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2024-08-09 10:00

heldio #20. 勘違いから生まれた apron


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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、勘違いから生まれたapron、です。
前回の話題は、勘違いから生まれたcherryという話題ですので、関係する話題ではあります。
前回のcherryに関して振り返りますと、この単語は桜んぼ、あるいは桜を意味する、よく知られた英単語ですけれども、もともとはフランス語に由来するんですね。
フランス語、厳密にはフランス語のノルマン地方の方言なんですが、そこではですね、この桜んぼがチェリーズという形だったんです。
この最後のズというのはあくまで単語の一部、語幹の一部ということなんですね。
この形でチェリーズという形で英語に入ってきました。
ところがですね、英語側ではこの最後のズをですね、単語の一部として認識せずに、複数形のsだというふうに勘違いしてしまったんですね。
その結果、元の形、単数形の形はこのズを抜いたチェリーであるというふうに、誤って分析してしまった。
チェリーズで切れ目がないはずなのに、チェリープラスズであるというふうに、誤った切り方をしてしまったわけですね。
これを異なる分析ということで異分析と言いますが、言ってみればちょっとした勘違いがですね、元になって、この間違えた方のチェリーが一般化してしまったというのが英語のチェリーの成り立ちなんですね。
この異分析について、今回は少し違ったタイプなんですが、やはり切り分け方を間違えてしまった例として、エイプロン。
日本語にもなってますね。エイプロンです。これについて取り上げたいと思います。
このエイプロンという単語なんですけれども、中英語の時期にやはりフランス語から借りてきた単語なんですね。
ところがですね、元々のフランス語ではエイプロンではなくて、ネイプロン、ナープロンのような形だったんです。
つまり語頭にNがあったんですね。ナープロンということです。
これ考えてみればその通りで、このナップとかナプキンという時のナップですね。つまり布に語源がありますので、このネイプロン。
エイプロンも布ですから、ナップという語が一部に含まれているということですね。
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ですからNがないとおかしいはずなんです。ナープロン。
実際にこのフランス語の形でそのまま中英語期に英語に借りられたということです。借りられた当初はナープロンというふうにNがきちんとあったわけですね。
ところがこのNが消えてしまったということなんです。
なぜ消えたかということなんですが、ここに異分析が関わってきます。
現代語でもそうなんですけれども、不定漢詞のあとあんというのがありますね。2つあります。
次に詩音がくる時はあ、ネイムのようになりますが、次に母音がくる時にはあんがつきます。
アンアップルのような形です。
ところがですね、例えばこれどちらに皆さん解釈するでしょうか。
というと、あなたは名前を持ってますか、なのか、あるいはあなたは目的を持っていますか、なのか。
これ微妙ですよね。
あ、ネイムであれば一つの名前ということですが、アン、エイムというと一つの目標ということです。
そして流れるような実際の会話では、Do you have a name?ということでほぼ同じ発音になってしまいます。
このようにあかあんかによって、後ろにくる単語ももちろん違うんですけれども、流れる発音では一緒になってしまうということがあります。
さあ、この不定漢詞のあとあんが関わってきます。
改めてエプロンはもともとnから始まっていたナープロンだったわけですね。
そうすると、アナープロン。
中英語の発音は少し違ったんですが、現代英語の発音に直してと言いますかね、考えてみると、
Do you have an apron?
と言ったときに、Do you have a napronなのか、あるいはDo you have an apronなのか。
これがわからなくなってしまう。少なくとも聞いた漢字では、アネープロンなのか、アンエイプロンなのかわからなくなってしまうということですね。
ですので、もともとnがあったはずのナープロンでしたが、そのつもりでですね、話者はナープロン。
Do you have a napron?と言ったとしても、聞き手は違ったところで切ってしまって、
Do you have an apron?という風に切ってしまうという可能性があるわけですね。
勘違いなんですが、こういうことが起こり得る。
そしてその勘違いが本物になってしまったっていうのが、このエイプロンなわけです。
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他に類例を挙げてみましょう。
例えばですね、スポーツの審判員のこと、アンパイアって言いますね。アンパイアっていう発音です。
これは最低者とか審判員とか、そういう意味になっていますね。
これもですね、フランス語から入ってきたんですが、入ってきた当初はnが頭についていて、ノンペールっていう形だったんです。
ノンペールっていう形ですね。
ところがこの頭のnがやはり異分析ですね。
アノンペールなのか、あるいはアンオンペールなのかというところで勘違いが起こってしまって、
語源的には本来nが頭についている単語なのに、そのnがですね、アの方に奪われてしまって、
アンプラスオンペールだと勘違いされたということです。
そしてこのオンペールっていうのが少し発音を変えまして、現代のアンパイアになっているところです。
ちなみにフランス語のこのノンペールっていうのはnは否定ですね。
で、ペアっていうのは、これ英語にはperというスペリングで、ピアとして入ってきます。
ピアっていうのは同輩、同じ位の人ですね。同じレベルの人ってことですね。
で、nで否定しますので、つまり同じ位じゃない人。
違うレベルにいる人っていうことで、これが最低者であり審判員ということになるわけですよね。
ですから本来nがなければおかしいんですが、異分析によってアンパイアとなってしまった。
もう一つ例を挙げます。other、addrです。
これはまむしという意味で、今でこそotherになっていますが、もともとこれは小英語の単語で頭にnがありました。
nadr、nadrなんていう形だったんですね。
それがやはり、これは14世紀くらいからなんですけれども、anadrというふうに異分析されて、今ではnが脱落したotherになっているっていうことです。
さあ、もともとnがついていたのに、これがですね、不定関心、anのnの方に取られてしまう形で、
結果的に誤答のnが落ちてしまったという例を3つ挙げました。apron、ampire、addrですね。
逆に、もともと母音で始まっていたのに、nがついてしまったという逆の方向の異分析もあります。
関わっているのは同じ、このaとan、あの不定詞ですね。
2つ例を挙げます。
一つ目は、皆さんもよく知っているニックネームです。
ニックネーム。
本来、中英語ではこれは、えっけなーめ、えっけなーめといってnはなかったんですね。
えっけというのは、alsoぐらいの意味で、つまりまたの名、別の名前、もう一つの名前ぐらいの意味です。
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ですから、母音えっけで始まっていたんですが、これが、あねっけなーめ、あねっけなーめと不定関心がついた場合に、
あプラスねっけなーめというふうに勘違いされたということですね。
最後に、newt、newt、n-e-w-t、これ、いもりです。
これ、今でこそnewtと言っていますが、小英語では、えうえて、えふえて、えふえてのように母音で始まっていました。
これが中英語記になって、やはりですね、anewt、anewtというふうになって、
このnがanのnなのに、いもりを表す単語の誤答にきてしまって、今ではnewtというわけですね。
こんな勘違いから生まれた語の紹介でした。ではまた。
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