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孤独だけど身軽で自由。「人生の乗り継ぎ時間」
2026-05-13 16:17

孤独だけど身軽で自由。「人生の乗り継ぎ時間」

EP.247▶︎今夜のお話: 学校に行かなくなった娘さんへのエール/「気にすんな世界は広いぜ」を探して / 日本語で創作する小説家、グレゴリー・ケズナジャットさん / 日本在住外国人の「マイジャパン症候群」 / わざわざ長い乗り継ぎ便を選ぶ理由 / 不登校は停滞ではなく「人生のトランジット」 / 決まった轍(わだち)から外れて自由になること

▶︎今夜の勝手に貸出カード

・グレゴリー・ケズナジャットさん『言葉のトランジット』(講談社) https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000417324

1984年アメリカ生まれ。2007年に来日し、谷崎潤一郎の研究で博士号を取得。小説『鴨川ランナー』で京都文学賞を受賞し、芥川賞候補にもなった著者による初のエッセイ集です。

▶︎あわせて読みたい「境界や休息」におすすめの本

・グレゴリー・ケズナジャットさん『鴨川ランナー』(講談社)

・岩川ありささん『養生する言葉』(講談社)

・ファン・ボルムさん著、牧野美加さん訳『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)

・柚木麻子『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版) 

▶︎番組概要

夜眠りにつく前の“聴くだけ読書会”。講談社のバタやんこと川端里恵がおすすめの本や心に響くフレーズをご紹介します。毎週水曜日の夜に、リスナーの方のお悩みや気分のリクエストにおこたえして、本を1冊、勝手に貸し出しいたします。読んでも、読まなくても、”あしたが楽しみになる”読書の時間を共有する図書室です。ぜひフォローをお願いします。

▶︎本のリクエスト、番組へのメッセージはインスタのDMよりお送りください

https://www.instagram.com/batayomu/

▶︎番組ハッシュタグ: #真夜中の読書会

▶︎MC: バタやん(川端里恵・KODANSHA)

1979年生まれ。2002年に講談社に入社。広告営業、女性誌「with」「VOCE」「FRAU」「mi-mollet」編集部などを経て、今は人事・総務を担当しています。文芸編集者も漫画編集者も経験していないけど、本と漫画と雑誌を読むのが好きです。メンタルケア心理士。 ※講談社の出版物に限らず紹介します。発言や感想は、完全に個人の見解で会社を代表するものではありません。 X|@batayan_mi Instagram|@batayomu

▶︎noteで紹介した本をまとめています| https://note.com/batayan_mi

▶︎YouTubeでも配信はじめました! https://www.youtube.com/@batayomu

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サマリー

今回の「真夜中の読書会」では、学校に行かなくなった高校生の娘を持つリスナーからのリクエストに応え、グレゴリー・ケズナジャット氏のエッセイ集『言葉のトランジット』を紹介。同書で語られる「乗り継ぎ時間」の概念を、不登校や人生の停滞期に重ね合わせ、そこにある「静かな身軽さ」や「自由」について考察する。また、日本在住外国人が陥りがちな「マイジャパン症候群」にも触れ、言葉や文化との距離感、そして固定観念から外れることの豊かさを語りかける。

