2025-07-10 10:36

heldio #355. sharp と flat は反対語?類義語?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #反対語 #類義語 #語彙意味論
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サマリー

ポッドキャストエピソードでは、sharpとflatという言葉の音楽的な意味や一般的な使い方が説明されています。これらの言葉が対義語でありながら、同時に似た意味を持つことを探求し、その語源や歴史的背景にも触れています。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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sharp と flat の基本情報
ぜひフォローしていただければと思います。またコメントやシェアの方もよろしくお願い致します。 今回取り上げる話題は、sharp と flat は反対語でもあり類義語でもあるという話題です。
連日反対語の話題をお届けしています。 今回も一見すると反対語と見られる sharp と flat について取り上げたいと思うんですね。
これは音楽をやっている人はすぐにピンとくると思うんですけれども sharp っていうのは本来の音よりも半音高い A 記号で表される、シャープで表されるものですね。
だからシャープというわけです。 一方半音低いというのが flat と言いますね。
変記号によって表されるあれですけれども、これを考えると当然 sharp と flat っていうのは反対語というふうに見えるわけですよね。
ところが面白いことにですね、これ半ば日本語にもなっていますけれども、 きっかり正確にという時間を表す表現ですね。
これ sharp も使えるし、flat も使えるんですね。 10秒フラットで走るなんていう言い方もできますし、
12時シャープでお願いね、これはあまり日本語でも言わないかもしれませんが、 英語では実は両方使えるんですね、きっかりということで。
いくつか例文を挙げてみたいと思うんですが、まず sharp からいきましょう。
We are meeting at 1.30 sharp. 1時半きっかりにと言うんですね。
Please be here at 7 o'clock sharp. 7時ちょうどにきっかりにですね。
She planned to unlock the store at 8 sharp this morning. のように、何時きっかりにという言い方で、後ろにシャープをつけるんですね。
これで正確にきっちりという意味になります。 同じような使い方で、flat というのも使えるんですね。
例えば、He ran 100 yards in 10 seconds flat. 10秒きっかりでということです。
You're sitting behind an engine that'll move you from 0 to 60 mph in 6 seconds flat. のような言い方とか、
I fell asleep in 5 seconds flat. のような言い方ですね。
このようにきっかりという意味で、sharp も使えるし、flat も使える。
ただ、実は微妙に使い方が違っていて、 sharp の方は 1.30 sharp のように時刻ですね。
時刻きっかりにということで、flat の方は時間計測、何秒であるとか、10 seconds flat のように測る際の時間ですね。
ということで、時刻と時間という使い方の違いはあるんですけれども、 同じようにきっかり正確にという点では一致するんですね。
これは非常に面白いことだと思うんですね。
さあ、どのようにこの sharp も flat も同じようなきっかりの意味を持つに至ったのかということなんですが、
まず sharp からいきたいと思いますね。
sharp っていうのは、もともとの意味は鋭いっていうことですよね。
ここから厳しいって意味が出て、時間に厳しい、厳格なという意味が出ます。
そこできっかり正確に、ですから時間に正確、時刻に正確にという意味合いが強いので、
別の英語表現で言えば punctual と言いますね。
これに近い意味になるというのはわかると思うんですね。
時間に厳しい、時間に鋭いというような発想から出てきてますね。
ちなみにこの類義語である punctual なんですが、
これはラテン語の punctum に由来する釈用語なんですけれども、
これ punctum ってポイントのことなんですね。
これがフランス語を経て英語に入ってきてポイントという発音になりますが、
要するに先っぽです。
鋭い先っぽということで、ここから punctual も時間に厳しいという意味になったので、
発想としては非常に似てますね。
厳しいとか尖っている、鋭い、この辺のイメージと時間に厳格というのが結びつくということです。
sharp が時刻に厳しいという意味になるのはそういうことですね。
