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2024-08-08 07:17

heldio #19. 勘違いから生まれた cherry


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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった
英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。 毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、勘違いから生まれた cherry というものです。
この cherry という単語、我々日本人にはとても馴染み深い単語ですよね。 桜んぼです。そして cherry blossom といえば桜の花ですし、
cherry tree といえば桜の木ということで、非常に馴染みがある単語だと思うんですね。 さあ、この英単語なんですが、語源を紐解いてみますと、実はある種の勘違いから生まれてしまった
本当はあるはずのない語形なんですね。 この経緯を見てみたいと思います。
大元はラテン語の kerasus という単語です。 これが桜を表したわけですけれども、これがですね
フランス語、とりわけフランス語のノルマン方言、 フランスの北西部の方言ですね。ここで
cherries という形に変化しました。 そしてこの単語が1300年より少し前ぐらいだと思うんですけれども、英語に入ってきたということですね。
当時ですね、イギリスはノルマン征服によって、 ノルマンフランス語の影響を強く受けていた時代ですので、このノルマンフランス語の単語がですね
多く英語の中に取り込まれていた時代なんですが、この単語もその一つです。 ノルマンフランス語の cherries という桜を表す単語がですね、そのまま取り込まれて英語でも cherries と言っていたわけです。
つまりこの cherries の図はですね、もともと語幹に含まれていた、 つまり語の一部だったんですね。
これは決して何かの語尾、複数形の語尾みたいなものではない図だったわけです。 cherries ということですね。
このままこの単語はですね、フランス語側では、 フランスの標準語では少し音がずれてくるんですが、
series という形で現代でも残っています。 これが英語の cherry に相当するのがフランス語では series ですね。
ちなみにこのフランス語の series っていうのは、ずっと後の近代になってから、 やはりこのままの形、フランス語の series という形で英語に入ってきまして、
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これは桜んぼ色のという形容詞になっています。series という単語ですね。 これはこれで英単語として存在するんですが、
もっとずっと前に13世紀末辺りに入ってきた形が cherries だったんですね。
ところがですね、英語に入ってきてこの cherries なんですけれども、 この図が誤って複数形の図だというふうに勘違いされたわけですね。
桜んぼですから、たくさんあるわけですよね。 これを見て cherries といった、この図は複数形であって、
一つの桜んぼを指す場合には、これはチェリーなんだというふうに、 誤って分析してしまったということなんですね。
このような、誤ってチェリーズの図をですね、複数形と認識し、 そして元の形、単数形はチェリーなんだというような形の、
一種の勘違い、分析誤りということですね。 これが起こったんですね。これは異なる分析と書いて異分析と呼ばれている現象で、
意外とちょこちょことこういう勘違いっていうのはあるんですね。 結局、この勘違いの形がですね、標準として定着してしまって、
今は見出しの形、単数の形は s など付かないチェリーとなっているということなんです。
他に類例を挙げますと、例えばシェリーですね。これはシェリー酒です。お酒のシェリー。 これは s-h-e-r-r-y ということですが、これは今度はですね、スペイン語の
シェリー酢というのに由来するんですね。 これも元々は s が入っていたんです。
s が語幹の中に含まれていたままに、スペイン語から英語が 16世紀にですね、借りられたんですけれども、この語末の酢がですね、
複数形の s だと勘違いされて、それを取り除いた形、 つまりシェリーが単数形というか見出しの形として、
17世紀には定着しています。 異分析のもう一つの例ですね。
さらにですね、えんどう豆を意味する pea っていうのがありますね。 これも元々は peas という単語なんですね。
ラテン語の peas が、小英語に peas と入って、そのままですね、本来であれば peas これが単数のえんどう豆という意味ですね。
定着していたはずなんです。実際これに s をつけた peas であるとか、 古くはですね n をつけて複数形を作ったこともあったので peas-n
なんていうふうに複数形を作っていて、あくまで単数形が peas だったんですが、
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先ほどのシェリーと同じ道を歩みます。 この peas の酢、本来は語幹の一部なのに、これが複数形の s だと勘違いされて、それを落とした形、
つまり p という形が新しい単数形として生み出されたということなんですね。
つまり、今回挙げたこの3つの単語 cherry、sherry、pea というのは、もともとこんな形の単語はなかったということですね。
これに s がついた形が本来だったのが、複数形の s だと異分析されてしまって、それを落とした形が単数形、
見出し語形として、新たに生み出されたという形ですね。 本来なかったのに生み出された、新しく生み出されたという意味では、ある種幽霊語のようなものだと思うんですが、
こういうことが意外とちょこちょこと起こっているんですね。 これなども英単語の歴史を見て非常に面白いトピックの一つだと思います。
異分析の話でした。ではまた。
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