映画『英国王のスピーチ』の背景
英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
さて、今日はロケ地巡りの回です。前回の放送で、あらすじや見どころをご紹介した映画、英国王のスピーチのロケ地となった場所をご紹介します。
でも本当にたくさんの場所があるので、その中でも重要な場所をいくつかピックアップして、ロケ地を一緒に巡っているようにご紹介したいと思います。
英国王のスピーチは、亡きエリザベス女王のお父さん、ジョージ六世が、喫音という言葉がうまく出てこなくて、スムーズに話せない症状に向き合って、話し方の専門家のライオネルと一緒に、話し方だけではなくて、国王としても自信をつけていく、そんな深い人間ドラマでした。
この番組でもよく話していることですが、本当にうまくいろいろな場所をつなげて、一つ一つの空間が作られているのです。
英国王のスピーチでも、それはそれは見事で、ロンドンの古い邸宅、産業遺産の発電所や大聖堂などが、ロイヤルファミリーの邸宅から宮殿、BBCの放送室などになっているのです。
その裏側を知ると、本当に驚きとワクワクで、また映画を見て確認してみたくなるのです。
それが私がロケ地巡りが大好きな理由なのです。
話が横道に逸れていっちゃいましたが、今日は大きく3つのパートでご紹介したいと思います。
まずはじめは、アルバート王子の邸宅はどこで撮影されたのか。かつてロンドンにあった場所を、映画ではどうやって再現したのでしょうか。
次は、ロンドンのライオネルの自宅と2人が討論した公園の場所はどこ。
ライオネルが家族と住んでいた自宅や、彼が王子と喧嘩別れした場所についてです。
最後は、スピーチシーンと感動のラストシーンの秘密。
印象的なスピーチシーンとその練習風景の撮影場所や、感動の最終演説の場面はどうやって作られたのでしょうか。
では早速出発です。
はじめにご案内するのは、アルバート王子の邸宅はどこで撮影されたのか。
まずはロンドンの街角に静かに佇む1軒のタウンハウスが映画の中で登場します。
アルバート王子が自宅リビングで治療を受けている場面がありましたが、覚えていますか。
お医者様が消毒されたガラスの塊を1個、2個、3個って王子の手の上に乗せて、それを口に入れて話すようにさせる場面です。
他にも、国王としての即位が表裏会で宣言された後に、自宅に戻ってきたら家族が引っ越しの準備をしている場面がありましたよね。
2人の娘、エリザベス王女もマーガレット王女も、普通だったらお父さんに帰って飛びつくはずなのに、その日は緊張した顔でカーティッシュをしました。
マーガレット王女の方は小さな声でマジェスティと言っていましたよね。
この時は美しい階段に注目してほしいです。
この場所は、国王になる前のアルバト王子一家が暮らした家なんですが、実際にはロンドンのピカデリー145番地にあった家です。
第二次世界大戦の空襲でもう亡くなってしまいました。
では映画ではどうやって再現されたのでしょうか。
選ばれたのはロンドンの中心地にあるサーティスリーポートランドプレースという美しい邸宅です。
18世紀に人気建築家だったロバート・アダムが設計したタウンハウスです。
映画の美術チームはこの邸宅の壁の剥がれや古びた装飾をあえて残すことを決めたんですね。
古びた豪華さがその時代感を一層引き立てたんですね。
この家は建てられてからも貴族や大使館、不動産王やサッカークラブの会長など様々な人々に受け継がれてきた歴史も面白いです。
残念ながら今は個人の邸宅なので内部は非公開です。
映画撮影後に大規模な修復が行われたようで今ではだいぶ雰囲気が変わっています。
ネット上に現在の姿が見ることができるのでまたそのリンクも概要欄に貼っておきたいと思います。
そしてもう一つ面白いのがこの33ポートランド・プレイスはライオネルの治療室の画面にも使われていたんですね。
あの治療室を覚えていますか?
装飾の美しいガラスの天井や窓がありましたね。
そして色あせて剥がれてきたような壁紙の前にソファーが置かれていてそこにアルバートおじが座っていましたよね。
あれを見た時にちょっと不思議な感じがしたんです。
とても美しく装飾されている部屋なのにどこか朽ちかけたような雰囲気の共存ですね。
でもそれが歴史ある建物が長くそのまま残っていたから独特の空気が生まれたんだなと思うとちょっと納得しました。
そしてそれがライオネルの生き方にもどこか重なって見えてこの映画にぴったりだなと思います。
続いてご案内するのはロンドンのライオネルの自宅と2人が討論した公園の場所はどこ?
ライオネルが奥さんや子どもたちと暮らす自宅も登場します。
ちょっと庶民の生活感が滲むレンガ作りの長屋でしたね。
ライオネルが今日は特別なお客様が来たんだと言いかけてやっぱり口をつぐむ食事の場面だったり
ジョージ6世と王妃の訪問にライオネルの奥さんが驚きで言葉を失う場面がありました。
覚えていますか?
