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2023-08-09 14:58

「短気は損気」なんて、割に合わなすぎる。“いい子の憤り”のもっていき場

今夜の勝手に貸出カードは、高瀬隼子さんの『いい子のあくび』です。

「間違ってる」「ゆるせない」と思ったとき、どうするのが自分にとって損じゃないのか。そもそも、むかつかされたほうが損をするなんてオカシイんじゃない?? とむかつきながら読んでください。この夏のイチオシ本です!


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真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜に、ホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
143夜を迎えました。今夜のお便りご紹介します。
ペンネーム、たぬちゃんさんより頂きました。
バタやんさん、いつも楽しく、新たな出会いにワクワクしながら聞いています。
さて、アラフォーの私に寄り添って、背中を押してくれる本を探しており、
相談させていただきました。
私の性格は、気度哀楽が激しく、
感情に振り回されて疲弊することがよくあります。
短気な性格に加えて、感情移入をしすぎて、
夢でもよく起こっている自分の姿を見て、
どっと疲れてしまいます。朝なのに。
私は中学の教師で、夢の教師になれたことは誇りに感じます。
でも毎日バタバタバタバタ、実家に一人で住んでいる父のことも心配です。
なのにあまり行動できておらず、申し訳なく思っています。
このような私に何か本を紹介していただけないでしょうか。
どうぞお体大切に頑張ってください。これからも応援しています。
といただきました。ありがとうございます。
中学の先生をしていらっしゃるんですね。
ドラマ最高の教師見ていますか。
松岡真由さんの元気いっぱいみたいなイメージの強かった松岡さんが、
ほぼ無表情な先生役をやっていらして、きれいな顔だなーって見入っちゃいますね。
ほぼ無表情で、子は色もあまり変わらないんですけど、
心のきびが見えるというか、すごいなーって思って見ています。
でも本当今の中高生の先生って大変そうだなと思って、
昔ももちろん大変だったでしょうけれど、
今のはハラスメントですとかって生徒からとか、親からも言われたり、
録音録画されたりとか、そういうのは最近の独特の傾向なのかなって思ったりしました。
さてさて今日の勝手に貸し出しカードは、高瀬潤子さんのいい子のあくびにしました。
高瀬潤子さんはおいしいご飯が食べられますようにで、
芥川賞を受賞されてまして、その受賞後、第1作目がこちらのいい子のあくびです。
おいしいご飯が食べられますようにを読まれた方は、またぜひ読んでほしい作品ですね。
高瀬ワールド炸裂なんですよ。
この本をなんで田野ちゃんさん先生に選んだかと言いますと、
腹立たしいなって思うことをムカついたり、
イラついたりすることを肯定してくれるような本というふうに私は読みました。
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ムカつき肯定本と言いますか。
短期だったり気度哀楽が激しかったり、それが表に出やすいっていうこと自体は悪いことじゃないと思うんですよね。
その許せないことがあるっていうこと自体は正しかったりすると思うんですけど、
それが表に出た時に自分が損をする、その怒った側の人が損をすることが多いから、多くの人は出さないわけですよね。
内心ははぁって思っても、イラっとさせられた側なのにそれを表に出すと損をするっていう状態を、
割に合わないっていう言い方をね、この本では割に合わないって表現をされていて、
そこがすごくなるほど本当だよなぁって思ったっていう本なんです。
そんなわけでいい子のあくびがどんな小説か、そしてどんな状態を割に合わないと言っているのか解説していきたいと思います。
いい子のあくびは主人公の尚子さんがスマホを見ながら自転車に乗っている中学生の男の子が向こうからゆっくりゆらゆらと抱っこをしながら近づいてくるのに、
ぶつかったるって、あえて避けずにそのまま自転車とぶつかるっていうところから始まるんですよ。
その尚子さんっていう人は20代なんですけど、働いてもいて、フィアンセというかもうすぐ結婚しそうな彼氏もいて、
とても真面目でよく気がつく人で、周りの人からもいい人、いい子だねって好かれている、タイトルにもあるいい子とは尚子さんのことだと思うんですよね。
そんな尚子さんがあえてぶつかってるぶつかりおじさんの逆ですね。逆でもないか、あっちが悪いですからね。
向こうが前見てなかったのが悪いんだけど、それじゃあなんでこっちが譲って避けてあげなきゃいけないのかと尚子さんは考えているわけです。
この冒頭がすごくいいなって思って、尚子がいかに真面目な人で、よく気がつく人で、職場でも愛されてて、彼氏にも愛されててっていう描写から始まって、実はって裏を見せるっていう順番もできたと思うんですけど、
逆なんですよね。あえて超裏面から冒頭を見せていって、その後に表面を描くっていうね、全然共感しないわけですよ。
正直言って尚子さんのあっちが悪いんだからぶつかってやろうっていう発想にね、中学生の男子がコグ自転車とぶつかったら痛そうだし、実際なんかカデガも汚れたりすり傷も負うんですけどね。
そんなぶつかったるっていう気持ちは全然共感しないんだけど、その後のいい子の側面を読むと共感するところがあって、
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職場の来客用のお茶が切れそうだなって気づいて発注しておいたりするんですね。
そしたら新入社員2人がすみませんって謝りに来るんだけど、いいのいいのついでだったからごめんねみたいに言うわけ。
ごめんにはごめん以外の返す言葉がないからっていう、そういう発想ってありますよね。
そしてそういうタイプだな私もと思って、気づいたからってやんなくてもいいんだけど、そして褒めてほしいわけでも全然なくて、だけど気づいたらやんないと気が済まないんですよね。
結果なんか全然全然勝手なことしちゃってごめんとか、なぜかこちらが謝るっていうね、何か損だなって思ったりはしますよね。
この直子さんが面白い一筋縄ではいかない人なのは、手帳にメモを書いてるんですよ。
