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2021-10-20 14:57

「どうでもいい」と言ってしまえたら楽になるのかな【第80回】

勤め先にいる“ちょっと苦手な人”が“嫌いな人”になってしまった……というリスナーの方のご相談に、今夜は伊藤朱里さんの『きみはだれかのどうでもいい人』をご紹介します。ストレスフルでギスギスした、しかしありがちな職場の様子が生々しく描かれていて、読むのがとてもしんどい本なのですが……。なぜか読み終わったら、ふと「頑張ろう」いや「私頑張ってる」と思える救いのある本に感じました。

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みもれ真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマに皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第80夜を迎えました。今夜は最初にこのポッドキャストでも何度か作品をご紹介した山本文雄先生の不法、突然の不法を知りまして
あまりの驚きとショックに言葉も出ないという感じで、今日お話ししようと思っていたことも今ちょっと飛んでしまったんですけれども
18歳、水蔵岩でいらっしゃったと記事で知りまして、お若すぎる
面識はないんです。ないんですけれども、最近新刊バニラ様を出されたばかりで、このポッドキャストでもねご紹介させていただきました
それをツイッターでつぶやいたら、なんと山本先生ご本人がリプをくださったんですよ
そんなことってないんですよね。このポッドキャストも80回もね、やっていますけれども、ご本人が反応してくださることは滅多にいなくて
でもなんだろう、あれですよ、モノマネ、紅白ふった合戦とかで好きな歌手の好きな歌を気持ちよく歌ってたら後ろからご本人登場みたいなね
驚きと恥ずかしさで言葉を失うっていう、まじかご本人来たわーみたいなやつでしたよ
山本先生、ポッドキャストを聞いてくださったみたいで、バタヤンさんの声はいつも落ち着いておられてうっとりします
寝落ちしないようにお気をつけてぜひ聞いてくださいって書いてくださったんですよ
いやー
なんて言ったらいいんでしょうね、次の瞬間はインタビューできたりするかな、いつかお会いできるだろうかってその時思って
でも次の作品も楽しみにしています、みたいなことは書けなかったんだけど
会えるかもしれないと思っただけに本当にショックで言葉もないですね
このポッドキャストを聞いてほっこりしてくださったとしたら、それはもう山本先生のファン妙利に尽きるというか
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読者妙利に尽きると言いますか、そんな幸せまで与えてくださってありがとうございますとお伝えしたいですね
山本文夫さん特集をやってくださいっていうリクエストもいただいたんですよ
そうですよねと思って、でもじゃあ今日やります、来週やりますね、みたいな気持ちにはちょっとまだ慣れなくて
だけどちゃんと読み直して山本先生の過去の作品、少女向けの作品も書かれてましたし
コバルト文庫時代から恋愛小説、そして最近の作品を改めて読み直してちゃんとお話しする会をやりたいなと思っています
今日はまずは山本先生のお冥福を心よりお祈りしますということをお伝えさせていただきました
さて改めていつものお便りコーナーに行きたいと思います
今夜のお便りをご紹介します
夢の中の羊ちゃんさんからいただきました
少し長いのですが、このご相談自体が一つの短編小説のような趣があったので
そのまま省略せずにお読みしたいと思います
どうか私に自分の中のモヤモヤとした気持ちに折り合いをつけてくれる本を教えてください
私は最近勤め先にいるちょっと苦手な人が嫌いな人になってしまいました
それまで人それぞれだからしょうがないと思っていたことがある日突然我慢できなくなってしまったのです
まるでコップから水が溢れるように嫌いという気持ちがこぼれ落ちていくようでした
あくまでも仕事での付き合いだけなので波数をたったくありません
その人に悪気はなく私とは価値観が違うだけでいい人だとは頭ではわかっているのですが
ちょっとしたことにイラッとしては冷たく対応してしまい罪悪感が募ります
業務上関わることが多く距離を置くこともできません
優しくしたいのに自分はなんて器が小さいんだろう
これまで大丈夫だったのにどうしてと自己嫌悪に陥り反省するも
また繰り返すと負のループでぐるぐるしています
このモヤモヤに折り合いをつけて子供っぽい自分を卒業したいです
どうぞよろしくお願いいたしますといただきました
なるほどそうですよね
皆さんにも経験があるんじゃないかと思いました
ある日突然コップの水から溢れるように言ってまさにわかりますね
なんでこの人こうなんだろうっていうのを限界を迎える時って
なんかありますよね
今日勝手に貸し出しカードとしてご紹介するのは
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伊藤あかりさんの君は誰かのどうでもいい人にしました
君は誰かのどうでもいい人ってまたちょっとドキッとさせる強いタイトルなんですけども
なんでこんな本を勧めるんだと厳しいなぁって思うかもしれないんですけど
どうしてこの本をお勧めしたのかあったのかっていうお話ししていきますね
この小説は地方の県税事務所の納税部門に勤める4人の女性たちを主人公に
4つの章がそれぞれ4人の視点で展開していく作りになっています
第一章は自分は仕事ができる方だと自負していて
出世街道のはずが納税の部署に移動させられてしまった
不本意に移動させられてしまった若手の中澤珠希ちゃん珠希さんです
