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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第127夜を迎えました。今夜は今私のイチオシの本を勝手に紹介するコーナーです。
お便りも溜まっているんですが、リクエストにお答えできていないまますみません。
でもこれは本当にこれをお聞きの方にぜひ読んでほしいという感じで、しばらくちょっと夢中になれる本がなくてという方にもすごくおすすめなのでご紹介したいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは桐野夏夫さんの真珠とダイヤモンドです。
こちらは今年の2月2日に刊行になったばかりの超新作ですね。かつ上下感あります。
先日ご紹介した奥田秀夫さんのリバー、あちらがもう600ページ越えの長編でしたが、この真珠とダイヤモンドも上下感を合わせると645ページかな、640ページ以上ありまして、
ちょっと躊躇する。読めるかなと思って私も日寄って上感だけまずかって読み始めたんですが、失敗したと思いましたね。
だからこれから読む方には言っておきます。絶対上下感セットで買うか借りるかした方がいいと思います。
ぐんぐん読んでマジかーここで終わりかーって一感なるので、はい。
そんな桐野夏夫さんの真珠とダイヤモンドがどんな話かと言いますと、バブル期の証券会社を舞台にした作品なんですね。
始まりは1986年の福岡。1986年というのはバブルの入り口の年で、その時期に幸運にも中堅の証券会社に入社することができた2人の女性。
短大卒の小島香菜さんと高卒の伊藤宮子さん。この2人のヒロインを中心に話が進んでいきます。
さてどんなお話か、そして私がこれはすごいぞと一番ワクワクしたポイントはどこか説明していきますね。
真珠とダイヤモンドのプロローグは、宮子がコロナ禍でパートの雇い止めにあってしまって、もう住む家もなく食うものにも困っていて、
そして寒い寒そうという路頭に迷っているようなところで、もう一人のヒロイン香菜に再会するんですね。
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出会いたかったっていうシーンから始まるんですよ。これが私のすごいなって思った第一のポイントで、大好きなパターンなんですけど、
神の月始まりと呼んでいますが、角田光雄さんの神の月とか山本文雄さんの自転しながら肯定するとかもこのパターンのプロローグなんですが、
つまり、結末というかいろいろあった、天末の末から描かれているんですよね。
神の月では主人公の梨花が、映画っていうと宮沢レイさんが演じていらっしゃった主人公のヒロインが応領とかまあいろいろ追われる立場になって、
タイのチェンマイだったかな。とにかくアジアの雑踏に逃げて、紛れて暮らしているみたいなところから始まるじゃないですか。
そんな感じで、真珠とダイヤモンドは天末の末の部分であるところから始まるんですけど、
真珠とダイヤモンドというタイトルから想像する華やかさだったり、バブルーキーの証券会社にあった若い女性っていう設定から想像するに華やかな世界をキラキラした話を想像しますよね。
でそれがラストは、もう家もなく食べ物もなくボロボロで徘徊しているという結末を先に見せる残酷さというか、そっくるかっていう感じで
そこに至る結末をこの後見せる手腕に自信がないとできないこのプロローグと思いました。
キリノさんでは本編入らせていただきますって手を合わせちゃうような感じですね。
でもこれはちょっと巧妙なミスリードも含んでいると私は思いました。あんまりちょっと詳しくは言えないですが、最後まで読み終わってからもう一度エピローグとプロローグを読み返して
最初に書いてあったことは、そういうことなんだってなりました。
いやーまあさてさてそんな悲しい結末を予感させつつも、カナとミヤ子はめでたく証券会社に入社できたところからスタートするわけです。
でもカナは短大卒で、ミヤちゃんは高卒で、二人ともそんなに裕福な家庭の育ちではなかったっていうところがポイントでして
ただ二人はそれぞれ美人なんですよね。
フロントレディと呼ばれる営業の窓口業務のポジションに置かれるわけなんですけど、カナは顔もいいし、地頭は良くて元気も強くて、早くから尊格を表していくわけなんですが、
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そのせいで他の女性陣から陰口を言われたりもしています。
小島さん、小島カナさんなんですけど、小島さんのお家はバリ貧しかったって聞いたばってんとか、親も親族も株も等身も買えんかったっちゃ実家はちいちゃな八百屋さんだったらしいみたいなことを陰で言われているんですよ。
私の父親が実家が八百屋で証券会社に入った人なので、ここでなるほどそういう感じの扱いなんだなぁって思ったんですけど、
でもまぁちょっと違うかもしれないのは、男女差別がまだすごくあった時代ですし、女の人は男性社員の結婚相手候補というか、窓口とかお茶出しとかやってろ的なね、そこでカナみたいに野心を出すと女のくせに短大卒のくせにって言われちゃうっていう感じがあったのかもしれないですね。
ここに同じく同期の餅好き翔平という男性が登場します。この餅好きのキャラクター人物像の描き方が絶妙ですごいなって思ったんですけど、ややこういうデリカシーがない女の気持ちとかわかんない鈍感さがありつつ、でもまぁ野心がバリバリあって営業トップになってやる。
さえない先輩を見返してやるみたいなね、大きいお金を動かしたいというわかりやすい欲望があって、カナのこともやや気が強い部分もありつつ美人なとこも気に入ってグイグイくどいていくわけです。
この2人がちょっとある事件というか、ある相手がいて、結託して悪い奴を懲らしめて一儲けしてやろうみたいなところまでは、結構痛快なお話なんですけれども、だんだんですね、餅好きの強引さだったり根拠なき自信がちょっと大丈夫かなって読んでて不安に思うところもあって、
