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2023-02-08 13:22

なめらかに会話できたときほどアブナイアブナイ……「人それぞれ」を認める難しさ【第123夜】

今夜の勝手に貸出カードは、尹雄大(ユン・ウンデ)さんの『ながり過ぎないでいい—非定型発達の生存戦略』です。

 「人それぞれ」というけれど、多様性の尊重は、スローガンほどには認められていないというお話。 

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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて123夜を迎えました。今夜のお便りご紹介します。
ペンネームゆずりさんからいただきました。
昔から本を読むのが大好きなので、ポッドキャストでこういった番組があることがとても嬉しいです。
今日はもうすぐ26歳になる私の悩みに合う本を教えてほしくて、初めてお便りしました。
ありがとうございます。
年齢的に周りに結婚する人が増えてきて、孤独だなぁと思うことが増え、非常に焦ります。
たくさんお金はもらえませんが仕事はあり、小さな部屋に一人暮らしをしています。
でもSNSで綺麗な広いタワーマンションとか、ペットを飼いながら旦那さんと住む人を見るのが辛いです。
別に私には私のいいところや楽しいことがあるはずなのですが、そういった考え方もできないくらいに気持ちが落ち込んで自信がなくなってきちゃったなぁと最近思います。
そんな20代半ばの女性ならではの悩みにそっと寄り添ってくれるような一冊はありますか?というリクエストでした。
なるほど。都内で一人暮らしをしていらっしゃるとのこと、十分立派ですよね。26歳で。
でも確かに自分の同級生とか会社の人とかそういった周りの人以上に他人の日常がインスタとかで見えちゃいますもんね。比べるものが無限って感じですよね。
私には私のいいところや楽しいことがあるはずって思えるのを凌駕する音量で流れ込んでくるなぁと思いますね。
今夜の勝手に貸し出しカードはユン・ウンデさんのつながりすぎないでいいという本にしました。
つながりすぎないでいいっていうタイトルから、そしてこの話の流れからSNSとかでつながりすぎなくていいよっていう話かと思うじゃないですか。
いや全然違うんですよ。違うんかーいっていう感じですけど、まぁちょっとどんな本か、そして違うんだけどなんでこれを選んだかっていうのをお話ししたいと思います。
著者のユン・ウンデさんは1970年生まれのインタビュアーでライターの男性なんですね。いろんな有名人や政治家の方、スポーツ選手、アーティストなどなどたくさんの方のインタビューを担当されているほか、
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モヤモヤの正体とかさよなら男社会っていう本も出されてるんですね。
モヤモヤの正体は社会の空気とか同調圧力について書かれたエッセイコラムなんですけれども、さよなら男社会はそういったモヤモヤの中でも男性性、男らしさっていうカテゴライズにユン・ウンデさん自身が苦しめられてきたっていう話が書かれた本です。
どっちもすごくいい本なので、もし気になったらぜひ読まれてみてください。
そして今日ご紹介するグループつながりすぎないでいいはサブタイトルに非定型型発達の生存戦略とあるんですね。
非定型発達とは何ぞやっていう話からしないといけないですね。
この著者のユン・ウンデさんは正常な発達をしてこないかったことを自覚して、自分は普通と違うって感じているとあります。
ちょっともってまわった言い方のようですが、あえて発達障害という言葉は使っていなくて、定型な発達か非定型な発達をしている方かっていう分け方をしてるんですね。
そこがこの本の大事なところなので、発達障害の話の本だっていう言い方はしないでおこうと思います。
この本はある程度大人になってからのユン・ウンデさんが自分がコミュニケーションや感情表現がうまくできないと自覚して悩んで、
そして当たり障りなく人とやり取りする技術を身につけていくっていう話なんですよ。
でもユン・ウンデさんはさっきほどお伝えした通りインタビューライターっていうお仕事をされていて、
一番コミュニケーション能力だったり感情を言葉で表現する能力がいりそうな仕事じゃないですか。
ちょっと不思議に思うでしょ。
その秘密はどこにあるのかなって思いながら読んでいったんですけど、その答えは少し帯にあって、ちょっと読みますね。
他者とのコミュニケーションに悩んだ著者は、当たり障りなく人とやり取りする技術を身につけていく。
だがなんなく意思疎通できることは本当に良いこと、正しいことなのか。
滑らかにしゃべれてしまうことの方が奇妙なのではないかとあります。
そうなるほどとすっごい思ったんですよね。
今私がその人事部長って立場上、ほぼ初対面に近いような人と30分とか1時間とか限られた時間の中で、
結構その人の人生に大きく左右するような相談っていうか、お話を聞いたり、
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ヒアリングという名のもとに話を伺って引き出したりとか、