その撮影地はプーフレンズビルディングス。
1880年代に職人や警官が暮らした集合住宅で細い路地や中庭、19世紀の庶民の空気がそのまま残されています。
今ではアーティストのスタジオや工房などに使われていて年に数回のオープンスタジオに多くの人が集まるようです。
残念ながら普段は私有地なので見学することができません。
そして物語の中盤にアルバート王子が汚い罵り言葉の連発によって心の中のドロドロを吐き出した後、
二人で公園に散歩に出かける場面がありましたよね。
アルバートは国王となった兄が神父さん夫人と結婚しようとしていることをやめてほしいなと思っていることを打ち上げます。
するとラヨネルが思わずあなたが王になったらいいと口にしてしまいます。
その瞬間にアルバートは急に怒り出してそれは反逆罪だ私に指示をするな。
未開の地から来た田舎者めって激しく言い返しましたよね。
これで二人の関係に亀裂が走って治療は一旦ストップしてしまうんです。
そんなハラハラする場面を撮影したのはロンドンの美しい王立公園のリージェンツパークです。
スピーチシーンの撮影
もともと王室の狩りをする場所で、広い並木道と気化学模様の花壇が特徴のビクトリア時代の庭園です。
春には色とりよりの花が咲いて本当に美しいんですが、私もロンドンにいた時にこのバラ園に行ったことがあるんですけど、本当にきれいでしたね。
撮影が行われたのは2009年の秋で公園管理当局の協力で一般立ち入りを制限して撮影されたそうです。
当日は小雨模様だったので、かえって芝生の緑が映える映像が得られたそうですが、霧も立ち込めていて、逆にそれがこの二人の喧嘩のハラハラな雰囲気に合っていたのかもしれませんよね。
最後にご紹介するのはスピーチシーンと感動のラストシーンの秘密。
ここからはまるで私たちもアルバートの家族になったような気持ちで手に汗握るスピーチシーンが登場してましたよね。
そちらから3つご紹介したいと思います。
一つ目は工場での初演説です。
アルバートが工場を訪問して演説する場面がありました。
広い工場の中央に置かれた木の台の上に立って働く人々に語りかけるんですが、
ラユネルから学び始めた体を使った発声法をされげなく試していましたね。
でもなかなかうまくいかずに従業員の皆さんがどうしたらいいのっていうかなり戸惑った複雑な顔をしていたのがちょっと笑えた場面ですね。
この撮影に使われたのがクイーンストリートミル。
約130年前に蒸気駆動で送料を始めた名おり物の工場です。
映画の撮影地の紹介
今は当時の機械を残している博物館になっているのです。
二つ目は体感式のリハーサルです。
こちらもかなり緊迫感のあるリハーサルの場面でしたよね。
ラユネルが石資格を持っていないことがバレてしまったからです。
信用できないとアルバートが激怒していましたね。
ラユネルは資格はないけれどもこれまで多くの兵士を治療してきたと静かに語っていました。
実際の体感式は通常ウエストミスター寺院で行われるのですが、この映画の撮影はイギリー大聖堂で行われました。
11世紀に起源を持つゴシック建築で高い天井と美しい装飾が本当に見事な大聖堂です。
こちらが王としての覚悟を決めるアルバートをより際立たせていたと思います。
このイギリー大聖堂は映画やドラマでウエストミスター寺院の代わりとして使われることも多いので、そちらもぜひ注目してみてください。
3つ目、感動のラストスピーチ、そしていよいよクライマックスです。
1939年9月3日、第二次世界大戦開戦を告げるラジオ演説、バッキンガム宮殿で行われました。
ラユネルも急遽宮殿に駆けつけてきましたね。
長寿六世となったアルバートが宮殿の長い廊下を進んで、やがて狭い放送室に入る緊張の場面です。
長い廊下の豪華な空間はロンドン中心部にある政府所有の芸品館、ランカスターハウスで撮影されました。
そして国王がスピーチを読み上げるための小さな放送室と、その声を世界中に届けるBBCの無線制御室は、
当時は廃墟同然だったロンドン南部にある私発電所内で撮影されています。
この豪華な芸品館と廃墟同然だった発電所の組み合わせというのが面白いですよね。
ランカスターハウスはイギリスの政府の国賓を迎えた晩餐会などに使われている場所なんですね。
こちらは映画やドラマでバッティンガム宮殿の大役として登場することがとても多いです。
普段は一般公開されていないんですが、特別な公開日があるようですね。
そして私発電所は100年ほど前に建造されたアールデコ様式の巨大な発電所です。
1980年代に閉鎖されて以来長らく残されていたのですが、
その制御室跡は無数のダイヤルケーキが並ぶ見事な空間だったようですね。
こちらが映画ではラジオ局のコントロールルームとして活用されています。
私発電所は今は発電所の雰囲気を外観とか内部に少し残しながらも
いい感じでお店やレストランが入った商業施設になっています。
他にもバッティンガム宮殿の外観や一部の内部の映像には
ロンドンの西にあるエングルフィールドハウスも使用されました。
こちらは400年以上前に建てられたカントリーハウスで
特定の開放日に庭園が散策できるようです。
映画の制作チームはこの最終スピーチシーンは
王が壮麗な宮殿の間を抜けて小さな密室にたどり着くという緊張の高まりを
視聴者に見せたかったんですね。
それがあの贅沢な空間は足早に通り過ぎて
あえて狭い物置のような何もない小さな空間にこもるという演出だったわけです。
さて、英国王のスピーチのロケ地をほんの一部だけ巡ってきましたが
いかがでしたか?
たくさんあって頭の中がちょっとごちゃごちゃになってしまったら申し訳ありません。
もしもっとイギリスの映画やドラマに登場する
邸宅の実際の歴史やエピソードを知りたいと思った方は
私がストアカで開催している旅するイギリス文化講座もぜひチェックしてみてください。
概要欄にリンクを載せています。
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さて次回はダウントンアビーのグランサム伯爵家の邸宅が
なぜダウントンアビーという名前になったのか
プロデューサーのジュリアンフェローズが語った秘密についてご紹介したいと思います。
これを知るとフェローズがいかに家族に誇りを持っているのか
そしてあのドラマに愛情を持っているのかがわかる
とても素敵なエピソードなんです。
どうぞ楽しみに。
