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2023-04-12 19:41

川上未映子さんの『黄色い家』すごいと思った4つのポイント

今夜の勝手に貸出カードは、川上未映子さんの『黄色い家』です。

ノンストップ・ノワール小説がノンストップたる所以とは……?

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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第130夜を迎えました。今夜は私が今、一押しの皆さんにぜひ読んでもらいたい本を勝手に紹介するシリーズです。
本当は先週ご紹介したかったんですけど、この本の感想をまとめて、この本のどこがすごいかっていうのを言葉にまとめるには、先週まで時間と頭の余裕がなかったんですね。
これはまた読み返すとすごく体力を消耗する作品でして、そんなわけで今週やっとご紹介したいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは川上美恵子さんの黄色い家です。
これはもう惑うことなき大傑作で、きっといろいろ賞もお取りになるんじゃないでしょうか。
私も今年のベストブック入り、間違いなしで押したいと思います。
さてどんなお話か、そしてどこが川上美恵子マジックか紹介していきたいと思います。
これはもうですね、川上美恵子マジックが炸裂してまして、フィギュアで言うならばトリプルルッツからのトリプルトーループからのトリプルアクセルみたいな、
後半の体力が奪われるところにさらにさらに高難易度の技が来たみたいな感じです。
ちょっと何言ってるかわからなくなってきましたので、まずはあらすじ解説に参ります。
黄色い絵は、主人公の花が新聞記事に吉川紀美子、60歳が20代の女性を1ヶ月以上監禁し暴行を加えた罪に問われているというニュースを見つけるところから始まるんですね。
花は現在は40歳で総財店に勤めているんですけど、かつて20歳ぐらいの頃、若い頃にその紀美子と一緒に暮らしていたことがあると。
花もそのニュースを見てええってなるんですけど、さもありなんみたいな感じもあって、
年の離れた女性2人が不思議な同居生活を送っていたとき、他に蘭と桃子っていう2人の女の子も一緒に暮らしてたんですね。
その蘭の方に花はニュース見たって、この紀美子さんのことを見たかっていうのを聞くために電話をするんです。
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そんなところから始まって、すでにわー面白そうってなるでしょう。いきなり引き込まれるじゃないですか。
どういう共同生活だったのか、なんで紀美子が監禁と暴行を加えた罪に問われていても、そんなにびっくりしないっていうのにはどういういきさつがあったのかと、わくわくして読み始めました。
この後年月は遡って、花と紀美子が出会ったところからスタートして、そして花は母親の元を離れて紀美子と一緒に暮らし始めて、スナックで働きだします。
で、蘭と桃子もジョインしていくわけなんですけど、この辺まではまだいいんですよ。
だけどこの小説、ノワール小説と歌われているように、だんだんノワールな世界に入っていくんですよね。
この本のキーワードはお金なんですよ。
花がなぜ母親の家から出ることになるかというと、きっかけも花がバイトで必死に貯めた70万円だったかな。
お金をお母さんが使っちゃったというか取られちゃったっていう事件があって、家を出て紀美子さんと一緒に暮らし始めることになるんですが、
そんな風に花ちゃんって基本的にはとっても真面目でまともな子なはずなんですけど、お金のせいで人生を狂わされていく物語なんですね。
花がどんなに頑張ってもお金を失う事件が起こるんですよ。
あまり言っちゃうとあれですけど、人に取られたり火事になったり、花自身に落ち度はないのに悪いわけじゃないのに、丁寧に積み上げた積み木をバシャンとされるみたいな感じで、お金を失って、本格的にお金に困って、しのぎという仕事に巻き込まれていくんですね。
しのぎって私もちょっとあまりよくわかってなかったんですけど、暴力団が収入を得るための手段のことのようでして、賭博とか売春とか詐欺とかですかね。
今で言うならば、ルフィの詐欺、特殊詐欺の末端を花ちゃんは担うことになっちゃうみたいなイメージでしょうか。
ずっとドキドキする小説なんですけど、これはこの間ご紹介した桐野夏夫さんの真珠とダイヤモンドとすごく似てるんですよね。
私の中ではちょっと同時進行で読んでたのもあって、ごっちゃになったりしそうでしたが、これはもうどうしてこうなっちゃった小説という一大ジャンルだと思いますね。
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真珠とダイヤモンドとこれもまた共通点だと思うんですけど、冒頭が天末の末から始まるんですよね。
