それではまた。