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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマにおすすめの本やマンガ、紙フレーズをご紹介します。
第152話となりました。今夜のお便りご紹介します。
ペンネームm.さんからいただきました。
バタやんさんこんにちは。いつも水曜日に新しいポッドキャストが聞けるのを楽しみにしています。
私は青山美智子さんの月のほとりに立つ林で、を読んでポッドキャストに興味を持ち、この番組を見つけました。
バタやんさんの話し方や話す内容、声や音楽のタイミングなどすべてが心地よく、いつも寝落ちしてしまい、一週間同じ投稿を何度も聞き直しています。
ありがとうございます。最後まで聞いたことないよっていう方も多いんですよ。
いいんです、いいんです。はい、私はいつも好きな作家さんの本を何冊も読みます。好きな系統は寺千春菜さん、青山美智子さん、原田マハさん、町田園子さんなどの現実味のあるエピソードの中に人間の本質や温かさが隠れているような、
読んでいて考えさせるような小説が好きです。このようなジャンルの本でバタやんさんが好きな小説、何かお勧めの小説があれば教えてくださいといただきました。ありがとうございます。
現実味のあるエピソードの中に人間の本質や温かさが隠れているような、読んで考えさせられるような小説っていいお題ですね。私もそういう小説が大好きです。
寺千春菜さん、青山美智子さん、原田マハさん、町田園子さんがお好きなM.3a。今夜の勝手に貸し出しカードは綾瀬丸さんの草原のサーカスにしました。綾瀬さんの作品は優しさとビターの配分で言うと、ビターがやや強めかもしれません。
心温まるお話だったりもするんですけど、心温まる前のシチュエーションが温度が低めっていうか厳しめっていう感じがしますね。
以前にご紹介した綾瀬丸さんのやがて海へと届くは東日本大震災の津波のことが触れられているんですけど、直木賞候補にもなった新しい星は、これは私本当に大傑作だと思っているんですけど、
学生時代のほど良い仲の良い男女4人が大人になってから再会して、それぞれの悩みと向き合うというような話なんですけど、ブラック企業に入っちゃって退職している人、ガンの専攻校された人と、それぞれ割と重たいバックグラウンドを持ってまして、
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でも希望が持てるような現実の中に人間の本質や温かさが隠れているっていう、まさにそういう小説だなと思いました。そして今回ご紹介する草原のサーカスはどんな小説か、あらすじから解説していきたいと思います。
草原のサーカスというタイトルからはどんな小説なのか、なかなか想像しづらいかもしれません。この本、つい最近文庫版が出たばかりで、今ならまだ文庫の新刊コーナーに並んでるくらいかなと思ってご紹介しました。
主人公は姉妹です。製薬会社に勤める姉のイチカとアクセサリー作家の妹のニコルの2人が拾いになってます。冒頭にサーカスが町に来てるから、それを見に行こうと姉が妹を誘うところが始まるんですね。
この2人の何気ないやりとりが私はすごいいいなと思って、サーカスに誘うってなかなか唐突な書き出しですけれども、こんな風に年の近い同性の兄弟が部屋を行き来する感じにすごく憧れていて羨ましい。
お姉ちゃんが今いいって言って部屋に入ってきて、お互いパジャマだったりして近所のイベントに行こうよっていう、例えば花火大会とかお祭りとかでもいいんですけど、誘ったり面倒くさいとか言い合うのってなんかいいなと思って、私は年の離れた弟がいるんですけど、
同性の兄弟じゃないんで、なんかそういう部屋を行き来したりイベントに誘い合うみたいなことはあまりなかったから、羨ましいなって思ったりしました。でもサーカスってなかなか特殊なイベントですよね。タイトルにもサーカスってついているくらいだから、これがちょっと後々聞いてくるっていうところは味噌になってますね。
もう一つ特殊な設定として、日本近海で噴火が起こって、新しい資源が豊富な島ができて、東アジア全体が高景気、バブル景気になっているよっていう設定なんですよ。
この小説、その2人のヒロイン姉妹、20代30代の姉妹がお仕事とかで悩んだり、結婚で悩んだり、そういうリアルな話かなって想像して読み始めたら、なんかファンタジーが入っているのか、みたいなね。
韓国ドラマとかでもありますよね。リアルな社会問題、女の人の働く女性の悩みみたいなものと、若干のファンタジー要素が入っているやつ多いですよね。
嫌いじゃないですけれども、このサーカスっていうモチーフと架空の島の設定に乗り切れるかなって、ちょっと身構えたんですよね、私も。この辺りが足沢さんの跡書に解説として書かれているので、それも含めて楽しんでいただければと思います。
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そんな感じで、この話どこに行くのかなと思っていると、製薬会社で勤めている方の姉、市香さんが偉い先生に人を紹介するって言われて、会社の名刺じゃなくて大学の方の名刺持ってきてとか言われるんですよ。市香さんは今大学に出向という形で、大学で授業を持って学生さんに薬学みたいなことを教えているんですね。