いろんな事件があった後の描写から始まります。
でも違うのは真珠とダイヤモンドは最悪な結末が最初にステージされているんですけど、
黄色い家の場合は花は今は割と真っ当な仕事をしていて、かつ新聞を読むくらいのレベル感の生活ができているってことが最初に提示されているわけじゃないですか。
だから途中すごいひどいことが起こっていくんですけど、でも今はちゃんとした仕事について新聞を読んでるんだよなっていうふうにちょっと安心しながら読めるというところはありますね。
私がこの作品の最初に言った川上マジックというところで言うと4つあると思ってまして、その川上マジック4つをご紹介したいと思います。
4つキーワードにするならば黄色、夢、ニュース、花です。
黄色、夢、ニュース、花を一つずつ解説していきたいと思います。
まずは黄色は本のタイトルにもなってますけど、黄色がラッキーカラーだっていうキミコさんの元、家に黄色コーナーっていうのを作っていて、
花とキミコが始めるスナックの名前もレモンなんですね。
作品にこうキーカラーを設けるってすごいなぁと思いまして、
作品の中に散りばめられている黄色を、これもまた黄色だと思って見つけちゃいますし、もちろん表紙も黄色い家だし、カバーを外した真っ黄色な本の表紙が出てくるんですけど、
そういうふうに作品と色合いっていうのを結びつける強烈な記憶に残すっていうのがすごいなぁと思いました。
アイフォンの新機種のイエローが出たっていうCMやってたじゃないですか。
それを見て私も黄色がすごく好きなので、黄色いやつ欲しいなって思ったんですけど、
キミコさんはきっと欲しいだろうなとか、花も買うかなとかってちょっと意思を持っちゃうっていう、
そういうふうにリアルなものと登場人物のことを思い出すのが、色をきっかけにっていう仕掛け、仕掛けってそうしたのかわかんないですけど、
作品の中にキーカラーを作るっていうのがすごいなぁって思いました。
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もう一つ夢なんですけど、花がいろいろ悪夢にうなされたりとか、
現実で起こったことと少しミックスしたような夢を見るっていう描写が何回か出てくるんですね。
これすごく気になっていて、私夢占いっていうのがすごい好きなんですけど、
割と朝起きた時に見た夢を覚えてて、夢占いで検索するんですよ。
ちょうど今朝もね、妹が、自分に妹ができている夢を見て、
私弟はいるんですけど妹はいないんですけど、妹ができる夢って原作をして、
そしたら結構それはなんか希望があるというか、
どうせ気の合う人が見つかるかもしれないけど、結構いい、きっぽうの夢だったと知ってほっとしたんですけど、
ちょっとそれは余談ですが、夢って暗示的だったり、心の真相真理で思っていることだったり、
今すごく不安に思っていることだったりが何か表面に出てくるところもあるじゃないですか、きっと。
そういうのをこの作品の中ですごく衝撃的な出来事が起こった後に、
花が夢を見るんですよ。こんな夢を見ましたって言って、もう一回まどろんだりするっていうシーンが出てくるんですけど、
それを読むと、夢占い的な発想で読者としては、これはこういう感情を暗示してるんじゃないかとか、
この先にこういうことが起こるっていうのを暗示してるんじゃないかとか、
そういう風に小説の物語としての展開にプラスして、夢という表現で読者に勝手な解釈をさせるっていう、
誘導尋問のようでもありミスリードのようでもあるんですけど、こんな風に夢を使うってすごいなって思いましたね。
俺にまた翻弄されるんですよ、読みながら。花がこういう夢を見たってことは、またさらに悪い展開なのかなとか、
ちょっと希望が持てるっていう意味なのかもとか思ったりしながら読んでしまうというね。
本筋とは違うところまで盛り込んでくるってすごいことですよね。
もう一つのキーワードはニュースだと思いました。
冒頭、新聞の中にキミコの名前を見つけたっていうところから始まるのも、
なるほどって思ったんですけど、それ何でかっていうと、この小説が新聞小説だったんですよね。
新聞連載小説だから、最初に新聞でこのニュースを見るっていうシーンを持ってきたって、川上美恵子さんご本人が何かのインタビューで答えてらっしゃって、
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さすがだなって思ったんですけど、結構印象的にそのニュースを読むっていうシーンが出てくるっていうところがいいなって思ったのと、
この40歳の花さんが過去に20年ぐらいを遡って、今40歳ですごいコロナ禍で厳しい外出制限とかの中を生きているという、
なうな描写があった後に20年ぐらいを遡るんですね。私も40代前半という意味では同世代なので、結構リアルにあったニュースが何回か出てきて、
それが本当にリアルタイムに懐かしいなっていうのがあって、それもリアル性、本当に花さんという人が、
