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2025-07-31 13:10

#59  映画『夜の来訪者』優雅な晩餐会に忍び寄る静かな告白

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上流階級の晩餐会に、“彼”は突然やってきた──


今日ご紹介するのは、2015年にBBCが制作した映画『夜の来訪者(An Inspector Calls)』。

 

舞台は1912年、イギリス北部の工業都市。裕福な実業家一家の晩餐会に、謎の警部が現れます。彼が持ち込んだのは、若い女性の自殺というひとつの事件。しかしそれは“誰かの罪”ではなく、“私たち全員に関係する問い”でした。

 

この作品、ただの屋敷ミステリーではありません。イギリス社会の階級構造や、「見て見ぬふり」が引き起こす悲劇、そしてラストに訪れる“静かな反転”が、観る者にぐさりと突き刺さります。

 

ロケ地は、ノース・ヨークシャーのスキャンプトン・ホール。ジェーン・オースティンの時代に流行したリージェンシー様式の邸宅が、“上流に憧れる中流の家”という舞台設定にぴったりハマっていて注目です。

 

 

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サマリー

映画『夜の来訪者』は、1912年のイギリスを舞台に、上昇志向の実業家バーリング家の晩餐会で繰り広げられるダークなドラマです。物語では、謎の警部グールが家族の過去を暴き、エヴァ・スニスの自殺に関する冷酷な真実を明らかにし、観客に自己反省を促します。