大きなお金を動かしていくという意味で、いろんな人脈を広げていく途中で、そんな人と付き合って大丈夫かなってなるんですけど、餅好きという男性は真側悪人ではないし、バカじゃないんですよね。ただまぁ一言で言うと危なっかしいんですよ。
欲望に忠実なだけなんだけど、その危なっかしさが大丈夫かっていうところで上巻は終わってしまうという。ただ結末冒頭にボロボロになったミヤちゃんを見せられているから、あれにどう繋がっていくのかなと思うわけです。
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そしてそんな下巻が怒涛の展開なんですね。下巻の方がちょっと短いんですけど、すごいスピーディーにいろんなことが起こって、3人に変化が現れていきます。
カナと餅好きは結婚をしていまして、裏安の良い新宿マンションに住んでいるんですね。東京ディズニーランドの近くなんですよ。カナとミヤちゃんは福岡の時から東京に出て行ってやるって必死になってお金を貯めたり勉強したりしていて、
この東京ディズニーランドっていうのもこの物語のキーワードの一つなんだと思うんですけど、実際の東京ディズニーランドも1983年の4月に開演していますので、今年がちょうど40周年なんですよね。
40年前の日本ってそうか、こういう感じなんだなーって思いました。カナは福岡にいた時から東京ディズニーランドに行ってみたいっていう夢を叶えて近くに住むわけなんですよ。
で、痺れるような感動を覚えたって書いてあるんですけど、毎日そのマンションから見えるんですね。ビッグサンダーマウンテンが。で、この辺りまではすごく登り調子という感じで、登り詰めてきたぞって思うんですけど、これがまだまだ上があるんですよね。
ジェットコースターが落ちるまでは。そっからさらにこういう関係が派手になり、餅月もカナもあっという間に贅沢な暮らしに染まっていってしまいまして、村安のマンションでは飽き足らず、銀座の家賃100万円みたいな部屋に引っ越したりもします。
一方のミヤちゃんはどうしていたのかっていうことと、餅月とカナのジェットコースターが登り切って一瞬で下りに切り替わる瞬間がどこかというのは読んでのお楽しみということで、ここでは触れないでおきます。
では最後にこちらから紙フレーズをご紹介したいと思います。
美しいものは高価だ。高価なものは美しい。この単純な真理が、高価で美しいものを自分のものにした時にやっと身内に入ってきたような喜びを感じる。この真理ともっと同化したいと思う。
これはですね、カナが初めてエルメスのバッグを、ケリーバッグをですね、プレゼントされて初めて手にするっていうシーンなんですけど、結婚祝いでいただいて、その場で開けて持ってみなよって言われるシーンなんですね。
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すごい好きなシーンなんですけど、そのバッグを開けて中に詰まっている薄紙を取り出した時、異様のない喜びが湧いてきたってあるんですが、その行った時は岩田屋のワゴンセールで買った1万円もしないバッグを持っていたカナが、今開けてそっちのバッグに移し替えなよって言われて、財布とか化粧ポーチとかをそのケリーバッグに入れて持ってみた時の感動をたるやっていうところなんです。
美しいものは高いんですよね。高いものは美しい。これを実感してしまうと戻れないっていう感はありますよね。もっとどうかしたいと思うって書かれているように、そこの欲望は再現がなくて、上には上を見てしまうとどんどん上が欲しくなるっていう。
転落していく、ちょっと直前の頃の入り口ですかね。これをまた後で振り返ると、こんな時期もあったのにって思うシーンではあります。すごいなあ、桐野さんはと思いました。
そして桐野先生何がすごいって、桐野奈藤さん、去年の春に出されたつばめは戻ってこないという作品がつい先日発表になって、吉川英二文学賞に選ばれたばかりなんですね。つばめは戻ってこないは生殖医療代理母がテーマになってまして、吉川英二文学賞っていうのはちなみに言うと大衆文学に与えられる賞なんですけど、
大衆文学の最高峰って感じですね。私のイメージでは。第1回は松本成長さんがおとりになっていて、あとは池波翔太郎さんとか、福田秀夫さんもオリンピックの身の白巾で吉川英二文学賞を取ってらっしゃいますね。
この真術ダイヤモンドも吉川英二文学賞を取ってもいいんじゃないかと思うくらいの作品ですが、これはバブル期の証券会社が舞台になっているから、多分時代検証とか業界の取材をかなりされているんだろうなって感じたんですよ。
つばめは戻ってこないは近未来のディストピアものですが、代理出産とか生殖医療ビジネスみたいなのも多分かなり取材されているはずですし、よくこれだけの懇親の懲戴作みたいなのを幅広い社会的なテーマを扱って、次々と見出せるなぁって思って。
キリノさんは今の時代の松本成長と言いますか、もともとは純木な田舎の若者だったのに、人間の欲望と権力の世界を一瞬味わったばっかりに、時代の波に飲み込まれながら華やかな世界からまた転落していく、悪の世界に入ったり人を殺したりしちゃうみたいな話が松本成長さんの話でもよくあるじゃないですか。
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そういうのが私がすごい好きっていうのもあるんですけど、そういうのを書かせたらキリノさんは今ピカイチだなぁって、この本を読んで改めて思いました。かなり悲しいお話ではあるんですけれども、高揚感がありますね。
表紙は金と銀なんですけど、少し懐かしい漫画、劇画タッチな女性が描かれていまして、たぶん上巻がカナで下巻がミヤちゃんだと思うんですが、もう相まって貧乏な女の子が華やかな世界に乗し上がって、蝶落していくみたいな、あとちょっといじめられたりしながらみたいな、ガラスの仮面的なね、カタルシスも感じました。
夢中になれる作品をお探しの方はぜひ上下間セットで買って読んでみてください。最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて今夜もお時間になってしまいました。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。