来客用のお茶発注、新人2人気づくの遅すぎってこの後メモを書くんですけど、そこではすごい毒付いてたりするんですね。
そこまで私はしないけど、ちょっと心の中ではそう思うことはあるかもなぁと、そんな風に表と裏が交互に出てきて、
その描写を読みながらここは共感できるなぁとか、ここまでは悪く思わないかなぁとか、確かにそういうのイラッとするよねっていうところと、
いやあんまり気にならないかなっていうところがあって、びっくりするのはその人の感情の機微をここまでよく細かく浮き上がらせられるなぁって、
うっすらとした凸凹でさえも細かく、そこまで描かなくてもいいのにっていうぐらいに浮き上がらせてくれるから、
その凸凹に対してここはわかるなぁとかわかんないなぁとか、自分自身の経験とか感情、かつての感情に照らし合わせたりして、
すごい忙しいんですよ。忙しいっていうのは読書しながら、自分だったらっていうのと行ったり来たりしながら読むから、すごく短い小説なんですけどこれ、
気持ちの機微が細かく自分自身も読みながら揺れるんで、なんか読み終わるとすごいふーってなりましたね。
またちょっと時間を置いてちょびちょび読むっていうので、ちょうどいいような一気読みとちょっと逆のおすすめをします。
なおこさんには第一っていう恋人がいて、もうすぐ結婚しそうな感じになってるんですね。
その彼氏にはそういう毒づいたり愚痴ったりする面を見せてないんですよ。
そこもまたちょっとなおこの黒いところっていうか、共感できない、私はあんまり共感できないところなんですけど、
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まあ確かに本当に暗い話はしなかったりするもんかな。
会社のちょっとした出来事を第一に、愚痴と変わる愚痴にならない程度になおこが喋っているというシーンから、
今日は紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
第1話、変わり映えのしない私の話を。
なおこの話、ダメになるよ本当。
生徒の中にはいろんな事情で中学卒業したら就職しなきゃいけない子もいるし、
俺は学校のことしかわからないから、なおこみたいな一般企業で頑張ってる人の話が聞けてすごく助かってると熱心に聞く。
あ、消費されてるって思う。私だけのものだったはずの。
私のストレスや苦労や不満が教育のために消費されていく。
大地が真剣に話を聞いてくれようとすればするほど付けっぱなしにしているテレビみたいに聞いてくれるだけでいいのにと思う。
少し時間が経つと大地のためになってよかったと思い直す。
という箇所があります。
この消費されたっていう気持ちすごいわかるなーって思って。
いやわかるというか、今まで誰かに話を聞いてもらった後の返しに対して、
少しがっかりしたりイラッとしたりした感情ってこれだったのかーって初めてがてんがいった気持ちですね。
なんか例えば私は今人事の部署にいるので、若手の社員の子から相談を受けたりすることがあって、
愚痴とも悩み相談ともつかない、ちょっと世間話に近い感じで話を聞くこともあるんですけど、
会社とか部署の方針と自分の信念というほどでもないですけど、本心とがマッチしない、合わないみたいなこととか、
これでいいんだろうかっていうようなことを聞くと難しいですよね。
仕事なんだし割り切ってよ、ビジネスだからさっていう気持ちもあるし、そういう本心との葛藤って大事だよねとも思うわけです。
なんとなくどっちともつかない答え方をして、あれでよかったかな、あんな返しでよかったかなって悩むことも多いわけですよ。
もうちょっとはっきり、まだ若いしもうちょっと実績を出してから言えっていう方で言ってあげればよかったのか、
それとも、いやこれはおかしいと思いますって編集長にちゃんと言いなよって背中を押してあげた方がよかったのか、
どっちがよかったのか、ちょっと中途半端なこと言っちゃったなとか悩んで、先輩とか上の人とかにポロッとそんなことがあったんですよとか言ったりすると、
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そうやって総務の人間っていうのは会社の方針と社員の悩みの間で葛藤して成長していくもんだよみたいな、なんか励まされ方をしたりして、
今なんか大きな括りでいい話っぽく消費されたなって、高瀬さん風に言うなら消費された、いい話として消費されてしまったっていうね、
私が悩んでるっていうことも含めていい話だねって、カタルシスとして消費された酒のつまみになってしまったなみたいな、
そういうことを言いたかった、そういうふうに励ましてほしかったわけじゃないんだけどなっていうのわかります?
私が今いる出版社なんかは感情商売にしているって言ったらちょっと言葉悪いですけど、
人の心の機微を読みたいとか見たいとか、保有したいっていう欲に変えて対価をいただいているお仕事だったりするわけですね。
そればっかりじゃないんですけど、だから自分自身の喜怒哀楽をあんまり研磨しすぎちゃいけないっていうか、
特に嫌悪感の方を押し殺しすぎちゃいけないんじゃないかなと思うところがあって、
そういうことを若い人とか後輩とかにちゃんと伝えたいなって思うんだけど、私自身が押し殺しちゃいがちだから、
あんまりいい見本にはなれてないなって思うんですよね。
だから田野ちゃん先生さんのお話に戻りますけれども、喜怒哀楽とか感情移入して揺さぶられてまた夜中に思い出すとか、
許せないことがある、許せないって思う強い気持ちがあることとかって、
若い人に教える立場の人は大事なんじゃないかなと思ったって言いますか、向いてらっしゃるんじゃないかなって思ったっていうことで、
今日はいい子のあくびをご紹介しました。
このいい子がいい子だけで終われない、いい面と悪い面、表面と裏面が一緒になるある出来事が起こって、
ちょっと意外な方向に話が展開していくんですけれども、
ぜひちょっと楽しんでいただければと思います。
さて今夜もお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はリスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
14:58

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