読書のモニュメント
読書って、読み終えて1年も経たないうちに、ほとんど内容を忘れちゃうじゃないですか。
でもなぜかまた読みたくなってしまう。この不思議な魅力の源泉は何なのか。
もちろん読み進めているときの楽しい気持ち、これが一番の要素なんですが、僕はそれ以外に、読書体験は心にポツンとモニュメントを残すことができる。
これが醍醐味だと思うんですよ。 太宰治は、ある作品で学問の意義をこう表しました。
覚えたと同時に忘れてしまったとしても、心の底に一つ紙の砂金が残る。 これ、読書も近いものがあると思っていて、
読書はすべて忘れてしまっても、心に一つモニュメントが残る。 そう思うんですよね。
で、このモニュメントっていう言葉のニュアンスが大事で、 シンボルでもロゴでもキャッチコピーでもない、心を強奪していった一文や一場面、
それがモニュメントなわけですね。 心の片隅にポツンと立っているような感じで、市役所の前にある謎の像みたいな、
何かにとっては大切だけど、裸から見ると何が何だかわからないみたいな存在。 それが読書体験の正体なんじゃないかなって思うんです。
つまり僕たちって本を読むとき、読書をしているわけじゃなくて、 読モニュメント、
読摩をしているんですよね。 だから読書イコール読摩なんですよ。
自分の心に立ったモニュメントを思い返したり、 他人にこんな銅像が立ったんですって見せびらかしたりとか、
それ全体が読書、もとい読摩なわけです。 まああの読摩なわけですとかってね、ちょっとあの
ちょっと飛ばしすぎたんですけど、例えば 十秒厳禁鉄っていう本がありまして、
これ僕とっても好きな本なんですけど、 内容を説明するってなるとちょっと骨が折れます。
概要は歴史上なぜヨーロッパが文明の最先端を行っていたのかっていう その理由に迫った一冊なんですけど、
上下感があってボリュームもあるこの方ね、 素直に読書体験するっていうのは結構大変です。
なのでこれも最初からモニュメントを読む、 読摩するっていう態度で臨めばとっても楽ちんですよね。
どうせあの真面目に読書しても結果的にモニュメントを残すだけになるわけですから、 最初から読摩する態度で臨むわけです。
僕が見つけた柔錶厳禁鉄のモニュメントは 肥沃な三角地帯なんですよ。
肥沃、これね、豊かで養分があることって言いますか。 とにかく肥沃な三角地帯についてこれでもかと語っている本、それが柔錶厳禁鉄です。
肥沃な三角地帯、これねすごいんですよ。
結局この本って柔錶厳禁と鉄が重要な要素だよねって話に落ち着くんですけど、 それの元となっている要素っていうか原因が肥沃な三角地帯なんですよ。
この肥沃な三角地帯があったから柔が作られたし、 肥沃な三角地帯があったから柔厳禁に免疫を獲得できたし、
肥沃な三角地帯があったから鉄を加工する技術が高まったんですよね。 つまり文明が栄えたのは肥沃な三角地帯があったからなんです。
肥沃な三角地帯、皆さん生きていて聞いたことありますか?
肥沃な三角地帯、もしかしたら詳しい人とかは よく出てくるワードなのかもしれないですけど、僕はここで肥沃な三角地帯っていうのを
初めて聞いて、しかもそれがね怒涛の波のように 説明されるわけですから、肥沃な三角地帯に対する印象ってすごいんですよ。
だからこういうモニュメントに出会うために読書体験をしているのではないかって、 そう思うわけですよ。
ですからこの本のね、読書を進めたいって誰かに思った時は、肥沃な三角地帯がね、すごいんだわと。
このモニュメントの説明に結するわけです。 都にも各にも肥沃な三角地帯。
もし自分が生まれ変わることがあれば、ハワイとかパリとか、 もしかしたらねその外国を選びたくなる気持ちがあるかもしれないけど、
外国っていう感じじゃなくて、必ず場所として肥沃な三角地帯がいいなって。 それだったらね過去にもしタイムスリップしていても肥沃な三角地帯に生まれ変わっていれば
文明が栄えるわけですから、自分にとってプラスになる。 だから肥沃な三角地帯にこだわろうって。そう思える本なんだよって説明したら
10秒厳禁鉄が文明発展に大事でってツラツラと話されるよりは、 肥沃な三角地帯とは一体何なのかって相手に思わせた方が読書体験として
より良いものを提供できるんじゃないかって思うんです。 こんな感じでモニュメントっていう要素が主題にあれば、本の話って本当にしやすくなるわけです。
雷麦畑で捕まえての印象
それぞれ気になったモニュメントを共有できますから。 古典からラノベまで何でもいけちゃうわけですよ。
やっぱそもそも本の内容を話し合うとかって知識マウントみたいな話になりやすいんで、 これがモニュメント紹介っていうやり方であれば素直に心に残ったことを共有し合えるわけです。
同じ本でもモニュメントが変わっていて当然、そんな雰囲気が作り上げられるわけで、 ちょっとこう小難しい本を読んだ時にどちらがより良く理解しているかみたいな戦いにもならず、お互いの感動っていうのをぶつけ合って
自分のその読書体験自身もより良いものに引き上げてくれる。 これが読文の良いところなんですね。
読文っていいんですよね。本当に読文は良くて。 うる覚えながらでもモニュメントは残っているわけだから、自信を持ってね
時間が経った本の感想を言えたりとか。 だから読文っていうのを一つね補助線に差し込むだけで、
本っていうね、無駄に交渉に思っていかれがちなものが本来の円溜めとしてのね 立場をね
取り戻してくれるわけですよ。読文によってね。 だから今言った古典っていうところで言うと
雷麦畑で捕まえてっていう本はね有名な本ですけども これも感想を言い合うってなるとちょっと難しい
なんか思想のぶつけ合いみたいになっちゃいますから なかなか言い合えないと思うんですけど
