ストレスの原因としての粘度
どうも、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回は、「化学系ポッドキャストの日」という企画に参加しています。
毎月、化学系ポッドキャスト番組が、共通テーマに沿って語る企画です。
毎回、ホスト番組が決まっています。
今回のホスト番組は、工業高校農業部さんです。
そして、共通テーマはストレス。
ストレス多めな現代社会。
肉体やメンタル。
生物や素材への様々なストレス。
ストレッサーに関するエピソードを募集します。とのことです。
今回は、粘度の話をしてみようと思います。
日常生活で、ケチャップが固かったり、蜂蜜が出なかったり、そんなストレスありませんか?
このストレスの原因は、粘度を知れば理解できるようになります。
ある程度使ったケチャップは出てこなくなりますね。
逆さにして叩いたり。
粘度の特性と調整
そうして容器を押さえるとドバッと出てくる。
出なさすぎたり、出すぎたり、いろんなストレスがあります。
冬場の蜂蜜は、どれだけ逆さまにしても全然出てこないですよね。
残りを出し切ろうとしても、いつまでも出てきたり。
そもそも冬場は固まってて、流れもほとんどないような時ありますね。
スプーンから落ちなかったり。
いろんなストレスがあります。
このトロトロ、ドロドロ、そんなものの正体は、粘度という指標で表すことができます。
粘度は流れにくさを数値化したものです。
単位はセンチポアズというものが使われたりします。
その他には、同じ単位なんですけれどもミリパスカル秒という形で表現もされます。
粘度は水が基準です。
20度で1センチポアズになります。
サラダ油になるとだいたい65くらい。
とんかつソースは640ぐらい。
そして蜂蜜は1300。
もっと上はどんなものでしょうか。
いちごジャム、これは6000。
マヨネーズが8000。
そして歯磨き粉になると3万ですね。
もっと粘度の高いものが化学物質だとありまして、10万はザラにあります。
先ほど20度の時の水の粘度という言い方をしました。
そもそも粘度は温度で値が変わります。
基本的には温度が上がると粘度は下がります。
温めるとサラサラになっていくというイメージですね。
冬場になると蜂蜜や油の流れが悪くなる。
これは温度が下がって粘度が高くなっているということです。
ただし、粘度だけではなかったりもします。
冷蔵庫のような寒さだと結晶化してそれで固体になっているという事例もあります。
そんなトロトロのストレス、どうやって対処したらいいでしょうか。
なんとなく経験から感じているんじゃないでしょうかね。
それは温度を上げるか力を加えるかこの2つです。
身近な対策、意外と試してるんですよね。
蜂蜜を湯煎したりケチャップの中を振ったり叩いたり。
結構正しい対処法です。
むしろそうしないと対処ってできないんですよね。
1つ上げるとすれば何か粘度の低い、例えば水を混ぜて粘度を下げてあげる。
そんなことはできることはできるんですけれども美味しくなくなっちゃいますよね。
温度をかけると風味が逃げたりしますので、食品は調整が難しいですね。
先ほどから粘度が高いとろとろしている状態を悪いような言い方をしてますけれども、本当にそうでしょうか。
一概に粘度が高いことが悪いとは言い切れません。
特に粘度を重要視しているのはエンジンオイルのような潤滑油です。
機械に膜を張って摩耗などを減らします。
適度な粘度がないと機械のところに膜ができないです。
そのため潤滑油には粘度を上げるような添加剤を入れたりします。
ですけれども粘度が上がってくると反対に機械の動きというのは悪くなってきます。
適度な粘度に抑えてエネルギー消費も抑える、そんな調整がなされています。
身近な粘度が高いもの、シロップですね。
粘度が高いからこそパンケーキに絡んでくれます。
水みたいに粘度が低かったらパンケーキにかけたところからどんどん下に落ちていって、裏っかわだけシロップがついてしまいます。
もっと粘度が高いものといえばハンドクリームですね。
粘度指数向上剤の役割
ハンドクリームのようなとろみがあるものというのは皮膚に留まって保湿してくれます。
結局は用途に対してちょうどいい粘度が大切です。
高すぎても低すぎてもストレスが発生します。
粘度を調整するものをいくつか紹介します。
増粘剤と粘度指数向上剤という2つがあります。
増粘剤は粘度を増加させる役割があります。
食品だと裏を見てもらうとキサンタンガムという物質が入っていることが多いです。
ぜひ見てみてください。
このキサンタンガムというのは単純に粘度を上げるだけではないんですよね。
力を加えると粘度が下がります。
ギソ性流動と言ったりします。
ドレッシングに入れるとどうなるでしょうか。
使う前にドレッシングを振ったりしますよね。
あれは水と油の分離を減らしているという役割ではあるんですけれども、少し科学的な調整が入っています。
ドレッシングを振るとギソ性流動というものが起こって粘度が下がります。
つまり混ざりやすくなります。
サラダにかけた後は粘度が上がって野菜との絡みが良くなります。
使うときは粘度が下がって、食べるときは粘度が上がっている。
