1. 真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜
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2021-11-03 11:32

「愛想なし」だけど面白さ滲み出る人に惹かれる【真夜中の読書会】

今夜の勝手の貸出カードは、大島真寿美さんの『ワンナイト』。夫婦で営む小さなステーキハウスで開かれた合コンで知り合った男女6人。兄嫁のセッティングによりしょうがなく参加した人、結婚相手を見つけようとやる気満々の人、ピンチヒッターで来てしまった人……と参加のテンションは様々。しかしその夜の出会いによって、6人それぞれの人生は思いがけない方向に転がっていきます。直木賞作家・大島真寿美さんの怒涛の会話劇を堪能しながら、3人の中だったら誰がタイプかな、誰なら友達になれそうかなと疑似合コン参加もできちゃう新感覚の小説です。


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みもれ真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本やマンガ、紙フレーズをご紹介します。
さて、第81話を迎えました。先週はお休みしてしまって、すみません。ちょうど読書の日だったのに失敗しました。
実は、この番組リニューアルをしようと思っていまして、その準備をしていました。早ければ、来週から新しい掲載にしたいなと思っています。
それから、これまでの配信文について、ちょっと声が小さくて聞きづらかった回がいくつかありまして、申し訳ないです。
再調整をしてみました。BGMを少しカットしたりして、少し改善されているかと思うので、聞きにくかったなという回がありましたら、改めて聞いていただけたら嬉しいです。
それから、新しくボイシーという音声配信プラットフォームでも配信がスタートすることになりました。
この真夜中の読書会は引き続き、こちらでも配信しますし、ボイシーでも聞けるようになります。
ボイシーではこぼれ話的なこともやれたらいいかなと思っていて、この真夜中の読書会はいつもお便りに対して一冊勝手に貸し出しカードとしてご紹介しているんですけど、
メモレーションのサイトでは、もう一つこれもおすすめという類書だったり、同じ作家さんの別の作品を紹介してたりするんですよ。
それの話なんかも本当はできたらいいかなと思っています。
また配信がスタート決まったらお知らせしますね。
ボイシーはアプリでもオンラインでも無料で聞けるそうです。
さて、今夜のお便りご紹介します。
今日のお便りはお便り自体の文章がすごく面白くて、私も気に入っていて何度も読み返してにんまりしていました。
ペンネームキリリーさんからいただきました。ありがとうございます。
めっちゃ心配症な私には底抜けに楽天家の友達がいます。
一泊旅行に行くときは彼女はポシェットだけ、私は3泊ぐらいできそうな大荷物。
彼女は批判せず、お決まりのでっかいカバンと大爆笑です。
ちなみに彼女のポシェットにはジップロックに入ったパンツだけ。
化粧化粧品はホテルのアメニティでOKやし、寝るのは服のままで大丈夫だそう。
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持参したパジャマに着替えて、持参したコスメで普段と同じケアをして、持参したタオルを使う私をパンダみたいに興味深く見て、面白がる彼女みたいな男の人がいたら結婚したいです。
といただきました。面白いでしょ。
そんなキリリーさんは真面目で優等生タイプゆえに、ちゃっかりしたタイプの後輩の尻拭いに残業したりとか。
そうなのに上司にはもう少し愛嬌がないとそのうちデートに誘われなくなるよと言われたそうです。
そんなモヤモヤをどうにかできる一冊をお勧めしてくださいとのリクエストに全力でお答えしたいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは大島増美さんのワンナイトにしました。どんな小説か解説していきます。
ワンナイトという小説はまさしくワンナイト、一夜に集まった男女6人の物語です。
35歳独身の亜佑美さんという女性がいて、彼女の兄夫婦がステーキハウスをやっているんですね。
亜佑美さんの兄嫁が35歳にもなって結婚もしてないなって彼女に誰かいい人をって言って、
その夫婦でやっているお店で合コンセッティングするわけなんです。
その合コンに集められた女性3人、男性3人、それから合コンセッティングしたおせっかいやきの兄嫁の京子さんと、
京子さんには奈々ちゃんという娘さんがいるんですが、娘さんは亜佑美さんに名付いているんですね。
その娘さんを含めた8人の視点でそれぞれの章が構成されています。
連作短編小説のような題材になってますね。
この本、実は2014年に出た本で、すごく前に買ってたんですけど、
