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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第135夜をお届けします。今夜のお便りをご紹介します。今日は2通ご紹介したいと思います。
まずはペンネームさおりさんからいただきました。バタやんさんこんばんは。夏にこのポッドキャストを知ってから何度も繰り返し聞いています。
8月の母、自転しながら好転する、生川など20冊以上はバタやんさんのおすすめを読んだと思います。
なんとなんとたくさんありがとうございます。コロナも収束し、毎日出社になってから調子が悪いです。
もともとは人に対して明るく振る舞い、表面上は陽キャとして生きてきましたが、最近はそれができなくなってきました。
入社して8年ほど経つのに、新員としたオフィスでは自分が話していることが周りに聞かれているようで緊張してしまいます。
尊敬する上司、先輩と話す時もなぜかうまく笑えなかったりして、本当は明るく積極的に生き生きと働きたいのに、どんどん悪い方向に進んでいるようでしんどいです。
こんなどん底の気分の時にゆっくりと立ち上がれるような光を射すようなお話はありますか。よろしくお願いします。といただきました。ありがとうございます。
うーん、すごくわかるなぁと思いまして、どういった本がいいかなぁと試案しながら、続けてもう1つご紹介します。
ペンネームりんごのほっぺさんからいただきました。
会社のお昼休憩に楽しく聞いています。思い切ってメッセージをお送りします。いわゆる女社会に疲れてしまい、大丈夫だよと背中をさすってもらえるような本を教えていただきたいです。
私の職場は女性が9割ほどで、みんな悪い人ではないけれど、ベテランさんから若手に対して少し棘があるような言い方、振る舞いや、この話聞いていたくないなと感じることが多く、心が疲れることが増えてしまいました。
安心感を感じられるような本を教えていただければとても嬉しいですといただきました。ありがとうございます。
女性が9割かぁ、そうですね。楽しい時は楽しいんですけどね、ちょっとこうどうかしたくないなって感じ始めると結構辛いですよね。
私もつい最近までは女性ファッション史にいたので、女性が9割の職場に16年ぐらいいたことになりますね。
このサオリさんとリンゴのほっぺさんのお悩みは少し違ってはいますけれども、どちらも職場のコミュニケーションの距離感とか、自分の本音の出し方みたいな問題、お悩みなのかなと思いました。
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そんなお二人に今日の勝手に貸し出しカードは、遠畑海斗さんの何でも見つかる夜に心だけが見つからないにしました。
タイトルだけ読むとビーズの歌詞みたいですね。愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけないじゃないです。何でも見つかる夜に心だけが見つからないです。
さてこちらがどんな本か、そしてどうしておすすめしたいと思ったのか解説していきたいと思います。
何でも見つかる夜に心だけが見つからないは臨床心理師の遠畑海斗さんによる新感覚の読むセラピー本というコピーがついています。
新感覚とある通り、この本はジャンル、カテゴリーをちょっと説明しにくい本なんですよね。
メンタルケアを主眼とした自己啓発本だったり心理学の本という感じではなくて、社会学と小説がミックスしたような感じでもありますし、
遠畑さんのクリニックを訪れる方、臨床相談者さんの事例を交えながら、小説のようでもありエッセイのようでもあり、
遠畑さんのすっと心に入りやすい文体語り口調が存分に生きている一冊になっていて、本当に読むセラピー本という言葉がぴったりだなと思っています。
最近は自分に無理を強いる関係性だったりとか、固定概念は手放しましょうという本が増えていて、メッセージが主流じゃないですか。
例えばしんどい親子関係、母娘関係だったり、家族の呪縛とかから解放されましょうとか、断ち切りましょうとか、
女はこうあるべき、男はこうあるべきみたいなものに合わせなくていいとか、自分らしくというメッセージがあふれている、主流になっていますよね。