雷麦畑で捕まえてのモニュメントを紹介し合おうってなったら 僕はね
ファッキーの日本語訳 これが心に残っているモニュメントなんですよ
内容っていうか訳なんですけど それまでね色々すごく素敵な感情の絶妙な動きが描写されていて
最後の最後にファッキーのとてつもない日本語訳が出てくるんですけど これがね心を奪っていく
クライマックス近くの場面で落書きでファッキーって書かれているものを見るっていう そんなシーンがあるんですけど
そこの日本語訳が野崎隆さんっていう方の訳の方だと なんか独特すぎるあまりにも独特すぎる訳が採用されていて
それしか正直覚えてないんですよね 村上春樹役はそのファッキーっていう風に書かれているらしくて
全然ね多分そこがモニュメントになるってことはないんですけど 当時僕高校生か中学生ぐらいの時に読んだんですけど
正直この日本語訳しか覚えてないっていうか それぐらい衝撃的だったんですよね
このモニュメントについて語りたい そのライムギバタケで捕まえての文学的なこととかは何も語りませんけど
あのファッキーの日本語訳はやばいよねって そういう風に軽く話し合える
そういうのが面白いんじゃないかなって思うんです 他にも話しにくい本としてビジネス書的な
なんかそっち系って難しいですよね本のね 感想を共有し合うのって ここでドクモなんですよね
ドクモがすごく良くてストーリーとしての競争戦略っていう本がありまして こちらも有名な本なんですけど
これもねなんかまあいろんなビジネスのやり方に合理的な判断と裏腹にストーリー っていうものがあってそれが成功を生むんだみたいなまあ
読書とモニュメント
そういった感じなんですけどこのねテーマだけ話すと少し月並みな本というか あまり面白くなさそうに聞こえるかもしれませんが
じゃあこれのモニュメントは何なのか 田山のね心に残ったモニュメントは何なのかっていうと
マブチモーターなんですよ マブチモーター
マブチモーターですね口に出したくなるマブチモーター マブチモーターを活字で連続して見られるのはこの本だけなんですよね
はい 決してあのこの本がマブチモーターのことだけを語っているわけではないんですが
とにかくマブチモーターに心を持っていかれます 僕は会社名とか詳しくなくてちょっと恥ずかしながらね
この本で初めてマブチモーターっていう会社の存在を知ったのですが もうマブチモーターがすごすぎて他にもあのスタバの話とか出てくるんですよ
この戦略としてね でもとにかく産み終えた時にはマブチモーターです
マブチモーターの活字の連続から得られるここだけの体験 それがストーリーとしての競争戦略っていう本なんですよ
他にもねティファニーで朝食をっていう本あるじゃないですか 僕がね古典名作みたいなのを読み漁っていた時期に
その古典名作読んでいったら すごいいい感じの人間っぽく見えるだろうなっていう
なんかその浅はかな考えでたくさん読んでた時期があったんですけど このねティファニーで朝食をそんな不純な動機で読み始めたにもかかわらず面白くて
この本のモニュメントは この本はねこのモニュメントってちょっと僕
今まで内容にあまり関係ないところだったりとかすごい端っこの部分をね モニュメントとして紹介してましたがティファニーで朝食をのモニュメントは
ティファニーで朝食撮りたいってあのヒロインの女の子が言うシーンなんですよ これはやっぱりねティファニーで朝食をのモニュメントはティファニーで朝食なんです
はい
なんやかんやあってその主人公振り回す魅力的なヒロインが ティファニーのね性質ながら豪華でツンとしたあの空気
あれがもうマジ最高みたいなシーンがあって いろんなねその悩みだの
その問題だのいろいろある中でティファニーの店内だけはすごく静かでね さっき言ったような空気感が漂っててティファニーの店内で朝食
めっちゃ食べたいですみたいなシーンがあったはずなんですよ ここがやっぱ一番良くて
このモニュメントなんですよねティファニーで朝食食べたいかってちょっと思うじゃないですか この本読んだらティファニーで朝食食べたいってなる
それがねいいんですよね
このように本の内容をつぶさに理解して話すんではなくて 自分のお気に入りのモニュメントを探す
その探すために読書をするっていうのが面白いんじゃないかなって思うんです でこれ今回はね読書っていうふうに絞りましたけど
多分すべての体験に対しても言えて 映画でも旅行でも思い出でも何でもいいんですけど
思い返すとその内容すべてを覚えているわけじゃないけれど 一つや二つ心に残るモニュメントがあると思うんです
旅行だったら 駅に降り立った時に見たちょっと変わった看板とかね
映画だったら あの食事のシーンの謎の前菜とかね
思い出だったら友人がキャタツのことをキャタピラって呼んでしまったとかね なんかそういう何気ないシーンって意外と心にモニュメントとして残ってたりしますよね
だからこれからのね体験ってまあ大人になるとなかなか何をするにも億劫になって ちょっとやる気が湧かない時がありますけども
モニュメントを新たなモニュメントを探しに行くっていう そのスタンスであれば気楽にいろいろなことに挑戦できるんじゃないかと
いろんな体験がこれからできるんじゃないかって思いますので皆さんも もし億劫なちょっと大儀だなぁって思う時があれば
ちょっと独謀とかそういうモニュメント探しを心に独謀を常にね持って自分は独謀しているんだ 独謀っていいんだぞって
そういうふうに心に唱えてもらっていろんなことに挑戦するっていうのもいいん じゃないのかなって思います
はい ということで変な話でしたけどもご清聴ありがとうございましたタヤマでした