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2025-05-28 15:41

EP209. 『カフネ』と『女の国会』を読む。私たちは何と戦って、何に救われるのだろう

今夜は、2025年本屋大賞を受賞した阿部暁子さんの『カフネ』と第38回山本周五郎賞を受賞した新川帆立さんの『女の国会』の2作品の共通点と、魅力について語ります。

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サマリー

このエピソードでは、安倍昭子の『カフネ』と新川穂立の『女の国会』の2作品について、それぞれのストーリーの魅力や共通点が探求されます。『カフネ』では、主人公の宮香子が弟の死を受けて元恋人と出会う様子が描かれ、『女の国会』では女性議員の視点から政治が描かれています。『カフネ』と『女の国会』は、女性たちの苦しみや戦いをテーマにしており、特に政治や社会の中での女性の立場に焦点を当てています。これらの小説は、男性たちにも読んでもらいたいという意見があり、フィクションの中に救いを見出す重要性が強調されています。

作品の紹介と共通点
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
第209夜を迎えました。今日は、今年の本屋大賞を受賞した安倍昭子さんの『カフネ』と山本修吾朗賞を受賞した新川穂立さんの『女の国会』の2作品の共通点と魅力について語りたいと思います。
読書会っぽいですね。なんか初めて読書会らしい読書会かもしれません。どこかで紹介しますねと、どちらの作品についても言いながら、なかなか取り上げられなくてすみません。
前読リスナーの方は、もしかすると、両方読まれた方も、どちらか読まれた方もいらっしゃるでしょうね。
さて、『カフネ』と『女の国会』がそれぞれ大きな賞を取ったというのはですね、とても嬉しくて、お前誰だよって感じなんですけれども、
『カフネ』はね、好断者の作品なんでもちろん嬉しいですが、こういうものがちゃんとエンタメとして評価されて、たくさんの人に読まれるのすごくいいなぁって思ったんですよね。
どっちも出たばっかりの時、正直あまり話題になってないんじゃないかなっていう印象で、いやーなんであんなに面白いのにって思ってたから、だから本当でしょうでしょうみたいな気持ちです。
この2作品を紹介したいなって思いつつ、ちょっと溜めてたんですけど、満を持してということで、改めて読み返してみたところ、非常に共通点が多かったんですよ。
文体というか後ろに流れているBGMのリズムみたいなものが全然違うジャンルの小説なので、似ているか似ていないかで言うと似ていないんですけれども、書いているものの本質は一緒なんじゃないかなと思いました。
そのあたりを今日ちょっとお話ししてみたいなと思ってます。それぞれのあらすじと魅力をご紹介します。
まず、安倍昭子さんのカフネは、主人公の宮香子の弟が突然亡くなり、その弟の元恋人小野寺節と会うというシーンから始まります。
いやこの冒頭がね、まず非常にいいんですよ。これは面白そうだ、この小説は読み切れそうだって思わせる冒頭です。
カフネは本当に長い小説、長編小説を読んでなかったな、久しぶりとか、そもそもあんまり小説を読むのは得意じゃないっていうような人にもお勧めしたい小説なんですよね。
そう思わせるこの冒頭、刹那は待ち合わせに遅れているんですね。香子さんは喫茶店で待っていて、既に19分遅れていると何の連絡もなく、しかも。
19分って書いてあるところに、香子さんのなんかこうちょっと神経質そうなところが垣間見えるというか、20分も遅れてきやがってじゃなくて、
死者を誤入して、あと香子さんがもし早く着くタイプの人だとするならば、30分ぐらい待たされているはずですよね。
なんだけど、死んだ弟の元恋人は既に19分遅刻しているっていう書き出しなんですよ。
一文目が。一瞬でこの設定がいろいろわかる書き出し。
まず弟の恋人と妹、お姉さん、弟のお姉さんっていう組み合わせを書く小説なんだなっていうのが新鮮ですよね。
そしてとてもイライラしている書き出しなんですよね。
表紙がしっとり、器が乗ってる、優しい雰囲気の想定なので、そこからするとまずちょっと裏切られたような感じもある冒頭です。
その弟の元恋人はなんかちょっとルーズそうで、愛嬌があまりないというか、愛想のないタイプでして、主人公とは気が合わなそうなわけですよ。
結婚してるわけじゃないか、ギリの妹ではないんだろうなーっていうところで、
皆さん、ご兄弟の彼氏とか彼女とかに対して何か感情を持った経験がありますか?
すごく仲良くなるっていうの、私はあまり想像がつかないんですけど、二人で買い物に行くとかっていう人もいるかもしれないですけどね。
弟に対して好意的な人という意味では仲間であり同士であるけど、同性同士っていう意味ではライバル心も密かにあったりするかもしれないし、
人によってはなんであんな女が好みなんだろうとかって敵意を感じる可能性の方が高そうではありますよね。
お母さんと息子の彼女に対する気持ちとはまたちょっと違うとは思うんですけど、お姉さんから見た弟の彼女に対する気持ちっていうのは入り口からしてあまり好意的じゃなさそうな気もしたりします。
ちょっと話を先に進めますと、カオルコさんは弟がなんでこう急に死んでしまったんだろうと悲しみに暮れていて、すごくかわいがってたんですね。弟のことをすごい悲しみに暮れていて、
セツナさんは弟の異言にあった財産の贈与、相続を堅く何拒否します。
カオルコさんはちょっと神経質そうな人だなってさっき言いましたが、法務局に勤めていらして仕事はきっちりやるタイプで真面目な努力家というタイプそうなんですね。
だけど生活はちょっと荒れているようでして、アルコールにもちょっと依存しているような感じで不健康で倒れちゃうんですね。
セツナさんはこのタイトルにあるカフネっていう名前の家事代行サービスの仕事をしていまして料理が得意なんです。
カオルコさんは、そんなセツナさんと一緒に家事代行サービスを一緒にやることになります。
カフネに家事代行サービスを頼む人っていうのがいろいろ出てくるんですけれども、それぞれ家庭のいろんな事情があって、
家事代行してもらうことによって人が作った美味しいご飯を食べたりとか、家が片付いたりすることにより癒やされたり回復したりしていくっていう、
一話完結的な要素もある小説なんですね。弟さんの死というのも大きなテーマとして流れていて、弟はもしかしたら自殺したんじゃないか、何かにすごく思い悩んでいたんじゃないかっていうミステリー要素もあります。
弟の背景、それからカオルコさんが生活が荒んでいた背景、過去の出来事、セツナさんにはセツナさんの愛想がない理由、人に簡単に心を開けない背景があって、それぞれに重い過去の出来事とか背景がだんだん明らかになっていくんですね。
そこはちょっとネタバレしないでおきますが、神経衰弱のカードをどんどん開いていくように明らかになっていく要素が多くて、本当に飽きさせない、どんどん先を読みたい気持ちになりますね。
テクニカルな言い方をすると、そういう構成になっているというところが見事だし、
あとその読んだ私が最初、こういう人だろうなっていう印象を受けた人には、こういう背景があってっていうのが明らかになると、またその私の印象も変わっていく、私のバイアスに気づいていくみたいな面白さもありました。
みんなこう一生懸命作ろいたい、虚勢を張っていたい、きちんと見せたい気持ちがあって、弱みは見せたくない、簡単に人に、身近な人にさえ見せられない、そんな時に家事代行ってこう絶妙な他人なのに自分の一番弱いところを見せるっていう特殊なお仕事ですよね。
そういう設定があったかっていうのも感動した話でした。
『女の国会』と賞の紹介
さてさて、これあんまり喋りすぎるとネタバレに触れてしまいそうなので、ここでちょっと切り替えて、新川二手さんの女の国会についてもご紹介したいと思います。
今回新川さんが受賞された山本宗吾朗賞っていうのはどんな賞なのかと言いますと、山本宗吾朗という作家は直木賞を拒否した人として有名なんですけど、山本宗吾朗賞にどんな受賞作があったかというと、
ゴールデンスライバーとか池井戸淳さんの下町ロケットとか、村上海賊の娘とか原田真羽さんの楽園のカンバス、
ゆずきあさこさんナイルパーチの女子会とかですね、なんて言うとなんとなく賞のイメージがつきますでしょうか。
エンタメ性が高くてストーリーに力があって、登場人物のキャラが立っててみたいな感じですかね。
そういうものだと私もすごい詳しいわけじゃないですけど、作品群からするとそんなイメージもあります。
そんな賞に今回新川穂立さんの女の子会が選ばれたということで、女の子会はどんなお話かと言いますと、主人公は高槻香留という野党の女性議員です。
通称粉害おばさんなんて呼ばれていて、血の毛の多いタイプでしょうか。
彼女と対立関係にある与党の若手女性議員浅沼優子さんが突然自殺をしてしまうというところから物語が始まります。
浅沼優子の方はお嬢と通称呼ばれてまして、生涯のヒロイン的な扱いで、高槻香留さんとは対照的だし、政党としては対立関係にあるんですけど、
ある法案では一緒に戦う共闘関係にあります。だからこそ浅沼がなんで死ななきゃいけなかったんだろうと、高槻香留さんは真相を探ることにするんですね。
ここがミステリーの要素が物語を引っ張っていきます。
反目し合う女性2人が主人公で、ある死をきっかけに背景を探っていくという設定は、カフネと女の子が非常によく似ているなと思いました。
その2人の関係がですね、バディ、いわゆる女バディものといわれるバディとか、親友とか、シスターフットという風に片付けてしまうとちょっと違うのかなと思いまして、
仲良しとかではないんですよね。共感もしてないし同情もしてないけど、一緒に戦おうみたいな関係かな。共通の敵がいる。
何と戦っているのかっていうのは、この物語の2つともの肝なので、そこは言わないでおきますね。
女の骨牌の方はですね、高槻香留の他にも高槻の秘書の女性、それから政権を覆う新聞記者の女性、元アナウンサーで地方議会の女性議員という感じで、政治に関わる4人の女性の視点で語られていく構成になっています。
だからもちろん超男社会の中で、それぞれの諸星術みたいなのがあってでしょうねと思ったり、嫌だなぁと思ったり、とっても心が忙しい小説でした。
ここまで話しますと、どっちもフェミニズムっぽい小説なのかな。女の小説かなって思われるかなと思ったんですけど、
私が今日一番言いたかったのは、男の人にこそぜひ読んでもらいたいなぁと思いました。これはどちらも主人公、視点を女の人に置きながら、マッチョな価値観、世界観で苦しんできた男の人の物語とすら思いましたね。
私はそういうふうに受け止めたという意味ですけれども、シスタフード小説みたいなカテゴリーに安易に当てはめてほしくはないし、男社会vs女みたいな単純な話でもないと思っています。
フィクションの救い
こうあるべきみたいなものに苦しんだ、苦しんでいる全ての人の物語かなと思いましたね。
さて、今日は新川穂立さんの女の国会から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
自分を取り囲むピースが自分の形を決めてしまっている。世間の扱いが先に来て、わずかに残った隙間に体を無理やり合わせて収まっている。
とあります。
政治家みたいに前に出る職業でなくても、世間の扱いが先に来て、わずかに残った隙間に自分らしさを押し込んで何とか収まっている、みたいな状況感覚ってあると思うんですよ。
理想のママとか、理想のこういう人、上司とか、こういう立場だったらこう振る舞うべきとか、男たるものをこうあるべきとか、家庭ではこう、会社ではこう、家族の間でもこうあるべきみたいなものが先に来て、
それに体を合わせている、自分らしさを押し込んで収まろうとしているっていう感覚は結構あるのかなぁと思って。
二つともの小説の結末は言わないでおきますけれども、やっぱり飛躍があって、ちゃんと着地をするっていうのが物語だから、そんな風にうまくいくけど、現実はそんな風にはならないよねって思うところはもちろんあると思うんですね。
でもフィクションに救われるっていうのを強く感じた2作品でもありました。
現実は窮屈だから、フィクションくらいそうあってほしいなっていうのもありますね。
よかったらぜひどっちも読んでみてください。皆さんのご感想も伺えたら嬉しいです。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの方からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお寄せください。お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみ。
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