アートスキャンの体験
イラストレーターの原あいみです。絵本や書籍、キャラクターを作ったり、難しいことを分かりやすく、漫画やイラストで伝えるお仕事をしています。
今日はですね、個展への道シリーズということで、またちょっと新しい体験をしたので、そのお話をしていこうと思います。
今、夏の個展に向けて、ちょっと大きめのアナログ作品を何点か描いているんですが、それをですね、布に、大きな布にプリントして、ちょっと布の展示っていうのをやりたいなというふうに考えているんですね。
この大きな作品、これをですね、デジタル化する必要があるんです。
以前、一つハンカチ用に少し大きめの正方形の作品を描いたんですが、それはですね、自分で結局、光の当て方をきちんと丁寧にして、スマホで高解像度の写真を撮り、それを自らフォトショップで色補正をして、入稿データにしたんですね。
そのやり方を、今回のもう一枚大きな絵を描いたんですが、それでやろうかなと思ったんですけど、どうもうまくいかなくてですね、ちょっと色がね、難しい色を使っているからなのかもしれないんですけど、いよいよ当時見積もりをとっていたアートスキャンというものを体験してみようかな。
一度業者さんにね、出してプロのスキャニングをやってみようかなということで、昨日会社さんに原画を持って担いで行ってまいりました。
何社かお見積もりをとったんですが、多分そんなに変動はなく、お電話もして、なんとなくご相談等しやすそうだなと思った会社さんを一社選びまして、そちらに原画を持ってお邪魔してきました。
アートスキャンというのはどういうものかと言いますと、普通の一般的なスキャンだと会社にある大きなレーザープリンターとか、あとコンビニにあるプリンターとかですね、あとご自宅のインクジェットプリンターとかでもスキャン機能がついているものがあると思いますが、
絵とかイラストとかをね、下側、ガラス面にペタッと乗せて、蓋をして、下から光がウィーンとなってスキャンされるっていうのが一般的なスキャンのイメージですよね。
このアートスキャンというのは、原画に触れずに、非接触でスキャンできるそうなんですね。
なので作品は、例えば油絵とか、私は一応水彩画なんですけど、そういったちょっとね、例えば凹凸がある絵とかもスキャンできるそうなんです。
作品は表向きに置いて、光とカメラ、スキャニングできる棒みたいなのがウィーンって触らずに動いてスキャニングするというね、そういう機械が入っているという会社さんでした。
特徴としては、とにかく高解像度で細部までくっきりと、その筆の跡とか、紙の質感とか、色の独特なグラデーションとかを再現できますっていうところですとか、
あとそのスキャンしたデータをプロの職人さんが、原画に近い感じで色補正をしてくださるという、そういうとこまでセットになっていて、
そのデータを納品してもらえるというね、そういうサービスなんですね。
ジークレイ印刷の解説
こういったスキャンは一体何のために使うのかというと、今回の私のようにアナログで作った作品を、
例えば原画自体は販売はできないけれども、個展で展示をして複製原画って言ったりするんですけど、
Gクレイ印刷とか、Gクレイによる複製原画っていうね、キャプションを絵とか見に行ったりした方は見たことがあるかもしれませんが、
そういった原画そっくりの、まるで原画家のような複製印刷、プリントをしたものを、
例えば番号をね、エディション1から10まで10枚限定の販売となります、みたいな感じにして、
作者がナンバーを入れて複製原画による販売みたいなことをしたりするんですね。
そういったものをするために、アナログの原画をアートスキャンしてデータ化保存し、それを使うみたいな、
なんかそんなことに使ったりするそうなんです。
私は今回は複製原画は作る予定はなくて、原画そのものを販売しようというふうに考えているんですけど、
そうするとね、もしも、もしも売れた場合、自分の手元から絵がなくなってしまうので、
その後ね、作品集にきちんと掲載したりとか、それこそ複製原画を販売するとか、
あとグッズをね、絵はなくなってしまったけど、それのグッズを作りたいとかいうふうになった場合に、
ちゃんと手元にデジタルデータ、きちんとスキャンされたデジタルデータを残しておくっていうのはすごく大事なことらしいんですね。
そのために、そういったことの用途として使われるのが、このアートスキャンなんですね。
古典をやろうと思ってアナログイラストを描き始めましたが、
一つ一つなんかね、大人の社会勉強みたいな、社会見学みたいな感じで、新しい世界を覗き見していく感じが面白いですね。
こういう時って、インターネット、ホームページでね、いろいろ事例とか会社の説明などは見れますけど、
できることならね、足を運んで担当者さんと直接お話をするっていう機会を持つとですね、
いろんな質問、素朴な素人ならではのいろんな質問ができるので、
一個一個ね、そうなんですかとか言ってね、こっちがそういう姿勢で来てますっていう感じに見せると、
いろんな事例を見せてくださったりとかするんですよね。
とっても面白かったですね。
打ち合わせをするだけでも、本当社会見学に行ったような楽しさがありました。
ジークレイ印刷っていうお話が出たので、ちょっとこれについてもご紹介しますと、
ジークレイっていうのは、フランス語で吹き出すジクレイ、ちょっと発音わからないんですけど、
そこから由来していて、要はインクジェットのプリントなんですよね。
インクジェットプリンターっていうと、家庭にあるしょぼいやつっていうイメージになって繋がってしまうかもしれないんですけど、
