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おはようございます。6月26日日曜日です。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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本日も昨日に引き続き 英語に関する素朴な疑問〈千本ノック〉を行います。第8弾になりますね。
Xの使用起源
それでは、訪問から寄せられてきた素朴な疑問を紹介したいと思います。 今日の一つ目の素朴な疑問ですけれども
仮称でよくXが使われるのはなぜですか? という素朴な疑問です。
仮の称号の称ですね。Mr.Xであるとか、Xdayであるとか、 謎のもの、正体不明のもの、隠しておきたいものに対してXっていうのがよく使われるわけなんですが、この起源はということなんですね。
これは皆さんもご存知の数学のあのXに由来すると考えて基本的にいいと思うんですね。 正体不明のものの象徴と言いますかね、これにXが使われるって言うんですね。
そもそもじゃあなぜ数学ではXが使われるのかと言いますと、 数学の代数においてよくXYZというこれ使われますよね。
同じようにABCっていうのも使われたりしますね。つまりアルファベットの最初の先頭のものとお尻の末尾のものということでですね、重ならないようになってるわけです。
代数では一つ二つそれ以上の記号をですね、正体不明の記号を使うっていうことが非常に多いわけなので、まずはABCあたりで始まったんだと思うんですけれども、
それとまた性質の違う数を表現する。もう少し具体的に言えばABCっていうのは比較的定数に使われて、XYZはこれから求めたい、回、答えですね。こちらに使われるっていうことが多いと思うんですけれども、
定数ではなくてこれから求めたい数の象徴として、末尾の方にあるXを使ったというのがどうも起源らしいんですね。
それが一人歩きしまして、数学であるとか代数の世界から飛び出して、分からないもの、不明なものの象徴として、現代までXが使われているっていうことのようなんですね。
では次の質問に行きます。なぜ、thatの複数形がthoseなんですか?
確かに形はだいぶ違いますよね。thisとtheseはなんとなく似ている感じがしますが、thatとthoseはTHこそ重なっていますけれども、その後だいぶ違う感じがする。これ何なのかっていうことですね。
これは英語の歴史を遡ると背景が見えてきますね。古英語の時代にはthatの系列ですね。
近称と遠称っていう場合の近い方、これはthisで遠称、遠いものを指すのがthatっていうことに現代語ではなっていますよね。
古英語では近称のthisはあったんですけれども、thatっていうのは独立した形では実は存在せずにですね、いわゆる定関詞theと遠称に相当する現代のthatですね、が一つの単語theという単語の中に同居していたんですね。
つまりthisはそれだけでこれという近称の意味を表すんですが、当時のtheですね、定関詞に相当するものは定関詞の意味と遠称の意味を兼任していたっていうことなんですね。
なので、theと言った時に、これが今風のtheなのか、それとも今で言うところのthatなのかっていうのは文脈に依存するということで、thisみたいにthatが独立してなかったっていうことなんです。
その定関詞theですね、昔のtheの形の中性の形がthatという発音だったんですが、これがthatになるんです。
つまりthatというのは、もともとあれという遠称の意味のみを持っていたというよりは、theの一つの変化形に過ぎなかったっていうことなんですね。
それが後に一人歩きして独立してthisとタグを組んで近称遠称っていう関係になった。
つまりtheの一形態がそのまま独立してthatになったっていうのが、現代の遠称thatの起源っていうことです。
そうしますと、この複数形というのも、小英語自体には定関詞theの複数形という形で一応対応するものは存在していたんですね。
それはさーという形でした。
thaのように書くさーという形ですね。
ですから、単数のthatと同じ道を歩んで、このあれら遠称の複数形ということで、そのまま発達していたら、おそらくさーに由来するsoとかsoという形ですね。
toあたりで書くあんな形が今、thoseの代わりに使われてたはずなんです。
つまりthatthoseという単数形、複数形ですね。
これがおそらく現代に伝わってきたんではないかと疑われるわけなんですけれども、そうはならなかった。