では一方、flat の方はどうかということなんですが、
これはもともと flat の原義、もともとの意味は平なっていうことですよね。
sharp と flat の語源と対立関係
そこから計量、計測における擦り切り、あの発想なんだと思うんですね。
擦り切りによって平らにするわけですよ。
ここからきっかり正確にということで、
つまり時刻というよりは時間計測、計量という意味に特化して、
flat が使われるっていうのもここから理解することができますよね。
計測のための時間に用いられる、これは flat、平らな、擦り切りというあのイメージで覚えておけば良いということになりますね。
ちなみにこの flat っていうのは平らなという意味なんですが、
これは本来の英語なんですね。
グリムの法則という音の変化によりますと、
これ大元の引用詞語の形は F ではなく P だったということを逆算して、
グリムの法則というのを逆算するとですね、
英語の F は引用詞語の P だったってことがわかるんですね。
つまり flat という形です。
これがラテン語であるとかフランス語経由して、
英語に釈用された単語はすべて、だから flat のような形を持って P で始まるはずなんですね。
そして平らですから、例えば plain、これ平らですね。
平地のことは plain、あるいは平面って言いますよね。
それから plate、これお皿です。
平らなお皿のことを plate って言ってますよね。
それから結局平らな土地ということで、もともとはですね、
place、場所のあの place もそうなんです。
そこから plaza ってのもありますね。
何々プラザというあれですけれども、もともとは広場、市場ということで、
平らな土地に位置が開かれたっていうことですね。
他には、魚のカレー、ひらめカレーのカレーです。
当然平べったいですが、これ英語では place って言いますね。
P-L-A-I-C-E と綴って place なっていますが、
これと関連する単語が flat。
英語に流れ着いたのが F に化けてですね、
flat になってるっていうのが語源なんですけれども。
こういうことでですね、 sharp と flat。
だいぶ違った経路とかイメージなんですが、
最終的にはきっかり正確にという意味に合一してしまったということで、
つまりたまたまの類義語と言いますかね、
似たような意味が芽生えたということで、完全にたまたまです。
さあ、では最初の話題に戻って、
音楽用語としては明らかに対立している反対語なわけですよね。
sharp っていうのが A 音、半音高い音っていうことで、
そして flat というのが変音、半音低いということで完全に対立しています。
これはじゃあどういう具合にこの対立関係が生まれたかというと、
これなかなか面白いんですね。
sharp っていうのは鋭いということですが、
音の高さで言うとやはり高い方が鋭いんですね。
なのでここは共感覚的にわかると思うんですね。
鋭いっていうことと感高いということで、
普通の音よりも高い、半音ですが半音高いという意味に
転用されたっていうのはここは割とわかりやすいんではないかと思いますね。
では flat はどういうことなのかというと、
実はこの意味ですね。
半音低いという意味での意味につながる最初の例は、
英語での最初の例はシェイクスピアなんです。
シェイクスピアの The Two Gentlemen of Verona
ヴェロナの二紳士というシェイクスピアの喜劇ですね。
ここにあるセリフ、掛け合いのセリフがあってですね、
厳しい、きついって意味でまず sharp が出ます。
No madam, tis too sharp.
これに対する皮肉的な返答として、
平凡なつまらないという意味ですね。
平凡の平です、平ら。
flat を使ったんです。
Nay, you are too flat.
というふうに返した。
つまり、No madam, tis too sharp.
に対して、Nay, you are too flat.
というようなこの掛け合いです。
この掛け合いによって、
sharp に対して、flat という反対関係が生まれたといいますか、
これが有名になったということですね。
そして、その反対関係が音楽用語にもある意味、
マッピングされて、
sharp、これは感高いということで、
反音高いという意味がありましたので、
それに対するものとして、flat を使う。
これが意味は、当然、反音低いという意味に進化するわけですよね。
もともとはシェイクスピアの掛け合いで、
反対関係のものとして、
たまたま提示された sharp, flat というものが、
この反対関係が音楽用語としてもマッピングされたという、
非常に面白い語源のですね、
単語、反対語関係の単語ということになります。
sharp and flat これだけでもなかなか意味変化、
そして語源を考えるのに、
面白い話題だったのではないかと思います。
それではまた。
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