英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
さて、今日取り上げるのは2つの作品です。BBCドラマ版高慢と偏見、1995年放送のドラマです。もう一つは、映画ブリジット・ジョーンズの日記、2001年の公開の映画です。
この2作品に登場するダーシーという名前の男性キャラクターを比較してみようというテーマでお届けします。実はこの企画は、前回の放送でご紹介したリスナーさんのお便りがきっかけです。
ブリジット・ジョーンズの日記を見たのがきっかけで、登場するマーク・ダーシー繋がりで、初めてBBCドラマ版高慢と偏見を見ましたという内容だったんですね。私も読んでいて、ああそうだったそうだったと思い出しました。確かにダーシーが繋がっているんです。
ブリジット・ジョーンズの日記では、ロンドンでかなり不器用に生きるアラサー女性のブリジットが、仕事や校に悩みながら前向きに進んでいくというラブコメディーです。ブリジットに静かに寄り添っているのがマーク・ダーシーです。
一方、高慢と偏見は、ジェン・オースティンの名作で、知的で自立した女性エリザベス・ベネットと、傲慢に見えるけれども誠実な大事主フィッツ・ウィリアム・ダーシーとの恋を描いた物語です。
実は、このブリジット・ジョーンズの日記のマーク・ダーシーというキャラクターは、高慢と偏見のフィッツ・ウィリアム・ダーシーのオマージュで、演じているのはコリンファース本人です。
このマーク・ダーシーとフィッツ・ウィリアム・ダーシーの二人は似ているのか、それとも違うのか、今日はそんな二人のダーシーについて似ているところや違うところ、どちらが魅力的なのかをたっぷり語っていきたいと思います。
どうぞ最後までお付き合いください。
ではまず、二人のダーシーに共通しているところから話していきたいと思います。
どちらのダーシーも口数が少なく、感情をあまり表に出さないタイプですよね。
そのせいでプライドが高そうとか、ちょっと冷たく見えてしまう。
でも実は行為を持っているのに素直に気持ちを伝えられないので、それがエリザベスやブリジットとの関係をこじらせてしまう原因になっているんですよね。
エリザベスもブリジットも最初はダーシーのことを嫌いとなってしまっているからですね。
はじめの印象が悪くて誤解されやすいんですが、でもそういった不器用なところが誠実さとか真剣さを感じさせるきっかけになっている気がします。
そんな時に登場するのがライバルの男性たちです。
傲慢と偏見にはウィッカン、ブリジット・ジョーンの日記ではダニエル・クリーバーです。
この2人がダーシーとは全く正反対で、最初からものすごく感じが良くてセクシーで魅力的なんですよね。
なのでエリザベスもブリジットもすっかり心を奪われていきます。
でも見ている私たちはだんだん気がついていきます。
なんかこの人たちは怪しいよねってね。
やがてエリザベスもブリジットも自分の目で真実を見ていきます。
しかもこの2人はウィッカンはダーシーの妹に、ダニエルはダーシーのかつての恋人に手を出していました。
そういうこともあって、ダーシーが彼に恨みを抱いていても当然ですよね。
ウィッカムやダニエルが悪い男であればあるほど、ダーシーの誠実さが際立っていきます。
そして視聴者としての私たちもじわじわとダーシーの魅力に惹かれていくんですよね。
さらに2人のダーシーには決まった相手もいました。
マークには弁護士仲間のナタシャが、ウィッチ・ウィリアムの方には幼い頃からの言い名付けがいました。
そういった存在も乗り越えて、最後には真実の愛を選びます。
どちらのダーシーも決して派手ではないし、情熱的にくどいたりはしないんですが、
その静かな愛がちゃんと相手に届いて結ばれます。
この展開がたまりませんよね。
ではここからは2人のダーシーの違いを見ていきたいと思います。
まずは高慢と偏見のダーシーから。
彼は19世紀の初めのイングランドに生きる王子主です。
格式を重んじて非常にプライドの高い人物です。
でもそれはそうやって生きるように育てられてきたからでもあるんですよね。
彼は両親を早くに亡くしていて、かわいがっている妹がいます。
エリザベスに対しては最初からかなり好意を持っていたんですが、
でも彼女との階級さとか家柄のことがつい頭をよぎってしまう。
その結果ものすごく失礼なプロポーズをしてしまって、
エリザベスに拒絶されてしまいます。
でもここからダーシーが自分で変わろうとしていきます。
偏見を乗り越えて自分の気持ちを誠実に伝え、
エリザベスの一家に降りかかったトラブルを見えないところで解決していきます。
そういった行動がエリザベスの心にも変化をもたらしていきます。
二人はお互いに持っていた偏見に気がつき、
ついにはダーシーのおばさんペディ・キャサリンの大反対がきっかけで、
二人はようやくつむちを通わせることになるんです。
それではブリジット・ジョーンズの日記のマーク・ダーシーはどうだったでしょうか。
彼は2000年代のロンドンに生きる人権派の弁護士です。
裕福な家庭に育って両親もとても上品な人たちです。
彼には婚約者もいてキャリアもあって見た目もちょっと堅そうな人でしたね。
でもこのマークは最初から結構いい人でした。
