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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、キリスト教対英語=仏教対日本語、というものです。
これタイトルだけを見るとですね、具体的に何を言おうとしているかわからないかもしれませんが、宗教がですね、ある言語に影響を与えるということは非常によくあるんですね。
英語の場合、これはキリスト教だったわけですね。多大な影響を英語という言語に与えてきました。
同じようにですね、実はほぼ同じタイミングで日本語はですね、仏教という宗教からですね、大いに影響を受けていると。
これが実はあまり比較されないんですけれども、この対応関係がピタッとはまっていてですね、実に面白いんですね。
そのあたりのお話題です。
まずキリスト教と英語の関係ということなんですけれども。
イギリスにキリスト教がもたらされたのは、6世紀末のことです。
すでにアングロサクソン人、現代の英語の祖先にあたる古英語という段階の言語をしゃべっていた民族ですが、
彼らはですね、もともと大陸にいたアングル人、サクソン人だったわけなんですが、その頃から公益などでですね、
南のドローマですね、領の人々と交流があったわけです。
ローマ帝国の人々というのはラテン語をしゃべる人ですから、当時からですね、ラテン語とは接触していたということは確かですね。
ところが本格的にこのラテン語と接触することになるのは、このキリスト教が入ってきたからと考えていいんですね。
キリスト教というのはローマ帝国で公認された宗教ということで、キリスト教を布教する言語というのはラテン語だったわけです。
この6世紀末にキリスト教がですね、本格的にローマから布教されることになりますと、それに伴ってですね、ラテン語も一緒についてくるわけです。
聖書であるとか教会であるとか関係のものとくっついてですね、ラテン語、そしてラテン語の単語がたくさん入ってくるということになります。
こうして初めて英語話者は本格的にラテン語の単語の流入ということを経験することになるんですね。
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いくつかその頃、非常に初期の段階ですね、英語に入ってきたラテン語の単語を見てみますと、当然ながらキリスト教絡みの匂いがプンプンするものが多いですね。
例えばアボット、修道院長です。
ミンスター、大寺院、マンク、修道師、ヌーン、九つの時っていうのが元気ですね。
ヌーン、修道所、パーム、シュロ、ポープ、ローマ教皇、プリースト、司祭、プロフィット、予言者、サーム、賛美歌、ソルター、詩編、スクール、学校、シュライブ、国会する、テンポー、神殿、ヴァース、韻文のように相当数、数百語が入ってきたとされます。
今読み上げた中にはですね、必ずしも現代の感覚ではキリスト教っぽくないというものも含まれているかもしれません。
例えばスクールなんていうのは、現代では日常用語ですよね。それからグラマなんていうのもそうですが、これらもですね、新学校、いわゆるキリスト教の学校で学ばれるのがラテン文法ということです。
こうした形で、もともとはですね、キリスト教用語として始まったものが、ある意味世俗化して、現代では全くそういう宗教色を感じさせずに使われるというものも多いんですね。
先ほどのヌーンについても、これナインと同語言で、9つの時ということなんですね。朝6時ぐらいに起きて、9つの時っていうのはだいたい午後早い時間なんですが、それが礼拝の時間だったんですね。
それが前倒しして、現代の正午ぐらいに相当するようになったので、このヌーンというのが現在完全に世俗的な意味で、正午、12時、お昼というふうに使うわけですが、もともとはキリスト教用語ということです。
このように、6世紀末のキリスト教伝来に伴って、たくさんのラテン語単語、キリスト教絡みの単語が入ってきたと同時に、実は現代につながるローマ字ですね。
ラテン語を表すローマ字も初めて英語にもたらされて、そして英語が同じこのローマ字で書き記されるようになったという意味で、これは英語文化史上の非常に重要な事件だったわけですね。
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このように、まず大量のラテン語釈用語が入ってきたということ、それからローマ字ですね。文字を借り受けた。これによって英語が記載されるようになり、そして今に至るということですから、当然英語史上、英語文化史上の重大なインパクトがこのように6世紀末のキリスト教伝来とともにもたらされたということになります。
さあ一方、日本です。同じようなタイミング、6世紀末ではなく6世紀半ばですが、大陸あるいは朝鮮半島から仏教がもたらされました。これは日本語に同じような強烈なインパクトを与えました。
まずですね、ラテン語の場合、英語の場合と同じように、大量の仏教関連用語が、いわゆる漢語ですね、中国語ですが当時の、から入ってきました。例えば法師、お坊さんですね。それから孔、お孔です。
それから書き、伏せ、お伏せですね。例えばこんな単語がたくさん入ってきたわけですね。これは完全なる当時の人々にとっては外来語、釈用語ということになります。
そして法であるとか書き、転じて書きですけれども、これなんか世俗化してですね、必ずしも仏教と結びつく単語ではなくなっているかと思うんですが、これなんかも英語とラテン語の関係に非常に似ています。
そしてもう一つ、日本語が大きなインパクトを受けたのは漢字の釈用です。漢字という文字体系を中国語から借り受けることになりました。これはもちろん仏典が漢字で書かれているからであり、そしてその中に大量の仏教関連語彙というのが当然含まれているわけで、それもともに日本語が借り受けたということですね。
このようにユーラシア大陸の西と東、相当離れているわけで直接の関係はないんですが、だいたい同じタイミングでですね、6世紀、大陸の強力な宗教、そしてそれにくっついてくる言語ですね。
西はラテン語、東は漢語、中国語ということになりますが、これによってこの島国の言語である英語、そして日本語は大いに影響を受けた。影響の受け方は主に2つで、これも完全共通しています。1つは語彙です。
その宗教に関連する用語が続々とですね、この島国の言語に流入していったということが1点。そして2点目は文字体系です。西ではローマ字、これを借り受けて以降英語がローマ字で記されることになりました。
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東でも同じで、日本語では今までそれまでですね、書かれることはなかったわけなんですけれども、本格的に漢字という文字体系が入ってきて、以降これを使い倒しながら、そしてそこから仮名のようなものも発展させながら、日本はものを記すという時代に入っていくことになります。
この2点の類似点ですね。これあまり指摘されることはないかもしれませんが、まとめますとキリスト教対英語は仏教対日本語ということになるということです。それではまた。