リスナーからのメッセージとリクエスト紹介
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、第247夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームたかちゃんさんからいただきました。
バタやむさん、こんにちは。こんにちは。
真夜中の読書会、愛聴しております。紹介された本を購入することも多々あります。
ところで、私、今年新しく始めたことがあります。
友人と二人で、民営の一箱図書館に本を出し始めました。
たくさんある棚の一箱分の場所を借りて、自分の本を並べて貸し出すということです。
まだ一度しか出席していませんが、オーナー会議では、それぞれの活動や好みを厚く語っていて、皆さん面白いです。
そのうち、真夜読推薦本特集も組んじゃおうと企んでいます。良いですか?
良いです。良いです。もちろんです。と言って、このお便りですね、1年以上前にいただいたので、まだ続けてらっしゃるかな。
続けてらっしゃったらいいですが、一箱分自分の本をセレクトして、貸し出しできるっていいですね。楽しそう。
オーナーミーティングっていうことは、その一箱を持ってらっしゃる人同士の会があるんですかね。
さてさて、今回のリクエストは、理由は話さないのですが、最近学校に行かなくなった娘に、気にすんな、世界は広いぜ、あなたは大丈夫と伝えられる本です。
娘は高校生で、とある歌い手、ライブ以外で顔出ししない、配信で活動するアイドルが大好きで、押し勝つに忙しい明るい子です。
よろしくお願いします。といただきました。ありがとうございます。
グレゴリー・ケズナジャット著『言葉のトランジット』の紹介
少し前にいただいたリクエストだったので、もしかしたら状況が変わられているかもしれないなと思いつつ、高校生じゃないかもしれないと思いましたけれども、
お嬢さんが、娘が、息子が不登校なんです。あるいはご自身が、今学校に行ってなくてとかっていうメッセージはいくつかいただいていて、
何かご紹介したいなってずっと考えていたんですね。そういう時にしっくりくる本とか漫画とかなんだろうってずっと思っていて、
でも人によりますよね。不登校だからって言って、心境やコンディションはみんな一緒じゃないですから。
高ちゃんさんからいただいた世界は広いぜっていうのと、歌い手さんが好きっていうキーワードからこの一冊を選びました。
今夜の勝手に貸し出しカードは、グレゴリー・ケズナジャットさんの言葉のトランジットという本にしました。
こちらは講談社から2025年の8月に刊行された本になっています。
グレゴリー・ケズナジャットさんという方はですね、どういう人かちょっと先にご紹介すると、
アメリカのサウスカロライナ州生まれで、高校生の時に日本に興味を持って、日本語に興味を持って留学なんかもされて、
2007年に日本で仕事をされる形で移ってこられて、今は法政大学で準教授として先生もされながら小説を書いていらしてまして、
小説カモガーランナーで京都文学賞を受賞し、アクタガー賞の候補にもなったという非常に実力派の方で、
日本語で創作を行っていらっしゃる機営の小説家でもあるという方なんですね。
今日ご紹介する言葉のトランジットという本は、そんなグレゴリーさんの初めてのエッセイ集となっています。
英語と日本語2つの言葉のレンズを通して見える景色とか、自分のアイデンティティに言葉がどう影響するのかっていうのを綴ったような試作に満ちたエッセイになっています。
キャプション的に紹介するとそんな感じなんですけれども、そんなになんていうんですかね、強要強要した本ではないです。
もう少しこうふわっとした断片的なものの積み重ねのような読み物になっています。
その英語で見える世界と日本語で見える世界っていうのがパッキリと分かれているわけじゃなくて、2つのレンズって帯には2つのレンズって書いてあるんですけど、
2つの眼鏡じゃないんですよね。眼鏡をかけ替えているわけじゃなくて、言うなれば遠近両用みたいな、境目は曖昧で、でも確実に違いはある、見え方に違いはあるっていう感じでしょうかね。
私がこの本すごい好きなんですけど、想定も含めてすごく気に入っていて何度も読んでいるんですが、
すごく惹かれたのはグレゴリーさんの独特の視点、客観性と言いますか距離感なんですよね。
っていうのは英語はグレゴリーさんにとって母語で、日本語は習得した言語だから、その境界線、遠近両用の境界線の中で、
言葉とか文化とかと独特な距離感をどっちにも持っているという、どっちにも冷静な距離感を持っているっていうところが面白いなと思いました。
どっちにもどっぷりじゃないって感じですかね。
「マイジャパン症候群」と異文化との距離感
高校生から日本語が学びたいと思って日本が好きで、日本語で創作活動もされているって聞くと、
すごい日本大好き、日本カルチャー偏愛してますみたいなことを勝手に想像して、勝手に当てはめちゃうんですけど、
そういう感じじゃないんですよね。もうちょっと引いた目で見ているっていうところが面白いなと思いました。
具体的にちょっとご紹介すると、マイジャパン商工群っていう言葉が紹介されてまして、
それはどういうことかというと、日本に住んでいる英語話者、英語で話す人たちのコミュニティで発生する現象、症状のことを言うそうで、
日本の生活に慣れてくるある程度時間を過ごした人が、英語話者のコミュニティからちょっと距離を取るようになって、
新たに日本に来た英語話者の方、あるいは外国人の人に対して、日本語とか日本文学、日本のカルチャーのうんちくを語ったりとか、
日本ではこうした方がいいとか、こういうのが常識だみたいな、いわゆるマウントを取るみたいなことをしだすと。
それがマイジャパン商工群と呼ぶそうです。面白いですよね。
どこの国でもありそうですよね。マイイギリス商工群とか、マイニューヨーク商工群とか、国内でもあるか多分ね。
マイ京都商工群とか、その外から入って先に馴染んだ人にとってのマイ何々っていうのがあって、
それをちょっと教えたくなったり、自分だけのものとして守りたいみたいな感覚ですかね。
そういうグレゴリーさんは、そういうマイジャパン商工群にかかっている日本在住の外国人の人たちに、
ちょっと痛々しい気持ちを持ったり、少し笑ったりもしながら、でも同時に自分も発症していることを自覚していると書かれていて、
そういうなんか客観性が面白いなと思いました。