ちょっと不器用だけど誠実で根っこに優しさがある。
ブリジットを変えようとしないんですね。
そのままの君でいいよって言ってくれて、
それがブリジットにとっては何よりの救いになります。
彼女はお酒やタバコ、体重が増えたり減ったりという不安定だった彼女が、
自己肯定感がぐっと上がってだんだん落ち着いていきます。
そしてラストシーンの雪の中で包み込まれるキスシーン。
あれには映画館で見てたんですけどかなり衝撃的でしたよね。
でもこうも考えたんですよね。
もしフィッチ・ウィリアム・ダーシーが現代に生きていたら、
彼もマーク・ダーシーのように殴り合いの喧嘩をしていたのかもしれない。
例えばウィッカムのあの態度に対して、
時代が違えばブリジットの世界のように表に出ろってなっていたのかも。
実際にジェン・オースティンが生きていた19世紀の初めて、
まだ血統が存在していた時代だったんですよね。
名誉のためにピストルで戦う、そんな文化も残っていたので、
あの物静かなダーシーも本当はマーク・ダーシーなみに
熱い一味を持っていたのではないかなんてつい想像してしまいます。
でもジェン・オースティンはそういう暴力的な描写を好まなかったので、
描かれていないんですが、フィッチ・ウィリアム・ダーシーの中にも
情熱があったのかもと思うと、ますます魅力的です。
そしてもう一つの大きな違いは、
高慢と偏見の方では、ダーシーが変わっていくことで恋が進んでいきます。
一方、ブリジット・ジョーンズの日記の方では、ブリジットの方が変わっていきます。
ダーシーが彼女を変えたんですね。
そのままでいいって言ってくれて、その愛に包まれて
ブリジットが前に進めるようになっていきます。
どちらの物語も愛が人を動かす力を描いていて、それぞれの時代ならではの美しさがあります。
そしてちょっと面白い裏話もあります。
ブリジット・ジョーンズの日記の原作者、ヘレン・フィールディングは、
自ら、高慢と偏見、そして1995年のBBCドラマ版に強く影響を受けたと語っています。
実際に、マーク・ダーシーというキャラクターは、最初からコリーンファーストをイメージして描かれたそうなんです。
そう思ってみると、なるほどいろんな部分がつながっているなと思いますよね。
演じているのが本人というところも、ファンには本当に嬉しい贈り物でした。
さらにさらに、映画ブリジット・ジョーンズの日記の脚本を書いたのがアンドリュー・デイビスです。
彼はBBCの高慢と偏見の脚本家でもあるんですね。
つまり、物語の構造だけではなくて、作り手のレベルでもしっかりこの2つはリンクしているんです。
そしてですね、まだこれだけじゃないんですよ。
なんと、俳優陣もリンクしていたことが分かりました。
覚えてますか?
BBCのドラマで、ダーシーの親友のビングリーを演じていた俳優さん、
そしてその妹のハースト夫人を演じていた女優さんです。
なんとこの2人がブリジット・ジョーンズにも出演しているんです。
ビングリー役の彼は、ブリジットの会社の同僚としてちょこっと登場しています。
そしてハースト夫人の女優さんの方は、
こちらはブリジット・ジョーンズの2作目の方なんですが、
マークの同僚のちょっと嫌味な女性として登場しています。
どちらも本当に小さな役なんですけど、
知っているとニヤリとしてしまう小ネタです。
こうした仕掛けが詰まっているからこそ、
ブリジット・ジョーンズはただのラブコメディではなくて、
現代に蘇った高慢と偏見のパロディでもあり、
オマージュ作戦としても楽しめるんですよね。
自立や知性、そして対等な声に憧れる人には、
高慢と偏見のフィッツ・ウィリアム・ダーシー、
そしてあなたのままでいいよと包み込んでくれるような愛に惹かれる人には、
ブリジット・ジョーンズの日記のマーク・ダーシー、
あなたはどちらのダーシーにとってもいきますか?
さて今日はミスター・ダーシー比較をテーマにお届けしました。
いかがだったでしょうか?
推しダーシーが変わったっていう人も、
改めて、やっぱり私はこの人の方がいいなって再確認した方も、
それぞれの魅力にたっぷり浸っていただけたら嬉しいです。
さて最後にちょっとお知らせです。
ストア化というプラットフォームで、カントリーハウスとロケ地で学ぶ
旅するイギリス文化講座を始めました。
講座のテーマは、英国のお屋敷と英国のドラマや映画、
英国の歴史ドラマや映画を通じて、お屋敷の文化に触れるという内容です。
9月にはダウントンアビーの映画第3弾の公開も迫っているので、
講座の内容にもダウントンが随所に登場しています。
映画の予習にも、映画を見た後にも、これから英国ドラマや映画を見るときにも、
ぜひ楽しんでいただける内容になっていると思います。
現在、2つの講座を開催中です。
イギリスの文化に詳しくなくても、映画やドラマがちょっと好きという、それだけで十分です。
詳細や参加方法は、番組の説明欄にリンクを載せていますので、ぜひ覗いてみてください。
さて、この放送を気に入っていただけましたら、
星5つの評価で応援していただけたら、とっても励みになります。
また、コメントで感想を寄せていただいたり、
こんなドラマを取り上げてほしいというリクエストも大歓迎です。
次回をどうぞお楽しみに。