footの複数形の発端
英語に関する素朴な疑問。なぜ foot の複数形は feet なのですか。
通常、名詞の複数形は s をつければいいだけということなんですが、いくつか例外があります。
その最たるものに foot、足ですね。この複数形として feet というのがあります。
つづり字で言えば f-o-o-t のものが、複数形では f-e-e-t となるということですね。
foot に対して feet ということです。これはなぜなのかという問題ですね。
これは英語史の観点から非常にきれいに説明することができます。 英語はゲルマン系の言語です。
そのゲルマン系の、その大元の言語ですね。これをゲルマン祖語、先祖の祖ですね。
ゲルマン祖語においては、まあ f-o-o-t というつづりが示す通りですね。
これもともと fort という単数形ですね。基本の形だったんですね。
これを複数形にするには、実はゲルマン祖語においてはですね。
fort に対して iz ですね。
iz の音をつけてですね。 fortis というような形があったんです。
この iz というのは、ちょうどまあこの z というのが s に相当します。
つまり現在の通常の形ですね。レギュラーな形のこの s 複数形に通ずる z の形があったんですね。
fort に対して fortis。 iz をつければ複数形になったというのが、当時の文法だったわけです。
単数形 fort に対して fortis という極めて規則的な複数形の作り方だったんです。
ところがその後、ちょっとですね重要なことが起こるんですね。
この iz という語尾なんですけれども、いが含まれてますよね。
この e という音、これ音声学的にはあいうえおの e なんですが、母音なんですけれども、結構特殊な音なんですね。
音声学的にはちょっと極端な音なんです。
口の中の一番前の方で、そして上の方で発音されるっていうのが実は e なんですね。
例えばはいチーズというときに e というのは、顔が笑顔になるように e というふうに誘うわけなんですが、
この e の音っていうのは、口がですね非常に平たくなって、前の方で発音されるっていう発音としてはですね、実は結構極端な音なんです。
e ってことですね。この iz という語尾には、複数語尾には、いがこの含まれてたっていうことなんですね。
このように極端な音が含まれると、実は周りのですね音にも影響を及ぼすんです。
fortis というのが本来の複数形だったんですが、この第二音節、語尾にあるですね
i の音が影響を及ぼして、第一音節の fortis の o という母音に影響を及ぼすんですね。
どういう意味で及ぼすかというと、 e というのは極端な音ですので、こちらにですね、マグネットに引き付ける
近隣の音節にある音をですね、自分自身 e の極端な音に引き寄せようとするっていう特徴があります。
この o という音がですね、この e という極端の音に引き起こされると、どうなるかというとですね、これが e に近い音になります。
o が e に完全になってしまうわけではないんですが、近い音になります。 中間音として o が e という音になります。
やってみますと fortis というのがスタートですね。ここからスタートしますと fortis
fortis fortis fortis fortis fortis fortis fortis
というように fētis になってきます。つまり fortis が e の音に影響されて、第一音節がですね、変わって
fētis のように e の音になっていくんですね。 こうして数世紀かけて、この fortis だったものが fētis になってしまったというのがポイントなんですね。
不規則複数形の理解
さあその後です。 fētis つまりこれが複数形の形になったわけなんですが、このまず語尾の z がですね、語尾の弱い音節にあるということで、だんだん消えていくんですね。
そして fētis がつまり fēti になります。
そして最後にこの e という音、つまりもともとこのドギツイ音で o を a に変えた現況であるこの音そのものが
音節の最後にあるということでですね、消えていくんですね。 fētis から fētis になり、そして最後には fēt というように e の音が消えてきます。
fēt になっちゃうんですね。これがいわゆる通りで書けば fēt に相当する fēt という形なんですね。
つまり単数形 fort に対して複数形が fēt という形に結果的になってしまったということなんです。
もともとは複数形は fort に iz を足しただけの fortis だったんですが、先に述べたような i という音の引き付けによって fortis、forti、そして fēt
ですね。最終的には fēt になってしまったんです。そうすると結果的にですね、単数形は fort、そして複数形は fēt という分布になってしまったということです。
これが古英語の状態です。この後、数百年かけてさらに母音の変化がありまして、単数形では foot となり、
複数形では feet と読まれることになりましたが、通りで見ればわかる通りですね。fort に対して fēt と母音が変化した形で複数形になるということが起こったんですね。
こんなように、もともとのゲルマン祖語で iz をつける単語というのは多くはありませんでしたが、いくつか非常に重要なですね、
基本的な単語であります。それは foot、feet であり goose、geese であり
louse、rice これは白身ですね。それから man、men それからネズミです。
mouse、mice それから ha、two、teeth それから woman、women というような語ですね。
このようなほんの数語しか残っていませんが、実はこの系列の名残がこれだけ現代でも残っているということです。その代表格が foot、feet ということなんですね。
つまり現在では不規則複数形というふうに扱われますが、古英語あるいはそれ以前の
言語の観点から見ると、これは極めて規則的な形ということになります。
このようなことがわかるのが、古英語、そして勉強すること、そして英語詞を勉強することの面白みということになりますね。
この問題に関しましては、ヘログの157番、そして2017番をご覧ください。