2025-05-08 09:59

heldio #292. 一般に「人々」を意味する you の起源

#英語史 #英語教育 #英語学習 #代名詞 #意味変化 #総称用法
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サマリー

「you」の起源について探求しています。「you」の用法がどのようにして一般的な人々を指すようになったのか、英語史における背景を解説しています。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
youの用法の紹介
今回取り上げる話題は、一般に人々を意味する you の起源、という話題です。
一般認証の you であるとか、総称の you であるとか、不定認証代名詞の you とか、色々な言い方がありますけれども、
目の前にいるあなたとかあなた方ではなくてですね、一般に people とか they とか、言い換えることができるような、太くて多数の誰でもいい人々という意味で使われる you の用法というのがありますね。
辞書によるとですね、比較的交互、話し言葉であるとか、あるいはインフォーマルな書き言葉なんかにもよく使われるということなんですけれども、辞書からの例を挙げてみましょう。
例えば、you have to be 21 or over to buy alcohol in Florida であるとか、getting good results gives you confidence であるとか、on a clear day you can see the mountains from here のような文ですね。
最後の文なんかは、もちろん目の前にいるあなたに言うこともできるわけなんですけれども、状況によっては、特にこの目の前にいるあなただけではなく、一般に人々はとか、例えば on a clear day, people can see the mountains from here とも言えますし、people の代わりに one でもいいかもしれません。
あるいは we でもいいかもしれませんね。何でもある意味使えるというような文脈でありますけれども、こういう時に you, on a clear day, you can see the mountains from here ということもできるということですね。
総称の you の用法なわけですが、これは英語詞的には一体いつからあるんだという質問を受けました。
これを調べたことがあるんですけれども、どうも思ったよりも起源は古いですね。
二人称代名詞を使うことで、文字通りのあなたではなくて、一般に通用するような文を構成することができるということですね。
まずは、こういう問題に当たったら Oxford English Dictionary というのを引いてみるんですね。
そうすると you、この二称代名詞の you を引きますと、不定代名詞としての用法ということですね。
一般的に誰でも any person とか one で言い換えられるような用法ですね。
まさにこの用法の書類、最初に出たのは16世紀半ばのことであるというふうにして、例文が出ているんですね。
ただここでポイントはですね、当時まだ二人称単数代名詞として thou というのがあったんですね。
もう衰退を始めているんですが、この16世紀あたりですね。ですがまだあった。
そしてあくまで複数形のあなた方を表すのが you だったんですね。
単数形は thou という形も残っていたので、この thou に、いわゆるこの一般人称の総称の使い方があったのではないかということで、
you だけではなくてですね、この thou も合わせて調べてみるということにしたんですね。
そうするとこの Oxford English Dictionary からははっきりしたことがよくわからなかったんですが、
起源としてはもっと遡るのではないかという感覚があったので、
じゃあ中英語の状況を見てみようということで、いくつか文献を調べてみました。
そうするとですね、この thou ですね。
特に二人称単数代名詞は中英語記ではですね、 thou が一般的だったわけですので、
これで調べてみるとですね、どうもあったんですね。
この一般人称、否定人称の使い方の thou があったって言うんですね。
これは英史の知事と呼ばれているジェフリ調査の最も有名な作品であるカンタヴェリ物語ですね。
その中の騎士の話、ナイツテイル、騎士の話の中でですね、こんなくだりがあるって言うんです。
So michtest whenethat this palamon in his fichting were a wardleon
というふうに、中英語で読みましたけれども、これは現代語にパラフレーズすれば、
You might think that this palamon in his fighting would be a mad lion
っていうことですね。
この thou っていうのが you に相当するわけなんですが、
これはもちろん書かれた詩ですから、書かれた詩の中で読者に向かって語りかけている thou なんですよね。
こういう例というのがいっぱいあって、作者がですね、書き言葉の中で読者に働きかけると。
読者を呼びかけるという時に、当然 thou とか今でいう you っていうのを使うわけですよね。
そうすると読者としては自分に話しかけているということになるんですが、
書き手の立場から、この場合調査ですが、立場から見ると、もちろんここの読者にあなたというふうに呼びかけていると同時に、
実際には不特定多数の読者めがけてある意味書いているわけですよ。
なので皆さんぐらいの意味ですよね。
そうすると途端にですね、目の前にいるあなただけではなくて、
少しぼやーっとした指示対象がより一般的に、相性的になっていきますよね。
この辺りに結局 you あなたと言っていながら、実際には全体、人々、一般に people in general ぐらいを指す用法というのが広まっていったんじゃないかというふうに考えることができます。
作者が不特定多数の読者に呼びかけるとき、おのずから、これはですね、あなたという意味もあるけれども、それに上乗せする形で、
皆さんとか一般に人々という意味が生じてくるというのは、かなり自然なことのように感じられるんですね。
そしてこの中英語の当時からですね、the youだけではなくて、その複数形である you に相当するものですね。
当時は yeah のような発音だったんですが、これでも複数形にしてもですね、やはりポイントは変わりません。
あなた方という言い方をしながら、読者に向かって語りかけるんですが、
その指している読者というのは書き手から見ると、不特定多数の皆さんぐらいの意味になるので、
そのまま the you だけではなくて you に相当する当時の yeah もですね、不特定多数を指す、いわゆる総称の you みたいな使い方はいくつか例文は出てくるんですね。
なので基本的に中英語にはあったと考えて良さそうです。
書き言葉とyouの関係
それがその次の時代、近代語記以降にですね、目立つようになってきたと。
はっきりと総称の you の使い方だというふうに認識されるようになったということではないかと思うんですね。
つまり書き手と読み手というですね、書き言葉特有のこの関係を考えると分かるような気がするんですね。
書き手にとってあなたっていうのは読者でもあるんですが、不特定多数であると読み手は。
そのことも分かった上で書き手は you を使うわけですよね。
読み手としてはこれ自分のことだ、you と言って自分のことだとは思いますが、よくよく第三者的にこの構造を見てみると、ここで言っている you というのは人々一般なんだということで、この理屈自体は突起なことではない、割と自然なことだと思うんですね。
本来は目の前にいるあなたを指すはずの you がどうして一般認証の使い方になるのかっていうのはこの辺に鍵があると思うんですよね。
先ほどは詩の話ですけれども、他に例えばことわざ、これは you 出ますよね。
行儀作法レシピのようないわゆるマニュアル、ここでも主語は you を使いますが、これ読者に向かって you と作者が言っているわけなんですけれども、一般的に解釈すれば、これ人が学ぶべき行儀作法であるとか、人がなすべき、従うべきレシピであるということで、限りなく一般認証的な用法に近づくということですね。
ということで今回の疑問、一般に人々を意味する you の起源は少なくとも遅くても中英語記にはあったということになりますね。
さらにその前にあったかどうかっていうのは詳しく調べていませんが、この理屈を考えると書き言葉というものが介在している。
そして書き手と読み手の関係っていうのがあって、本来は目の前のあなたを指す用法が、この書き言葉の得意な構造を通じて、あるいは得意なレジスターを通じて一般認証的な用法が生まれてくる。
そういうことなんではないかと考えています。
それではまた。
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