私と同じぐらいの時代を20年間生きてきたっていう風に思わされる感じがありましたね。
例えば阪神淡路大震災とか、サリン事件ですね、松本サリン事件とか、サリン事件からのスピリチャルブームみたいなこともあるんだと思うんですけど、
私も子供ながらに、宗教とか何かに信じて没頭するみたいなのが鮮烈な印象だったというかね、宗教とかにあんまりなじみがなかったというのもありますが、
あんなに賢そうな人たちがこういうものに傾倒しちゃうということに結構びっくりしたっていうのもあって、インパクトのあるニュースでしたね。
あとはXジャパンとかタイタニックなんかも印象的なシーンとして出てくるんですけど、
花ちゃんと蘭ちゃんと桃子ちゃんがそのタイタニックを見に行きたいって言ったり、Xジャパンをカラオケで歌うなんていうシーンが出てくるんですけど、
そのちょっと時代感も私にとっても懐かしいなって思って、こういう空気感だったなとか、制服さえ着てなければお酒をカラオケボックスで飲めた感じとかもね、今だとちょっとそんなありえないかもしれないですけど、
たぶん20歳になっていない子たちがスナックで働くっていうのもこの感じだったらありえたんだろうなぁと思ったりしました。そんなニュースというキーワードもこの小説のキーになっています。
そして最後が4つ目、花にしました。花は主人公なんですけど、この小説もまた600ページぐらいありまして、すごい長いんですが一気に読ませる、そしてスピード感があるし、どうなっちゃうんだろうっていうふうにグイグイ読ませる一番の魅力はやっぱり花なんだと思うんですよね。
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この子がさっきも言ったように、真っ当という言い方ももはや何って感じですけど、割と真面目で責任感があって、ちゃんとやり遂げたいとか、言われたことをちゃんとやろうとか、共同生活をきちっとしたルールで運営していこうみたいな気持ちが強いタイプなんだと思うんですよ。
もしこの子貧困とかじゃなくて、ちゃんとした大人というか、普通の仕事に就いていたら多分きっととても優秀な子だったんだろうなという感じもあるのに、たまたまちょっとお金を失ったりしたことによって、簡単にお金を稼げる方向に周りの大人たちが誘導しちゃうっていう感じなんですよね。
この花という子が完全に同調できるかというとそうでもなくて、ちょっとやっぱり不思議な子ではあり、完全に同化して共感して花を応援したいっていう気持ち反面、どうしてそうなっちゃうんだろうっていうちょっと客観的な気持ちを持ってしまうっていうね。
絶妙な差し加減なんですよ。これはちょっと読んでいただいてぜひ味わってほしいんですけれども、完全に共感を呼ぶヒロインでもないっていうところは何て言うんでしょうね。川上さんの恐ろしいところやなーって思いました。
さてちょっと長くなっちゃいましたが、今日はこの黄色い家から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
金はいろんな猶予をくれる。考えるための猶予。眠るための猶予。病気になる猶予。何かを待つための猶予。世間の多くの人は自分でその猶予を作り出す必要がないのかもしれない。ほとんどの人間には最初からある程度与えられるものなのかもしれない。
けれど私とキミコさんは違った。もちろん自分のやっていることが人に言えないことであるということはわかっていた。というところをご紹介しました。
お金が猶予をくれるものだっていうのがね、すごい言葉だなぁと思って、この本本当に紙フレーズがいっぱい出てくるっていう感じなんですよ。
ここは特別な気持ちで読みましたね。考えるための猶予。眠るための猶予。病気になる猶予。何かを待つための猶予。
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大腸を悪くしたり時間を省略したいときお金があればっていうのはね、確かにすごくわかりますけれども、この間ご紹介した真珠とダイヤモンドはどちらかというとお金があると贅沢ができるというプラスの方のお金の価値でしたけれども、
こういうマイナスのことが起こったときにそこに余裕を与えてくれるっていう意味もお金があるんだなというふうに思いました。
なかなかこう読み終わるまで一気に読んじゃうんですけど、一気に読んだ結果体力を奪われてたっていうのに気づくようなタイプの小説で、ぜひお時間と体力があるときに一気に読んでいただけたら嬉しいなと思います。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて今夜もお時間になってしまいました。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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