2025-04-09 07:33

hellog-radio #35. なぜ船や国名は女性代名詞sheで受けるの?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #代名詞 #擬人法
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サマリー

英語における船や国名が女性代名詞「she」で受けられる理由について、文法性の変遷と擬人性の伝統が解説されています。中英語以降、この現象が発達し、現代英語でもその影響が続いていることが紹介されています。

女性代名詞の由来
英語に関する素朴な疑問。 なぜ船や国名は女性代名詞sheで受けられることがあるのですか。
この奇妙な文法現象は、今でも英文法書などで触れられる機会があるものと思われます。
ですので、学生からも非常にこの質問というのはよく上がってくるものなんですね。
船や国名というのは、厳密には無生物ですから、 人称代名詞として受ける場合には、単数で中性の人称代名詞itで受けるのが適切なように思われます。
しかし、時に女性人称代名詞のsheで受けられるということがあるわけです。
いくつか例文を見てみましょう。
まず、船の場合ですが、あるいは乗り物の場合ですが、
というような例であるとか、
のような文ですね。
それから国に対して、sheあるいはherでの受けが見られる例として、
であるとか、
のように、国名をsheで受けるという例があります。
英語の歴史を少し勉強した方は、
これは現代のフランス語、ドイツ語、ロシア語等、 多くのヨーロッパの言語に残っていまして、英語には残っていないわけなんですが、
実は英語でも千年遡った古英語では、この文法性というものが存在していました。
この文法性というのは、すべての名詞が、男性名詞か女性名詞か、古英語の場合、中性名詞もあったのですが、
この3つのいずれかに振り分けられているという言語現象で、
しかもそれがですね、実際にその名詞が指している支持対象の生物学的な性とは必ずしも一致していないということで、厄介な代物なんですね。
この名詞を分類する一つの方法として、グラマティカルジェンダー、文法性というものがありました。
生物のものでも、無生物中性名詞であったり、あるいは女性を明らかにさせているのに男性名詞であったりですね、
いろんなことが起こっているわけなんですね。必ずしもきれいに説明できないというような分類法です。
この古英語で文法性があったという事実を知っている方はですね、
この現代英語に残っている船や国家を受けるこのしという用法も、古英語自体の文法性の名残なんではないかと疑うかもしれません。
しかし答えとして言えば、そうではないんですね。
例えば船について見てみますと、古英語で船というのは、現代でもシップですが、古英語でもシップという全く同じ形であったんですね。
ところがこれは実は中性名詞なんです。
また小さな船を意味するボートですね、これ古英語ではバートという形でありましたが、このバートは今度は男性名詞なんです。
いずれにしてもですね、女性名詞ではありませんので、
現代の船を受けるシーというのが、古英語のこうした船を表す語が文法的に女性名詞だからという理由で、現代もそれが名残として残っているんだという説明にはならないわけですよね。
古英語の文法性はつまりこの現代語の現象に無関係だということです。
ではなぜシーで現代を受けるんだろうかということです。
古英語でこの機能していた文法性、先ほど説明した現象は中英語にかけて崩壊していきます。
そして現代語の文法性がないような言語へと英語は変わっていくわけなんですが、この文法性がむしろなくなった中英語期から始まる一種の伝統なんですね。
このシーで受ける、船を女性に見立てるということですね。
これは大陸の文学伝統、それから文化伝統の影響を受けまして、その前の時代の古英語のいわゆる文法性というものとはまた独立した別の種類のジェンダー、いわゆる擬人性ですね。擬人性が発達することになりました。
そして船であるとか類する乗り物ですね、一般的に道具、それから国家のようなものというのがシーで受けられるようになってきたんですね。
これはなぜかと考えますと、いくつか説はありますが、いわばこうした道具、乗り物、国家、これを舵取りする役はですね、伝統的には主に男性だったわけです。
男性の威勢者が国家を治め、男性の選手、キャプテンが船を操縦するというような形ですね。
このコントロールする側の男性が船や国家を、いわばコントロールすべき、支配、制御すべきものと見立てたり、あるいは自分と常に一緒にいる連れ合い、愛人のようなものとして女性に見立てたというようなことがしばしば言われます。
このような中英語以降に新たに発達してきた一種の擬人性としての慣習が現代までに残っているということです。
現代英語における変化
ただし一言付け加えておきますと、近年の英語ではこのCで受けるという現象はですね、文法書などにはまだ書かれているかと思うんですが、実際にはですね、20世紀後半あたりにぐっとこの慣習が失われてきていまして、
とりわけ公的な言葉遣いとしては、いわゆるPC、political correctnessの発想によりですね、避けられるようになってきているという事実については述べておきたいと思います。
したがいまして、今回の素朴な疑問。なぜ船や国名は女性代名詞Cで受けられることがあるのですか。これに対する答えは、中英語以降に英語で発達してきた一種の擬人性の伝統を今まで受け継いできたからということです。
この慣習もなくなりつつあるということではありますが、この話題について深く知りたいということは、ぜひ3647番、そして852番の記事をご参照ください。
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