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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜へようこそ。こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜では、水曜日の夜に、おっとできて明日が楽しみになる、をテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第163夜となりました、今夜のお便りをご紹介します。ラジオネームピーコさんからいただきました。バタやんさん、こんにちは。
こんにちは。真夜読、いつも楽しみに拝聴しています。今日はバタやんさんに質問があり、メッセージを書いています。バタやんさんは、いわゆる純文学作品をどのように楽しんでいますか?
私は読書は大好きですが、希少転結がはっきりしたドラマチックな大衆小説を主に読んできました。
毎回芥川賞の報道があるたびにチェックしてみるものの、作品を読み解き楽しむというレベルに達することができずにいます。
純文学はエンタメというより、作家の芸術性が反映されているというだけあって、まさに美術館に展示された作品を前にすっかり置いてけびょるになっているような気持ちになるのです。
別に趣味だから好きなものを好きなように読めばいいよねという気持ちの一方で、わからない、つまらないと投げ出してしまうのもなんだか悔しくて、バタやんさんは真夜読の中でも純文学を取り上げることが多いですが、どんなふうに作品を楽しんでいますか?
また、はっきりした結末が描かれない作品の場合、自分なりに考察したり、作者の意図を想像したりしますか?
もしよかったら、私のような純文学初心者が入りやすい作品を教えていただきたいです。よろしくお願いします。といただきました。ありがとうございます。
そうですね、意外と純文学をご紹介してましたかね。純文学のハードルの高さというか、私に理解できるだろうかって思うような気持ちとか、置いてけぼりになるんじゃないかっていう心配とか、とてもよくわかりますね。
私も基本的には大衆文学というかエンタメ小説が好きなんですけど、純文学の特に新しい作家さんの才能に打ちのめされる感じと言いますか、
わかんない感じにも打ちのめされたりして、そこからしか摂取できない高揚感があるなと思っています。
ということで、純文学初心者が入りやすい作品をというリクエストにお答えしまして、今夜の勝手に貸し出しカードは今年の第170回芥川賞を受賞された
久断理恵さんの東京都道場島にしました。芥川賞受賞後の会見とかから、この作品の一部が AI で書かれたっていうことにすごく注目が集まってしまいましたけれども、
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全部が丸々 AI で書かれたわけじゃないですし、芥川賞がついに AI に乗っ取られたみたいな早とっちりと言いますか、誤解をされてしまうと全然違うので、ここで否定しておきたいのですが、
この小説が今注目されるべきポイントはですね、 建築家ザハ・ハディドによる新国立競技場が建築された後の東京っていう設定になっていることだと思うんですよね。
ザハの案が潰されてしまった東京と、コストアップとかいろいろ批判はされつつも、ザハの案が実現された東京では、
日本では何か価値観は変わったんだろうかっていう想像させる読者にね、 突飛な発想、想定じゃなくて、あり得たかもしれない未来っていうところが新しいなって思いました。
SF小説とかディストピア小説というカテゴライズともまた違う、 地続きであり得たかもしれない未来っていう感じが新鮮な設定だなと思いました。
さてどんなストーリーなのか解説していきたいと思います。 ただあまり先入観なく味わってほしい作品でもあるので、あらすじは簡単にご紹介します。
東京都道場棟の主人公はマキナ・サラという女性の建築家です。 ザハハディドの国立競技場が建築された東京では、犯罪者を収容する施設としてシンパシータワートーキョーという大型の施設を建築しようという構想が進んでおり、
サラはその設計者として名乗りを挙げているんですね。 タイトルにある東京都道場棟はシンパシータワートーキョーの日本語訳にあたります。
犯罪者を収容する施設にシンパシータワーという名前を付けることが気持ち悪いとか悪趣味だなぁって思うか、
いやいや犯罪を犯す人は犯罪を犯さなきゃいけない状況になってしまったっていうことが悪いのであって、罪を憎んで人を憎まずじゃないですけど、
同情されるべき人、差別されるべきではないっていう意味で素晴らしい精神だというふうに思うか、そのあたりがこの小説の主眼なのかなと読みました。
ダイバーシティとかジェンダーレストイレとかカタカナの言葉が入ってくることによって浸透するポジティブな側面もあれば、
分かるような分からないような言葉で繊細な議論を抑え込んじゃうみたいな側面もあると思うんですよね。
建築がこの小説のモチーフになっているというテーマになっているところも面白くて、巨大建築が街並みや景色を変えるのと同じくらい、
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名前、ネーミングができるとその人やその名付けられた対象への見え方も自然と変わってきますよね、そういうことをテーマにしているのかなと私の解釈では思いました。