便利な特性を持っています。
粘度を調整する増粘剤ともう一つ、粘度指数向上剤というものがあります。
粘度は温度によって値が変わります。
なるべくどんな温度でも同じぐらいの粘度にしたいとき、そんなときに粘度指数向上剤を使います。
粘度指数というのは温度によって粘度が変わらない特性を数値化したものです。
先ほど話に出ました潤滑油でも使われています。
ある温度のときは潤滑性があるけど、機械を使っていって温度が高くなると潤滑性が悪くなる。
そういうものは使いにくいですよね。
ですのでなるべく使用温度範囲で粘度が変わらないもの、そういうものが求められます。
粘度指数向上剤は細長い形状の分子、よくポリマーと呼ばれたりしますね。
そういう分子が使われます。
細長いので分子同士が絡み合ったりします。
温度が低いときは紐が凝集して絡みにくくなっています。
毛玉みたいな感じですね。
反対に温度が高くなると紐が広がっていってお互いが絡みやすくなります。
網目構造ができるようなイメージです。
分子同士が絡み合うと粘度が高くなっていきます。
話をまとめると、温度が高くなると普段は粘度が下がってしまうんですけれども、
粘度指数向上剤のおかげで高めの粘度を維持してくれます。
粘度の高いものというのは力を思いっきりかけると抵抗力が増していきますよね。
そんな力のかけ方と抵抗力というのは物質によって挙動が異なります。
主にはニュートン流帯と非ニュートン流帯の2つに分かれます。
ニュートン流帯は水や油などです。
抵抗力が力をかける速度に比例していきます。
非ニュートン流帯の特性
細かい話は抜きにして、思いっきりかき混ぜると抵抗力が増していく、そんなイメージを持ってください。
非ニュートン流帯はケチャップのような加える力で挙動が変わるものです。
ドレッシングの時のように振ると急にサラサラになる。
そういった気まぐれの挙動があります。 その挙動によって種類が分かれます。
大きく3つです。
1つ目がギソ性流帯。
先ほど増粘剤の時のキサンタンガムという物質で紹介しました。
力を加えると粘度が下がる、そんな挙動を示します。
2つ目がビンガム流帯です。
普段は固体みたいな挙動を示して、力を加えると動き出すようなもの。
身近なものだと歯磨き粉やバターがありますね。
固体のような硬さはなくて、触ると動き出すような、そんな流帯ですね。
普段は固体みたいになっていますけど、力を加えて変形する、そんな物体です。
最後に3つ目がダイラタント流帯です。
これは意外と知っている方多いんですよね。
加える力が大きくなると粘度が高くなる。
片栗粉を溶かした水が代表的です。
大きめの水槽の中に片栗粉を溶かした水を入れて、その上を走る。
そうすると水の上を走っているような、そんな実験を見たことはないでしょうか。
これがダイラタント流帯です。
ちょっと言葉が難しいですけど、大きくは3種類です。
力をかけると柔らかくなるもの。
普段は固まっていて、力をかけて柔らかくするもの。
力を加えて硬くなるもの。
化学プラントにおける粘度の影響
この3つですね。
せっかくなので、化学プラントに与える粘度の影響というものを最後に紹介してみます。
いろんなストレスがあるんですよね。
化学の現場ではポンプを使って配管を通して別のところに液体を送ります。
粘度が高いと流れが悪くなって送る時間が伸びてきます。
場合によっては粘度が高すぎると送れないなんてこともあります。
粘度が高い時というのは混ざりも悪くなりますね。
いろんな材料を入れて容器の中で混ぜます。
そんな混ざりがすごく悪くなってきます。
コーヒーにミルクを入れたりするとわかりやすいんですけれど、
ずーっと円を描きながら混ぜるよりも
クロスさせたりして流れをちょっと乱すような方が混ざり良くないでしょうか。
粘度が高いとあまり乱れるようなことがなくなってきまして、
ずーっと同じところを回ってしまいます。
そうすると材料同士の混ざりが悪くなってきます。
成分のムラが発生してしまいます。
そして実は、粘度というのは熱の伝わりやすさに関係しています。
粘度が高いと熱は伝わりにくいです。
粘度が高いと外から温めても内側が温まりづらくなったり、
反応温度の制御が難しくなってきます。
こうしてうまく送れなかったり、混ざりが悪かったり、加熱ができなかったり、
いろんなストレスがかかってきます。
大体は温度をかけたり、何かに溶かしたりして対処します。
とは言っても、ハチミツのような固いものもあります。
そんな時は力の強いモーターを使って思いっきり送ったり混ぜたりします。
最後に改めて身近なものがどれくらいの粘度かということを紹介してみます。
すべて20℃ぐらいの粘度だと考えてください。
水が1です。
サラダ油は65。
とんかつソースが640。
ハチミツが1300。
ケチャップが1800。
マヨネーズが8000。
そして歯磨き粉が3万です。
身近なものが大体どれくらいかなというので一度見てみてください。
ドラゴンボールで言うスカウターみたいですね。
はい、今回はここまでです。
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それではお聞きいただきありがとうございました。