第2章は珠希の動機で心が折れて総務課に移動になった染川さん
そして第3章はベテランパートで自称意地悪おばさんの田辺さん
第4章は田辺さんの動機でみんなから嫌われ者と言われている主任の堀さん
という4人の女性が出てくるんですけれども
4人の女性を主人公に言っていましたがもう一人大事な登場人物がいるんです
アルバイトの須藤美行さんという方でこの須藤さんは
一言で言うとどんくさいタイプというか若干ポンコツなんですよね
そして若いわけじゃないんですアルバイトなんですけど38歳だったかな
学生さんというわけではなくてこの人に対してさっき言った4人がそれぞれにイライラしたり
声を荒げたり冷たく当たったり
でも4人それぞれにはそれぞれの仕事の正義があっていい文があるんですけれども
結果的には須藤さんを追い詰め傷つけていってしまうというお話なんですよ
このあたりすごくリアルな描写で辛いんですけど
あることだよなぁとも思うし須藤さんがまた絶妙に野暮ったい格好をしている僕って
イラッとさせる要素がいろんなところに散りばまってるんですね
部署に自販機があってコーヒーとか紅茶とかボタンを押すとお湯が出るタイプなのかなと想像したんですけど違うかな
須藤さんはバナナココアとかクリームラムネとかなんかちょっと変なのを飲んでるんですよ
そういうとこもイラッとするみたいなね
あんな甘そうなまずそうなものをなんで飲んでるんだろう
コーヒーでいいじゃんみたいなね
一個気になりだすと持ち物から食べてるものから何からこうイラッとさせる要素にするみたいなところがありますね
この小説の絶妙なポイントは部署が納税をさせなきゃいけない部署なんですよ
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だから公務員の中でもいろんなお仕事があると思いますけど
普通にちゃんと仕事をしているっていうこと自体があんまり感謝されづらいというか
納税してない人に対して採測をしたりとか調査をしたりしなきゃいけないし
感謝されるどころか結構きついことを言われたり
煙たがられたりしがちな部署だっていうところが
この掛け口とは言いませんけれども
イライラをぶつけられがちな仕事のために
一人にイライラをまた負のバトンって言い方をしてましたけど
負のバトンを次へ次へ下へ下へと渡してしまうみたいな現状があるわけです
このようにちょっとしんどい小説なんですけど
どうしてご紹介したかったかっていうのを後半でお話ししていきますね
この君は誰かのどうでもいい人は文庫になっているんですけど
文庫の解説を島本梨央さんが書かれています
この最後の解説
島本さんのね跡書きを読むだけでも
この本720円か
720円出して買った甲斐があったって思いました
いやもちろん本編もすごいんですけれども
最後の解説は解説で島本さんの一つの作品を読ませてもらったような
そんなこうお得感のある文庫本です
この解説から2箇所紙フレーズを今日はご紹介したいと思います
読み終えた時この小説の誠実さとは何かと考えた
それは人は必ずしも誰もが傷ついていることでもなければ
人は必ず誰かを傷つけているでもない
自分は必ず誰かを傷つけているという自覚ではないだろうか
とありました
すごいなぁと思って
誰も傷つけないって思うことじゃなくて
自分は必ず誰かを傷つけているっていう
自覚が誠実さだっていう
ことがすごいなぁと思いましたね
そのお相談くださった夢の中の羊さんが誰かを傷つけてる
その人を傷つけてるって言いたいんじゃなくて逆なんです
きっとそのイライラしてしまうお隣のお相手の方に
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羊さんは傷つけられているわけですよ
そうやって自分を責めたりなんかしてね
だから誰かのどうでもいい人
どうでもいい人だったらそんなに気にならないから
どっかでやっぱりまだ期待しているというか
切り捨て切ってないからイラッとしたり
どうしてこうしちゃうんだろう
なんでこうしてくれないんだろう
みたいなことを思ってしまうわけであって
思ったり冷たく言ってしまったことに
また自分を責めたりしていらっしゃるわけですから
切り捨ててないっていう
そこのご自身の優しさにまずは気づいてほしいと思いました
自分は心が狭いって書いてらっしゃったけど
むしろ逆で広いからこそ
こんな人どうでもいいって思えなくって
そうやって自分を傷つけるほど悩んでいらっしゃるのかなと思いましたね
この島本さんの跡書きを読んで
もう一つ読みますね
他者を傷つけることは罪深い
その一方でもしかしたら
一つも傷つけ合うことのない世界には
救いもないかもしれないと
この本を読んで島本さん思ったって書いてらっしゃったんですけど
確かに傷つけるほど他人に関心があるというか
踏み込めるっていう方が救いがあって
もう本当にどうでもいいってなってしまったら
踏み込まないし悩んだりもしないから
それはそっちの方が救いがないのかもしれないなと思いました
伊藤あかりさんという人は
またちょっとこう
山本さんとは違う意味で
人の気持ちの書かれて欲しくない繊細なところを
ぐりっと書く人ですね
このこれからの作品も楽しみだなと思いました
今日はリクエストありがとうございました
皆さんも最後までお付き合いいただき
ありがとうございます
さてそろそろお時間になってしまいました
真夜中の読書会おしゃべりな途中室は
こんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら
いろいろなテーマでお話ししたり
本を紹介したりしています
ミモレのサイトからお便り募集しているので
ぜひご投稿ください
また来週水曜日の夜にお会いしましょう
おやすみなさい
おやすみ
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