ただこの小説決して小難しい話ではなくて、全体の雰囲気はかなりポップだと思いました。
主人公のサラと年下の恋人と、それからサラが時々生成AIに話しかける、問いかける、その回答が間に挟まれて話が進んでいきます。
そのAIが回答する部分の一部を、おそらく実際に生成AIとかチャットGTP的なものを回答した文章を使ってたってことなんだと思うんですけど、
AIを使ったかどうか重要じゃないってさっき言ったんですけど、やっぱ重要かもっていうか、このAIが答える文章が小説全体の良いアクセントになっています。
ピッコさんのご質問に、純文学初心者でも読みやすいというリクエストでしたが、その逆を言えば純文学入りにくい、読みにくいって思う要因は、
文学的表現、文体と言いますか、文学的比喩、思考の飛躍みたいなものがあるのかなって思うんですよ。
AIってそういう比喩的表現や思考の飛躍があまりないんじゃないかなと思って、Aは何ですかって聞いたら、例えるなら何々が何々するみたいなものですねとかは言ったりしないじゃないですか。
そういう意味で読みやすいですね。Aの質問をしたら事実ベースでわかることしか答えないという、そういう釈志定義な答えみたいなのが間に挟まる感じが、少しユーモラスでもあり面白いなと思いました。
今日はこの東京都道場島から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
出なければならない、べきだ、強い意志と義務を示すコンクリートのように硬質な言葉たちが私の内部でポコポコと音を立てて泡立ち続けるとあります。
コンクリートのような硬い言葉がポコポコと泡を立てているってすごい表現ですよね。
この主人公が建築家であるということで建築に引っ掛けている比喩的表現がいくつも出てくるんですけど、もう一個紹介しようかな。
社会通念を大きく逸脱する趣味思考を誰かに懐賃したことはないが、私は陸上生物であるところの人を思考する建築、自立総公式の党と認識しているとあります。
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人のことを自立総公式の党っていうとかね、面白いなぁと思ったりしますね、そういうところがちょっと線を引いて覚えておきたくなるような言い回しがたくさん出てきます。
私は純文学を楽しむのは全部を理解したり、結末の意味を解釈しようとしたりっていうよりかは、
なんか途中ようわからんけどやべえなっていう、この言い回しすごいなとか、やべえ奴出てきたなっていう、新しい才能にKOされるようなそんな感覚を楽しめばいいのかなっていう、つまみ食いのような感覚で読んでいます。
ちょっと話がずれるんですけど、私アイミョンがすごく好きなんですね。
それが最近、最新曲が資生堂だったかな、資生堂の新ブランドのCMのための書き下ろし曲で、去年は朝ドラの主題歌とかで、当然紅白にも出るし、講師への入場曲に選ばれたりとか、つまり国民的みたいな感じになっているわけですよね、今や。
それに対して子さんのファンの方だと思うんですけど、なんかアイミョンがもっと尖ってた頃の曲が好きだったとか、尖ってて欲しいみたいな声がどうもあるようで、本人にもそれが届いてるっぽいのを感じる時があるんですよ。
私は世代がかなり上なので、妹が活躍するのを目を細めてみるみたいな感じで、全然昔の方が良かったとかは思わないんですけど、気持ちはわかるなっていうのもあるんですよ。
どんどんメジャーになって、角が取れて、みんなに愛されるスターみたいになっちゃうのは、なんか違うっていう、一末な寂しさみたいなの。
あの気持ちは何でしょうね。何と名前を付けたら良いのでしょう。
それで何を言いたかったかというと、純文学で全体としてはよくわからないところもあるんだけど、新しい才能だなって思って打ちのめされたり、やべぇ奴出てきたぞって思ったり、
例えば失恋の話をこんな言葉で表現するのすごいなって思うのは、尖ってた頃の愛美を見つける時の感動とかと似てるって思ったりするんですよ。
バンドとかアーティストの人たちのトゲトゲした部分だったり、初期はね、やっぱ大衆へのアンチテーゼとか、なんていうか研磨されてない、ごつごつザラザラした表現とかが出てきていて、
そういうのを自分にはわかる感性がなくても、わぁなんかすごいなぁ、いいなぁって思う時があって、
九段理恵さんにはそういう新しいバンドを見つけた時のワクワク感、高揚感みたいなのを感じました。
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皆さんもぜひ良かったら読んでみてください。
さて、お時間になってしまいました。
今夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆様からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介します。
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また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみに。