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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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lyの語源とその意味
今回取り上げる話題は、ly の語源は、体、というものです。
ly と言いますと、典型的には福祉を作る設備字、福祉語尾と捉えられていると思うんですね。
slow に対して slowly であるとか、beautiful に対して beautifully のように、今後も新しい形容詞ができたとすれば、それに ly をつければ、基本的に福祉を作ることができるというぐらい、非常に生産性の高い語尾、設備字なんですね。
さあ、この ly で綴られる、ly と発音される語尾なんですけれども、これを遡るとですね、語源的には、古英語の reach という単語に遡るんですね。
この単語は、もともと名詞でですね、体、形、様子、という肉体的な、物理的な、目に見えるものですね。
体とか形、様子、というような、こういった意味が原理なんです。
最後の ch という詩音がありますけれども、この詩音は、もう一つの別の詩音、k という音ですね。
k で表される、k という音と、非常に音声学的に近い関係にあります。
語源的にも、これを交代することがあってですね、実は like と同じ語源なんですね。
現在もある、この l i k e と綴る like。
これは好き、好きであるという方の意味ではなくて、何々のような、という、あちらですね。
前置詞として使われる like の方と、同じ語源なんですね。
この like っていうのも、結局何々のような、まさにようって使いますよね。
何々に似たということで、つまり、耳形が似ているということですので、もともとはやっぱり、体、形、様子、ということなんですね。
なので、この語源を踏まえると、例えば、beautifully、これ美しくという副詞ですけれども、
語源を考えると、beautiful に、りを付けたということは、美しい体で、あるいは、日本語で体ってていとも読みますよね。
美しい体で、美しい様子で、というふうに、副詞の意味で用いられるということなんですね。
姿、形、様子、といった、この見栄えに関する名詞ですけれども、
これを引き合いに出して、何々のような、何々のように、という形容詞であるとか、副詞を作り出すというのは、日本語でもたくさんありますね。
そもそも何々のようにっていうのがそうですが、何々の手入れ、先ほど訳語に用いた、何々の手入れっていうのもありますし、何々の様子で、
何々の風に、これ風ですね。風っていうのは、これ見栄えです。風光明媚の風光、見栄えですね。風景の風です。
形です。何々様に、何々の格好で、何々の形で、何々下に、といった風にですね。
こういった姿、形を意味する節字っていうんですかね。本来は名詞に遡るわけですが、こういったものを付加することによって、
結果として形容詞であるとか、副詞を作るというやり方は、非常に自然なので、多くの言語に見られるっていうことだと思うんですよね。
英語でも、このlyというのを用いて、大量生産しているというわけです。
beautifullyというのを、あえて複数の語で言い換えると、in a beautiful wayとか、in a beautiful mannerという言い方になりますが、
実際こういった言い方がある種、包まったのが、beautifullyのような語尾のlyを付けるやり方だと、こういうふうに考えていいと思うんですね。
本来、このようなlyであるとか、likeに相当する単語を、名詞の後ろにちょこっと加えることで、形容詞も作れたわけです。
何々のようなとすれば、形容詞ですし、何々のようにとすれば、副詞になるわけなんですが、もともと見栄えなく、このlyを付ければ、形容詞も作れたし、副詞も作れたんです。
ところが、あるときから、副詞を作ることが、このlyの種たる機能というふうに解釈されて、それが定着すればするほど、
人々の意識としても、これは副詞の語尾なんだとなって、しまいには、これで形容詞を作るということは、あまりなくなったということなんです。
ですが、初期には、たくさんこうした形容詞、つまりlyを付けて形容詞を作るというのもありまして、現代でも、例えばfriendlyというのは、friendという名詞にlyを付けていますが、これ形容詞ですよね。
このまま形で副詞もあるんですが、有効的な、有効的に、有効的なという意味の形容詞でもあるわけです。
他にscholarlyなんていうと、学者らしいであるとかbeastlyというと、獣のようなということですね。
時間の単位を表す名詞に付けたlyっていうのも、形容詞として使われますね。
これは副詞としても使うんですが、例えば、daily、hourly、weekly、yearlyのような形です。
もともとが実はlyというのは、形容詞の語尾でもあったということは抑えておいて良いかと思います。
さて、体の意味から始まったreachですね。
後にこの最後のシーンが消えて、結局lyになったといったんですが、
もともと体、見栄え、姿といったものを表したわけですから、その前に来る部分ですね。
これが精神的なもの、心理的なもの、心情的な語にくっつくということは、意味の観点からすると変な感じ、チグハグの感じなんですが、
すでにlyが副詞を作る語尾なんだという、あくまで文法的な機能的な役割を果たすようになると、当たり前のように出てきます。
例えばconfidently,heartfully,inwardlyなんていうのは、非常に心情的な単語の副詞系なわけですが、
語源的に考えるとconfident,heartful,inwardというのは非常に心情的な意味を表しますね。
一方でlyというのは体ですから、チグハグな感じがするんですが、すでにこんなこともおかしくないレベルになって、
つまりlyの原義が忘れ去られているということになりますね。
他に例えばfirstly,secondly,lastlyのような順序を表す表現もありますが、
これなんかも完全に機能的に副詞を作る、順番を表す副詞を作るんだという、そういう機能に徹しているlyということになります。
このように姿形を意味したlyがそのまま形容詞語尾、そしてとりわけ副詞語尾に特化してきたわけなんですが、
他言語との比較
こうなったという流れを見ましたが、面白いことに他の言語だと姿形ではなくて、もっとむしろ心の方ですかね。
内面、精神的な単語を使ってlyのような副詞を作るという言語があります。
これはですね、例えばフランス語であるとかロマンス語がそうで、これは心を意味するなんとかmentと書きますが、これで副詞を作るというのが一般的なんですね。
フランス語で例えばdifficilementなんていう、これdifficultlyぐらいの意味ですね。
それからregularlyというのと同じことです。
それからsurementというとこれはsurelyに相当するわけなんですが、
ちょうど英語ではlyを使っているところにフランス語ではmentといいますが、フランス語ではmentという発音です。
スペイン語ではなんとかmenteというのが使われますが、これも同語言です。
大元をさかのぼるとこれはラテン語のmens、これ心という意味の単語ですね。
これを脱格に活用したmenteに由来します。
なので英語とか日本語もそうですが何々の定義で、何々の様子でというふうに副詞を作ったのに対して、
どうもフランス語などのロマンス語では何々の心でという言い方で副詞を作ったということになります。
この違いもなかなか面白いではないでしょうか。
それではまた。