それ自体は間違っていないというか、そうあるべきとは私も思うんですけど、現実問題としては家族だったりご近所付き合いだったり、
職場の人間関係、ママ友とか、合わないなって思ったり、自分らしくいられなくて苦しいなって思ってもばっさり断ち切るっていうのはなかなか難しいですよね。
無理して合わせなくていいよって言ってもらえたらもちろんほっとするけど、でも合わせないとやっていけないところもあって、日々の生活は。
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だから苦しいんですよね。
この何でも見つかる夜に心だけが見つからないという本の中では、社会の小舟化という言葉で表現されているんですけど、
どんどん自分らしく自由になっていくと小舟になっていくと。
小舟で大海に繰り出していかないといけないから、全部自己責任ですよね。
自分で選択している人間関係、自分で選択したお仕事、自分で選択した役割、こうあるべきっていう自分らしさで、
小さな舟で社会という大波に漕ぎ出していかなくちゃいけないと。
だからいろんなめんどくさい関係性とか悪化性を断ち切ったり手放したりする一方で、社会が小舟化していく、
自分だけの舟になっていくっていうのは結構怖いことですよっていう話も出てくるわけです。
そこが少し新鮮だなと思ったんですけど、
沙織さんも書いてらっしゃった通り、しばらくコロナで小舟の心地よさも知っちゃったじゃないですか。
またたくさんの人がぎゅうぎゅう乗っている大きな舟に乗るの嫌だなとかめんどくさいな緊張するなっていう気持ちもありますよね。
でも何でも断ち切って捨て去ってすっきりするっていうことが心を守るために大事とも限らないよっていう話がこの本には出てくるんですよ。
そこがこの本の新しいところというか、耳障りのいいことばかりじゃなくて、ちゃんと本質を語ってくれる本って感じがして信頼しています。
もう一つこの本の中で響いた言葉がありまして、それはシェアと内緒っていう話が出てくるんですね。
他者とのつながりには社会学的に言うと共同性と親密性という2つの原理があって、それをこの本では共同性をシェア、親密性を内緒と言い換えています。
共同性っていうのは一緒に同じミッションに向き合うグループ、会社の組織職場とかもそうだし、同級生同期とか子どもが同級生のお母さん同士とかも共同性ですよね。
シェアすることでつながる関係性です。
一方親密性はこの人と一緒にいたいな、つながっていたいなっていう自分の気持ちだけでつながっているお互いかもしれないですけど、これを純粋な関係性とも書かれていましたが、
共同性の方はですね、同学年とか会社組織とか半ば強制的に組み合わせられる関係性で、親密性の方は自分の意思が強いですよね。
内緒の関係性、親密性の関係性の方が強い、気持ち的には強いようでいて、簡単に外れてしまう脆さ、心もとなさもあるっていうことなんですよ。
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だから両方あった方がいいですよという話になるんですけれども、シェアの関係性で自分の安全な立ち位置を作っておきながら、その先にさらにつながりたいなって思える人とは内緒の関係性を作るみたいなイメージですかね。
内緒の関係性しかないっていうと、それはそれで危ういっていう心もとないし、シェアの関係性しかないっていうと、ちょっと本心が出せてないっていうことですかね。
ちょっと話がそれるんですけど、私は最近ジムに通い始めたんですけどね。
女性用のロッカールームがあって、私はボクシングのレッスンに出てるんですけど、同じスタジオでダンスレッスンのクラスもあり、女子高一にダンスレッスンに来ている若い女の子たち、女の子たちっていうか20代のOLさんとか学生さんなのかな、K-POPのダンスとかを習いに来ている子たちがわーって一斉に入ってくる時間帯があるんですよ。
そうすると、中高生の頃の、部活とかやってた頃の女の子同士の関係性とか、女子ヒエラルキーにちょっと敏感になりながら、怯えながら生きてきたあの頃の感覚が、わーっと蘇ってくる相馬灯のようにっていう瞬間があって、
