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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、near はもともと比較級だった、という驚きの話題です。
near は近くの近くに、という非常に日常的な単語だと思うんですね。
例えば、We live near Tokyo. 私たちは東京の近くに住んでいます。
これを比較級にするとですね、当然、nearer となります。
I'll tell you more details nearer the event. イベントが近づいたら、もっと詳細話してあげるよ、ということですね。
それから最上級はもちろん、そのままESTを付けて、nearest です。
Where is the nearest bank? 最上級はもちろん、そのままESTを付けて、nearest です。
最寄りの銀行はどこですか? というふうに、ごくごく普通の形容詞、副詞のnear として認識していると思うんですね。
ところが、語源を探るとですね、これは実は、ある単語の比較級だったんです。
このRの部分ですね、語尾にRがあるので、この比較級のERと絡んでるなということが言われてみると、気づくかもしれませんが、
これは実は、近いを意味する別の単語の比較級なんです。
つまり、near単体ですでにですね、ERの部分が含まれていますので、より近い、より近くにという意味だったんですね。
それが、ひょんなことでですね、比較級ではなく、これがまさに言及なんだと、もともとの形なんだというふうに解釈されて、今に至るということなんです。
では、そのもともとの近く、近いを意味する単語は何だったかというと、これはですね、ないという単語に今残っています。
Nighと書いてないですね。これが実は、本来の近い、近くにを表す単語だったんです。
現代では古風になっていて、あまり使われることはありませんね。
あるとすればですね、例えば、Winter was drawing nigh.
冬が近づいてきたみたいに、少し古風で格式があった言い方で、辞書を引けば載っているんですけれども、普通は使わないかなと思いますね。
Nighという単語だったんです。
この元の形はですね、元の形と言いますか、小英語での形は、nearという形でした。
これに、いわばERのようなものをつけたものが、nearとなり、そしてESTに相当する最上級の語尾をつけたものが、nearという形でした。
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つまり、小英語では、nearという形だったんですね。
この最初のnearという言及が、現在の先ほど述べたないになってきます。
そして比較級のnearerというのが、まさに我々の知るこのnearになっていくんですね。
もともとは比較級だったということになります。
そして最上級のnearestというもの、nearest。
これがですね、少し音を変えて、実は現代語のnextにつながっています。
nextというと、次のという意味ですが、確かにこの最寄りの次のということは、すぐ次の、すぐ近くのという意味ですので、これががてんがいきますね。
このもともとのnear、nearer、nearestというものが、そのまま現代に持ってきますと、ない、near、nextというふうになるわけですが、
この本来比較級のnearというのが、現代の通常の言い方としては、これが言及、普通に近いということになって、再解釈されました。
その結果、もともと本当は比較級であるにもかかわらず、さらにですね、erをつけて、今現在使われている比較級、nearerというのができましたし、
このnearにestがついて、現在普通に使われている最上級、nearestができたというわけなんですね。
どうしてでは、もともとの比較級が言及に解釈されるようになったのかというのは、例えばですね、現代語でも、come near、近くに来いよということですよね。
come nearer、erをつけると、もっと近くに来いよということになりますが、言っている方はですね、そのような比較のつもりでも、もっと近くにと言っているつもりでも、聞き手にとってはですね、come nearとcome nearer、どっちにしろ近くに来なさいということを言われているんだと思うわけで、
意味の区別というのが限りなく小さくなりますよね。聞き手にとっては、どっちに解釈してもいい。この辺がおそらく接点だったのではないかと思われます。
come nearのようなものが、本来はもっと近くに来てくださいという意味でのcome nearだったのが、単に近くに来てくださいというふうに比較級が言及に解釈されて、ここでですね、比較級から言及に意味がずれてしまったということになります。
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このように勘違いが起こってですね、本来の比較級が言及になったことにより、さらにここから新しい比較級を作るのにERをつけてnearerとしたわけですが、これは言ってみれば語源的には二重比較級と、二回比較級語尾をつけているようなものだということになって、非常に面白い話なんですね。
さて、古英語の元々近い、近くという言及を表したないですね。当時の発音ではnearerですが、このない、今では古風であまり使われないということに触れましたが、実はですね、近所、近所の人、neighborとかneighborhoodですね、このneighが実はこの元々の言及の近いなんです。
barっていうのは住んでいる人ってことです。つまり近くに住んでいる人ということで、この単語においてはスペリングはneighとなっていますが、十分に近いですよね、元々のneighあるいは現代のnigh、これに非常に近いことがわかると思います。
したがって、このneighborhoodの中に元々の言及が化石的に残っているということがわかります。
このように語源を紐解くと、当たり前の単語のような気がするんですが、実は深い歴史を持っているということがわかるかと思います。
そして今や古風だったり、もう俳語となっているに近いようなneighもneighborの中に化石的に姿を残している。この辺りが英語の語源の面白いところだと思います。それではまた。