ロバート・ラウスの功績
おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回取り上げる話題は
18世紀半ばに英文法を作り上げた Robert Lowth とは一体何者?という話題です。
同僚の井上一平さんと私とで youtube チャンネルを始めておりまして、英語学・言語学チャンネルと題して、2月から始めてるんですけれども、その第19弾が昨日公開されました。
タイトルは、英文法が苦手な皆さん、苦手にさせた犯人は18世紀の規範文法家たちです。
と題して、1回前の第18弾ですね、この間の水曜日に公開したものなんですが、それから昨日日曜日に公開したものと合わせて関係代名詞の歴史について話したんですけれども、後半は主にですね
この関係代名詞の使い方なんかが厳しく規則として定められた18世紀半ばから後半にかけての規範文法の時代ということが話題になったんですね。
そこで実はいくつかの固有名詞が出たんですけれども、その中で英語史上取り分け重要と考えられています Robert Lowth という人物。
この人物についてYouTube上ではですね、さらっと触れて終わりだったんですけれども、それをですね、補う意味でこのVoicyでもですね、取り上げたいと思っています。
このロバート・ラウスという人物なんですけれども、初めてこの名前を聞いたという人もですね、少なくないと思うんですけれども、
実は我々の生活に限りなく大きな影響を与えている人物の一人なんですね。
というのは英文法を作り上げた人だからです。
この人が言ったことがある意味ですね、正しいと言いますが、後に標準的で規範的だということになり、それこそ大学受験の入試英語であったり、
教育の英語であったり、そこで出る文法問題ですね、その基礎となるものを作り上げた人なんです。
ある意味ですね、この人が決めたことに振り回されて、我々は英語学習をしていると言っても過言ではないというような非常に重要な人物なんですね。
規範文法の時代背景
さあ、この人は何者かというとですね、時代は18世紀の半ばと言いますかね、
生まれは1710年、そして亡くなったのが1787年ということで、主に18世紀の半ばあたりを生きた一人の非常に重要な人物なんですね。
オクスポードの詩学教授、詩ですね、ポエムの教授であり、かつですね、ロンドンの宗教も務めた聖職者という人なんですね。
説教師です。この18世紀というのは、YouTubeチャンネルでも話したように、規範意識が非常に強い時代なんですね。
そして人々も規範、言葉のマナーというんですかね、これを求めていた時代だし、さらにそれに反応して知識人がたくさん規範文法というものをですね、書いて出版したということなんですね。
文法に限らず、規範的な綴り字であるとか、語の使い方というものを明記する辞書、これもですね、非常に売れたんですね。
で、最も有名なのは1755年に、サミュエル・ジョンソン、いわゆるドクター・ジョンソン、ジョンソン博士と言われている当時の大文豪ですね。
この人がアシスタントはつけながら、事実上独力で作ったと言われる辞書を1755年という年に出して、これが大売れに売れたというような、そんな時代の雰囲気の中です。
このジョンソンの辞書の7年後です。
1762年に、今回取り上げているこのロバート・ラウスという人がですね、後に一世を風靡することになる、規範英文書を出版しました。
記念すべき年ですね、1762年。
そのタイトルは、Short Introduction to English Grammarというものです。
これが後位聖職者だったわけですよね、ラウスは。
人々に説教するのに慣れているということもあってですね、ある種上から目線のと言いますかね、ズバッとこうすべきだ、こうすべきではないというような、いわゆる規範集ですね。
言葉に関する規範集、主に文法ですけれども、英文法に関する規範を集めた書ということで、この剥ぎれの良さが効いたんでしょうかね。
1800年までに45ズリを減るベストセラーとなったんです。
そして、このラウスの文法書を下敷きにして、新しい世紀ですね、19世紀になってからも、売れに売れる文法書というのがどんどん出てきてですね、
その流れの中にある意味、今もあるということなんです。つまりイギリスだけではなく、アメリカももちろんそうですし、そして世界中において学ばれている英語とその英語文法ですね。
この基礎は誰が知ったかというと、基本的にこのロバート・ラウスと言い切ってしまっても過言ではないというぐらいですね。