それから悩み相談というか、ご相談を受ける機会も多いんですけど、
なかなかこううまく話せたなというか、話を聞けた意思疎通できたなって思うことがなくて、
なかなかこれは全然上達していかないなって思ってたんですけど、
この本を読んでいて、その滑らかにしゃべれたって思う方が危ないんじゃないかということに気づいたと言いますが、
例えばちょっとした悩み事を打ち明けられて、それに対して滑らかに答えられた、いいこと言えたなって自分で後で思えた方が危ないんじゃないかって思ったりしたんですよね。
っていうのは、そのストーリーをこっちで決めつけてある程度、
誘導尋問じゃないですけど、こういう話に落ち着かせたいって思って引き出しているから、
自分にとってはちょっと気持ちいいストーリーになっただけであって、本当のことと本当に良いことなのかわかんないなって思ったって話なんですけど、
なかなかこのインタビューワーっていう人もしかしたらそうなのかなと思って、
自分の気持ちがいいストーリーに持っていっちゃうタイプの人もいるけど、
このユンウンデさんは人の感情がわかんないっていう言い方をしてるけど、わからないというよりは勝手に共感して想像して当てはめる、自分のわかりやすいストーリーとか自分のわかりやすい感情に当てはめたりしないからこそ優秀なインタビューワーなのかもしれないと思いました。
で、ちょっとこの元のお便りのお悩みと外れちゃってるように思えるかもしれないんですけど、
なんでこの本をご紹介しようと思ったかっていうと、一番最初の章のところにこんな書き方をされていました。
定型の発達が期待されている中では、人それぞれという多様性の尊重はスローガンほどには許されていないとあって、
人それぞれってよく言うじゃないですか。幸せは人それぞれだよとか、理想の生活は人それぞれだよって言うけど、
やっぱり結婚した方がいいとか、子供も空いた方がいいとか、有名な学校に入って、有名な会社に入って、ある程度の収入があって、素敵なお部屋というのはこういうものでとか、
インスタ映えする素敵さ、オシャレさっていうのはこういうものでっていうのは、やっぱりなんというか、
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ある程度決まっていて、人それぞれと言う割に多様性は許されていないっていうのは真なりと思ったりしたんですよ。
それでこの本、ちょっとそういう障害とかコミュニケーションのことで悩んでるわけじゃないとは思ったんですけど、
この本をご紹介しました。 こちらから今日は紙フレーズをまたご紹介したいと思います。
共感や顔色を伺うことに注力しすぎたせいか、違いに気づいた時にそれを大事にするよりも、周りに合わせて消すことに懸命になってきたのかもしれない。
そうした権力的で支配的な態度のせいで、わずかの違いに潜む陰影や起伏に気づけなくなってしまった。
とあります。これは自分は何者かという問いに潜む陰影に気づくっていう章に書かれているんですけど、
やや抽象的ではありますが、もしかしたらお便りをくださったゆずりさんは、この自分は何者かっていう陰影に気づいている途中なのかもしれないと思いました。
安易に共感したり顔色を伺って違いを打ち消している間は、その自分の陰影になかなか気づけないんですけど、ちょっと立ち止まって、
冷めた目で少し見たりすることで自分に潜む陰影や起伏に気づけるっていうのは結構いいことなんじゃないかということで書かれています。
そしてまたちょっと先な部分なんですけど、
だからこそ誰とも共感できないあなただけの切実さがそこに宿るはずだ。
そう思うと寂しさや詫びしさは別に悪いものでもない気がする。
運命をのない虚しさから僕らの故郷なのだと感じられはしないだろうか。
少なくとも人生を味わうことでもたらされる喜怒哀楽はリアルであるからこそよくできたドラマでもあるのだとわかってくるとあります。
誰とも共感できないあなただけの切実さがそこに宿るっていい言葉だなって思いました。
だから今感じている寂しさや詫びしさは別に悪いものでもないのかもしれません。
という一説でした。
この分かりやすい悩みの答えじゃない感じが、この本にはいろんな解釈ができる書き方をしてあるんですよ。
すごく分かりやすいものに救われることもあるけど、
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いろんな解釈の余地があるからこそ自分の今の心境とかと照らし合わせて、
こういう意味なのかなって思ったりする。
余白の多い日、受け取り手の余地のある本なので、いろんなタイミングで気づきがあったりするかもしれないなと思ってこの本を選びました。
コミュニケーションに悩む人だけじゃなくて、まあちょっとした自分の陰影に気づきがちな人にぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。リクエストありがとうございました。
さて今夜もお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はリスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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