例えば何かあまりメジャーではなかった温泉地、知る人ぞ知るみたいなニューヨーク上に久しぶりに行ったら、
ネットの影響とか最近は強いでしょうけど、何かで外国人人気になっていて、
外国人ファミリーがいて、なんでお前らがここに来ているんだと。
ご自身も温泉の入り方みたいなのを書かれた英語のパンフレットを渡されちゃったりなんかして、
すっかりメジャー観光地化したことに、マイジャパンを脅かされたような、犯されたような不快感を感じているというようなくだりがあって、
なるほどな、ちょっとわかる気がしますよね。
「乗り継ぎ時間」の概念と人生のトランジット
それで何でこの本をタカちゃんさんとタカちゃんさんのお嬢さんに選んだかっていうお話をしますね。
この言葉のトランジットというタイトルにもなっているんですけど、
この本私がすごく好きになった印象的な箇所がありまして、
グレゴリーさんがスケジュールに、予定に余裕があればなるべく乗り継ぎの長い予定を選ぶっていう風にこの本に書いてあって、
そんなことあると思って、そんな選択の仕方あると思って、
乗り継ぎなんて短ければ短いほどいいんじゃないか、むしろない方、直行便があれば直行便最高と思っちゃうじゃないですか。
私はそう思っちゃってたんで、なるべく長い乗り継ぎを含む予定を選ぶっていう考え方にびっくりしたんですけど、
何でグレゴリーさんは長い乗り継ぎ便を選ぶのかというと、
そのきっかけがあって、グレゴリーさんが高校生の時に日本にホームステイをしに出したそうなんですね。
その渡航の便が韓国で乗り継ぐ必要があって、6時間ぐらい時間を持て余したと。
その時の何とも言えない感覚、韓国語はわからない。
故郷を離れて、これから日本っていう新しい場所で自分はしばらく日常を過ごす生活をする、それに対する不安と期待と、
どっちにも所属をしていない韓国っていう場所に今いる孤独感というか、その感覚が不思議と、
不快な孤独感ではなかったっていうんですね。
それが非常に興味深いなと思ったんで、ちょっとそこを読みますね。
孤独感と言っても不快な気持ちではない。
単に自分が知っている言葉と文化から断絶されただけだった。
後ろには故郷と母語がある。先にある別天地で新しい環境と言葉が舞っている。
その2点の間にいて、静かな身軽さがあったとあります。
静かな身軽さがあったと、なるほど、そうか。
考えたことなかったけども、乗り継ぎという時間が静かな身軽さっていうのは、そうかもしれないですね。
留学するっていう、ちょっと故郷と離れる、エモーショナルな時間だから、より強く感じられたのかもしれないですけれども、
ここでもあそこでもない、目的地でも帰る場所でもない、
チューフラリンな空間で過ごす独特な感覚、時間を味わうために、
わざわざ乗り継ぎ時間の長い便を選ぶんだという話でした。
それを読んで、そうか、学校に行ってないとか、
会社お休みしているとかっていうのが、ある種トランジットの時間なのかもしれないなと思って、
学校とか会社っていう枠組みから外れている時間っていうのは、
世間的には停滞に見えるかもしれないけれども、
グレゴリーさんは、この2つの境界、
前回ご紹介した本でいうところの淡いですよね。
淡いに留まっているっていうことが、
どっちにも属さない、どこにも属さない世界を再発見するための、
すごく豊かな、心もとないけど自由な時間だっていう風に捉えている、表現されているんですよね。
「轍」から外れる自由と新しい世界の発見
グレゴリーさんは、2つの言語をどっちも使いこなしているわけなんですけど、
第2言語を持つことの意味を、かなり繰り返し述べられているのかなと思っていて、
第2言語を持つっていうことは、第1言語の見え方が変わってくるってことなんですね。
それまでのルーティンとか思考の癖みたいなのは、
第1言語でできた考え方の癖とか、物の見方の癖みたいなことを、
和立ちってこの本の中で表現されていて、それも素敵だなと思ったんですけど、
和立ちみたいな、長年の繰り返しでできた、できてしまった溝から外れて自由になることができると、
第2言語を持つことで、2つ目の国で暮らすことでっていう話なんですよ。
この和立ちっていう章から、今日はちょっと紙フレーズをご紹介したいと思います。
そう考えると、時には、はっと周りに気づいて、なじみの和立ちから出ることも十分魅力的に思える。
時間とエネルギーを消費するし、瞬発的な判断も難しくなるだろう。
だがその分、一瞬でも方向を決める自由を得るとあります。
一瞬でも方向を決める自由を得る、確かにと思って、その和立ちから自由になるということはですね、
学校のルールとか、そのコミュニティの常識みたいな和立ちから少し外れてしまったとしても、
それは停滞じゃなくて、次の新しい世界を目指すための自由な体験の始まりかもしれないし、
その時間こそが、心もとないけど自由で豊かな時間っていうことなのかなと思いました。
歌い手さん、顔出しをしないアイドルの世界観とも通ずるところがあるなと思いましたね。
固定された名前とか、外見とか、年齢とか、国籍とかにとらわれず、
言葉とか声だけでそのアイデンティティを築いていく、コミュニケーションをとっていくっていうのを、
心もとないけど自由さがあるっていうことなのかなと想像しました。
番組の締めとリスナーへのメッセージ
ちょっと時間が経っちゃったので、たかちゃんさんのお嬢さんはもうすでに次のフライトに乗っているかもしれないし、
まだトランジットの途中かもしれないんですけど、もしよかったらぜひ呼んでみていただきたいなと思ったのと、
今まさにトランジットの途中の方も、時間も悪くなかったなと思い出せる状況にある方も、
よかったらぜひ呼んでみてください。
心のトランジットをご紹介しました。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆さんからのお便りをもとに、
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストやメッセージは、インスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは、講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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