それぐらい非常に重要なインパクトを残した個人なんですね。
ライバルとの競争
文法書ですから、その中で言っていることは非常に多いんですが、例えば昨日のYouTubeで話したような関係代名詞ですね。
この使い方に関する、こうすべきだとかこうすべきではないというような決まりであるとか、例えば関係代名詞に絡むとですね。
全詞が関係代名詞説の最後に現れるということは、会話ではあるかもしれないけれども、フォーマルなスタイルではあまり望ましいことではないというような趣旨で、例えばですね、こんな部分を挙げています。
Horus is an author whom I am much delighted withみたいに関係代名詞説になると、最後にwithが残っちゃう。本当はwith an authorという風になるところなんですけれども、これがオーサーを就職する目的で関係代名詞があるということで、オーサーが前に出ちゃったということで、an author whom I am much delighted withみたいにwithが残っちゃうわけですよね。
こういうのは会話ではいいかもしれないけれども、フォーマルな文体ではちょっとね、みたいな言い方をしているのがこのロバート・ラウスなわけですね。
このような、いわばこうは言ってもいいけど、こうは言っちゃダメみたいなものをまとめた文法書ですね。これが大売れに売れたということなんです。
ただしですね、このロバート・ラウスだけ持ち上げるというか、注目するのはいかがなものかという声もありまして、というのは18世紀は全体的に規範主義の時代であって、そして言葉の規範を定めた英文法書、規範文法書を多くの人が出したという世紀なんですね。
その中で最も売れた本を書いたのはロバート・ラウスですし、その後に影響を残したという意味では、確かにこのロバート・ラウス、非常に重要な人物なんですが、実はその1年前、1762年にラウスがショートインタラクションとイングリッシュグラマを出版する1年ぽっきり前ですね。
ここに非常に重要なもう1人の人物が、やはりもう1つの文法書を書いているんです。
1761年にRudiments of English Grammarというタイトルの文法書を出した人がいます。
これは誰かと言いますと、一種のライバルですね。
現代ではロバート・ラウスのライバルと言われている、ジョセフ・プリーストリーという人物なんですね。
この人物は文法書を書いたということで文法家ではあるんですが、それ以上に実は科学者、化学者なんです。
そしてなんとこの人は酸素を発見した人です。
ということで科学史上も名前を残す人なんですが、英語史上あるいは英文法史上もちょっとした名前を残している変わった個人なんですね。
このジョセフ・プリーストリーという人が1661年に文法書を出したわけなんですけれども、
翌年に出るロバート・ラウスのショートイントラクションとイングリッシュ・グラマー、これとバチバチのバトルを交わすことになるわけですね。
こういうこともあって、いかに当時18世紀半ば、規範文法に対する需要が大きかったか、
そしてそれに対する供給も常に出されていたということがよくわかってくるんですね。
当時は科学主義の時代で、言葉ですら規範というかルールというものできっちりと制御できるという発想があったということと、
そもそもがマナー大好きっていう時代だったっていうこと。
そしてこの2人のなかなか面白い個性、ロバート・ラウスという人とジョセフ・プリーストリーですね。
他にもたくさんいたわけなんですが、この2人が中心となって、この売れ筋の英文法書がどんどんと出版されたっていうことなんですね。
その結果、当時出来上がった規範文法書が今の今まで、21世紀の今まで影響力を残しているっていうことなんですね。
この18世紀以前にも人々は文法にのっとった英語を用いて、話し言葉でも書き言葉でも使ってきたわけです。
そういう意味では、もちろん言葉ですから何らかの決まりはあった、英文法というのはあったことになります。
しかし明示的に、これが良い語法だ、悪い語法だという形で明示的に規範文法を制定したというのがこの18世紀の半ばのことなんですね。
その見方をしますと、結局我々が学んでいる英文法の直接の祖というのはそこにあるわけです。
なので私はよく言うんですが、英文法というのは本当の意味では250年ぐらいの歴史しかないということなんですね。
それではまた。