なんかこのヘアオイルめっちゃいいよとか、化粧品をかじかりしあったりしてるんですよね。みんな仲良くて、グループで来てて、K-POPみたいな似たような服装をしてて、今日の大校の先生、いつも選曲が微妙だよねとかいう話を喋ってるんですよ。
ちょっと胸がキュってなりますけどね。なんかボクシングのために来てる人は割と一人で来てる人が多くて、黙々と着替えてて、ダンスレッスンに来てる子たちは結構グループで来てる子が多いのかなっていう勝手な印象ですけど。
この髪を乾かしたりしながらグルーミングみたいな会話をして、私たち仲間だよねっていうのを確認し合うような会話っていうのは、シェアの関係性ですよね。
あの先生教え方悪くないけどなって本音は思ってる子も中にはいるかもだけど、その場であんまり反論とかして波風立てるよりは、ねぇだよねとか言いながら流しているというような感じを見受けられますね。
私は今こうやって女子ロッカーの女子講師室の中の女子のマジョリティの会話から少し離れたところにいるスタンスを、昔もそうだったし今もとっているっていう話を今聞いてくださっている方にシェアをしていて、シェアをすることでもしかしたら共感してくれたあなたと親密な関係性を作ろうとしているっていうことじゃないですか。
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ことなんだと思うんです。でもしかしたら女子講師室のあの会話みたいな感じが嫌だなって思っている人の方が、実はマジョリティかもしれないとも思っています。
何を言いたいかというと、りんごほっぺさんがこの話聞いてたくないなって思いつつも、あまり波風立てずにやり過ごしておこうってしていらっしゃるとするならば、そういう人の方が多いかもしれない。マジョリティかもしれないですよね、実は。ちょっとわかんないですけれども。
そうかもですね、とか言って適当にやり過ごしつつも、シェアの関係性をある程度キープしながら内緒を共有できる人がお一人でもいるといいなって思ったりしました。
今日はこの本からカミックフレーズをご紹介して終わりたいと思います。
働くことは何らかの目的のためにすることであり、愛することとは敵ではないと感じられる他者と共にいることでした。
この2つがどんなバランスであるのがいいかはケースバイケースです。あなたが今どういう状況で生きているかによって変わってくる。
大切なのはこの2つが鳥と卵のような関係にあったことです。
両方存在していてきちんと相互作用していることが大切。
愛すること、愛するって言うとちょっと大げさな気もしますけれども、敵ではないと感じられる他者と共にいるっていうことだったら、そういう感覚ならばできるかもしれないと私は思ったんですよね。
職場の人っていうのはある一定の期間共同性を求められた、強制的に共同性を求められた関係性ですからね。
愛するまでいかなくても敵ではないというスタンスを示すくらいでも十分なのかもしれないと思ったりしました。
沙織さんが緊張されたりうまく振る舞えないって悩んでいらっしゃるのも、ちゃんと職場の先輩とか上司とか周りの人に敬意があるからで、それ自体すごく素敵なことですし、
でもうまく立ち振る舞おうとしなくても、敵ではないと感じられる他者と共にいるっていうことでも十分というか、敵ではないですっていうことが伝わっていれば十分なんじゃないかなと思いましたというご紹介でした。
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最後までお付き合いいただきありがとうございます。
今日は一つお知らせがあります。朝日新聞さんの本のサイト、公書講じつさんがやってらっしゃる、公書講じつ本月の昼休みというポッドキャストがあるんですけど、そちらにゲスト出演させていただくことになりました。
公書講じつさんの本は、6月の8日と15日配信予定と書かれています。また配信になりましたらお知らせしますが、公書講じつのポッドキャストの方もお聞きになっている方も結構いらっしゃるのかなと思っていまして、ぜひあちらでもちょっと緊張してしゃべってきましたけれども、聞いていただけたら嬉しいです。
本日の国書会おしゃべりな図書室はリスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。