代わりに何が起こったかというと、このthoseにいかにも複数形っぽさを出すためなんだと思うんですが、いわゆるsがついたわけですね。
名詞なんかについて複数形を作るあのsです。
こうしてthoseという形が生まれた。
ちょうどthisに対するtheseというのは、これは古くからありましたので、ちょうどthisにちょっとずみたいなのを足した形が複数形になるっていうことになってますよね。
近称の場合、this、these。
なので、これとある種、パラレルに考えてですね。
語末にs、スペリング上はseとなりましたけれども、これがつくと複数形っぽいっていうことで、本来のthoseというものにseをつけてthoseとしたというのが、どうやらこのthatthose、この単数複数の関係のようなんですね。
theの発音変化
次の素朴な疑問に移ります。
theの発音変化はなぜ起こるの?という質問なんですけれども。
この質問はこういうことだと思うんですね。
通常はtheはtheの発音で良いっていうことですね。
the penってことですけれども、次に来る単語が母音で始まるときにはtheとなる、the appleとなるっていうあの現象ですね。
これはもちろん定関詞theではなくて、不定関詞aの場合によく知られている現象で、a penに対してan appleということですね。
これとちょうどパラレルな関係になっていて、定関詞も母音が来るときと来ないときで発音が異なる、the penに対してthe appleという形になるっていうことで分けるんだ。
次が母音かどうかで発音を分けるんだということなんですけれども、これは文符を記述しただけで全く説明にはなってませんよね。
なんでこのように異なる発音があるのかという、そういう質問なんだろうと思うんですね。
まず、いずれも関詞ですよね。定関詞、不定関詞の違いはありますが、関詞ということでやたらと頻度が高い。
ここまで頻度が高い単語っていうのはですね、発音が弱まりやすいんですね。
いちいちこのしょっちゅう出てくる単語を強い発音で言わなければいけないとなるとですね、これ大変です。
なので、よく使われる単語であればあるほど発音が弱化するという傾向があるんですね。
ですので、theとは書きますけれども、この最後の母音の部分は通常の場合でもtheと曖昧母音で弱く言うもありますよね。
なるべく楽に発音したいっていうことになります。
そうしますと、次の音ですね、母音なのか子音なのかみたいな次の音への接続にも注意が払われることになります。
少しでも接続が楽なように滑らかなようにっていうことで、このあたりが理由となって2つの異なる発音に分岐していったっていうことなんですね。
the appleというのは決してそれ自体が言いにくいわけでもないと思うんですけれども、少しでもさらに楽に言いやすくするためにはですね、
子音を挟むと英語の音韻構造、音韻システムにかなうんですね。
つまり英語口的にはとても楽に発音できるパターンに乗っているんで、そこで少しでもですね、子音っぽいものをこのtheとappleの間に挟み込むということが考えられるわけですね。
子音っぽいものって言ってもですね、いろいろ候補があるんですけれども、1つは母音であることをやめずになるべく子音に近い、子音に最も近い母音って何?って言うとこれ、iとかuなんですね。
そうするとthe appleみたいな感じです。ちょうどthe appleみたいな形で、半子音っていうか半母音って言いますかね、このiの音、iの音を挟み込むことでちょっとだけ子音っぽくなるので、音韻構造、英語の音韻システムにより適合するということなんではないかと考えています。
the appleのような形です。ただ、なぜそれが選ばれたのかっていうのは、やはりよくわからないと言えばわかりません。一番楽をしたいんであれば、theの末尾の曖昧母音ですね。これ完全に切ってしまって、例えばthe appleって言ってしまうことです。
the appleですね。実際に近代の初期にはこれが普通に使われていた。それなのに改めてiを加えたthe appleになったわけですね。この辺は謎と言えば謎です。
今日も最後まで放送を聞いていただきまして、ありがとうございました。3つの素朴な疑問を取り上げました。いずれも英語詞的に非常に面白い問題で、完全には解決していない問題というのもね、含まれていたと思います。
この3つの質問につきましては、Helogの過去の記事で取り上げていますので、そのリンクをチャプターに貼り付けておきたいと思います。詳しくはそちらをご覧ください。
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