このジークレイ印刷っていうのは、非常に高精細なプリントで、筆のタッチとか微妙な色合いとかも再現するっていうそういう印刷で、
家庭のインクジェットプリンターだとだいたい4色ですよね。
インクがC、M、Y、Kっていってセットすると思うんですけど、そうじゃなくても12色とかね、いろんな色がインクが入っているそうなんですね。
普通のプリンターでは再現できないような色彩を表現できるそうなんです。
そのインクに、例えば顔料インクとか、長期保存に向いているインクを使って、しかもきちんとしたキャンバスとかにプリントアウトすると、長期保存が可能、とても耐久性があるっていうふうに言われているそうなんですね。
なので、さっきお話ししたように、原画ではなく限定版のアートプリントみたいな感じで、Gクレイ印刷で複製原画として販売しますみたいな、アーティストさんがそういう感じに使ったりするそうなんです。
今回このアートスキャンをしていただいた会社さんは、どちらかというとスキャンの会社というより、複製版画を作る工房という感じの会社さんだったんですね。
いろいろ聞いていくと、手で描いた絵を複製するっていうふうに使われる作家さんもいらっしゃるけど、そうではなく、今デジタルで絵を描いているアーティストさんがたくさんいらっしゃるので、原画はないんですよね、デジタルで絵を描くと。
アートスキャンの体験
私も実際絵本をすべてデジタルiPadで描いてしまったウンピーっていう絵本があるんですけど、本当は絵本とか出来上がったら原画展みたいなのができたらかっこいいなと思うんですけど、そもそもデジタルで描いているので原画がないんですよ。
そういう作家さんがデジタル絵をこのGクレイ印刷によって複製プリントして、それで展示するっていう方も結構いらっしゃるんですが、それに加えてプリントしたものに対して、例えばちょっと金色の表現を後から加筆したり、
あと出にくい蛍光色の絵の具を自分で上から描いたりとか、色鉛筆で手描きのタッチを足していったりとか、そういう感じでたった1枚の原画にするっていうことも結構されるそうなんです。
もちろん作家さん本人が加筆する場合もあるし、作家さんと相談の上、今回はこの会社さん、アーティーさんという会社さんなんですけど、そこの職人さんが作家さんと打ち合わせた上に職人たちがラメ加工をしていったりとか、金箔作業をしたりとかね、そういうことをしてたった1枚の原画を作り上げるみたいなこともされているそうなんです。
なんかいろんな世界があるんだなぁと思ってね、すごい面白かったです。
担当してくださった方が女性のスタッフさんだったんですけど、結構ね、そういうイラストレーターさんの作品展とかをギャラリーに見に行ったりするのが趣味として好きな方なんだそうです。
で、私の作品を見て、普通に最初は打ち合わせをしていたんですけど、1点1点がね、お値段がかかるので、いくつか持っていった原画の中でちょっとご相談しながら、自分で撮影するのは難しそうだなっていうのを選んで、数を絞ってスキャン出したんですね。
で、その時にじゃあどうしようかな、これにしますみたいな感じでお出ししたら、これ、これとこれめっちゃ可愛いと思いましたって言ってくださったんですよね。
すごい嬉しくて、今ずっと一人で作品を作っているので、本当にこの原画を見てもらった感想って多分、個展当日まで聞けないんですけど、そういったね、目の越えたスタッフさんが、私これ、この系統のこの作品めっちゃ好きです。
これ、例えばクッションカバーになったりとか、なんかそういうのグッズになったらめっちゃ可愛い感じがしますねって言ってくださったんですよ、感想を。
すごい嬉しくて、で、実は私まだずっと仕事でデジタルで絵を描いてきたイラストレーターなので、こういったアナログ作品を展示するのはもちろん初めてで、もう水彩画で絵を描くのもね、1年生みたいな感じなんですよっていう話をしたら、
えーなんか、ずっとこれで長年描いていらっしゃる方かと思いましたって、まあもしかしたらちょっとはね、あの営業トークが入っているかもしれませんが、そうやって言ってもらえたんですよね。
で、もうなんかね、今ずっと私まだまだダメだな、下手だなと思って描いているので、こういう感じでね、ちょっとでも、ちょこっとでも褒めてもらえると、やる気になりますね、その気になって、すごいね、嬉しかったです。
こんな風に古典をやると決めてから、いろいろ自分の知らない世界をね、覗き見ることができていて、本当にね、これが面白い体験だなと思ってやってます。
作品展示の挑戦
その布のね、縫製グッズを作ってくださるメーカーさんと打ち合わせをしたりとか、先日はセンスオブワンダーさんって本屋さんのオリジナルTシャツを作るために、結局ね、印刷会社さんと私直接やり取りさせてもらって打ち合わせもさせてもらったんですよね。
こういった印刷会社さんとお話ししたりとか、今回のようなね、アートスキャンの工房にお邪魔して、自分の絵も見てもらいながら、このアートスキャンのこととかGクレイ印刷の説明を受けたりとかね、なんかね、楽しいですね。
私デザイナーやっていた時も、新しい会社さん、クライアントさんにご訪問して、その会社説明を受ける最初のヒアリングをするっていう機会がね、たくさんありましたが、それ好きだったんですよね。
社会見学が好きなのかもしれないです。古典っていうか、自分の作品を作って商品にしたいなとか、そういうことをやり続けていたら、ずっと飽きないんじゃないかなって。
画材もね、山ほどありますし、表現方法もいくらでもありますしね。人生100年時代でも大丈夫、飽きなそうだなというふうに思いました。
ということで、今日はアートスキャンについてお話ししてみました。イラストレーターの原江でした。また話します。