会社の名刺じゃなくて大学の方の名刺持ってきてって言われた。そこから話がグングンと動き出すというか、少し大きなプロジェクトに市香さんが巻き込まれていくんですけど、若干の違和感を感じつつも、自分の役割を果たそうと全うしようと頑張っていくっていう感じなんですが、
具体的に言うと、製薬会社の知見データの捏造事件に巻き込まれていくんですね。巻き込まれるっていうか、本当の家中の人になってしまうんですよ。
一方、アクセサリーデザインをやっている妹のニコルさんの方は、最初は貸しスペースの片隅で細々とアクセサリーを売っているような感じだったんですが、出版社に勤める女性に才能を見出されて、あれよあれよと人気ジュエリーデザイナー兼インフルエンサーみたいな感じですかね、になっていくんですね。
ここから急に物語が動き出す、急展開していくという感じで、一気に後半は読み切ってしまいました。
イチカが勤める製薬会社が、新しい薬を売り出したいがために、知見結果を有利な結果に解散する。つまりすごく効きますよ、他と比べて効果がありますよっていうはっきりした結果を発表したいと。
発表するんだけど、それが捏造だったってなって、イチカはこの時製薬会社側の人ではなくて、大学の研究者として実験に携わっていて、しっかりした結果が出るまで、すごく上から詰められるんですよね。
結果としては捏造した重宝人なんじゃないかっていうことで、裁判で証言を求められたり、世間からも大バッシングを受けることになります。この辺ちょっと苦しい感じですよね。
一方で妹のニコルはですね、人気絶頂からハラスメント問題へと展開していてしまうんですね。
ハラスメントをする側なのか、される側なのかっていうのはちょっと言わずにおきますけれども、日本が新しくできた火山島の影響で高景気な状況にあるっていう設定がニコルさんがアップダウンする設定に効いてくるなと思っています。
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ニコルがテレビの密着番組で情熱大陸とかプロフェッショナルみたいな番組と想像しましたけど、一躍有名人になるくだりがあるんですね。このエピソードに垣間見えるニコルさんの空気を読まないかっこたる美意識みたいなものでしょうか。
強さとまっすぐさみたいなのと、逆にイチカさん、お姉さんの方はみんなのために役に立ちたい、期待に応えたいみたいなのが強いタイプで、前半その辺の2人の幼い頃からの描写対比が後々効いてくる感じなんですよ。
2人とも真面目にやっていただけなのに、どんどん追及され断罪される立場となり、なかなかにつらいお話なんですけれども、そういった伏線の回収とタイトルのサーカスの意味の回収もあって、心地よい小説らしい小説を読んだなっていう満足感のある小説でした。
今日はこの草原のサーカスから紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
平気じゃないけど、でも私の人生にはこういう問題が投げ込まれるんだってわかったから、淡々と打ち返していくよ。
と、このセリフを読んで私はテニスとかバトミントンとかそういうラケット競技を想像しました。
自分のコートに、自分の人生という名のコートに問題とか厄介事が次々と投げ込まれて、それを淡々と打ち返していくっていうイメージですよね。
打ち返しても打ち返しても苦しい姿勢でやっと返したと思ってもまた次のボールやシャトルが投げ込まれて、またそれを打ち返すみたいな感じをイメージしました。
こういう例えが綾瀬さんってすごいなぁって思います。
もう一つ、いちかが思うような知見結果が出せずどんどん追い込まれていくとかっていうところよりずっとずっと前にちょっとした違和感を感じる、このプロジェクトに関わることへの違和感でしょうかを感じる描写があって、そこもすごいなと思ったのでちょっと読みたいと思います。
ポツリと落ちたゴマ粒ほどの違和感は、いちかの心に薄い波を立てて、間違った椅子に座ってしまったような居心地の悪さを残した。
ゴマ粒、ゴマが水面に落ちた程度の小さな小さな波風、それから違う椅子に座った時の違和感居心地の悪さみたいなのを、簡単に言うと悪い予兆みたいなことなんでしょうけど、それをこんな風に表現するのかすごいなぁって思いました。
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組織に属している人も属していない人も、どこかでいつの間にか自分の人生のコントロールを失って、思いがけない方向にぐんと進んじゃうっていうことはあると思うんですよね。
それをもう一度自分のコントロールに取り戻そうっていう物語かなという風に読みました。
m.さんも気に入ってくださるといいです。
もしお好みに合いましたら、綾瀬丸さんの他の作品もぜひ読んでみてください。
リクエストありがとうございました。
さて、今夜もお時間になってしまいました。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。