2025-04-04 10:02

heldio #258. 近代まで使われていた関係代名詞 the which

#英語史 #英語教育 #英語学習 #関係代名詞
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サマリー

今回のエピソードでは、関係代名詞の一つである「the which」の起源や中英語での使用について説明されています。また、この構造の発展やフランス語の影響、詩の中での使い方についても触れられています。

関係代名詞の紹介
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、近代まで使われていた関係代名詞 the which、というものです。
関係代名詞、現在でも様々なものがありますが、そのうち、whichというものがありますね。
例えば、Did you see the letter which came today? という時の主格として使われるwhichもあればですね。
Now they were driving by the houses which Andy had described. のように目的格に相当するwhichの関係代名詞の使い方もありますね。
その他、今挙げたのは、いわゆる制限用法というものですが、非制限用法としてですね。
例えば、The house which was completed in 1856 was famous for its huge marble staircase. のような、いわゆる非制限用法といわれるような使い方、こんなのもありますね。
往々にしてですね、特に目的格の場合には省略されたりですね。 他の、例えば、thatなんかで言い換えたりすることも多いわけなんですけれども、
この関係代名詞としてのwhich、これはいつ英語詞の中で現れたかというとですね、 初期中英語に初めて現れます。
小英語ではなかったんですね。 小英語ではこのWHで始まる、つまり疑問詞と同じ形の関係詞というものはまだ使われてなかったんですね。
中英語になって初めてwhichの形が出てきます。
ちなみにwhoなんかはもっとずっと遅いですね。
whichがまず出たということなんですが、 出始めた当初はですね、今ももとも普通の関係詞ですがthatですね。
より一般的だったのはこっちのthatの方で、これと競合していた。 競合しながらもだんだん14世紀くらいからですね、whichが分布を広げて、
そして15世紀くらいには普通となっています。
その後、近代語記を超えて、 現代語にまでそのまま使われているということなんですね。
ポイントは中英語記に初めて現れたということです。
さあ、このwhich、関係詞としてのwhichなんですけれども、 中英語記に現れた時にはですね、
実はこのwhich単体で使われるというよりはですね、 別の語を伴って2語で現れるということも多かったんです。
よくあったのが、whichの次にthatですね。
これを加えてwhich、thatで、 いわば一つの関係代名詞の塊っていうことです。
which単体でもokだったので、 which、thatのthatは余分なように思われますね。
実際このthatのことをexpletive that、 余分な、余計なthatというような言い方をすることもあるくらいで、
which、thatというこの2語で1語のように 機能する関係詞っていうのもあって、
例えばジェフリーチョーサーですね、 英詩の父と呼ばれているジェフリーチョーサーなどでは、
このwhich、thatっていうのも非常に普通に見られます。
これ、詩なんかでは便利なんですよね。
whichだと1音節、which、thatだと2語なので、 これ2音節っていうことになって、
詩というのは音節数を各行合わせたりする都合上ですね、
whichの時が都合いい時もあれば、 which、thatと1音節加えた方がいいっていうこともあって、
一見無駄なように思えるんですが、 韻律上、リズムの都合でこのthatが付いたり消えたりするっていうのは、
なかなかこれ便利と言えば便利なんですね。
そしてもう1つ、whichに何か付いて、 2語で1つのwhichと同じ働きをするっていうものがありまして、
それは今度は前につくんですが、 座がつくってやつです。
これは監視の座ですね、定監視の座です。
つまりthe whichという形で使う。
これが初めて現れたのは、 やはり中英語の初期なんですが、
イングランド北部の方言で初めて出ています。
カース・マンディという作品の中で、 70回ほど現れてるんですね。
よく使われるようになったっていうことです。
これが14世紀にかけて、 元々北部で始まったようなんですが、
これがだんだん南の方に降りてくるんですね。
何の方言でもこのthe whichというものが 使われるようになって、
頻度も増してきたっていうことなんですね。
場合によってはthe which thatみたいな、 3語使うものすら出てきたということですね。
ただ増えてきたと言っても、 全体としては少数派といった方がいいんだと思うんですね。
例えば調査なんかで見ますと、
whichに比べてthe whichっていうのは やはり圧倒的に少ないんですね。
9対1ぐらい少ないです。
ただ作家とか詩人によって だいぶこの比率も違くてですね、
同時代の詩人であるガウアなんかでは むしろよく現れるっていうくらいですね。
そして15世紀以降はむしろ3文などで the whichがかなり頻度が高くなります。
whichに比べても頻度が高くなるっていうことすらあった。
ただこれも作家によってある種の癖がありまして、 なかなかマチマチなんですね。
the whichの衰退と影響
このようにwhichとthe whichについて、
分布がマチマチである時代によっても 作家によってもということなんですが、
そもそもこのthe whichのtheっていうのは どっから出てきたんだということが問題になっています。
一つの説によりますと、 フランス語の関係代名詞を真似たんではないかということですね。
これは古いフランス語でlequelのようなleとquel。
実際現代のフランス語でもlequelとかlequelのように、
定感詞にいわゆるWHに相当する疑問詞をくっつける。
実際フランス語の場合も一語に綴っちゃいますよね。
lequelという。
これと作りが全く同じなのがthe whichですね。
実際一語で綴られたりするわけなので、
そっくりだということで、
多くの場合ですね。
単語なんかはフランス語から大量に中英語記に 英語に流れ込んできたということなので、
フランス語の影響が大きい。
なのでこのthe whichもそうなんではないかという説はあります。
ですがあくまでこのthe whichが最初に現れたのは、
中英語記の初期で、しかも北部方言なんですね。
フランスからは一番遠い部分で最初に現れているということなので、
これはフランス語の影響というよりは、
やはりもともと英語で本来的に発声したんだろうと、
芽生えたんだろうと。
もちろんその後で南部に降りてきたわけなんですが、
フランス語でも対応するものがあったので頻度が高まったであるとか、
そういう議論は可能かもしれませんが、
スタートとしてフランス語から借りたんだということはどうも言えなさそうだ。
英語で本来的に発声したものがフランス語のルケールなどによって、
少し頻度を押し上げられたというようなことはまだ説としては可能かもしれません。
が、よく分かっていないといえば分かっていないんですね。
では英語で本来的に発声したといっても、
どうしてこのザとウィッチがくっつくことになったのかということについては、
実は小英語には確かにこのザ・ウィッチというものはなかったんですね。
ウィッチがそもそも関係詞として使われる例というのはないと述べました。
ただ相当する表現はあったんですね。
いわゆるザに相当する漢詞に小英語時代の関係詞、
セといってTHEのように書く、
格好は定関詞のザのような形なんですが、起源は違うものですね。
つまりザ・ウィッチにおよそ相当する構造上相当するものは小英語でも存在したわけです。
そしてそれぞれのパーツは中英語記になって置き換えられた、
別の単語に置き換えられることになったんだけれども、
構造上はパラレルということは小英語からの流れがやはりあるのではないかという説もあります。
わかっていないことが多いといえば多いんですけれども、
一つは小英語からの種が別の形で芽生えてきた。
中英語記に芽生えてきたというのが一つ。
それから特にその後の南部の方言に降りてきた流れとしては、
フランス語の影響もあったかもしれない。
このザ・ウィッチは近代になって衰退して消滅したんですけれども、
OEDによる最も遅い例はテニソン、警官詩人ですが1884年のベケットにおいて現れています。
比較的最近まで使われたということですね。
ではまた。
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