つい最近、作家のアケノ・カオルコ先生がこの本を紹介していらして、
あ、そうだそうだ、この本があったと思い出して読み返したばかりなんですけど、
まあこれはですね、6人の会話劇というか、
6人の男女と家族の本当なんてことないよくある会話だけで話を持っていく、
この大島和澄さんの構成力とリアルな会話がすごいなっていう、
それだけで話を先へ先へと読ませる力がすごいなと思いました。
この後、大島さんはなお貴賞を受賞されるわけなんですけど、
この作品は殺人とかも起こらないし、極悪非道な人も出てこないし、
ちょっとそれぞれに悪いところというか、
サクシーな部分はあったとしても大きな事件は起こらないんですよね。
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その6人の脳内セリフとか、実際の会話、LINEのやり取りとか、
お互いを合コンなんで、初対面だから探り合うような会話のやり取りだけで展開していくというような感じで、
ちょっとした衝撃状の上質なお芝居を見たような、読み終わった後、頭がジンジンする小説でした。
まずこのメインで描かれるあゆみさんは、ゲームオタクみたいなんですね。
この人の自分の紹介する部分が面白いので、ちょっとここを読みたいと思います。
この部屋は汚いか、とあゆみは自問する。
別に汚くはない。女らしさや愛想はないが、不潔ではない。
オタク部屋と言われたら否定できないし、要するにこんなの子供部屋だと言われたら頷くしかないが、
こういう生活がしたかったのだから、全くもって恥じることではないと、むしろ誇らしくさえ思う。
これほど自分の欲望に忠実に、自分で自分を裏切らなかった35歳がいるだろうか。
というふうにあゆみさんは経っていて、そっかー、なるほどなーって思いましたね。
自分の夢だった、これがあゆみの夢だったのが好きなものに囲まれて、やや地堕落に暮らすっていうふうに、この後続くんですけど、
そういうことってあるよなぁと思ったりして、周りからはどうしてもっと女らしくしないのかとか、
こんな結婚もしないで汚い部屋で大丈夫かとか言われるんでしょうけど、夢を叶えているっていう話ですね。
あゆみさんは、この暴行に出て何も得るものがない3時間だったなーって帰るんですけど、
でもその中になくらさんという男の人がいて、彼だけゲームが好きみたいで、ゲームの話に反応してて、
それでその後連絡を取ってみるんですよ。そこから2人は進展するわけなんですが、
ちょっとネタバレになってしまうんですけど、この2人が進展する途中のあゆみさんの脳内セリフを紙フレーズとして今日はご紹介したいと思います。
この人、私とあの部屋に入ってもきっと全然びっくりしないだろうなぁとあゆみは思う。
それどころか、あのぐちゃぐちゃな部屋の隙間に自分の居場所をすぐに見つけて、
さっさと座って、その辺に積んである雑誌屋なんかをしげしげ眺め出すのではないだろうか。
そうしてあゆみが作ったいい加減なおでんや適当なカレーを、うまいじゃんと言いながら食べるのだ、というふうにありまして、
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まあ最終的にあゆみさんととくらさんは一緒になるんですが、
ラブラブで結婚っていう感じではあまりなくて、
そのとくらさんとあゆみさん、それから男友達とその奥さんっていうね、
4人で一緒に暮らす、ちょっと変わった同居生活になるんです。
あゆみさんが愛想が良くって愛嬌があってっていうタイプの女性だったら、
とくらさんみたいな男性とくっつかなかったかもしれないですし、
そういう人だと部屋を片付けてたり付き合ってる時していたら、
結婚してもオタク生活やオタク部屋を伏せなきゃいけなかったかもしれないですよね。
だからあゆみさんの愛想のなさが結果的には幸せな同居生活、
ぐちゃっとしたままの心地いい生活をつかみ取ったのかなって思いました。
キリリーさんのお友達は自分とはやり方が違っても、
キリリーさんのことを批判しないって書いてらっしゃって、
それはほんとすごくいいですよね。
好きなものとか心地いいやり方が一緒っていう良さもあるけど、
そういう旅行の準備だったり感覚の違いもあっても批判しない。
面白がってくれる人って本当に一緒にいて楽しくて心地いいですよね。
すごく面白いキリリーさんのお便りを読んで、
それを面白がってくれる人が別に無理に愛嬌なんか作んなくてもきっといるんだろうなって思いましたし、
不機嫌に残業しているキリリーさんのことを見てくれてる人もきっといますよと思いました。
お便りありがとうございました。
皆さんも最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな途中室はこんな感じで、
皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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