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2025-11-12 08:44

第2章 身体を愛する⑦|ソマエステティクス:語らない言葉と感じる知性 Ep.91

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今回、私たちはソマエステティクスという少し不思議ですが、とてもシンプルなテーマを扱います。ソマエステティクスとは、「体そのものが感じる知性を持っている」という考え方です。これは、アメリカの哲学者のリチャード・シュースマンによって1990年代に提唱された、比較的新しい哲学です。ソマ(体)とエステティクス(感性・美学)をかけ合わせた言葉であり、「感じる体そのものが知恵である」という思想を指します。



【あなたの体が語る、沈黙のメッセージ】

言葉にならない時、理由が分からず涙が出る時、頭では説明できないのになんとなく苦しい、怖いと感じる瞬間、実はその全てに体の知恵が働いています。体は思考よりも早く、感情よりも正確にあなたの「今」を語っているのです。例えば、Ep.88で配信した「身体反応とトラウマ」の回でも触れたように、フラッシュバックや硬直といった身体反応は、あなたが壊れているのではなく、体があなたを守るために勝手に動いている証拠です。私は長年、複雑性PTSDと共に生きてきました。その症状のなかでも強かったのが、辛い出来事の後に記憶が丸ごと抜け落ちてしまう解離性健忘という現象です。解離は、体が「これ以上感じたら壊れる」と判断した時に、世界との繋がりを一旦遮断する体の防御反応なのです。これは「逃げ」ではなく、生き延びるための選択です。哲学者のメルロポンティは、「体は私たちが世界と出会うための窓口」と表現しましたが、解離はその窓を閉じる行為とも言えます。



【感じる知性の取り戻し方】

体は言葉を持ちませんが、沈黙のなかで確かに語っています。緊張してお腹が痛くなったり、人と話した後にどっと疲れるのは、体があなたに伝えている情報です。この知性を育てるには、「何かを直そう」とするのではなく、「何かを感じよう」温度を意識してみたり、呼吸の深さを数えてみること。こうした小さな気づきが、体との信頼関係を取り戻す道になります。あなたの体は敵ではありません。体があまりにも守りすぎる時があるだけなのです。「よく守ってくれたね」と、解離や健忘(物忘れ)を責める代わりに声をかけてみましょう。語らない知性とは、沈黙のなかにある理解しようとする姿勢のことです。



【次回予告】 次回のエピソードのテーマは「体を愛する:症状は人格ではない」。トラウマや不調をその人の性格と混同していませんか?症状は人格ではない、その構造を一緒に紐解いていきます。



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こんばんは、お目覚めの方はおはようございます。自分に優しくするラジオソフィーです。今日は少し不思議なお話をします。テーマは、ソマエステティクス。難しそうに聞こえますが意味はとってもシンプルです。それは、
身体そのものが感じる知性を持っているという考え方です。例えば言葉にならない時、涙は出るけど理由がわからない時、頭では説明できないのになんとなく苦しい、なぜか怖い、そんな瞬間、実はそのすべてに身体の知恵が働いています。
エピソード88で、身体反応とトラウマという回を配信しました。体があなたを守るために勝手に動いているというお話。例えばフラッシュバックや硬直、あれは壊れているのではなく、守っているんですね。今日のテーマ、ソマエステティクスもその続きです。
身体はどうやって複雑な知恵を持っているのか、そしてそれを私たちはどう受け止めていけばいいのか。身体から学ぶこと、そのことを一緒に考えていきましょう。
私は生まれてからほとんどの時間を複雑性PTSDと共に生きています。症状の中でも特に強かったのが、乖離性健忘。これは、辛い出来事やストレスの後に、その時間の記憶が丸ごと抜け落ちてしまう現象です。
例えば、誰かと話していた時間がごっそり抜ける。場所を移動したのに、その道の記憶がない。気づくと時間が飛んでいて、さっきまで何をしていたかがわからない。正直とても怖いです。でも、接している人が一番怖かったみたいです。そしてそれを人に理解してもらえない時、さらに私は苦しくなります。
忘れたって何?とか、え、本当に?とか、結構ね、傷ついたっていうか、ごめんなさいっていつも思ってました。でも、心理学を学んだり、ボランティアを実践するうちに私は気づきました。これは壊れているのではなく、身体が私を守ってくれた証拠なんだと。
そんな中でも、何回でも始めましてから始めましょうって言ってくれる人がいて、本当に心が安らぎました。
ではここから少しだけ哲学的に整理してみましょう。
まず、ソマエステティクスとは。
この考え方を提唱したのはアメリカの哲学者、リチャード・シューストマンです。
1990年代に生まれた比較的新しい哲学で、ソマは身体、エステティクスは感性、美学を意味し、それらを掛け合わせた言葉です。
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つまり、感じる身体そのものが知恵であるという思想です。
頭で考えるだけでなく、身体を通して世界と繋がること、それがソマエステティクス。
例えば、ピアノを弾く人は指の感覚で、次にこの音が来ると分かる。
スポーツ選手も考えるより先に体が動く。
それと同じように、私たちも日常の中で身体を通して何かを感じ取っています。
身体は言葉を持ちません。でも沈黙の中で確かに語っています。
例えば、緊張してお腹が痛くなる。人と話した後ドッと疲れる。
どちらも身体があなたに伝えている情報です。
この時大切なのは、なぜこうなったんだろうと頭で分析する前に、感じているという事実をそのまま受け取ること。
それが語らない知性の第一歩です。
一方、乖離や健忘は世界との繋がりを一旦遮断する、身体の防御反応です。
身体がこれ以上感じたら壊れると判断した時、感覚や記憶の通路を閉じるんです。
これは逃げではなく、生き延びるための選択。
メルロ・ポンティという哲学者は言いました。
身体は私たちが世界と出会うための窓口である。
でもその窓が嵐で吹き飛ばされそうな時、身体はその窓を閉じるのです。
それが乖離。だからあなたの健忘は無反応ではなく高度な反応です。
たとえそれを知らない人に怒られたとしても、よくやっているとねぎらってください。
さて、感じる知性をどう取り戻していくのでしょうか。
感じる知性を育てるには何かを直そうとするより、何かを感じようとすることです。
例えば、コーヒーを飲む時に温度を意識してみる。
あったかいなーって手のひらの温かさを感じることとか、呼吸の深さを数えてみる。
こうした小さな気づきが身体との信頼関係を取り戻す道になります。
身体はあなたを裏切りません。ただあまりにも守りすぎる時があるだけです。
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ここでちょっと質問。あなたの身体が語らずに伝えていることは何でしょうか。
最近感じないようにしている感覚はありますか。
もし身体にありがとうと言うとしたら、どんな言葉になりますか。
そしてもう一つ。忘れてはいけないのは、あなたの身体はあなたの敵ではないということ。
私は健忘や帰りを責める代わりに、よく守ってくれたねと言っていました。
それだけで身体は少し安心します。
語らない知性とは、沈黙の中にある理解しようとする姿勢のこと。
感じることをやめた自分も、それでも生きようとした自分も、どちらもあなたの一部です。
今日のテーマはソマエステティクス。語らない言葉と感じる知性でした。
身体は思考よりも早く、感情よりも正確に、あなたの今を語っています。
そしてその沈黙の中にこそ、自分に優しくするための本当の入り口があります。
次回は、身体を愛する。人格は愛する。
人格は症状ではない。
トラウマや不調をその人の性格と混同していませんか?
症状は人格ではありません。
その構造を一緒に紐解いていきます。
今日も最後までお聞きくださり、どうもありがとうございました。
それではまた次の配信でお会いしましょう。
またね。
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