映画の概要とテーマ
英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。
物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
さて、今日ご紹介するのは、いかにもお屋敷ミステリーに見せかけて、最後には背筋がゾクッとする、そんな一作です。
2015年のPBC製作映画、夜の来訪者、オリジナルタイトルは、アン・インスペクター・コールズです。
ゾクッとするって言いましたけど、アガサクリシティ風のサスペンスでも、幽霊劇でもないです。
ミステリーのような形式で話が進んでいくんですが、目的は犯人探しではないんですね。
道徳劇っていう言葉が合うんですかね。
私たちにあなたならどうすると問いかけてくるような構造になっていることが特徴です。
そして、最後に心に突き刺さるメッセージがあるんですが、それがとても衝撃を受けます。
では、あらすじからご紹介していきます。
物語の原作は、J.B.プリーストリーが1945年に書いた履曲です。
階級社会への批判とか、個人の行動が社会に与える責任というものが大きなテーマになっています。
物語の舞台は、1912年、イギリス北部の工業都市、架空の町のブランムリです。
上昇志向の強い実業家アーサー・バーリングは、娘シーラの婚約を祝う晩餐会を盛大に開いています。
シーラのお相手は、貴族階級出身のジェラルド・クロフト。
バーリングは、ミドルクラスから彼一代で成功を収めた家族なんですね。
なので、この結婚によって貴族入りする大チャンスが訪れたんです。
でも、その晩餐会の最中に、グールと名乗る謎の警部が現れて、
エヴァ・スニスという若い女性の自殺について、家族一人一人に問いを撫でかけます。
話が進んでいくにつれて、驚くべき事実が明らかになります。
家族全員が、かつてエヴァと関わっていたんですね。
家族全員と、婚約者のジェラルドも、冷酷な解雇、不当なクレーム、
心ない言葉、無責任な優しさ、そして搾取と見捨て、
彼女の転落と死の背景には、バーリング家の人たちの何気ない言動が連鎖していたんです。
そして、衝撃の真相は、それだけでは終わりませんでした。
グールー警部は一体誰だったのか、どうして彼は全てを知っていたのか、
そして本当にエヴァ・スニスは死んだのか、
最後に訪れる静かな震えと逆転劇に、見ている者の心に深い後悔と、
これは他人事ではないという予感を残して幕を閉じます。
階級社会の描写
一見シンプルな筋に見えて、実はたくさんの意味があちこちに込められているんですね。
次は、そんな深みを感じられる見どころを4つご紹介していきます。
見どころその1 英国階級社会の地層を見せるドラマ
物語は美しい邸宅で、晩餐会の準備が行われているところから始まります。
そこに住んでいるのは、裕福で洗練されたバーリング家の人々です。
でもそれは表面上ですね。
彼らは貴族ではない中流階級、アッパーミドルであって、
貴族のように見せようとする強烈な見栄と焦燥感が物語の軸にあります。
上品な暮らしを演出しているんですね。
バーリング夫人がテーブルに花を飾って、
最後に完成したテーブルを見て、バーリング氏はにやりとします。
娘の結婚で、やっと自分たちも上流階級の仲間になれる。
やっとここまで来たっていう達成感みたいな感じですね。
でも話が進んでくるとどんどん見えてくるんですが、
彼らの上品な暮らしとか、夫人のやっている慈善活動も、
見栄と階級のための道具になっているのがわかります。
なんでそこまで必死なのかというと、
その背後にはイギリス社会の上流、中流、労働者という
目に見えない壁があるからなんですね。
いくら見た目が豪華でも、バーリング家と貴族の間には大きな壁があって、
彼らは上流にはなれない人なんです。
そしてこの映画の舞台が1912年なんですが、
ちょうどダウントンアビーのシーズン1がスタートした舞台と同じ年なんですね。
バーリング家はダウントンアビーのクローリー家のような人たちの仲間入りをしたいと思っているわけですね。
見所その2、誰かではない私が試される。
最初に話したんですけど、この物語の目的は犯人探しではないんですね。
見ている私たちがバーリング家の誰かに自分を重ねてしまう構造になっています。
これが結構つらいところでもあるんですけど、
誰かに心ない言葉を浴びせたことはないのか、
見て見ぬふりをしたことは、
助けられたはずの誰かを過去に見捨てなかったか、
あなたはエヴァ・スミスに何をしたのかという問いが突きつけられるんですね。
グール警部はこんな言葉も残します。
覚えておけ、エヴァのように追い詰められた人々は今も我々に残されている。
彼らの人生、希望、恐怖、苦しみや幸せのチャンスは我々にかかっている。
我々の考え方や発言、行動次第なのだ。
という言葉を残して警部は静かにお屋敷を去っていきます。
そしてこの後に、彼が人間ではないのかもしれないと分かる瞬間があって、
そこが背筋がヒヤリとするところです。
ここで物語が一気に反転するんですが、
登場人物とロケ地
それが単なるトリックではなくて、
夢なのか現実なのかという観客を揺さぼる仕掛けになっています。
ラストはどうなったのかは、ぜひ映画を見て確かめてください。
見どころその3、登場人物の変化に注目することで深まる感動。
エヴァ・スミスを追い詰めたバーリング夫妻、夫妻の子供のシーラとエリック、
そしてシーラの婚約者のジェラルトの行動には、
本当に一つ一つに絶望感を感じるんですが、
唯一この物語で救われるのはシーラの変化です。
最初はちょっと浮かれている、婚約も決まって浮かれているお嬢様だった彼女が、
エヴァの人生を知って何を大切にするべきかということに気がついていくんですね。
そしてエリック自身も自分の罪を認めて刑務所に行くと言います。
それは家にいるよりはましだということだったんですけど、
事態が明らかになっても、これで借位はなくなったなという父親に心底あきれだからでもあります。
そんな二人に対して父や母たちは自分たちの地位とか対面に固執して、決して非を認めようとしません。
バーリング氏はグール警部に対しても、いくらでも金を払うから見逃してくれって頼むほどなんですね。
ここに変われるものと変われないものがリアルに描かれています。本当に恐ろしいです。
見どころ4。警部グールを演じるのはデビット・シューリス。
このミステリアスなグール警部を演じているのがイギリスの俳優デビット・シューリスです。
彼の有名な役はハリーポッターのディーマス・ルーピン先生じゃないでしょうかね。
穏やかながらも鋭い眼差しで、グール警部の謎めいた存在を本当に素晴らしい演技で見せていました。
グール警部は最初は本当に静かに淡々と話しているんですが、そこに全部知っているんだよっていうような雰囲気があるんですよね。
デビット・シューリスの演技はただ怒ったり問い詰めたりするんじゃなくて、静かにじわじわと相手の心をえぐっていくような迫力がありました。
そしてさっきも最後の彼の言葉を一部紹介したんですけど、あのセリフを言っているときに本当に自分に向かって言われているような気がして、ずーんとして涙が止まらなくなってしまいました。
その後の展開もちょっとすごく辛いので、本当に見て感じてと考えたい映画でした。
さて見どころを4つご紹介してきましたが、最後にロケ地についてもご紹介したいと思います。
バーリング家の邸宅になっていたのが、スキャンプトンホールというお屋敷です。
イングランド北部のノースヨークシャーという地域にあるのですが、このあたりはブロンテ姉妹の描いたアラシガオカとかジェーンエアーの舞台としても知られている、荒々しくも美しい風景が広がっている場所です。
このスキャンプトンホールはいかにも貴族のお屋敷というゴテゴテした装飾ではなくて、シンプルで本当に優雅な佇まいの邸宅なんですね。
実はこれがリージェンシー様式と呼ばれる19世紀初めのイギリスで流行した建築スタイルなんです。
上品さがあってバランスの美しさと左右対称のすっきりした作りが特徴です。
控えめで貴賓があるという感じですね。
ジェーン・オースティン時代の主流だったデザインなんですが、上流階級っぽく見せたい中流の家というバーリング家の設定とこのお屋敷の雰囲気がすごくマッチしている気がします。
映画の中で出てくるバーリング家の晩餐会の部屋とか客間、玄関ホールも実際にこのお屋敷の中で撮られています。
このスキャンプトンホールのホームページも色々見ていて気がついたのですが、
映画の中でちょっと悲しい場面で登場してくる美しい公園もこのお屋敷の庭園だったことが分かりました。
ロンドンからかなり遠い場所にあるので、なかなか行きづらい場所ではあるのですが、いつか行ってみたいなと思っています。
さて今日は2015年の映画「夜の来訪者」をご紹介しました。いかがでしたか?
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またコメントで感想をお寄せいただけたり、またこんなドラマを取り上げてほしいというリクエストも大歓迎です。
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では次回もお楽しみに。
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